「おや、こんなところで何をされているのですか、ソリテール様?」
「っ!? ハイ……」
思わずその名を口にしかけてしまう。もういないはずの、大好きな方の名前を。まるで幼かったあの頃に戻ってしまったかのように。助けを求めるように。でも振り返った先には知らない老人がいた。背丈も容姿もハイター様とは似ても似つかない。同じなのは法衣を纏っていることくらい。でもそれにはあまりにも不釣り合いな、麦わら帽子を被っておられる。一度お会いすれば、忘れられないに違いない。
「シュトロ。見ての通りよ。初めてここに来たお客さんとお話ししていたの。貴方こそどうしたの? 司祭がこんなところを出歩いているなんて」
それは目の前の魔族、ソリテールも同じだったらしい。突然割って入ってきた老人にも全く動ずることなく、流れるように言葉を紡いでいる。まるで機械のように。そう感じてしまうのは、私が目の前の魔族の本性に気づいているからなのだろう。
だがそんなソリテールからしてもこの状況は予想外のものだったらしい。その口から語られた名前に思わず私も驚いてしまう。シュトロ様。目の前の方がまさかそうだったなんて。いくら魔族でもそんな嘘はつかない。一体何が起こっているのか。分かるのはただ、間一髪のところで私が命を取り留めたのだという事実だけ。
「いやはや。耳が痛いですな。ですが連絡を受けまして。何でも妻からの言伝を伝えに来てくれた方がいると。ご足労願うのも悪いのでこうして迎えに行こうとした次第で」
驚きと、変わらぬ危機感による緊張。それに翻弄されながらもできるだけ平静を装いながら状況を見守るしかない。そんな私を横目に、シュトロ様はどこか飄々としながらここに来られた成り行きを説明して下さる。そうか。受付でのやり取りがどうやらシュトロ様の耳に入っていたらしい。取次はできないとのことだったが、表向きの話だったのか、それとも私が通行許可されている人物だったからなのか。どちらにせよ、あの時のやり取りのおかげで私は助かったらしい。そういう意味では私はアイゼン様に救って頂いたと言えるのかもしれない。
でもそれはあまりにも楽観的すぎる。状況は何一つ変わっていない。魔族であるソリテールは変わらず目の前にいる。割って入って下さったことで、今は見逃されているが、いつまたその矛先が向けられるか分からない。だというのに
「どうやら間に合ったようですな。フェルン様ですね。まさかこんな可愛らしい伝言役をよこすとは。申し訳ない。リリーにも困ったものですな」
優しく微笑むシュトロ様を前にして、私は安心してしまった。もう大丈夫だと。まるでハイター様が助けに来てくださったかのように。
「リリー……確か貴方の妻だったかしら」
「ええ。申し訳ありませんソリテール様。助かりました。客人である貴方にこんなことを。あとは私が引き継ぎましょう。何せフェルン様はアウラ様のお客人でもあります。何かあると大変ですからな」
そう言いながら、自然にシュトロ様は私の前にやってくる。まるで私を庇うかのように。対してソリテールはそれを見つめているだけ。いや、観察しているのか。顎に手を当てながら、何かを思案するような仕草を見せている。
何も知らなければ、何の変哲もない会話。でも、そうではない。今、この二人の間では目に見えないやり取りがなされている。会話という名の交渉が。本来魔族相手には成立しえないもの。魔力の多寡。弱肉強食という摂理だけが真理の猛獣。それを前にして魔力も、戦う力も持たない一人の年老いた人間が立ち向かっている。言葉という武器を手にしながら。本来なら人間を騙すはずの魔族を騙すために。
そう、これが言葉の本当の使い方。理不尽な暴力に屈しないための、人間の知恵。
「────そうね。その方が良さそう。私ばかり仲良くしてたら、アウラに嫉妬されそうだもの」
それを前に魔族は退くことを選択する。自らの保身か、それとも気紛れか。何にせよ、シュトロ様はこの場ではソリテールという魔族に勝利したのだ。
「でしょうな。ではどうです? ソリテール様もご一緒されませんか。アウラ様もお喜びになるかと」
「素敵ね。でも遠慮しておくわ。せっかくの久しぶりの再会の邪魔はしたくないわ」
それをお互い理解しているだろうに、シュトロ様はそんな嫌味とも取れる言葉を告げるも、ソリテールは全くそれに気づいていない。本当に自分が誘われていると思っているのだろう。致命的な齟齬。魔族には悪意がない。理解できない。それを目の当たりにする。人間と魔族の間にある超えられない壁を。シュトロ様もそれが分かっているからこそ、それを告げたのだろう。もしかしたら、私にそれを見せたかったのかもしれない。
「じゃあ私はここで失礼するわ。たくさんお話を聞かせてくれてありがとう。また機会があればお話ししてくれると嬉しいわ、可愛いお弟子さん」
シュトロ様との会話ですら、この魔族にとっては研究対象。好奇心を満たすものでしかないのだろう。私を陥れようとしたことですら、ただの暇つぶしでそこまで執着していたわけでもなかったのか。まるで再び散歩を始めるような気軽さで、後ろ手に去っていく。どこかに優雅に、魅惑的に。振り返りざまに、そんな悪意のない言葉を残しながら。私はただ、それに応えることなく、見つめ続けることしかできない。人間にとって天敵である魔族がその場から去るのを見届けるまで。
「では参りましょうか、フェルン様」
「はい……」
そうシュトロ様が声をかけて下さるまで、私はその場を動けなかった。ようやく気付いた。体が、手が震えている。今まで抑えていた物が一気に噴き出したかのように。そんな私の背中を優しく支えながら、私はようやく目的の場所へとたどり着いたのだった────
「ふむ……ここまで来ればいいでしょう。大丈夫でしたか、フェルン様? 怪我は? 何かされませんでしたか?」
「いえ……大丈夫です。ありがとうございます。でもどうして私を」
大聖堂の中の一室。恐らくはシュトロ様の私室なのだろう。そこに案内され、今私は椅子に腰かけ、紅茶を振舞って頂いている。その香りと温かさに、高ぶっていた気持ちが落ち着いているのを感じる。そんな私の様子を気にかけながら、シュトロ様はどこか心配そうに気遣って下さる。さっきまで飄々としながら魔族とやり合っていた姿からは想像できないようなもの。きっと、こちらがシュトロ様の素顔なのだろう。本当に素敵な方だ。
「先程申した通り、城門の受付からリリーの言伝を伝えに来た者がいると連絡がありましてな。しかもアウラ様が特別に通行許可を出している方となれば迎えにあがるのは当然ですから」
どうやら私の想像通りだったらしい。でも本当に助かった。もしシュトロ様が迎えに来て下さらなければどうなっていたか。私はここに辿り着くことができなかったに違いない。
「それに私もフェルン様のことは存じていたのです。ハイター様の自慢の娘だと。ぜひお会いしたいと思っていたのです。これでも昔、ハイター様にお世話になっていまして。そのおかげでここフリージアでも司祭の真似事をしているわけです」
さらに私も知らない理由をシュトロ様は明かして下さる。なるほど。シュトロ様は私のこともご存知だったらしい。私が会ったことがなくとも、伝聞でシュトロ様のことを知っていたように。どころかハイター様とも懇意だったらしい。私が読んだ日記の範囲ではそこまでハイター様との係わりはなかったようだったが、あの後に何かあったのだろう。話しぶりからするに、ハイター様に師事していたかのよう。ようやく納得がいった。
「そうだったんですね。ようやく分かりました。さっき、シュトロ様がまるでハイター様のように見えたので」
「はっはっはっ、それは光栄ですな。ですが私などハイター様とは比べ物になりません」
あの時、シュトロ様にハイター様の面影が見えた理由が。そういう意味ではこの方はハイター様のお弟子にあたるのかもしれない。それを真似るわけでもなく、自然にその仕草が移ってしまっている。懐かしさを覚える、その笑い方も。あの方も、色々な物を、たくさんの方に残されているのだ。私やフリーレン様のように。それがこんなにも嬉しい。
「しかし本当に驚きました。まさかソリテール様と一緒におられるとは。フェルン様、あの方は」
「はい。大魔族の方ですね。それも、アウラ様に匹敵するような」
「分かっておいでだったのですね。なら話が早い。ここフリージアでは魔族は人間を害せませんが、あの方だけは例外です。例外……といえばあの子に怒られそうですが、ともかくあの方には関わってはいけません。先程見逃してくれたのは、あの時点ではその方がソリテール様には都合が良かっただけ。次はどうなるか私でも分かりません。アウラ様でも御し切れない相手なので」
「はい。本当にありがとうございました、シュトロ様」
一度咳ばらいをしながら、シュトロ様はそう改めて私に忠告して下さる。あの魔族、大魔族であるソリテールの危険性を。あの魔族はここフリージアでも異端だったらしい。それにいきなり狙われてしまったのは運が悪かっただけではない。私の魔力の偽装。それが一番の理由だったのだろう。フリーレン様ならともかく、私の魔力の制限はまだまだ粗削り。大魔族の目を欺けるような物ではない。その異常性から目をつけられてしまった。あらゆる意味で私は九死に一生を得たのだ。感謝してもしきれない。
「いえいえ。ここはもう安全です。アウラ様の縄張り、ではなく聖域ですから。ソリテール様でも手は出せません。もしそんなことをすれば敵対行為とみなされますから」
「そうですか……」
太鼓判を押すような自信満々の笑みを浮かべておられるシュトロ様。なるほど。魔族には縄張りと言う、獣に近いルールがある。本来ならここフリージアがアウラ様にとっての縄張りなのだろうが、アウラ様とソリテールの間ではここ大聖堂がその境界になるのだろう。ソリテールからしてもアウラ様との敵対は避けたいということか。さっきのシュトロ様とのやり取りも、その辺りを含めた物だったのかもしれない。
「落ち着かれましたか? よければお替わりもありますが」
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
ティーカップを持つ手はもう震えてはいない。ここはもう安全だと分かったからこそ。そういう意味ではここは私にとっては聖域にあたるのだろう。
「そうですか。なら本題に入りましょう。どうやら急ぎの用らしいですからな。フェルン様は何故ここにお一人で? フリーレン様は一緒ではないのですか?」
「何故それを……?」
私が落ち着くのを待ってくださっていたのだろう。シュトロ様はそう私から切り出すべき内容に触れて下さる。だがその内容は私の想像を超えたものだった。ここにはいない、会ったこともないフリーレン様に言及されている。一体何故。
「リリーから手紙でお二人のことを聞いていますから。クヴァールを討伐して下さったと。そういえばお礼がまだでしたね。ありがとうございました。これで村の者も皆安心したはずです」
「いえ、私は何も……」
その理由も至極単純なものだった。そうか。リリー様は私とフリーレン様のことを事前にシュトロ様に伝えて下さっていたらしい。クヴァールの討伐についても。それにお礼を言われて思わず恐縮してしまう。私は防御魔法を展開しただけで、ほとんど何もしていないのだから。でもきっと、シュトロ様やリリー様にとってはそうではないのだろう。あの村の方々にとっては、クヴァールは恐怖の対象だったのだから。
「シュトロ様。実は、アウラ様にお願いしたいことがあって……」
一度息を整えてから、改めて伝えさせていただく。自分がここに来た理由。その経緯を。
「なるほど、そういうことですか……」
「はい。何とかフリーレン様の拘束を解いていただけないか、アウラ様にお願いしたいと……」
拙い部分は多々あっただろうが、それでも大事なことは伝えれたはず。シュトロ様もそれを静かに頷きながら聞いて下さった。道中本当に色々とあったが、ようやくここまで来れた。たった半日足らずのはずなのに。とてもそうは思えない。一刻も早くフリーレン様を。シュタルク様も待っているはず。でも
「ふむ……アウラ様の言う通り、味方でも敵でも厄介な方ですな」
「シュトロ様……?」
そんな逸る私とは裏腹に、シュトロ様は何かを思案し、そんなことを口にされる。私には理解できない、まるで独り言のように。一体何の話なのだろうか。
「いえ、こちらの話です。確かにそれは私の一存でもできないことですな。恐らく私が進言してもアウラ様は命令を取り下げることはないでしょう」
「そうですか……」
しかし、やはり話はそう上手くはいかなかった。半ば、私にも分かっていた。それはシュタルク様が危惧していたこと。拘束命令が本当にフリージアから、アウラ様からの命令であったということ。そうであってほしくないというのは私の願望でしかなかったのだろう。ある意味当然だ。ここフリージアは魔族の国。その大敵であるフリーレン様が来るのであれば捕らえるのは当たり前。アウラ様はこの国の教主であり、国王なのだから。そう意気消沈しかけるも
「ただし、フェルン様なら話は違いますが」
「え?」
どこか穏やか笑みを浮かべながらシュトロ様はそう告げられる。その言葉の意味が理解できない。司祭であるシュトロ様が進言しても無理なのに、どうして私なら違ってくるのか。
「論より証拠。ではアウラ様にお会いしに行きましょうか。本当なら誰も通すなと言われているのですが、事情が事情ですからな」
「は、はい! ありがとうございます!」
でもきっとシュトロ様からすれば見込みがあるのだろう。椅子から立ち上がり、私を先導して下さる。慌ててそれに合わせて立ち上がる。まだ私にもできることがあるのなら。あきらめるのはまだ早い。一縷の望みを。同時にここへやってきたもう一つの目的がもう目の前であることに興奮しながら。
「ああ、それと一つだけお願いが。私が先にアウラ様とお会いするので、その間しばらく隠れておいて頂きたいのです。宜しいですかな?」
「? はい。それは構いませんが……」
「それでは参りましょう」
その目的。アウラ様の謁見において、そうシュトロ様にお願いされる。その意図が計りかねない。どうしてそんなことを。でもこの方が何の意味もないことを仰るとは思えない。何か意味があるのだろうが、何なのか。それを了承するしかない。不思議に思いながらも私はまるで小さい頃のように、懐かしい匂いがする司祭様の後ろに付いて行くのだった────
「アウラ様。シュトロです。急ぎの案件がありまして。宜しいでしょうか?」
どこか厳かな雰囲気を纏いながら、シュトロ様が扉を叩く。知らず私も緊張してしまう。この扉の向こうにアウラ様がいる。その事実に。およそ七年振りだろうか。自分に気づいてもらえるのだろうか。きっとアウラ様は何も変わっておられないのだろう。魔族という長命種が故に。
同時に、違和感があった。それはこの場所。そこは庭園だった。ここにやってくる途中から、窓からそれが見えていた。多くの木々や花に満ちている庭園。きっと城門と同じように、アウラ様の魔法によるものだろう。でも何でそんなところにアウラ様がいるのか。てっきり教会や私室におられると思っていたのに。散歩でもされているのだろうか。
「────入りなさい」
久方ぶりに聞く声。なのに、それがまるで別人のように聞こえた。そう、まるで魔族のように冷徹な、冷たい声。私の記憶とはかけ離れたもの。
そう、私は忘れてしまっていたのだ。いや、知らなかったのだ。
アウラ様が紛れもなく、魔族である、ということを。
「────」
瞬間、息を飲んだ────
動悸がする。眩暈がする。立ち眩みがする。
その圧倒的な、暴力的な魔力の波に晒されて、息ができない。まるでさっきの、ソリテールを前にした時のように。いや、これはそんなものではない。比べ物になんて、ならない。こちらを騙す言葉ではない、直接的な暴力。
今すぐこの場から逃げ出したい。ここにいたら、殺されてしまう。死を覚悟するほどの、殺気の籠った魔力。生まれて初めてそれを感じる。死の魔力が、ここには充満している。その矛先がこちらに向けられている。ただの魔族ではない。大魔族の殺気。それに耐えることができない。
「何の用? つまらない用事ならあんたでも許さないわよ」
不機嫌そうにこちらに振り向き、その視線を向けてくるアウラ様。昔お会いした時と変わらない容姿。なのに、それが全く違って見える。それが怖い。恐ろしい。まるで獣が人間の、アウラ様の皮を被っているみたいに。獲物を前にした獣のような瞳。その視線は私ではなく、シュトロ様に向けられているのに。
「いえ、それが珍しいお客様がいらっしゃいまして。ぜひアウラ様にお会いしたいと」
それを全く感じていないかのようにシュトロ様は振舞っておられる。いや、確かにシュトロ様は魔力を感じ取れないのだろう。それでも、この殺気は違う。生き物であるなら、これに反応しないなんてあり得ない。ならシュトロ様はそれを受けてなお、いつも通りに装っているのだ。常人ではあり得ないこと。このお方もまた、ハイター様のように優れた司祭なのだろう。
「はぁ? あんた、ふざけてるわけ……? ここに部外者を入れるなんて」
そんなシュトロ様を前にして、アウラ様はさらに怒りを見せている。きっとシュトロ様でなければ、殺されてもおかしくないほどの魔力を放ちながら。それを一身に受け、さらに受け流しながらシュトロ様は笑みを浮かべながら私に視線を向ける。それは合図だった。私に出てきて構わないという。でもその一歩が、なかなか出てこない。
ようやく分かった。フリーレン様が私に、魔族を信じるなと仰っていた理由が。私は本当の意味で分かっていなかったのだ。アウラ様が魔族であるという意味を。魔族がいかなる存在か。ハイター様やアイゼン様は知っていたのだ。それを理解した上で、アウラ様を認め、信じていた。かつてヒンメル様がそうだったように。
なら行かなくては。さっきとは違う。目の前にいるのはあの魔族ではない。アウラ様なのだから。それを私は知っている。信じている。だから
そのまま一歩一歩、ゆっくりと進んでいく。今度はシュトロ様の後ろではなく、その前に。まっすぐにアウラ様を見つめる。目を逸らさずに。体の震えは収まっていない。でもそれを隠さずに。それが今の私なのだから。
「? あんた、もしかして……」
そんな私を見た瞬間、魔力が揺らいだ。その瞳が変わった。まるでそう。魔族から人間に変わってしまったかのように。
「アウラ様、恐らくは放っている魔力がきつすぎるのではないですか? 近衛の魔族たちもきつすぎて逃げ出してしまいましたし」
それを見計らっていたかのように、シュトロ様がそんなことを仰られる。思わず私も目を丸くしてしまうようなことを。あまりにもこの状況には似つかわしくない、空気を読まない発言。まるでそう、かつてのハイター様のように。
「…………他人の魔力を異臭みたいに言うんじゃないわよ。殺すわよ」
「これは失敬。いかんせん私には魔力が感知できませんので。少なくとも今のままではせっかくのお客様に嫌われてしまうかと」
「……謀ったわね、シュトロ」
「何のことですかな?」
「ふん……似合わない真似事するんじゃないわよ」
それが合図になったのか。それまでの魔力が嘘だったかのように収まり、変わっていく。どこか懐かしさを感じる魔力へと。私が知っている、アウラ様の魔力へ。何よりも、そのやり取りが懐かしかった。短かった一月だけの日々。淡々としながらも、どこかお母さんみたいなアウラ様。私を妹のように可愛がってくれたリーニエ様。そんな二人をからかいながら、笑っていたハイター様。そんな四人での思い出。
「あの……」
まるでその頃に戻ってしまったかのように、人見知りな私はどう声をかけていいのか、話しかけたらいいのか分からなくなってしまう。それにどこか呆れながら
「────久しぶりね、フェルン。大きくなったわね。七年振りかしら」
全く変わらないアウラ様がそこにはいた。魔族でありながら、
「────はい。お久しぶりです。アウラ様」
それが私にとっては本当に久しぶりの、待ち詫びた恩人との再会だった────