ヒンメルはもういないじゃない【完結】   作:HAJI

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第百十四話 「邪魔」

「────ようやく捕まえたわよ。フリーレン」

 

 

万感の思いでそう告げる。私にとっての勝利宣言。本当に長かった。これまでも。今までも。この時のために、鍛錬を、準備をしてきた。それでもまさに綱渡りだった。それまでの攻防を思い出し、今更冷や汗が、震えが出てくる。吹き出してくる疲労感。生きた心地がしなかった。

 

私からすればあのまま狙われる方が危なかった。服従の魔法(アゼリューゼ)に拘ってくれたからこそ。もっともそうなるように仕向けていたのだが。こいつなら、葬送ならそれを利用してくると確信していたからこそ。魔族を知り尽くしているこいつなら。ある意味私はこいつを信頼していたことになるのか。考えただけで怖気が走る。

 

 

(特権、か。人間の魔法使いたちが血眼になるわけね)

 

 

生きた魔導書と呼ばれるゼーリエから譲渡される特権。望む魔法。私はそれによってエルフを捕まえる魔法を手に入れていた。実際に試すことはできなかったが、その術式や魔力消費からそれが伝説級であること、つまり本物であることは分かっていた。しかしここまでとは。習得するには何十年、何百年かかるもの。それは人間たちにとっては計り知れない価値があるのだろう。私も例外ではない。それが

 

 

「いい気味ね。まるで土下座しているみたい」

 

 

地に伏して。身動きが取れなくなっているフリーレン。まるで土下座をしているかのように惨めで、滑稽な姿。動かせるのはその眼だけ。それを見下ろす自分。知らずそれに興奮する自分がいる。獲物を捕らえた高揚感、嗜虐心。魔族の本能によるもの。だが、それはすぐに違うものに変わっていった。

 

これが見たかった。いや、見せたかった。詫びさせたかった。だがもう遅い。遅すぎた。長すぎたのだ。あいつの待った長さに比べれば、私やこいつのそれは瞬きほどでしかないのだろう。それでも、その百分の一でもこいつに思い知らせてやらなければ。

 

 

「……本当に服従の魔法(アゼリューゼ)を使ってなかったのか」

 

 

どうやら目だけではなく、口も動かせたらしい。上目遣いで、淡々と確認するようにフリーレンはそう尋ねてくる。

 

 

「あら? ようやく気付いたのね。見ての通り、これは偽物の天秤よ。なのにこれに振り回されて、本当に愚かね。どう? 今まで散々魔族にしてきたことをやり返された気分は?」

「……最悪だね。反吐が出る」

 

 

それに空の天秤をかざすことで答えてやる。そう、これはただの飾り。だというのに私がこれを見せるたびにこいつは一挙一動していた。まるで操り人形のように。本当にいい気味だ。ようやく気付いた時には手遅れだったのだろう。今まで魔力の偽装で騙されてきた魔族のように。その屈辱と無念を思い知ればいい。そんな人間らしい心がこいつにあればだが。どうやらそこまでこいつも化け物ではなかったらしい。この状態で悪態をつけるほどにはまだ余裕があるらしい。

 

 

「随分余裕じゃない。いつ殺されてもおかしくないのに。命乞いでもしたらどう?」 

「そんなことしても意味ないでしょ。好きにすればいい」

「ふぅん……随分あきらめがいいのね。それともまだ何か企んでるのかしら?」

「…………」

 

 

本来なら命乞いをするであろう場面にも関わらず、こいつはそんな素振りもなく、ただ憮然としたまま。まるで観念しているかのように大人しい。こいつのことだ。また口八丁で、私を騙してこの場を乗り切ろうと悪あがきするものだとばかり思っていたのに。それともそれも演技なのだろうか。何か企んでいるのか。疑心暗鬼にならざるを得ない。私の方が圧倒的に優勢だというのに。

 

しかし、そんな私の警戒は全くの無駄だったのかもしれない。それは知っていたから。目の前の光景が何なのか。それは

 

 

「都合が悪くなるとだんまり? 子供と変わらないわね。千年生きてもこれじゃあゼーリエの奴も呆れるわけだわ」

 

 

嘘がつけずに黙り込んでしまっているリーニエのよう。都合が悪くなると黙り込み、ふてくされてしまっている子供そのものだったのだから。千年生きているにもかかわらず。あの時のゼーリエの気持ちが分かった気がする。理解したくもないことだったが。

 

 

「……あいつを知ってるのか」

「ええ。この下らない魔法もあの老害から押し付けられた物よ。何でもあんたが受け取らなかった分らしいわ。良い師匠を持ったわね」

「私はあいつの弟子じゃないよ。相変わらず子供みたいな人だ」

「鏡を見てみたらどう? あいつも同じことを言うでしょうね」

 

 

ちょうどいい機会なので掌を見せながらそのまま種明かしをする。この魔法があいつからもたらされた物であることを。こいつからすれば裏切りにも思える事実だろう。魔力の偽装を明かした勇者一行といい、あの老害といい、どいつもこいつも何を考えているのか。もしかしたら気づいていないだけで、こいつは周りに嫌われているのではないか。

 

もっともフリーレンからすれば驚くことでもないのだろう。むしろ納得した風にそう愚痴っている。本当にふざけた奴らだ。エルフというのはこんな奴らばかりなのか。無駄に生きているだけで、中身は成長しないらしい。

 

 

「いつまでこんな話続けるの? さっさと済ませたらどう?」

 

 

そんな会話を、魔族であるわたしと話をすることを無駄だと感じたのか。フリーレンはつまらなげにそう告げてくる。俄かには信じられないようなことを。こいつは本当に何を考えているのか。それが何を意味するか理解できていないとでもいうのか。それが

 

 

「あんた、自分の立場が分かってるの?」

「当たり前でしょ。私はお前に負けた。それだけだ」

 

 

自らの死を意味することを。その命を、生殺与奪を私が握っていることを。魔族ならみっともなく命乞いをするべきところ。なのにこいつはそんな素振りを全く見せない。

 

何よりも、自らの敗北を認めた。その事実の方が私にとっては驚きだった。ほとんど面識がない私でも理解できていた。こいつが負けず嫌いであることを。逃げる、隠れる、不意打ちする。およそ魔法使いには似つかわしくない卑怯者だが、こいつはあきらめるということとは無縁だった。その執念は恐怖を感じるほど。だというのに、あきらめたというのか。

 

 

「…………」

 

 

それを前にして、今度は私が黙り込んでしまう。そう、私もこいつのことは言えない。勝つことばかり考えていて、その先を考えていなかったのだから。

 

断頭台の、魔族の私ならどうするか。服従させ、不死の軍勢に加えるだろうか。いや、それはしないだろう。そもそも従える気もない。何も迷う必要はない。負けた者がどうなるかなんて考えるまでもない。弱肉強食。自然の摂理。今まで私が支配した相手に何をしてきたかなんて。だからこそ、こいつは頭を垂れている。その断頭台を待っているかのように。なのに、私にはそれができなかった。その手に剣が、斧がないからではない。あるのは

 

 

『君に、フリーレンと友達になってほしいんだ』

 

『────私はフリーレン様の弟子ですから』

 

 

脳裏に蘇る、過去(ヒンメル)未来(フェルン)の言葉。断頭台ではない、天秤としての私の審判。

 

 

「……いいわ。猶予をあげる。答えなさい。あんたは何をしにここに来たわけ?」

 

 

一度目を閉じた後、まるでフリージアの教主のようにそう問い質す。こいつからすれば悪趣味なごっこ遊び。だがそれを断る権利はこいつにはない。私は勝者でこいつは敗者。覆しようのない事実。

 

 

「私がそんなこと答えると思う?」

 

 

こいつがそう言うのなんて想定内だ。本当なら服従の魔法(アゼリューゼ)で真実を吐かせるのだが、あいにく今はそれができない。なら真似事でなんとかしてみせよう。伊達に八十年近く、神官ごっこをしていたわけではない。エルフの千歳児なんて、赤子の手をひねるようなものだ。

 

 

「思わないわ。でも魔族との会話なんて独り言みたいなものなんでしょ? 何を気にする必要があるのよ」

 

 

なのでそう逃げ道を用意してやる。誘導してやる。こいつの価値観に合わせて。奇しくも私はそれを知っている。他ならぬ、こいつと同じエルフが、師がそう言っていたのだから。ならこいつもそう考えているのだろう。それを利用し、模倣させてもらう。

 

 

「……そうだね。本当に馬鹿みたいだ」

 

 

効果覿面だったのか。それとも己の愚かさにようやく気付いたのか。俯いたまま、フリーレンはそう零している。もしかしたら私にその気がないことを悟っただけなのかもしれないが。どちらにせよ構わない。

 

 

「簡単だよ。フェルンがお前に会いたがってたからついてきただけだ」

 

 

被告に等しい立場の癖に、全く悪びれることなくフリーレンはそう証言する。簡潔に、無駄なく。それは嘘ではないのだろう。天秤を扱えない今の私にもそれは分かる。だからこそ

 

 

「嘘ね。いいえ、嘘はついてないけど、本当のことも言っていない。そうでしょう?」

「何でお前にそんなことが分かる?」

 

 

さらなる真実を暴く。こいつは嘘つきだ。魔族か、それ以上に。こいつは嘘をつかずに嘘をついている。私にはそれが分かる。何故なら

 

 

「ヒンメルが言ってたのよ。あんたとゼーリエは似ているってね。なら正直にあんたが私に答えるわけないって思った。それだけよ」

 

 

それはあの老害、ゼーリエの嘘と全く同じだったから。ヒンメルがかつて言っていたことでもある。師弟は似るものなのだと。まさかここまで同じ行動をするとは私も思っていなかったが。

 

 

「……ヒンメルめ」

 

 

その反応もまた同じ。似た者同士だと言われてしまったことに納得がいかないのだろう。こいつもゼーリエのことが嫌いなのか。似た者同士、お似合いかもしれない。

 

 

「ハイターに頼まれたんだよ。お前に日記を届けてほしいって」

 

 

観念したように、フリーレンは白状する。嘘偽りない真実を。だがその内容は、私にとっても予想できない、理解できないものだった。

 

 

「ハイターに……? 日記って何のことよ?」

「ヒンメルの日記のことだよ。知らないの?」

 

 

まさかここでハイターの名前が出てくるなんて思ってもいなかった。あいつに何か頼まれたということか。日記とは何のことか。本当に言葉足らずの説明しかできない奴だ。子供同然。後からそれを付け加えてくる。ハイターがこいつが基本引き籠もりだと言っていた理由が分かる。

 

 

「……ああ、そういえばそんな物もあったわね。いつの間にか見なくなってたけど。燃やし損ねてたわ」

 

 

ようやく思い出す。日記とはヒンメルの奴が書いていた物のことか。自伝と日記の違いも理解できていなかったはず。そういえば毎日書いてはいたが、物自体はいつの間にか見なくなっていた。燃やしてやろうと探していたのに。

 

 

「だからヒンメルはハイターの所に隠したんだろうね。書斎にも隠す場所なんてなかったし……」

 

 

どうやらその日記たちはハイターの所。恐らくその別荘のことだろう。そこに隠されていたらしい。そういえばヒンメルはちょくちょくそこに行っていた。それが理由だったのか。まるでへそくりを隠すかのように。本当に癪な奴だ。こいつが言うように、書斎は本に溢れていて、隠す場所もなかったに違いない。だが、ふと気づく。それは違和感だった。自然すぎて、すぐには気づけなかった違和感。それは

 

 

「は? 何であんた書斎のこと知ってるのよ?」

「? 入ったからに決まってるでしょ?」

 

 

何でこいつが私の家の書斎のことを知っているのか。それに当たり前のように入ったことがあるからだと答えてくる。何を言っているのか分からない。こいつは頭がおかしいのか。

 

 

「あんた……何勝手に人の家に入ってるのよ」

 

 

何を勝手に私の家に入っているのか。不法侵入でしかない。しかもそれに全く悪びれていない。あり得ない。本当にこいつは人類なのか。

 

 

「人聞きが悪いね。ちゃんとリリーに許可はもらったよ」

「あの子は一体何を……!? 大体許可してたのはフェルンよ。あんたじゃないわ!」

「弟子の権利は師匠の権利だからね。でも実用的な魔導書ばかりなのは面白みがなかったかな。趣味が悪いね」

 

 

呆れて物も言えないとはこのことだろう。そういえばフェルンも魔導書をもらったお礼を言ってきていた。それにこいつも同行していても不思議ではないが、それでもよりによってこいつに許可を出すなんて。リリーは一体何を考えているのか。そもそもこいつこそ何を考えているのか。私とヒンメルが一緒に暮らしていた家に押し入るなんて。こいつからすれば屈辱でしかないはず。しかも他人の魔導書の趣味にまで口出ししてくる始末。

 

 

「余計なお世話よ。あの子に譲る本なんだからあんたには関係ないわ」

 

 

そう吐き捨てる。エルフを捕まえる魔法ではなく、縛り上げる魔法にするべきだったか。それでもそこに込める魔力を強めてしまう。縄でもあれば直接締め上げてやりたいほど。量刑には逆らうが、絞首刑にしてやってもいい。だがそれは

 

 

「…………ソウダネ」

 

 

これ以上になく、分かり易い。子供でも分かるような嘘によって冗談ではなくなってしまう。

 

 

「あんた、まさか……」

「…………」

 

 

被告は、囚人は黙秘を貫いている。だが全くの無意味だった。これ以上にない不細工な、変顔を晒している。もはや服従の天秤を使う必要すらない。間違いない。

 

 

「……ただの盗人じゃない」

 

 

こいつはただの盗人。魔導書泥棒でしかないのだから。

 

 

「違うよ。これは純粋な魔法使いとしての探求心だ。それを抑えることなんてできない。魔族には分からないかな。それにお前も私の特権をもらってるんだからお相子だよ」

「────」

 

 

無様に地に伏したまま、そんなふざけたことをのたまってくる伝説の魔法使い。一気に肩の力抜けていくのを感じる。呆然と立ち尽くすしかない。まるで服従させられてしまったかのように。

 

思い出す。その武勇伝を。醜聞を。

 

曰く、昼まで寝坊するのが当たり前。世話をしないといけない。

曰く、老人扱いすると三日三晩泣き喚く。

曰く、何度言っても魔導書欲しさにミミックに引っかかる。

 

挙げればきりがない。フェルンたちが言っていたことが本当なのだと実感する。嘘であってほしい。私はこんな奴を倒すために全てを捨てたというのか。私の八十年を返して欲しい。

 

 

「…………もういいわ。それで? そのヒンメルの日記が何だっていうのよ」

「意外だね。欲しくないの? ヒンメルの遺書なのに」

 

 

もはや返す言葉も、判決を言い渡す気も起きない。とっとと話を進めることにする。どうやらその日記を渡すためにこいつは私に会いに来たらしい。馬鹿なのか。そんな物、使い魔なり何なりで送ってくればいいだろうに。いや、こいつからすれば私に喧嘩を売りに来るのが目的だったのかもしれないが。

 

 

「あんたね……そんな物、読まなくても知ってるんだからいらないわ。そもそもあんた何も持ってないじゃない」

「今はシュタルクに預けてるんだよ。二冊だけね。残りは重かったから書斎に置いてきたんだ」

 

 

こいつは魔法使いではなく盗賊(シーフ)なのではないか。盗人猛々しいとはまさにこのことだろう。今は持っておらず、しかもそのほとんどは勝手に私の書斎に置いてきたらしい。一体どれだけの罪を重ねているのか。どうやら私がその日記を欲しがっているとこいつは思っているらしい。そんな物に興味はない。一緒に暮らしている私にはその内容も分かっている。そもそも燃やそうと思っていた物なのだから。

 

 

「でもいらないなら、一冊もらってもいい?」

「好きにすればいいわ」

 

 

自分が殺されないと分かった途端この態度。そもそも私の魔導書を盗んでおいてまだ足りないというのか。好きにすればいい。書いている内容によってはこいつ自身が憤死してしまいそうだが、私の知ったことではない。

 

 

「じゃあそうするかな。ちなみに一つはお前が服従させられてから、リーニエと暮らし始めるまでの最初の一冊。もう一つは」

 

 

話しぶりからするに日記は何十冊もあるのだろう。その中の一冊がなくなったところで何の支障もない。だというのに

 

 

「お前が解放されてからの最後の一冊なんだけど……」

「っ!?」

 

 

瞬間、思わず体が反応してしまうのを抑えることができなかった。その内容に、事実に。そう、私は思い込んでしまっていたのだ。日記が、私と一緒に暮らしている間だけのものだと。私は思い至っていなかったのだ。それが、私が解放された後にも続いていたのだと。それは、私の知らないヒンメルの想いが綴られている一冊なのだと。

 

 

「どっちがいいと思う?」

 

 

見ればどこか不敵な、意地の悪い笑みを浮かべているフリーレンの姿があった。間違いない。こいつ、初めからこうなることが分かっていたのだ。分かっていて、隠していた。嘘をついていた。信じられない。こいつは魔族すら超えている。

 

 

「あんた……本当に人の心がないわけ?」

「私はエルフだよ。人の心を知ろうとしている、ね」

 

 

人の心を知らないエルフなのだと。それに当然のようにそう返してくる。魔族の私が、人の心を説かなければならないなんて、世も末だろう。

 

 

「でも二冊持って来てるのは内緒にしてたんだった。フェルンにバレたら取り上げられちゃうかもね。フェルン、怒ると怖いから」

 

 

そんな私の反応に満足したのか。独り言のように、フリーレンはそう続ける。それが何を言いたいかなど聞くまでもない。普通の魔族なら通じないやり取り。それをあえてしてくるなんて。負けた腹いせなのだろう。いや、勝っても同じことをする気だったに違いない。薄情者であり、卑怯者のエルフ。勝ったのは私なのに、まるで負けてしまった気分。間違いなく、こいつは私にとっては天敵だったのだろう。

 

 

「……ならさっさとフェルンを迎えに行きなさい。これ以上薄情者になりたくないならね、早くしないとまた五十年経つわよ」

「フェルンはここで暮らすんじゃなかったの?」

「馬鹿ね。私は魔族よ。そんなの嘘に決まってるじゃない」

「そうだったね。また騙されるところだった」

 

 

白々しいことを。最初から分かっていただろうに。本当に食えない奴だ。癪に障る。もう用事は済んだのなら、とっとと出て行けばいい。今すぐにでも国外追放にしてやるところだ。

 

 

「見逃していいの? 今度は同じ手は通じないよ」

「こっちの台詞よ。次は総力をあげて潰してあげるわ」

「そう。じゃあ闇討ちすることにするかな」

 

 

売り言葉に買い言葉。互いに全く懲りていない。でも、不思議と嫌な気分ではなかった。疲労感は変わらずある。なのに、体が軽くなった気がした。魔力をほとんど消費したせいか、それとも久方ぶりに全力で魔法戦をしたせいで、魔族の欲求が満たされたからか。何か重かった物が、軽くなった気がした。そんならしくない感慨にふけりかけるも

 

 

 

「────あら、もうお話は終わり? 私も一緒にお話しさせてもらえないかしら?」

 

 

 

それは聞き慣れた、いつまで経っても聞き慣れない邪魔者(ソリテール)の声によってかき消されてしまった────

 

 

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