ヒンメルはもういないじゃない【完結】   作:HAJI

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第百二十二話 「加護」

(これじゃあ、まるで銅像ね……)

 

 

女神の真似事のように。何もしないまま、ただ君臨している。いや、正確には何もできないというのがが正しい。この手にある天秤がその答えだ。フリーレンにも言われたこと。私はその場にいるだけで意味がある。

 

本当なら逃げるべきなのだろう。魔族としての本能が囁く。それが正しいと。このまま退却すれば勝ちなのだ。フリージアに逃げ込めば、いかなソリテールとはいえ追ってはこれない。手は出せない。変わらずある魔族の性。いや、それは人間であっても同じだろう。人間であれば悪意か。それを抑え込む。それもまた魔族である私なのだ。ハイターが言っていたように、己を律するために。それが自らの破滅に繋がると理解しているからこそ。

 

 

(まるで新しい勇者一行ね……)

 

 

リーニエたちの様子を、戦いを見守る。まるでかつての勇者一行のようだ。つい先ほど、私が戯れで口にしたように。その強さはヒンメルたちには及ばない。それでも、その在り方は、形はまさにそれだ。ある意味では上回っている。エルフやドワーフではなく、魔族がそれに加わっているのだから。

 

一人一人では敵わなくとも、連携することで、力を合わせることでそれを覆す。人類の強み。かつての自分を思い出す。私は本当ならあっち側、討伐される側だったはず。大魔族として。ソリテールもそれに苦戦している。その魔力も削られ続けている。このままいけば、その量りを超えるだろう。天秤の傾きが。チェスで言うならチェックメイト、詰みとなる。そうなるように手を打ってきた。形勢は私に傾いている。だというのに

 

 

(────いいえ。駄目ね。おそらく、一手足りない)

 

 

あるのはある種の諦観だけ。焦燥ではない。本当なら勝利を前にして油断し、驕ってしまう場面。それを戒める。このままあいつが終わるわけがない。あいつは無名の大魔族なのだから。その恐ろしさ、異端さは私が誰よりも知っている。そこから導き出せる道筋。あいつがどんな手を打ってくるのか。それが見えてくる。ハイターほどではないが、私もこの先の盤面の流れが、終わりが見える。

 

それは私の勝利だ。ソリテールという駒を私は打ち倒すことができる。それが机上、盤上であったのなら。魔族であったのなら。だからこそ、私は敗北するしかない。私自身が言っていたように。らしくないことをすることによって身を滅ぼす。本当に嫌らしい奴だ。流石は私の共犯だけはある。

 

 

(フリーレンを取られたのは痛かったわね……)

 

 

フリーレンを戦闘不能にされてしまったのが痛かった。その駒があれば、間に合っていただろう。そこまで見越していたのか、それとも本能、直感だったのかは分からないが。流石は大魔族といったところか。魔族である私が葬送のフリーレンを頼りにしているという時点でおかしいのだが、もはやあきらめるしかない。常識など、この場においては何の役にも立たない。足枷でしかない。

 

 

(こんなことなら、女神の奴をもう少し真面目に祈ってやるんだったかしら)

 

 

神頼みならぬ、女神頼みか。私もいよいよ極まっているのかもしれない。女神の奴に縋りつきたいなんて。女神のみぞ知る。博打に近い賭けをするしかない状況に。魔族らしくない、いや私らしくない選択。それを強いられるほどに追いつめられてしまっている。フリーレン相手にすら、そこまで追い詰められはしなかったというのに。人間の敵が人間であるように。魔族の敵は魔族、ということなのだろう。

 

 

「そう……結局、これに頼るしかないってわけね」

 

 

知らず呟いていた。話しかけていた。知らず握り締めていた。いつかのように。普段は頼りにならない奴だったが、こういう時には別だ。あいつなら、きっと笑っている。絶体絶命の状況でも、不敵に、自信満々に。ならそれに倣うとしよう。女神の奴よりは役に立つに違いない。

 

 

何故ならあいつは、私にとっての勇者なのだから────

 

 

 

(これは……?)

 

 

その異変にようやく気づいた。変わらずゾルトラークを放ちながらも。相手は大魔族。本来なら、相手にすらならないほど格上の相手。だがそれと渡り合えている、いや優勢となっている。私だけではない、四人の力を借りることにって。アウラ様やリーニエ様だけではないリュグナーと呼ばれる魔族の男性も加わったことで。実際に戦っているのは私達でも、この場を支配しているのはアウラ様だった。その魔法こそがこの戦いの全てを決する、まさに審判の天秤だ。

 

そして今、その裁きの時が刻一刻と迫っている。ソリテールの魔力を削ることによって。間もなくその時は訪れる。それまで私たちは耐え忍び、アウラ様を守り抜けばいい。

 

なのに、その時が訪れない。おかしい。もうとっくにそうなってもおかしくないのに。ソリテールの魔力の大きさが。その消費の速度が遅くなっていく。一体何故。私たちは変わらず攻め立てているというのに。それは

 

 

「なるほど……ようやく慣れてきたわ」

 

 

無名の大魔族。ソリテールという魔族の本当の恐ろしさ。それがその処理能力の高さにあるということに。

 

 

(っ!? 外れた!?)

 

 

瞬間、思わず目を見開いてしまう。それは私が放った高圧縮のゾルトラークがまるで予期していたかのように躱されてしまったこそ。それまでは魔力の盾で防御していたのに、その必要がないかのように。こちらを一瞥すらしない。魔力探知だけでそんなことが可能なのか。それを確かめるべく再び魔法を放つも、苦も無く回避されてしまう。まるでそう、直感、野生の勘とでいうべき反応。魔族という魔物の恐ろしさ。いけない。この状況が拮抗していたのは、私の魔法が有効だったからこそ。それが通じなくなってしまえば動きを制限することが、魔力を消費させることができない。

 

 

「────シュタルク!」

「────分かってるよ、姉ちゃん!」

 

 

それを瞬時に判断したのだろう。リーニエ様はそれまでの動きを止め、再びアイゼン様の技を繰り出さんと構えを取る。私のゾルトラークを除く、ソリテールに通用する唯一残された手段。それが分かっているからこそ、ソリテールも反応せざるを得ない。だがここまで。アイゼン様の技は威力はあるものの、ヒンメル様の剣技ほどの速さがない。正面からではソリテール相手に技を繰り出す隙がない。だからこそ、リーニエ様はそれを託す。もう一人の戦士アイゼンの一番弟子へと。

 

 

「────閃天撃!!」

 

 

まるで最初からそう分かっていたかのように、阿吽の呼吸でシュタルク様はソリテールの背後から斧を振り下ろす。ソリテールの死角と隙を狙った完璧な不意打ち。アイゼン様から受け継いだ戦士の一撃。加えて逃がすまいと血の茨がその足へと巻き付いている。私たちが持ち得る全てを出し尽くした攻撃は

 

 

「素晴らしいわ。でも無駄よ」

 

 

目の前の怪物には通用しなかった────

 

 

魔力の盾すらも切り裂く、戦士の一撃は敵を切り裂くことなく地に堕ちている。その衝撃によって大地が割かれるも、ソリテールには全く届いていない。何故なら

 

 

(まさか、攻撃を受け流した!?)

 

 

ソリテールはシュタルク様の技を受け止めるのではなく、受け流したのだから。だがそれはあり得ない。あれだけの一撃を、無傷で受け流すなんて。針の穴を通すのでは足りない、刹那の狂いすら許されないタイミングと魔力コントロールが要求される絶技。例えフリーレン様でも不可能なレベル。それを初見でやってのける。

 

同時に拘束していたはずの血の茨が塵と化していく。ソリテールの魔力の鎧に触れた傍から。その鎧に血を操る魔法を無力化する術式が組み込まれてしまったのだろう。足止めすら、もう叶わない。

 

魔力だけではない。その動きも全く別物になりつつある。リーニエ様の攻撃によって失った半身による影響がもう見られない。どころか初めからそうであったかのような自然な身のこなしになりつつある。無駄のない、洗練された動きへと。まるでそう、魔族から新しい種に進化するかのように。

 

 

「やっぱり一番邪魔なのは君ね」

 

 

もう狙う獲物は決まっていたのか。ソリテールが振り向きざまに歪になっている右腕を振るった瞬間、放たれた魔力によってシュタルク様が吹き飛ばされてしまう。攻撃の後の隙を狙われた一撃。

 

 

「シュタルク様!?」

「……っ! 大丈夫だ……俺はまだ立ってる……まだ、負けてねえぞ!」

 

 

ソリテールの攻撃をまともに受けたはずなのに、シュタルク様は斧を杖代わりにしながらすぐに立ち上がる。だがやせ我慢なのは誰の目にも明らかだった。纏っていた血の鎧は粉々に砕け、満身創痍。立っているのやっとだろうに。それでも自分は負けていないのだと。立っているのだと誇示している。体の震えはない。その瞳には意志がある。勝つための。アウラ様を守るために。それはきっとアイゼン様の、戦士の教えなのだろう。

 

 

「素晴らしい。君は本当に戦士なのね。ぜひその最期の言葉を教えて」

 

 

それすらも無慈悲に、容赦なく魔族は消し去らんとする。この場において、シュタルク様が一番の障害だと見抜いているからこそ。それは正しい。いや、誰であってもそれは同じだろう。私たちの誰か一人でも欠ければ、もう終わりだ。それだけの薄氷の上で私たちは綱渡りをしていたのだから。その均衡がついに破られてしまう。私達の誰も、それを防ぐことができない。そんな中

 

 

「────服従の魔法(アゼリューぜ)

 

 

そんな、私たちの命運を決める天秤の宣告が響き渡った────

 

 

 

 

「……っ! アウラ、どうして……」

「よくやったわ、シュタルク。もう充分よ」

 

 

まるで人間の子供を褒めるように、その肩を叩きながらアウラがこちらにやってくる。一歩一歩。ゆっくりと。それを前にして私も動きを止めてしまう。いや私だけではない。この場にいるアウラ以外の全ての者が。その目が、その手にある天秤へと向けられている。そこへと向かっている。私とアウラの魂へと。

 

 

「やっぱり貴方は愚かね、アウラ。理解できないわ。あのまま動かなければ貴方の勝ちだったのに」

「よく言うわ。全部計算づくでしょうに」

 

 

自らの胸から取り出された魂に思わず見蕩れてしまう。アウラと関わる中で、魂を見ることは何度もあったが、自分の魂を見るのは生まれて初めてだ。本当に興味深い。本来なら知覚できない魂を可視化できるのだから。本当にアウラの魔法は素晴らしい。

 

 

「ええ。本当に貴方は魔族ではなくなってしまったのね。王が駒を庇うなんて。遊び(ゲーム)としても破綻してしまっているわ。らしくないことをするものじゃないわね、アウラ?」

 

 

それでも一切の油断なく、アウラを、天秤を見据える。そう、これが私の策。狙い。魔族ではあり得ない、他者を庇う習性を利用したもの。もしアウラが魔族のままだったのなら、私は敗北していただろう。配下という名の従う駒を捨て駒とすることで、アウラは私を詰むことができたのだから。それほどまでに、私たちの魔力は拮抗していた。だからこそ愚かだ。駒を庇って、審判を下してしまったのだから。我慢できなかったのだから。本末転倒でしかない。

 

 

「そうね。私もそう思うわ」

「負けを認めるの? 貴方らしくないわね。それともまた魔法を使った振りをしているのかしら?」

「まさか。あんたに同じ手は通用しないわ。認めてあげるわ。私の負けよ。ソリテール。あんたの往生際の悪さにはね」

 

 

慢心と驕り。それを排しながらアウラに向かい合う。なのに、アウラには動きが見られない。てっきりフリーレンとの戦いの時のように、隙を突いて何かしてくるとばかり思っていたのに。それとも他の連中がそれをしてくる気なのか。だが無駄だ。どんな攻撃にも対応できるように身構えている。例え、戦線を離脱したフリーレンが参戦してきたとしても迎え撃てる。それだけの力が今の私にはある。まるで生まれ変わったかのような全能感。死の淵に陥ると、生き物は生存本能を発揮すると何かの書物で読んだが、これがそうなのだろう。アウラとは違う、魔族の進むべき進化の方向性。それを私自身が証明した形。

 

二つの魂が秤に載せられる。私とアウラ。そのどちらが正しかったのか。その審判を下す判決が。誰の目にも明らかな、目に見える裁決が。

 

 

(間違いない。アウラの魔力は私を下回ったまま。見間違えることはない)

 

 

魔力という、これ以上ない重さが。魔族であることを捨てたはずの貴方が、魔力の多寡で相手を服従させるしかない。これ以上にない皮肉だろう。それを伝えて、反応を見ようとした瞬間

 

 

アウラは手に何かを握りしめたまま。膝を地面についてしまった。

 

 

「……? 何のつもりアウラ?」

「見て分からないの。祈っているのよ」

 

 

思わずその場で立ち尽くしてしまう。当たり前だ。どこに祈る魔族がいるというのか。この状況で。魔族ではなくなったとしてもあり得ない。あのアウラがこんなことを。一体何の意味が。目的があるのか。

 

 

「意味が分からないわ。女神の加護でも期待しているの? 魔族である貴方が?」

「まさか。女神の奴がそんなことをするわけないわ。あいつは生臭坊主がお気に入りなのよ」

 

 

あり得るとしたら、女神の加護か。僧侶と呼ばれる人間たちには女神からの寵愛、加護たる力が与えられていた。勇者一行では僧侶ハイターがそれにあたる。それが狙いなのか。あり得ない。女神が魔族に加護を与えることなど。女神は魔族にとっても敵だ。人間に力を貸すことはあっても、魔族にはあり得ない。アウラもそんなことは分かっているらしい。だからこそ理解できない。それに

 

 

「だからこれは私の命乞いよ。あんたみたいに、泣きながらじゃないけどね」

 

 

目を閉じながら。片手に天秤を、もう片方に胸にかけられていたアクセサリを握りながらアウラは告白する。これが命乞いなのだと。いつかのやり取りを思い出す。自らの最期の時に、どんな命乞いをするのか。私はそれに泣いて命乞いをするつもりだと答えた。なら、これがアウラの答えなのか。私でも、女神でもない相手に祈ることのどこか命乞いになるというのか。

 

 

瞬間、天秤が傾いていく。時間が伸びているのではないかと思えるような感覚とともに。私たちの命運を決める一瞬。だがそれは、これ以上になく公平で、残酷だった。少なくとも、アウラにとっては。

 

 

「残念だったわね。この遊びは私の勝ちよ。アウラ」

 

 

その重みによって、天秤は私を勝者だと告げる。持ち主であるアウラを裏切って。当然だ。誰の目にもそれは明らかだった。結果は見えていた。なのに、それを選ばずにはいられない。不条理、不合理に生きている。それが人間であり、人類だ。そんなものを目指していた時点で、こうなることは決まっていた。危険(リスク)が魔法を強くする。それでも、自分の魔法に縋るしかない。魔族から脱したくとも、その性からは逃れられない。自分が魔族であることを認められなかった、哀れな存在。

 

 

「でも心配しなくてもいいわ。私は貴方の首を落としたりしないわ。もったいないもの。貴方の魔法があれば、もっと面白い実験がたくさんできるわ。本当に愉しみ」

 

 

だがそれすらも今は愛おしい。些事でしかない。私は今、アウラを服従させたのだから。当の本人は未だに祈りを捧げたまま。いや、命乞いだったか。ならそれを聞いてあげることにしよう。何も殺すことはない。服従の魔法(アゼリューゼ)という至高の玩具が手に入ったのだから。どれだけの価値があるのか。どれだけのことができるのか。想像しても想像し切れない。失ってしまった左腕などこれに比べれば些細なものだろう。それだけの価値が、可能性がアウラにはある。ひとまずは残った連中をアウラの手で始末させることにしよう。きっと面白い反応が見られるはず。その後はフリージアにいる魔族達の解放を。そうすればフリージアは巨大な箱庭になるだろう。人間と魔族を同じ場所に閉じ込めればどうなるか。その枷がなくなればどうなるのか。これ以上にない実験になるはず。

 

ああ、そういえば忘れてしまっていた。ずっと考えていたことがあったのに。もしも、こんな機会があれば。聞いてみたかったことが。命じてみたかったことが。それは

 

 

「────『アウラ。私と友達になってくれるかしら?』」

 

 

今まで何度お願いしても聞いてくれなかったこと。友達になること。ぜひそれをしてみたかった。かつての勇者のように。アウラは勇者に服従させられることで友達になった。ならきっと私とも友達になってくれるはず。お願いという名の命令。だがそれは

 

 

「────残念だけど、それは聞けないわね。意味がないもの」

 

 

いつもと変わらない声色で、祈り続けたまま。いつものように、アウラに断られてしまった────

 

 

「っ!? あり得ないわ……どうして私の命令に逆らうことが」

 

 

思わず体が反応してしまう。あり得ない物を見たかのように。当たり前だ。服従の魔法は永遠に、その身が朽ちるまで相手を従わせる魔法。主人の命令に逆らうことなどできるわけがない。まさか魔法が発動していなかったのか。いや、間違いなくそれは効果を発揮している。なのにどうして。

 

 

「何をそんなに驚いてるの。私の魔法は絶対じゃないわ。例外があった。あんたには教えていたはずだけど」

「何のことを言っているの……? そんなものあるはずが」

 

 

目を開き、立ち上がりながらアウラはいつものようにそう教えてくれる。私ですら知らないことを教えてくれるように。でも分からない。そんなこと、教えてもらったことなんて覚えていない。また嘘をついているのか。それは

 

 

「本当に忘れてるわけ? 私がずっと誰に服従させられていたのか」

 

 

あまりにも当たり前すぎて、気づくことができなかった、致命的な油断と驕りだった。

 

 

その天秤が徐々に、僅かに、それでも確かに傾いていく。私ではなく、アウラの側に。魔力量が変わったわけでもないのに。それ以外の重さが加わっていくかのように。

 

 

そう、私は気づくことができなかった。騙されてしまっていたのだ。勇者が例外的な存在であると。勇者だからこそ、服従の魔法を打ち破れたのだと。怪物だったからだと。でも違ったのだ。何か明確な理由が、理があったからこそ、アウラの魔法は破れてしまったのだと。

 

 

「そう……最初から私は貴方に騙されてしまってたのね、アウラ」

「人聞きが悪いわよ。あんたが勝手に勘違いしただけ。私も上手くいくかどうかなんて分からなかったもの」

「嘘をつくのが、下手になったわね、アウラ。なら何で、こんな馬鹿な、真似を……」

 

 

次第に体の自由が奪われていく。まるで操り人形になっていくように。なるほど。これが服従させられるということなのか。服従の天秤は魔力の重さを比べる物。でもきっとそれ以外のものも重さに含まれるのだろう。でなければ説明できない。考えられるとしたら精神力か。

 

だが呆れるしかない。どうやらこれはアウラにとっても誤算。計算された物ではなかったらしい。あり得ない。これはただの遊びではない。命を懸けたものだというのに。それを博打のように。私の敗因はたった一つ。

 

 

「────決まってるでしょ。ヒンメルならそうしたからよ」

 

 

私の一人遊びが、アウラの下らない勇者ごっこに敵わなかったということだけ。

 

 

ソリテールは知らなかった。理解できなかった。それが何の変哲もない、アウラの掌の中にある銀の親愛の花に込められた、勇者の加護(ヒンメルへの想い)によるものだと。それがこの喧嘩の結末。決して超えることのできない、人類と魔族の差だった────

 




長くなりましたが次話でソリテールとの戦いは決着。この作品も残り三話となります。あと少しお付き合いください。
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