ヒンメルはもういないじゃない【完結】   作:HAJI

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「日記」

 

そうか。君と別れてからもう半年になるんだね。本当にあっという間だった。なのに、とても長かったように感じるよ。きっと今までが恵まれていたんだろうね。僕にとってのこの五十年は、本当に楽しいものだったんだ。こんなことを言ったら、君には呆れられてしまうだろうけれど。君とリーニエと一緒に過ごした日々は、何もかもが新鮮で、煌めいて見えた。その楽しい思い出の中には、いつも君たちがいた。

 

 

今でも思う。あの時、あんな約束をして良かったのかと。本当なら、いつもの僕なら決してしない約束を、言葉を零してしまった。それはきっと僕の我儘だ。もう一度君に会いたいという。分かっていたんだ。君たちのように、僕たちよりも遥かに長く生きる人たちにとって、それがどれだけ残酷なものか。今の僕には、その約束を守れないかもしれない。なのに、そうしないではいられなかった。本当に僕らしくない。でもそれが嬉しい。それは、君が僕を変えてくれた証なのだから。君にとっては何でもないことでも、僕にとっては違ったんだよ、アウラ。いつか言ったよね。君はたくさんの人の人生を変えてきたって。でも一番変えてくれたのは、変えられたのは僕だったんだ。君よりもずっと。

 

 

ハイターやアイゼンから聞いたよ。君が断頭台ではなく天秤として。僕たちに寄り添ってくれる生き方を選んでくれたことを。それが本当に嬉しい。でも、同じぐらい心配だ。君は真面目だから、きっと無理をしてしまうだろうから。それぐらい、南側は今、大変なことになっている。僕たちにもどうにもできなかった、悪意に満ちている。いつか言ったように、僕たちは魔族よりもずっと嘘つきだから。本当なら、今すぐにでも君に会いに行きたい。でもそれができない。僕が行っても、きっと足手纏いでしかないだろうから。勇者では解決できないこともあるように。何よりも、この体ではそこまで辿り着けないだろう。もう冒険が出来るような歳ではなくなってしまった。だから僕は待つことにする。君が会いに来てくれるのを。心配ないよ。僕が待つのが得意なのは、きっと君が一番知っているだろうから。

 

 

本当に静かになってしまった。それが少し寂しい。きっと今までが恵まれていたんだろう。だから我慢しなくては。彼女は自由になって旅立っていったんだから。もう縛られる必要はない。まだ別れてから半年しかたっていないんだから。きっとまた会いに来てくれる。そういえばもうすぐ半世紀(エーラ)流星の時期だ。楽しみだ。この時をずっと待ちわびていたのだから。だからもう少しだけ。この約束だけは、絶対に果たさなければ。責任重大だ。もう同じ失敗は繰り返さない。君が教えてくれたように、言葉で僕の気持ちを伝えよう。そして、もう一つの約束を守るために。君と友達になってくれるように、フリーレンを口説かなくては。うん、久しぶりにワクワクしてきた。やっぱり困難は大きい方がいい。

 

 

そういえば、アウラはちゃんと半世紀(エーラ)流星を見てくれるだろうか。フリーレンのように早起きができなくて寝過ごすようなことはないだろうけど。本当なら一緒に見たかったけど、こればっかりはしょうがない。でもきっと君なら楽しんでくれるはず。ただの流星じゃない、といつものように呆れられそうだけど、僕には分かる。君はそういう奴だから。だって君は一人じゃない。僕の自慢の一番弟子のリーニエが一緒にいるんだから。だから、今度会った時に聞くことにしよう。君のことだ。きっと素直に綺麗だったとは言わないに違いない。君は嘘つきだからね。

 

 

じゃあそろそろこの日記も終わりにしよう。読み返してみたら、いつの間にか日記じゃなくて手紙みたいになってしまった。でもそれもいいかもしれない。これもきっと、言葉で伝えることになるだろうから。改めて、君に手紙を送ることにしよう。君が忘れそうになっても、覚えていてくれるように。でも余計な心配かな。君はひとりぼっちじゃない。リーニエが、フリーレンがいるんだから。だから待っているよ、アウラ。僕たちの家で。君が帰ってくるのを。

 

 

 

────僕の親愛なる、嘘つきの友達へ。

 

 

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