「ようやく王都に着きましたね」
「帰るわ」
ハイターの言葉にそう言いながら踵を返す。やはり来るべきではなかった。自分に言い聞かせながらここまでやってきたが、もう限界だ。あの時と同じように、こうして王都を目の前にしたことで確信した。やはり私はここには来るべきではなかった。というより何故私はこんなことに付き合っているのか。激しい既視感。初めて王都に来た時も同じだった気がする。違うのは
「僕も付き合おう。やっぱりリーニエが心配だからね」
その原因が何食わぬ顔で私に賛同していること。見ればうんうん、と頷いている。そしてもっともらしい理由としてリーニエを利用している。今この場にはリーニエはいない。村で留守番中。当然本人は付いてきたがっていたのだが、今回の王都訪問の理由や状況を考えるとリーニエの面倒まで見る余裕はないため却下した。私はともかく、リーニエはまだ村と聖都以外では人間社会で活動していないのもある。お土産という名の報酬を約束することで何とか収めた形。本当に分かり易い子だ。そして
「あんたは国王が怖いだけでしょ。相変わらず情けないわね」
「君だって初めてここに来た時、謁見が嫌で僕を置いて逃げようとしてたじゃないか!?」
「当たり前じゃない。あの時は騙されて連れてこられたんだから。勇者失格ね」
「こらこら。衆人の前ですよ。喧嘩は家に帰ってからにしなさい」
それ以上に分かり易いのが目の前の情けない勇者様。前回同様、国王に会うのが怖いのだろう。体が震えてしまっている。本当に情けない奴。それに反論してくるが、私はとうに国王など克服している。故に私が問題としているのは新たな火種。
(ゼーリエって奴……間違いなく私にとっては天敵じゃない……!)
これから行われる式典の主役である大魔法使いゼーリエ。その仔細をハイターから聞かされて以来、私は憂鬱だった。その経歴はまさに私にとっては悪夢に等しいもの。真偽のほどは確かではないが、神話の時代から生きているとされるほどの長寿のエルフ。それが事実だとすれそのゼーリエとかいう奴は単純にあのフリーレンを超えていることになる。
さらに最悪なことに、ゼーリエはあの人間の大魔法使いフランメの師匠らしい。人間の魔法使いの中でも天才と言われた存在。実際私もそいつが遺した防護結界のせいでグラナトを攻め落とすことができなかった。そしてとどめとばかりに告げられたのが、そのフランメがフリーレンの師匠だということ。
ふざけているのか。意味が分からない。魔族にとっては悪魔のような系譜だ。その元凶、大本となる魔法使いがここにやってくる。
逃げるしかない。恥も外聞もない。生き延びることが私の至上命題。最近その感覚から遠ざかってしまっていたが、ようやく原点を思い出した。ヒンメルを王都に連れ出すという役目も果たした。なら後は知ったことではない。後は生臭坊主と筋肉馬鹿に任せればいい。だというのに
「往生際が悪いぞ、二人とも」
筋肉馬鹿ことアイゼンが私たちに間の割って入ってくる。それを見守る、ではなく監視しているハイター。私を逃がさないようにしているのだろう。本当に良い性格をしている。こいつの口車に乗ってしまったのがそもそもの間違いだった。嘘が服を着て歩いているような奴。
「あんたが言うんじゃないわよ。聞いたわよ。ヒンメルと一緒に処刑されかけたんでしょ」
「問題ない。俺は戦士だからな」
「体が震えてるわよ。本当に臆病者なのね。そもそもあんたの首なんて誰も落とせないんだから怖がる必要なんてないじゃない」
「怖いものは怖い。俺も帰りたくなってきた」
「ならみんなで逃げようか。僕たちはパーティだからね」
「私を一緒にしないで頂戴」
「はっはっはっ! これは困りました。昔を思い出しますね」
見ればヒンメルだけでなく、アイゼンも体が震えている。一体何の冗談なのか。臆病だとは言っていたがまさかここまでとは。例え断頭台にかけられても首なんて落としっこない体をしているくせに何を怖がっているのか。そしてそれに迎合するようにこの場を脱しようとするヒンメル。手慣れている。本当にこいつらは勇者一行なのか。当然のようにそれに加えられている自分。煽るハイター。
最初に訪れた時を遥かに超える騒がしさの中、再び私の命運を懸けることになった王都訪問が始まったのだった――――
「初めて見るが、法衣が似合っているなアウラ」
断頭台に送られるかのような憂鬱さで王都を歩いている中、アイゼンがふとそんなことを言い出す。そういえばこいつは見るのが初めてだったか。
今、私は赤いローブではなく、法衣を纏っている。怖気が走るが隣にいるハイターとお揃いだ。聖都に滞在する時の格好なのだが、ここ王都でもそれを流用している。
「世辞は良いわ」
「そんなことはありませんよ。聖都でも評判なんですから」
「ローブを被らないだけマシね」
その理由はこの法衣を纏っていれば、ローブを被って角を隠さなくていいと許可を得たからに他ならない。ハイターの力もあったのか、それとも聖都での私の働きのせいか。それを条件に私はローブを纏わなくとも王都で活動できるようになっている。その点においては有用だろう。ローブを纏ったままでは動きにくく、前が見えづらい。何よりもあの赤いローブは目立ちすぎる。下手をすれば角よりもそっちの方が今は人目を集めてしまっている。
「確かに似合ってるけど、僕はやっぱりあのドレスの方が……」
「何か言った?」
「何でもありません」
何か言いたげな目でこちらを見つめていたかと思えばそんな戯言を口にしかけるヒンメルを黙らせる。こいつは私を何だと思っているのか。着せ替え遊びならリリー……はもうそんなことに付き合ってくれる歳ではない。リーニエはそもそも遊んでくれない。ドレスは着ているが、あれは単純にあの子の嗜好。その証拠にリーニエに合わせた法衣をハイターが用意したようだが結局着てくれなかった。ようするにこいつの趣味に付き合ってくれるのはあのエルフぐらいだろう。
「でも本当に魔法使いが多いわね……ざっと見ても百は超えるわね」
「そうなのかい? 確かにそれっぽい恰好をしている人は多いけど」
「俺たちは魔力探知ができないからな」
「魔族である貴方には余計にそう感じるのかもしれませんね」
気を取り直しながら目の前に広がっているお祭りのような光景に目を向ける。元々ここ王都は人の数が多く喧騒なのだが、今日は特にそれが際立っている。やはり式典が影響しているのだろう。その証拠にその多くが魔法使いだ。魔力探知を使わなくても分かるほど。なるほど。中央の魔法使いがほとんど集まっているというのもあながち嘘ではないらしい。しかし私にとってはそれは煩わしいことでしかなかった。何故なら
(鬱陶しいわね……こっちは見世物じゃないのよ)
それらの視線が私に集まってしまうのだから。それは私が魔族だから、というのもあるだろう。初めの頃に比べれば私の存在も認知されてきているだろうが、そもそも角が生えた魔族が王都にいる時点でおかしいのだから。だがそれはいつものこと。特段気にすることではない。その一番の理由は魔力にある。大魔族である私の魔力に怯え、恐怖しているのだ。当たり前だろう。並みの魔族でも私を前にすれば平伏するしかないというのに、人間の魔法使いであればなおのこと。本来ならその光景に愉悦を感じるところだが、今の私には何の意味もない。精々見世物小屋の動物の気分。
「おや、どうかされましたかアウラ? やはり村が恋しくなってきたのでは?」
「……ええ。あんたの顔を見なくて済むしね」
「これは手厳しいですね。どうです? あちらに魔導書を扱っている露店があったので行ってみませんか?」
「ずるいぞハイター! 僕が誘おうと思ってたのに」
「罪な女だ」
まるでそれを見越したかのようなタイミングでハイターが私に絡んでくる。鬱陶しいことこの上ない。しかし同時に周りの魔法使いたちの注目が薄らいでいく。恐らくはこいつの魔力のせいだろう。今では慣れてしまったが、こいつの魔力量は私に匹敵する。悪い冗談のような存在。それが並ぶことで私の魔力の印象がいくらか緩和されたのだろう。もしくは勇者一行の注目度のせいか。もしかしたらこれを見越して私に同行したのかもしれない。考えすぎかもしれないがこいつならあり得る。
そのままなし崩し的に王都の魔法店巡りが始まってしまう。初めは私の魔導書巡りだったのだが、いつの間にかハイターは酒屋に乗り込み、昼から飲もうとする始末。ヒンメルは頼まれてもいないのにイケメンポーズを民に披露し、アイゼンは子供たちに群がられている。全く収拾がつかない有様。ようするに平常運転だった。
(やっぱりそう上手くはいかないわね……)
ヒンメルたちのお守りをするのも疲れたので一人ベンチで休憩しながら行き交う人間たちに目を凝らす。同時に魔力探知も。結果は空振り。ここに来てからずっと探索しているが、やはりあのエルフの姿はない。目算が甘すぎたか。そもそもあのエルフが来れば少しは騒ぎになるだろう。腐っても勇者一行なのだから。魔力の偽装がなければ魔力探知で一発で分かるだろうに。まさかこんな形で魔力の偽装が機能するとは。もしかしたらこれも偽装のメリットなのかもしれない。もっともそれが分かっても魔族の私は倣おうとは思わないが。それができるのはリーニエだけだろう。そんなことを考えていると
「アウラ様! お久しぶりです。また王都に来られたのですか?」
そんな女の声がかけられる。一体誰が。そう思って目を向けるとそこには見覚えのある顔がある。確か……そうだ。初めて王都に来た時に気まぐれで冤罪を暴いてやった男の妻だったか。やはり人間の顔は覚えにくい。ここ最近はその数が増えてきたのもあるだろう。
「……ええ。神官としての仕事じゃないけどね」
「そうですか。ぜひまた家へいらして下さい。家族の者たちも喜びます」
「そう……ま、気が向いたらね」
「はい。天秤の加護がありますように」
そう告げたかと思えば、その女はその場で私を拝み始めてしまう。それを前にしてただ呆れるしかない。そんなことをしても加護などないというのに。まさか王都でまでこんな目に会うとは思わなかった。魔族である私を女神扱い。どれだけ愚かなのか。気づけばその女だけではなく、何人かの取り巻きの人間も私に向かって祈っている。その手には天秤を模したアクセサリがある。最悪だ。さっきまでとは違った意味で見世物小屋に入った気分。ようやくそれが終わって解放されるも
「……見たか? 拝まれていたぞ」
「凄いだろう? 僕も初めて見た時は驚いたんだ。流石は天秤のアウラだね」
「これもひとえに私たちの努力の賜物ですね」
「あんたたちが勝手にやっただけでしょ」
今度はもっと面倒な奴らに絡まれてしまう。失敗だった。まさかこんなタイミングで戻ってくるなんて。案の定それをからかわれてしまう。王都でも私の天秤の二つ名が広まってしまっているのだろう。その元凶である男たちはまるで自分が育てたとばかりにご満悦。一体何の冗談なのか。
「いえいえ、そもそもきっかけを作ったのは貴方ですよ、アウラ? ここでの大立ち回りのせいであなたの偉業が広まることになったのですから。信徒の中にはここを聖地扱いする者もいるくらいですから」
「新しい宗教……アウラ教かな?」
「なら俺たちも祈るとしよう。加護がもらえるかもしれん」
「そうだね」
「あんたたち……処刑されたいわけ?」
「魔法でなくても、その内本当にそれができるようになるかもしれませんね」
あろうことか、そのまま私を拝み始めるヒンメルとアイゼン。ふざけている。こいつらはどこまで私を馬鹿にしているのか。何で私がそんな宗教を立ち上げなくてはいけないのか。あり得ない。仮にあったとしてもこいつらは即座に極刑だろう。ようやくあの国王の気持ちが分かった気がする。ハイターはハイターで意味が分からないことを呟いているだけ。
私にとっては長すぎる、胸焼けするぐらいの王都巡りはそこでようやく終わりを告げたのだった――――
「久しいな、よくぞ参った勇者一行。こうしてお主らが揃うのは魔王を倒して以来かの」
いつかと変わらぬ尊大な態度のまま国王がそうヒンメルたちに声をかけてくる。私はいつも通り仕方なく頭を下げながら聞くしかない。横目で見ればヒンメルたちも頭を下げている。どうやら今回は処刑は免れそうだ。今私たちは式典の前に王に謁見している最中。私からすれば巻き込まれる理由もないのだがここまで引っ張り込まれてしまった。
「私は勇者一行じゃないわよ」
「こらこら空気を読みなさい」
ぽつりと聞こえないように愚痴をこぼすも、ヒンメルに嗜められてしまう。以前も同じようなやり取りをした気がする。しかし状況は少し異なっている。まずハイターとアイゼンが増えていること。さらに王の取り巻きの連中の顔ぶれも変わっている。何名かは見覚えはあるが、様変わりしている。何より違うのは多くの魔法使いたちがいること。ようするに私たちの謁見は式典の前の前座のようなものらしい。いい迷惑だ。
「ふむ、魔法使いフリーレンの姿が見えぬようだが……」
「申し訳ありません。フリーレンは魔法の探求の旅に出ておりまして、残念ながら今回は」
「そうか。あやつこそ、この催しには相応しかったのだが……仕方があるまい」
そして当然話題はここにはいないあのエルフのことに。勇者一行の中で何故かあいつだけがいないのだから。ここにもいないということはやはり来ていないのだろう。そもそもこの催しのことを知らなかったのかもしれない。
(物は言いようね……)
流れるように答えるヒンメル。きっと事前に用意していたのだろう。魔法探求か。魔法収集の旅なのだから嘘ではないのだろうが、やはり違和感は拭えない。今回は、と言っているが次回があるのかすらも怪しい。その頃には国王は間違いなく代替わりしているだろう。
「だが代わりに新しい面子が加わっておるな。久しいの、断頭台のアウラ。いや、今は天秤だったか」
「どっちでもかまわないわ」
「っ!? ア、アウラ……!?」
ここでもそれをからかわれていい加減うんざりしながらそう答えるもヒンメルがどこか慌てた様子を見せている。アイゼンもそれは同じなのか体が妙な動きをしている。そういえばこいつらは知らなかったのか。
「よい。余の方から言葉遣いは許してある。魔族に礼節を求めるのもおかしな話だ」
その答えを国王が口にしてくれる。そう、私は国王とタメ口で話すことが許されている。そもそも国王とは既に何度も謁見している。ハイターの仲裁という名の口車によって私は国王を克服しているのだ。それをようやく知り、ヒンメルはどこか恨めしそうにしている。きっと羨ましいのだろう。せいぜいタメ口をきかないようにアイゼンと一緒に気を付けるといい。
「先日の王都での働き、大儀であった。聖都での活躍も耳にしている。ずいぶん助けられているようだな、僧侶ハイター」
「それはもう。彼女がいれば私も安心して隠居できるというものです」
「あんたね……」
王を前にしても平常運転のハイターには呆れるしかない。もう隠居を考えているらしい。ヒンメルとは真逆でこいつは自分の歳を多く見積もっているのではないか。私を利用するだけ利用して自分は引退するつもりなのか。魔族ですらもう少しマシだろう。
同時にどうやら国王は私を労っているらしい。恐らくは私の王都での働きのせいだろう。この五年ほど私は聖都だけでなく、ここ王都でも活動している。もちろん裁判関係ではあるが、その趣は聖都とは少し異なる。
それは政治に関わる人間の汚職、不祥事に関するもの。ようするに私の
だがその内容は私には理解できないものばかりだった。自分ではなく、ただ誰かに命令して目障りな相手を殺させる者もいれば、どう考えても労力に見合わないのに他者を追い落とそうとする者。ハイター曰く、悪意に振り回された者たちばかり。私も間接的にそれに振り回されてしまっている。
私の存在が明るみに出るや否や、多くの人間たちが私に接触し利用しようとしてきた。ある者は相手を貶めるために、ある者は自らの保身、命乞いのために。
その間に立ったのがハイターだった。王の厳命もあり、私に接触するにはハイターの許可が必要となっている。私が悪意ある者に利用されないために。何故なら私は悪意が理解できないから。どの人間が悪意を持っているかなど知る由もない。結果的にその辺りはハイターに丸投げになっている。それも面倒なので私自身がそれを理解できるように学んでいるが、道程は遠いだろう。しばらくは生臭坊主の思惑に乗っていくしかない。
ようするに私は以前の謁見の時にはできなかった、自らの有用性を示した形になるのだろう。それは国王にとっても想像を超えていたに違いない。ある意味国王は私に騙されてしまっているとも言える。その報酬がタメ口の許可でもあるのかもしれない。
気づけば話題はヒンメルの縁談話に移っている。衆目の前でそれを晒されるのは流石に堪えるのか、ヒンメルは四苦八苦している。流石に私がこの場にいるのでいつもの手が使えないのだろう。いい気味だ。しかし本当に往生際が悪い奴だ。このままでは人間で言う清い体、女を知らないまま生涯を終えかねないだろうに。そういう意味ではハイターより神父に向いているのかもしれない。
「ふむ……ちょうどよい機会だ。何か褒美を取らせよう。アウラよ、何か望みはあるか?」
一通り話が終わったのか、再び私に話題が戻ってくる。その内容に思わず面食らってしまう。褒美。魔族の私が人間から。少し前には考えられなかった事。しかも人間の国王から。本当に私の運命はどうなっているのか。
しかし、いくら考えても何も思い浮かばない。私を解放してほしい、なんて望みが叶わないのは分かり切っている。ならそれ以外で何が欲しいのか。改めて考えるも、やはり出てこない。一体どうしてしまったのか。
魔法に物に権利。手に入れるべきものは無数にあるべきなのに、いざ聞かれても答えられない。
どうせヒンメルが死ぬまでは身を隠している手筈だったのだ。それ自体は問題ではない。何より私はこの服従させられた生活の中で新たな力を得てもいる。ただの魔族のままでは得られなかった、魔王様ですら持ちえなかった力。それがあるからこそ私はこうして国王の前に立ち、そしてこれから現れるであろう存在を自覚しながらも平静でいられる。そう言った意味でもこれまでの時間は無駄ではなかったのかもしれない。本当にあり得ないことだが、
「……特にないわ。処刑されなければ何でもいいわ」
命の危険を差し引いてもなお、私は今の生活にさほど不満がなくなってしまっているのかもしれない。
「なるほど、お主らしい。ならこちらで考えるとしよう」
それをどう受け取ったのか、国王はそう結論づける。まあいいだろう。リーニエではないが、もらえるものはもらっておいて損はない。役に立たないものでなければ、だが。そんな下らないことを考えた瞬間
絶大な魔力が、その場の全てを支配した――――
「――――っ!?」
まるで雷が落ちたかのように、その場の全ての者が体を震わせ、飛び跳ねかける。いや、全てではない。その証拠にヒンメルやアイゼンは動じていない。いや、何かを感じ取ってはいるようだが私やハイターほどではない。集まっている魔法使いたちもその魔力を感じ取り戦慄し、その視線を一点に集中させている。知らず私もそこに目を向けてしまう。
「ふむ……どうやら主賓がやって来たらしい。通すがよい」
周囲の様子から事情を察したのか、国王の命令によって扉が開かれる。厳かな扉がゆっくりと開かれると同時にそれが姿を現した。
遠目に見れば小柄な少女のように見える出で立ち。だがその尖った耳が彼女がエルフであることを証明している。その風貌とはかけ離れた不敵な笑みと共に悠然と彼女は歩きはじめる。
それが大魔法使いゼーリエとアウラ、勇者一行の初めての邂逅だった――――