ヒンメルはもういないじゃない【完結】   作:HAJI

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第八話 『再会』

「見ての通り、人間も魔族も共に農作業を行っています。普通の国と違うのは、魔法を使っていることでしょうか」

 

 

まるで演説でもするかのように、宣教師のようにその男は私にそう謳ってくる。囁いてくる。それを半分聞き流しながら、その光景を観察する。

 

 

(本当に悪い冗談みたいだね……)

 

 

それが冗談であるならどれだけよかったか。今私は、それを目の当たりにさせられている。魔族国家フリージアの現状。確か、人間と魔族が共に暮らしている、平等に生きることができる楽園だったか。

 

人間と魔族が共に暮らしている様をまざまざと見せつけられる。なるほど。これでは騙されるのも無理はない。魔族の本性を知らない人間であればなおのこと。何よりも

 

 

(まさか魔族と並んで歩く日が来るなんてね……)

 

 

自分が今、魔族と一緒に、並んで歩いている。話している。それこそが異常だった。頭がおかしくなってしまいかねない。天地がひっくり返ってもあり得ないと言っても過言ではない。今私はこの魔族と二人きりだった。シュトロはもういない。

 

シュトロは待ち構えていたこの魔族に私を引き渡したまま、その場に残ってしまった。花畑に飲み込まれるように。てっきりそのままシュトロが案内するのだとばかり思っていたのに。

 

そう。それこそがアウラがシュトロを差し向けてきた理由だと見抜いていたからこそ。人間であるシュトロなら、私が手を出せず、騙しやすいと。だというのにそれを退かせ、今度は魔族を私にあてがうなんて。葬送の魔法使いである私に対して。皮肉どころではない。一体何を企んでいるのか。

 

 

『それでは私はこれにて。後は若い者に任せるとしましょう』

 

 

そんな、ふざけた言葉を残したままシュトロは私たちを見送ってきた。この中で一番生きた年月は短い、若輩だろうに。これが人間の老獪さなのだろう。どこまであの生臭坊主に影響を受けているのか。

 

 

(かなりの手練れだね……アウラが側近にするのも頷ける)

 

 

思考を切り替えながら現状を分析する。自分の前を先導する、誘っている魔族の男。確か、リュグナーとか言ったか。それがかなりの手練れであることは疑いようがない。魔力がそれを証明している。魔族は魔力には嘘をつけない。魔力量もだが、その洗練さはかなりのものだ。大魔族には遠く及ばないが、二つ名持ちと比べても遜色ないだろう。アウラの側近だと騙っていたが、嘘ではなさそうだ。

 

しかしそれ以上に、目の前の魔族、リュグナーには特質すべき点があった。それは

 

 

「いかがですか。フリーレン様。そんなに警戒することはありません。ここフリージアでは暴力は禁止されています。ご安心を」

 

 

その擬態の凄まじさだった。人間の真似が恐ろしく上手いのだ。その所作、言動はまさに人間のそれだ。ここまでの魔族はそうはいない。むしろその点では大魔族など比べ物にならない。纏っているのは執事服だが、その空気は慈悲深い神父のそれだ。穏やかな声色は、どこか心地良くすらある。

 

 

「よく言うね。お前はそうじゃないくせに。いつ襲い掛かってきてもおかしくない」

 

 

だからこそ、警戒を緩めるわけにはいかない。こいつは人間を騙すという点において、並みの魔族を凌駕している。流れるように、息を吐くように嘘をついている。人を食べてはならない、暴力を振るってはいけない、だったか。その悪趣味な教典に記されていた戒律。アウラはそれを魔法で強いている。

 

しかし、そこには例外がある。神官と呼ばれる連中にはそれが許されている。グラナトの調査でも記されていたことだ。少なくとも、こいつはいつ私に襲い掛かってきてもおかしくない。警戒しない方がどうかしている。だというのに

 

 

「なるほど。奇遇ですね。私もいつ襲われるのか気が気ではないのですよ。なにせ目の前にいるのはあの葬送のフリーレンなのですから」

 

 

言葉に窮することもなく、まるで同じことを考えていたとばかりにそう言い返されてしまう。自分も同じなのだと。私も同じなのだと。いや、あり得ない。そんな皮肉めいた返しを魔族が瞬時にできるはずがない。

 

 

「まるで見てきたようなことを言うね」

「はい。私は以前、貴方とお会いしたことがあるのです。覚えていませんか?」

「覚えてないよ」

 

 

どうやらこいつは私と会ったことがあったらしい。そんな嘘をつく理由もないだろう。しかし覚えはない。出会った魔族を見逃すなんて私らしくないが、何かの乱戦で逃がしてしまったのだろうか。そう記憶を探るも

 

 

「でしょうね。流石です。殺した相手のことなど覚えていても無駄ですから。私は運良く助かっただけですので」

 

 

そんなことは無駄だと、他ならぬ魔族に指摘されてしまう。思わず体が反応してしまいそうになるのを抑える。まるで私を人殺しだと言わんばかりの言いよう。私の動揺を誘う、魔族の手口。だというのに、それはこれまでの魔族の拙い命乞いなどとはまるで違っていた。それはまるで

 

 

「そう。ならここで思い出してあげようか」

 

 

それを振り払う、誤魔化す一心で挑発する。言葉ではなく魔力で。その手に杖を持たずとも。それだけで目の前の魔族には通じるだろう。魔法使いとしての誇りを刺激するもの。

 

 

「それも一興でしょうが、ここで私に手を出せばどうなるか、分からないほど貴方は愚かではない。違いますか?」

 

 

しかしそれに乗ってくることはない。どころかこちらを牽制してくるほど。そう、ここはフリージア。いわば魔王城のど真ん中なのだ。そこで騒ぎを起こせばどうなるか。こちらの真意を見抜かれてしまっている。

 

 

「力押しなど愚か者のすることです。欺くことこそが我らの武器ですので」

 

 

誰よりもその力押し、暴力こそを性としているはずの愚か者が説いてくる。およそ魔族とは思えない考え。同時に、誰よりも魔族らしい答え。

 

 

「…………」

 

 

それを耳にして確信した。やはりフリージアの魔族は、いやこいつは普通の魔族ではない。これまで出会ったどんな魔族よりも、人を騙すことに、人間を真似ることに長けている。こんな状況でなければ、真っ先に駆除しなければならない存在。

 

 

「冷静で殺意の籠もった、冷たい目ですね。まるで猛獣でも見ているかのようだ」

「実際にそうでしょ? お前たち魔族は人の声真似をするだけの、言葉の通じない猛獣だ」

「実に的確な表現です。我ら魔族の本質を理解している。感服しました」

 

 

言葉の通じない猛獣。それがこいつらの正体だ。それを、他ならぬこいつ自身が認めている。どころか賞賛してくる。声真似だけでこんな境地に至れるのか。だとしたら、どれだけの経験を積んでいるのか。いや、それがここフリージアなのか。人間と長時間一緒に過ごすことで、より高度な擬態を可能としている。それを実現できるだけの下地を、私は小一時間、こいつに付き合わされる中で見せられたのだから。

 

 

「さっきから見せられているものも全てそうだ。あれはただの支配だ。人間と魔族を同じ牧場に無理やり閉じ込めているだけ。共存なんて聞いて呆れるね」

 

 

農業科に魔法科、教典科だったか。人間の国の真似事でありながら、非なる物。そう、あれは偽物だった。平和や平等に見せかけた支配でしかない。本来相容れない、人間と魔族を同じ場所に閉じ込めればどうなるか。悪趣味な実験に等しい。アウラの魔法で枷を嵌め、牧場の中に閉じ込められている家畜同然。共存などではない。寄生、搾取しているだけだ。

 

 

「なるほど。貴方にはそう見えるのですね。それもまた、我が主の嘘でもあります。私たちはあの方の掌の上で弄ばれているだけなのですから。人間で言うごっこ遊びでしたか」

 

 

どこか感心しているように、魔族はそう私に答えてくる。まるで正解を導き出した信者を褒め称えるように。同時にそれがアウラの術中であることすら明かしてくる。だが、そのごっこ遊びという例えが胸にすとんと落ちる。

 

そうか。それがこれまで覚えてきた違和感の正体だったのか。いわばこれは、あの村でのアウラのごっこ遊びの延長なのだ。その規模を大きくしたもの。だとしても分からない。どうしてこんな無駄なことをあいつは

 

 

「話が逸れましたね。では一つ、逆にお尋ねしましょう」

 

 

至りかけた疑問の答えに水を差すように、そう問われる。魔族にこの私が。そもそもそんな言葉に耳を傾ける意味などない。聞き流せばいい。言葉が通じないのだから。だというのに、それができない。真に迫る何かが、こいつの言葉にはある。そういう意味では、私はとっくにこいつに騙されてしまっているのかもしれない。だが

 

 

「我らのそれと、人間が動物を家畜にするのと何が違うのですか?」

 

 

その瞬間、私は文字通り言葉を失ってしまった。

 

「…………」

「あなた方人類も、牛や豚などを同じように支配している。なのに何故それを責めるのです? 我らは人間を食用としていない分、良心的だと思いますが」

 

 

それは間違いなく、魔族の言葉、論理だった。人の心がない。その瞬間、激昂し、否定して余りあるもの。

 

なのに、私はそれに反論できない。どころか、それを理解しかけてしまった。それに言葉を失ってしまう。感情ではない。論理、理において、どちらが正しくて間違っているのか。そんなことを考えてしまっている。薄情どころではない。人でなしでしかない、自身の矛盾に。

 

 

「答えられませんか。いいでしょう。なら私が答えを示しましょう。それはただ言葉を話すかどうかの違いでしかありません。もし牛や豚が言葉を話せるなら、貴方たちはそれを食べることができない。違いますか?」

 

 

そんな私の矛盾を曝け出すように、突き刺すように聖職者の真似事をしている魔族によって暴かれてしまう。まるでそう、切開のように。奇しくも私自身が口にしたこと。言葉を話すこと。それこそが全てなのだと。

 

同時に、例え言葉を話したとしても躊躇いなく相手を食べるのが魔族なのだ。それが人類と魔族の、絶対の壁であり隔たり。

 

 

「それが私たちが言葉を話す理由です。偉そうに語りましたが、これはアウラ様からの受け売りです。私もかつて、貴方と同じ質問をアウラ様にしたことがあったのですよ」

 

 

私の反応をどう受け取ったのか。教典を読んで聞かせるように、そう続けてくる。今の戯言が、アウラの言葉、考えだったことを。だとしたら、私は、こいつと同じ醜態を晒してしまったということか。屈辱でしかない。

 

 

「認められませんか。ですが事実です。あそこをご覧になって下さい」

 

 

表情にも魔力にも出していなかったはずだが。それともそれも嘘なのか。最初からそこに話を持っていくつもりだったのか。魔族はそのまま、ある光景を指差す。

 

そこは公園だった。そこで、小さな子供二人が無邪気に遊んでいる。なんてことはない、日常の風景。違うのは、人間の子供と魔族の子供が遊んでいる、ということ。ここフリージアでしかあり得ない矛盾したもの。

 

 

「……あれがどうかしたの?」

「あの魔族の子供は第二世代と呼ばれていまして。ここフリージアで生まれた魔族なのです」

 

 

訝しみながら、そう聞き返すしかない。こいつが何を言いたいのか分からない。今更それが何だというのか。アウラの枷によってそれが成立しているだけ。まさかあの子供たちのように、私にも魔族と仲良くしろとでも言うのか。

 

 

「第二世代?」

「第二世代の魔族は全て、人間を食べたことがない、食べることができない魔族のことでもあります。アウラ様の魔法であれば、それが可能なのです」

 

 

だが、徐々にその意味が分かりかけてきた。知らず、口を噤んでしまう。手は握り拳になっていた。それは直感、いや予測だった。この魔族が、一体何を言わんとしているか。

 

 

「それでも貴方はあの子を殺すのですか? 人間を食べたことがない、食べることができない魔族を? 何の罪もない子供を、ただ魔族だからという理由で?」

 

 

それはまさしく、私を追い詰める、縛る言葉の刃だった。いや、毒なのか。私は知らぬ間に、それを飲まされてしまっていたのだ。こいつと話をしてしまった時点で。

 

魔族は人を騙し、食らう化け物。だからこそ、駆除するしかない。それが人類の、いや私の戦う理由と意味だ。家族を、故郷を滅ぼされた恨み。千年経ってもそれは変わっていない。私は魔族を根絶やしにしたいほど恨んでいる。

 

でももし仮に、魔族が人間を食べず、襲わなくなったらどうするのか。そんな子供が考えるようなお伽噺を、実現しかねないのがあいつの力だ。事実、目の前の魔族の子供はそうなのだろう。

 

もし、ここがフリージアでなければ、こんな状況でなければ、私はどうするのか。決まっている。だとすれば私は────

 

 

「だとすれば、どちらが魔族(化け物)か分かりませんね」

 

 

それが答えだった。魔族に化け物扱いされてしまう。私にとっては、これ以上にない侮辱。

 

 

「魔力に殺気が漏れていますよ」

「────」

 

 

その言葉によって、寸でのところで思い留まる。気づけばその手に杖を握っていた。それはきっとこいつの命乞いだったのだろう。同時に、私にとっても。未熟者でしかない。これではヒンメルのことも言えはしない。

 

 

「ただの嘘です。お気になさらずに。魔族の言葉など、ただの声真似でしかありません」

 

 

そんな私を見据えながら、これ以上にない締めくくりをしてくる。間違いない。こいつは最初からそこに持っていくつもりだったのだ。私だからこそ、反論できない理論武装。まるでハイターを彷彿とさせる手練手管だ。もしかしたら、シュトロの真似事なのか。

 

 

「このぐらいにしましょう。あまりやりすぎるとアウラ様にお叱りを受けるので」

 

 

戯れはここまでとばかりに、再び魔族は私を誘っていく。これ以上言葉は必要ないとばかりに。私もまたそれは同じだ。これ以上こいつと話していても意味はない。互いに理解する気がないのだから。人間と魔族のあるべき姿。なのに、それに敗北感を覚えてしまっている。それ自体がおかしい。いつからだろうか。調子が狂ってしまっている。いや、違うのか。これは

 

 

「この先で、アウラ様がお待ちになっています。どうぞ」

 

 

気づけば、その場所に辿り着いていた。あっという間に、何の感慨もなく。あっさりと。

 

そこは巨大な建物だった。大聖堂、などと呼ばれているらしい。いかにもあいつらしい。人間の教会の真似事だろうか。だがそれは嘘ではない。その魔力が、ここにアウラがいる何よりの証明なのだから。

 

 

「余裕だね。本当に私をアウラに会わせるだなんて。侮っているの? それとも罠のつもり?」

 

 

仰々しく、大聖堂の入り口を開放している魔族にそう問い質す。何のつもりなのか。それは最初からだった。まさか本当に私をアウラに会わせるつもりだったなんて。そう欺きながら、罠にかけて奇襲でも仕掛けてくるかと思っていたのに。馬鹿正直にアウラの元に私を連れてくるなんて。

 

なら侮られているのか。いや、アウラ自身がそうなのか。魔法使いとしての魔族の油断と驕り。自らの手で私を葬りたい。かつての雪辱か。だとしたら私にとっては好都合だ。それこそが私の戦い方なのだから。しかし

 

 

「いいえ、私は買い被っていたのです。こうしてお話をして確信しました。貴方では、アウラ様には及ばない。服従させられることになるでしょう」

 

 

それを目の前の魔族は否定する。買い被っていたのだと。つまり私は、見定められていたのだ。これでは立場があべこべだ。しかしそれはある意味油断と驕りだ。

 

 

「嘗められたものだね。確かにあいつの魔法は恐ろしい魔法だ。それでも絶対じゃない。私にあいつの魔法は通用しないよ」

 

 

それは魔族なら逃れられない悪癖だ。あいつの魔力と魔法は確かに恐ろしい。七崩賢に相応しい、理不尽の塊。しかしそれは決して無敵ではない。魔法はイメージだ。呪いであっても、それを観測し、利用する。それが私の戦い方。あいつの魔法は私には通用しない。魔力の制限もまた、あいつの魔法にとっては天敵となる。だというのに

 

 

「いいえ、魔法を使わずともあの方はそれを為し得るのです。あの方は天秤のアウラなのですから。それに倣うのであれば、貴方は裁かれるのです。他ならぬ、あの方の天秤によって」

 

 

微塵も、こいつは揺らぐことはない。魔力も、表情も、所作も。それは信頼、いや忠誠なのか。それはもはや予言だった。その言葉に、脳裏にあいつの姿が掠める。生ける魔導書なんて呼ばれている、あいつの姿が。何故そんなことを。

 

 

「────それでは私はこれにて。全てはアウラ様の天秤の下に」

 

 

初めて会った時の再現。執事さながらの礼を示しながら、私は通される。この国を治める、支配する魔族の王の元へと。天秤という、聞き馴染みのない言葉と共に────

 

 

 

 

一歩一歩。ただ足を動かす。ただそれだけ。なのに、知らず足が重くなってくる。疲労ではない。魔法で何かされているわけでもない。足だけではない。体が重くなってくる。

 

魔力が近づいてくる。五百年以上を生きる、大魔族の魔力が。ならそれに気圧されているのか。いや、違う。確かに絶大な魔力だが、私の魔力には及ばない。だがそれを覆しかねないのが、大魔族だ。だから私はそれが嫌いだ。強い奴と戦うことも。嫌なことはさっさと終わらせたい。ただそれだけ。

 

そうだ。この感覚を私は知っている。一つは千年前。先ほど脳裏によぎったこと。神話の時代から生きているとされている、大魔法使いを前にした時。

 

そしてもう一つが八十年前。同じように、その本拠地に乗り込んだ時。全ての魔族の頂点に立つ、魔族の王と対峙した時。違うのは、あの時とは違い、私は────

 

 

そこは一種の異界だった。

 

 

人間が女神を信仰する教会を模した空間。それを示すように女神に祈りを捧げるための造りが、厳かさが満ちている。神聖さとでも言うべきものが、ここには満ちていた。だが魔法使いにとってはそうではない。

 

恐怖と支配。

 

そう形容してもいいほどの魔力がこの空間には満ちている。魔力を感知できるものであれば体が震え、膝をついてしまうほどの濃密な魔力が渦巻いている。魔法使いという生き物であれば避けられない本能。それを抑えながらその魔力の主へと視線を向ける。

 

 

そいつは玉座に君臨していた。まるで王のように、私を見下ろしている。

 

 

その姿は何も変わっていない。八十年前と。私の容姿が千年経っても変わっていないように。

 

 

だがその身に纏っている物は大きく違っていた。髪の色に合わせたような、紫を基調にした法衣を纏っている。まるで女神に信仰を誓う僧侶のように。魔族がそんな格好をするなんて悪趣味でしかない。

 

 

いや、そうではない。ここは教会を模した場所ではない。裁判所なのだ。なら私はさながらその判決を受けに来た被告なのか。質の悪い趣向だ。

 

 

ただその中にあって、理解できない物があった。それはその胸元にある、何かの花のアクセサリ。

 

 

それがこの国の頂点にある大魔族、『天秤』のアウラの姿。

 

 

「────久しぶりねぇ。フリーレン」

「────そうだね。八十年振りかな、アウラ」

 

 

あり得た未来でもあった『葬送』と『天秤』の再会。二人は互いに言葉を交わす。その時と同じ言葉でありながら、全く異なる意味を込めながら。

 

 

それが八十年の時を超えた、『葬送』と『天秤』のもう一つの出会いの瞬間だった────

 

 

 

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