ヒンメルはもういないじゃない【完結】   作:HAJI

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第百十五話 「ソリテール」

「ソリテール……あんた、何しに来たわけ?」

 

 

横目で流し見ながらも、いつでも動けるように意識を切り替える。まるで新たな敵が現れてしまったかのような感覚。だがそれは間違いではない。敵でも味方でも厄介な邪魔者。悪意のない混乱をもたらす存在。それが目の前にいる無名の大魔族、ソリテールなのだから。

 

 

(動いてくるとは思ってたけど……予想よりも早かったわね)

 

 

いつもと変わらぬ、薄気味悪い笑みを浮かべているソリテールを見ながらも思考する。こいつがフリーレンを排除するために暗躍していたのは分かっていた。リュグナーに入れ知恵をしたのもその一環だろう。だがこんなにも早く、自ら動いてくるとは予想していなかった。侮っていたわけではない。いや、私は買い被ってしまっていたのだ。知らずこいつを。魔族がいかに愚かな存在か。

 

 

「変なことを聞くのね。私は貴方に加勢しに来たの。忘れてしまったのかしら?」

「加勢ね……よく言うわ。今の今まで隠れて盗み見していた癖に」

「貴方の邪魔をしたくなかったの。言ったはずよ。貴方が負けるなんて微塵も思っていないって」

「……いいわ。そういうことにしておいてあげる」

 

 

子供でも騙せそうにない嘘をぺらぺらと、本当に白々しい奴だ。加勢する気なんて毛頭なかったくせに。私が服従させられた振りをしていても尚、静観していたのだから。こいつにとっては観察か。私とフリーレンが争い、互いに消耗し切るまで待っていたのだろう。私が勝てばもちろん、負けてもその隙を突ければそれでいい。いかにもこいつらしい心配性と臆病さだ。結果的にはそれで助かったのだが。本当に嘘が服を着て歩いているような奴だ。魔族でもこいつほどの嘘つきはいないだろう。

 

 

「でも本当に素晴らしいわ、アウラ。まさかあの葬送のフリーレンを倒してしまうなんて。魔族の誰にも成し遂げられなかった偉業ね。第二の魔王と呼ばれるだけはあるわ。これからは魔王様って呼んだ方がいいかしら?」

「止めなさい。怖気が走るわ」

 

 

私に対する称賛なのだろうが、全く嬉しくない。どころか迷惑でしかない。まだお母さん呼ばわりの方がマシだろう。魔王なんて称号、今更欲しくも何ともない。それは勇者に討伐される者を指す言葉だ。呪いでしかない。

 

 

「…………」

 

 

そんな私たちのやり取りを無言のまま。それでも冷たい目で観察しているフリーレン。やはりこいつは葬送なのだろう。さっきまでの愚かな姿とは似ても似つかない。まるで敵を前にした時のリーニエのように切り替わってしまっている。こいつの中ではきっと今の状況の分析が行われているに違いない。

 

 

(拘束を解くべき……? いえ、それは悪手ね。もう遅すぎる)

 

 

一瞬、エルフを捕まえる魔法を解除すべきか悩むがすぐに止める。それはこの場においては悪手でしかない。ソリテールは私がこいつを捕らえているからこそこの場に姿を見せた。もしそれを解くようなことをすれば、私がこいつと共謀しているように見えるだろう。そうなれば実力行使は避けられない。今のフリーレンではこいつに勝ち目は全くない。それは私も同じ。互いに魔力を消耗し、満身創痍。万全の状態であっても勝てるか分からないというのに、この状態では手も足も出ないだろう。なら今の私の最善手は一つ。ある意味魔族らしい答えだけ。

 

 

「私が教えた人類の魔法も使いこなしていたわね。私から学んだのもこの時のためだったのね。でもその魔法は知らなかったわ。見たこともない。どんな魔法なの? 拘束魔法のようだけど、術式はかなり古いわね。いつの時代かしら。どこで手に入れたの? それとも誰かに教わったとか」

「相変わらずお喋りな奴ね……それで? 結局何しに来たのよ。見ての通り、あんたの出る幕はもうないわよ」

 

 

聞いてもいないことを喋り続けるお喋り好きの魔族。だがこの場においてはそれが幸いしているのだろう。そう、言葉こそが今の私に残されている唯一の武器。それで欺くことこそが今の最善手。違うのは騙すのが人類ではなく、同族であるということだけ。

 

 

「そうね。だからこれは私の研究の一環よ。私の研究テーマが何かは知ってるでしょう? あの葬送のフリーレンとお話しできる機会なんてもう二度とないもの」

 

 

胸の前で手を合わせながら楽しそうにソリテールは自らの目的を明かす。ある意味こいつらしい行動原理。趣味が悪い研究のため。こいつからすればフリーレンは格好の実験動物、観察対象なのだろう。だがこいつは気づいていない。それがいかに愚かなことか。普段のこいつならしないであろう行動。この状況にこいつもあてられてしまっているのだろうか。

 

 

「初めまして、フリーレン。まずは自己紹介を。私は大魔族のソリテール。アウラの友達よ」

 

 

まるで人間のように、人間そのままにそうソリテールは挨拶をしている。その擬態の精度は魔族ではあり得ないレベルだ。私もこの域には到達できていないかもしれない。人間を観察し、犠牲にしてきたからこそ身に着けられる物。同時に今まで制限していたであろう魔力を解放している。脅しも兼ねているのだろう。その絶大な魔力がフリーレンどころか私にも襲い掛かってくる。それはフリーレンの魔力に匹敵する物。魔族の中でもこいつの魔力量は際立っている。だからこそあらゆる意味で私はこいつと相性が最悪だった。そんな自らにとって死の宣告にも等しい言葉を告げられながらも

 

 

「そう。聞いていないしどうでもいい」

 

 

フリーレンは全く動じることなく、どころかさらに冷たい視線でそれに応えている。本当に人類なのかどうか分からなくなるほどの冷徹さ。人の声真似をする猛獣を見るかのような対応。これが本来の魔族に対するこいつの態度なのだろう。

 

 

「少しだけお話ししましょう? 私は会話から人類の習慣や文化、魔法技術を探求するのが趣味なの。研究みたいなものね。ぜひ君の話も聞きたいわ」

「お前たち魔族と話すことなんて何もないよ」

「あらそう? さっきまでアウラと楽しくお話ししていたみたいだけれど」

「…………」

 

 

それにめげることなく、気づくことなくいつものように話を続けるソリテール。それに対してフリーレンは変わらぬ態度を貫いていたものの、それを指摘されて僅かに目を細めている。まるで今更そのことに気づいたかのように。やはりこいつは愚かなのだろう。

 

 

「葬送のフリーレンも騙せるなんて、やっぱり貴方は素敵ね、アウラ。魔族の中でも異端中の異端ね」

「……あんたに言われたくないわ」

 

 

それをこいつは私がフリーレンを騙しているからだと判断したらしい。なるほど。そういう風に捉えることもできるのか。確かに私はこいつを騙したが、そんな意味ではない。ソリテールからすれば悪意のない称賛なのだろうが、私にとっては嫌味でしかない。こいつに異端呼ばわりされる謂れはない。

 

 

「そういえばフリージアで君のお弟子さんに会ったわよ。素直でいい娘ね。可愛い髪飾りをしてたわ」

「……フェルンに会ったのか」

「ええ。たくさんお話ししてくれたわ。やっぱり師弟なのね。君と同じように魔力を制限していた。でもまだ大魔族には通用しないかな。粗が目立ちすぎる。逆に目をつけられてしまうわ。私みたいに」

「お前……」

 

 

流石と言うべきなのだろう。今度は違う方向からソリテールはフリーレンを刺激している。人間に効果的な、身内の話題を出すことで。この切り替えが、柔軟さがこいつの恐ろしさだ。人間とは全く違う精神構造のはずの魔族が、ここまで人間のように振舞うことができるのだから。私とは真逆の過程で同じ結論に至っている。その典型的な手口によってフリーレンは思わず反応を示してしまっている。らしくない。満身創痍で思考が鈍っているのか、それともフェルンを引き合いに出されてしまったからか。

 

そしてやはりこいつにもフリーレンは魔力の偽装を見破られてしまっている。この場で見破ったのではなく、これまでの状況証拠による推測だろうが。やはりこいつは厄介なことこの上ない。

 

 

「簡単に騙されてるんじゃないわよ。フェルンは私が預かってるわ。ここがフリージアだっていうのに、好き勝手してくれたみたいね」

「ごめんなさい。でもちゃんとルールは守ってるわよ。ここでは食事もしてないし。お話ししてるだけだもの」

 

 

そう横槍を入れる。同時に釘を刺す。それはここフリージアでの振る舞いについて。フェルンの件だけではなく、リュグナーへの奸計も暗に含めたもの。それが通じたのかは分からないが、悪びれることなくソリテールはそう言い訳している。本当に食えない奴だ。

 

 

「話が逸れたわね。私はね、君の今の心境が知りたいの。魔族に騙されてしまった気持ちは? 命乞いはしないの? そういえば、これも聞きたかったの。魔王様は君たちに何て命乞いしたの? 最期の言葉が知りたいわ。君なら知ってるでしょう?」

 

 

一度改めてフリーレンを見据えた後、まるで堰を切ったかのようにソリテールは質問攻めを始めてしまう。まるで待ちきれなかったおもちゃを前にした子供のように。きっと自分でも整理し切れていないのだろう。この探求心、欲求は一体どこからくるのか。魔族が生存本能や食欲ではなく、魔法の探求以外にもこれほどの興味を示すなど。その答え、仮説を私も一つ持っているが、ここで明かすことでもない。

 

 

「ごめんなさい。こんなに一遍に聞いても答えられないわね。ゆっくり一つずつでいいから……」

「お前に話す事なんて何もないよ。それにこれは会話でも何でもない。お前はただ反応を見ているだけだ」

 

 

子供をあやすような優しい、甘い蜜のような言葉にフリーレンは拒絶を示す。流石と言うべきか。この短時間でソリテールの本質を見抜いたらしい。そう、こいつのそれは会話、声真似ですらない。ただ檻の中の動物に刺激を与えてその反応を見ているだけ。研究者もどきの一人遊びなのだと。

 

 

「そう、残念ね。じゃあ一つだけ。勇者ヒンメルはどんな最期の言葉を残したのかしら? アウラにも聞いたけど、死に目に会えなかったみたいで知らなかったの。君なら知ってるでしょう? 同じ勇者一行だもの」

「────」

 

 

だがそれによって、フリーレンは言葉を失う。いや、言葉を理解してしまう。言葉であるが故に。その目が見開かれる。もし拘束されていなければ、きっと魔法を放っていたに違いない。その言葉を向けられていない私ですら、それに反応してしまいかねなかったのだから。悪意のない魔族だからこその、人類にとって許しがたい言葉。

 

 

「殺意が籠った素敵な目ね。それで、今の心境は?」

 

 

それすらも、この化け物にとっては興味の対象でしかない。

 

 

「確信したよ。やっぱりお前たち魔族は化け物だ。アウラとは違う」

 

 

それに対して葬送もまた答える。自らにとって目の前の存在は、魔族は駆逐すべき化け物だと。同時に私に対する賛辞であり侮辱を。

 

 

「見解の相違ね。どれだけ人間に近づこうと、どれだけ異端であろうと。皆、形は違えど決して逃れられない魔族としての性質を持っている。私たちは魔族なのよ」

 

 

無名の魔族もまたそれに反論する。魔族が何たるものか。その愚かさを。姿形がいくら似ていようと、その在り方がいくら歪であろうと。魔族は魔族。決して人間になどなれない。偽物が本物にはなれないように。そんな当たり前の真実。

 

 

「でもお話に付き合ってくれたわね。ありがとう。とても参考になったわ。それじゃあ──」

 

 

自らが望んだ反応でなくとも全く構わなかったのだろう。ただ反応を示してくれただけで。それに満足したようにソリテールは終わりを告げる。流れるように、その手を挙げ、魔力の流れが集まりかけた瞬間

 

 

「────待ちなさい。一体何のつもり?」

 

 

寸でのところでそれを手を掴みながら制止する。危なかった。あまりにも自然すぎて、私ですら気づくのに遅れてしまうほど。それほどまでに、今こいつがしようとしたことは日常であり、当たり前の行動、習慣なのだろう。空恐ろしさすら感じてしまう。

 

 

「んー? 何って決まっているわ。私がお話をした人間を必ず殺しているのは知ってるでしょう?」

「そんなことはどうでもいいわ。こいつは私の獲物よ。横取りする気?」

 

 

不思議そうにこちらを見つめているソリテール。私の行動の方が理解できないとでも言うような態度。それをあえて無視しながら告げる。フリーレンは私の獲物だと。それを横取りすることはすなわち私に敵対することだと。捕食者たる、動物的な本能を持つ私達であるが故の絶対の掟。人間たちの理解しづらいルールに比べれば、至極分かり易いもの。

 

 

「そうだったわね。じゃあお願いするわ。どうするの? 首を落とすのかしら。それとも不死の軍勢に加える気?」

 

 

それが通じたのか。その手を下ろしながら、その続きを私に促してくる。自らが手を下すよりも、そちらを観察する方が面白そうだと判断したのか。本当にどこまで行っても自分本位の奴だ。まさに魔族に相応しい。

 

 

「そんなの私の勝手よ。こいつはフリージアに連れて行くわ。裁判にかけるために。色々聞きたいこともあるしね」

 

 

それに付き合うことなく、天秤としての答えを告げる。ここフリージアにおいてはいかなる理由においても暴力は許されない。例外は神官と、国王である私だけ。その最上位である私の決定に異を唱えられるものは存在しない。だが

 

 

「それはいけないわ。アウラ。フリーレンはここで殺すべきよ。貴方だって分かっているはずよ。油断と驕りは捕食者故の致命的な欠点。それが原因で多くの魔族が命を落とした。私や貴方も例外ではないわ。しかも相手は葬送のフリーレンよ。どんな手を使ってくるか分からない」

 

 

その例外が、ここには存在する。私にとっては共犯者である無名の大魔族が。そいつが告げてくる。私の矛盾を。魔族としての在り方を。それは正しい。魔族としてこいつを生かしたままにするなど狂気の沙汰だ。油断と驕り。その最たるもの。それでも

 

 

「ごちゃごちゃうるさいわね……こいつを捕らえたのは私で、ここは私の国。縄張りよ。これ以上口出しするなら────」

 

 

こいつを捕まえたのは私なのだ。なら、こいつをどうするかは私の勝手。私の物だからだ。加えて、ここは私の縄張りでもある。それが意味するところ。これ以上口出しするなら容赦はしない。敵とみなす。魔族であるなら理解できるであろう私の返答、警告に

 

 

「────ええ。本当は私もこんなことはしたくないのだけれど、力づくでお話しするしかないわね」

 

 

ソリテールはいつもと変わらない笑みを浮かべながら、その魔力によって返答した。

 

 

瞬間、その周囲に無数の剣が生み出されていく。その切っ先がフリーレンだけでなく、私にも向けられている。こいつが好んで使っている、人類の魔法。魔族でありながら、人類の魔法にも精通している変わり者の姿。

 

 

「……あんた、本気? 私と敵対するってことよ」

「そうね。だから本当に残念だわ。今からでも遅くないわ。私は戦いよりお話の方が好きなの」

 

 

刃を突きつけながら、そんなふざけたことを口にしてくるソリテール。本当に嘘しかつかない奴だ。だが、私と敵対しても構わないと判断しているのは嘘ではないのだろう。いくら嘘つきのこいつでも、それが嘘では済まないのは理解している。だからこそ、私は買い被っていたのだ。

 

 

「…………らしくないわね。いつもの心配性と臆病さはどこに行ったの? ここでの大好きな研究もできなくなる。それでもいいの?」

 

 

こいつの心配性と臆病さを。その慎重さがこいつが魔族である所以だった。自分を知る人間を皆殺しにするほどの執着、保身。だからこそ勇者一行にも手は出さず、隠れていた。なのにこんな愚行を犯すなど。いくらフリーレンが弱っているとはいえ、こいつらしくない。自らの身を晒すなど。何よりもこいつの目的は知的好奇心を満たす事だったはず。私と敵対してしまってはそれすら失われてしまう。本末転倒だろう。だというのに

 

 

「確かにそうね。でも葬送のフリーレンという“魔族の敵”をここで見逃すのは余りに危険すぎるわ。ここで摘むべきよ。魔族(わたし)たちの未来のために」

 

 

それでも構わないとソリテールは告げてくる。ここでフリーレンという脅威を取り除ければいいと。それが魔族のためになるのだと。あまりにも、こいつからはかけ離れた間違いを。

 

 

「シュラハトや魔王様みたいなことを言うのね……」

 

 

まるでそう、もういない、シュラハトや魔王様のような間違いを。

 

 

「そうね。彼らのような崇高な考えには到底及ばないけれど。その真似事ね」

 

 

そのことにこいつは気づいていない。いや、気づくことができていない。それが何を意味しているのか。こいつほどの異端であってさえ。

 

 

「…………一つ忠告してあげるわ。魔族(あんた)らしくないことをすると、いつか身を滅ぼすわよ」

 

 

だからこそ、最後に一つだけ忠告する。同じ魔族として、共犯者として、友達として。私たちは魔族なのだと。魔族とは何たるかを。奇しくもこいつが言った通りだ。その性から私たちは逃れられない。人間がその悪意から逃れられないように。魔族には種族の未来も、過去もない。ただ現在(いま)があるだけ。自らの魔法の探求と欲求が満たせればそれでいい。それに反すればどうなるか。それを知る愚か者として。

 

 

「今の貴方のように? 心配しなくても貴方を殺したりしないわ。私達は友達だもの」

 

 

やはり、こいつもそれからは逃れられない。油断と驕り。自分もまた狩られる側であることを。騙される側であることを。自分と同じように、息を潜めてこの瞬間を狙っていた例外が存在することを。

 

 

「そう。いい迷惑ね────もういいわよ」

「?」

 

 

それが合図だった。この時間稼ぎの終わりの。会話という、交渉の決裂を。瞬間、風が舞い降りた。私にとって服従の天秤と対を為す、私の半身が。それは────

 

 

 

「待てよフェルン!?」

「シュタルク様……」

 

 

もう何度目になるか分からない、シュタルク様の制止によってその場に何とか踏みとどまる。今私たちは城壁の上にいた。その眼下には荒廃してしまった、戦いの爪痕がある。言うまでもなく、フリーレン様とアウラ様の争い、いや喧嘩の跡になるのか。私の知っている喧嘩とは似ても似つかない物。それを目の当たりにした時には生きた心地がしなかった。お二人の安否だけではない。その戦いの凄まじさに。

 

 

「ここで待ってるように言われただろ? それに分かるだろ。あのソリテールって奴はフリーレンやアウラと同格の大魔族なんだ。俺たちが行っても足手纏いだ」

「それは……」

 

 

それが今、私たちがここで留まっている理由だった。忘れるわけがない。あの大魔族、ソリテールがお二人の間に割って入って来たのだから。まるでこの時を狙っていたかのように。邪魔をするように。もしかしたら、アウラ様はそれを見越しておられたのかもしれない。だからこそリーニエ様にあんな命令を出していた。

 

シュタルク様の言う通り、私たちは足手纏いだろう。それはもう目の当たりにしている。大魔法使いと大魔族。魔法使いとしての遥か高みの戦い。そこに割って入ることなどできない。あのソリテールもそれに匹敵するのなら尚の事。なのに

 

 

「大丈夫だって。言ったろ? 姉ちゃんはめちゃくちゃ強いんだ。あの師匠が自分よりも強いって言うぐらいなんだぜ」

 

 

シュタルク様はまるで子供のように、姉を信頼する弟のように目を輝かせている。疑うことなどないかのように。私が知らない、魔法使いとしての、いや戦士としてのあの方を知っているからこそ。なら私にできることは、シュタルク様を信じること。仲間を信じること。それがフリーレン様の教えでもある。

 

 

「シュタルク様……足が震えていますよ」

「言わないで。分かってるから」

 

 

それでも怖いものは怖いのか。変わらず足を震わせているシュタルク様。安心した。私もまた手が震えているのだから。だから、信じて頼るしかない。きっと大丈夫。何故なら────

 

 

 

「────お姉ちゃんに任せなさい!!」

 

 

 

あの方は私たちの、頼りになるお姉さんなのだから────

 

 

 

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