ヒンメルはもういないじゃない【完結】   作:HAJI

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第九十七話 「敗北」

勇者ヒンメルの死から二十八年後。

北側諸国。グラナト伯爵領。

 

 

「ようやくここまで辿り着けましたね」

「ああ、一時はどうなることかと思ったぜ」

 

 

先を歩いている二人がどこか感慨深げにそんなことを言っている。その視線の先には城門があった。長い城壁に囲まれた街。いや国か。グラナト伯爵領。最後に訪れたのは八十年以上前だったか。外からでもそれが変わっているのが見て取れる。でも一番違うのが私自身。まるで拘束魔法がかけられているかのように体が重い。気が重い。できるならその場で座り込みたいほど。

 

 

「何をしているんですか、フリーレン様。早く並びますよ」

「……うん」

 

 

そんな私の気持ちなんてお見通しなのだろう。いつものように容赦なく私を引っ張っていくフェルン。本当にお母さんみたいだ。どうしても頭が上がらない。でも仕方がないだろう。

 

 

「まだ乗り気じゃないのか。いい加減あきらめたらどうなんだ?」

「大人には色々あるんだよ、シュタルク」

「ならちゃんとして下さい。だらしないですよ」

「……はい」

「どっちが大人か分からねえな」

 

 

これには深い、大人の事情があるのだから。それを知らない、子供のシュタルクには少し早い話だろう。背筋を伸ばしながら大人になるということがどういうことかを教えてあげる。きちんとフェルンの言うことを聞くこと。それがこのパーティで大人になるということなのだから。

 

 

「それにしても長い列だな。みんな入国待ちか、これ?」

 

 

背伸びをして列の先を覗いているシュタルク。私には見えないが、城門までの距離を考えれば、長い行列ができているのだろう。グラナト領に入るための行列。入国に審査があるとしてもここまでになるのは珍しい。少なくとも私は見たことがない。考えられるのは

 

 

「ヴァールの関所と同じですね。みなさん、フリージアに向かおうとしているんでしょうか」

 

 

グラナト領に隣接している、フリージアのせいだろう。先の関所のように、騙されてフリージアに向かおうとしている人間たちが絶えないのだろう。グラナト伯爵からすれば頭が痛いに違いない。単純にフリージアが攻めてくるよりも対応が難しいかもしれない。それはともかくとして

 

 

「ということは、ここでもしばらく足止めになりそうだね。残念だけど」

「一番はフリーレン様の癇癪が原因でしたよね。今度はもう知りませんからね」

「ごめんて」

 

 

一筋の光明が見えたかと思ったが、それは完全に藪蛇だった。もう少し悪あがきができるかと思ったが、私はもう前科持ちだった。そのおかげで三日は稼げたが、もう同じ手は通じないだろう。そんなことをした暁には、どうなるか分かった物ではない。思わず体が震えてしまう。

 

 

「それは俺も御免だけど、実際どうするんだ? フリージアに行くにはここを通らなきゃいけないんだろ? 戦争にはなってねえみたいだけど、素通りさせてもらえるとは思えないぜ?」

 

 

そんな私たちのやりとりに呆れながらも、至極真っ当なことをシュタルクは口にする。そう言われればそうか。フリージアに入国するための方法は用意していたが、その前にこの関門を突破しなければいけないのだから。しかしどうしたものか。昔だったら隠密か強行突破するところなのだが。

 

 

「そうですね。ですが問題ありません。そのためにフリーレン様がいるんですから」

「え? 私?」

 

 

そんな心配はいりませんとばかりに胸を張っているフェルン。どうやら私のおかげらしいが全く心当たりがない。一体何のことなのか。

 

 

「話を聞いてなかったんですか? 何のためにヴァールでフリーレン様の身分証を作ったと思ってるんです?」

「何のこと? ごめん、ずっと泣いてて記憶が曖昧だったから覚えてない」

「マジかよ」

 

 

だが覚えていなくて当然だった。私には三日三晩の記憶がないのだから。文字通り、記憶喪失になっている。なかったことにしている、と言ってもいい。その間に私は何かをさせられていたらしい。流石はフェルン。泣き続けている私を連れて行動しているとは。かつてのヒンメルたちですらできなかった偉業だろう。

 

 

「本当にだらしない方ですね、フリーレン様は。これがその身分証です。大事な物なので失くさないでくださいね」

 

 

大きなため息とともに、鞄から一枚の紙を取り出してフェルンは私に手渡してくる。そこには私の名前と職業。それに日付などが記されている。城主のサインと印もある。私の身分を証明する物。

 

 

「ふぅん……今はこんな物があるんだね。知らなかったな」

「じゃあ今までどうしてたんだよ。国境を渡る時には必要になるだろ?」

「そうなの? 全然気にしたことなかったな。大体冒険者っていうのは荒くれ者、根無し草が多いからね」

「フリーレンが言うと説得力が違うな」

 

 

何故かそこで納得しているシュタルク。それはともかく、今まで特に困ったことがなかったのは本当だ。いくら国境と言っても端から端まで城壁で区切ることはできない。抜け道なんていくらでもある。魔法使いの私なら、最悪飛んでいくこともできるのだから。だが今はそういう時代なのかもしれない。北側は魔王軍の残党が多い分、余計に厳しくなっているのかもしれないが。ここがその最たる例だろう。

 

 

「そういうシュタルクは持ってるの? ずっとアイゼンと引き籠もってたんでしょ?」

「何か言い方に棘があるな……持ってるよ。俺も小さい頃、ヴァールで師匠に連れられて作ったよ。いずれ必要になるからってな」

「流石アイゼン様ですね。シュタルク様の将来までちゃんと考えてらっしゃたんですね」

「……そうだね」

 

 

ちょっとした意趣返しのつもりが、またしても藪蛇だった。どころかとんでもない地雷を踏んでしまう。悪意のないフェルンの言葉が胸に刺さる。おのれアイゼン。私だってちゃんと弟子のことを考えてるのに。ただこれはそう、ハイターとの連帯責任でもある。ハイターもまたフェルンの育ての親なのだから。だが

 

 

「そういうフェルンはどうなの? フェルンも身分証を作ったの?」

「私は以前取った三級魔法使いの資格があるので。ハイター様にも身分証代わりになるので受けるように言われていたんです」

「そうなんだ。なら私も誘ってくれればよかったのに」

「誘いました。でも面倒だからって断られたんです。覚えてないんですか?」

「……ごめん」

「どれだけものぐさなんだよ」

 

 

やっぱり私は私だった。泣き喚いたわけでもないのに、すっかり忘れてしまっていた。ハイターの奴、それならそうと言ってくれればいいのに。もしかしたら言っていたのかもしれないが。さっきまでとは違う意味でどんどん肩身が狭くなっていく。

 

 

「だって人間の管理団体って頻繁に入れ替わるからね。いちいちそんなのに入ってらんないよ」

 

 

せめてもの言い訳をする。私にとっては紛れもない事実。人間の管理する団体は入れ替わりが激しい。数十年で入れ替わってしまう。その度に入り直していたらきりがない。そもそも覚えていられないだろう。

 

 

「この身分証だって百年もすれば使えなくなるだろうし、もっと経てば紙だから読めなくなるだろうね」

「どんなスケールの話だよ。国が滅んじまうじゃねえか」

 

 

シュタルクの発言が私の老人扱い認定に引っかかりかけるも、今回は見逃すことにする。この身分証も百年もすれば使えなくなる。いや、領主や国が変わればもっと早くなるかもしれない。もっと時間が経てば、字は薄れて読めなくなり、最後には紙そのものがなくなってしまう。手間はかかるが、石板の方がよっぽど信頼できる。流石に持ち運びはできないので身分証にはならないだろうが。だがふと思い出す。シュタルクの、国が滅ぶという言葉によって。

 

 

『フリーレン。人間が凡そ文明と呼べるものを築き上げてから長い年月が経った。これから先は時代が加速するぞ』

 

 

千年以上前。師匠(せんせい)の遺言をゼーリエに届けに行った時。その気紛れの散歩に付き合った際のやり取り。私ではなく、ここではないどこかを見ながらゼーリエはどこか楽しそうにそう告げてきた。

 

 

『たった千年だ。たった千年で人間の時代がやってくる』

 

 

人間の時代。それがすぐそこまでやってきているのだと。その時の私には、ゼーリエが何を言っているのか分からなかった。でも今なら分かる。その時代を作る人間たちと、ヒンメルたちと出会えたのだから。

 

 

エルフ(わたしたち)は人間に追い抜かれる。鍛錬を怠るなよ、フリーレン』

 

 

そう忠告されたのを覚えている。その先には魔王のこと、魔法のことを語っていたが、きっとそれだけではなかったのだろう。人間たちの時代、歩みに置いていかれるなと、あいつは言っていたのだろう。師匠(せんせい)が私が間違いを犯すことを予見していたように、ゼーリエもまた。あいつの場合は直感か。本当に子供みたいなやつだ。

 

 

「でも、そうだね。せっかくフェルンが作ってくれたんだし、これからは五十年ごとぐらいには更新しようかな。それくらいなら忘れないでできそうだし」

 

 

でも今回はそれに倣うとしよう。もっと人間を知るために。フェルンたちと足並みを揃られるように。それがヒンメルの死から学んだ、私の答え。間違いを犯しても、先に進むために。同じ間違いを繰り返さないために。ヒンメルならきっとそうするからだ。

 

 

「それでも長すぎます。私がいる内には十年ごとにはしてもらいますから」

「そんなに早いと覚えてられないよ」

「前途多難だな」

 

 

でもそれはフェルンからすればまだまだだったらしい。私なりに頑張っているが、中々難しい。旅の道中の滞在時間を決める権利を持っているフェルンに逆らうことはできない。やっぱり少し早まったかもしれない。そう後悔しながらも、少しずつ進んでいく行列を待ちながら、二人と下らないやり取りを続けることになるのだった────

 

 

 

「フェルン三級魔法使いか……入国の理由は?」

「えっと、もうすぐ一級魔法使いの試験があるので、それを受けるためです」

「……いいだろう。次」

 

 

強面の、かくあるべきといった衛兵の審査をフェルンは無事通過する。事前に入国の理由も考えていたのだろう。流石はフェルンだ。それでも緊張は隠しきれていない。こういうところはまだまだ子供なのだろう。

 

 

(なるほど……資格にはこういう使い方もあるのか)

 

 

フェルンではないが、一級はともかく、私も取っておいた方がいいかもしれない。聖杖の証もあるが、それを知っている人はもうほとんどいないだろう。ヒンメルたちですらそうだったのだから。それが今までの私が魔法使いである証だったのだが。やはり時代に置いて行かれてしまっているのだろう。なら少しでも追いつかなければ。気づけば魔法使いの証だらけになってしまいそうだが仕方ない。

 

そんなことを考えているとシュタルクも入国審査を通過していた。どうやら魔物の討伐をこなすために来た冒険者、という設定らしい。魔族でもないのにこんな嘘をつかなければいけないことに思うところはあるが仕方ない。

 

 

「次!」

 

 

そのまま見様見真似で身分証を提示する。理由はフェルンと同じでいいだろう。魔法使いなのは身分証にも記されている。いきなり一級は変なので、三級にしておくか。師匠が弟子よりも階級が低いなんて。やはり私も取るべきかもしれない。

 

 

「……エルフか。珍しいな。名前は……フリーレン?」

「? そうだけど……?」

 

 

理由を聞かれると思って準備していたのに、それがやってこない。代わりに衛兵は身分証と私の顔を見比べている。エルフが珍しいのだろうか。それとも身分証に不備があったのか。

 

 

「あの、ご存知ありませんか? 勇者様一行の魔法使いの……」

 

 

それを見かねたのか、フェルンがそう付け加えてくれる。ある意味、私にとってはこれ以上ない身分の証。エルフが珍しいことに加えて、魔法使いであり同じ名前の身分証。これで疑われるのなら、もうあきらめるしかないだろう。個人的にはそれでも構わないのだが、フェルンたちの手前それは言わないことにするも

 

 

「……少し待っていろ」

 

 

衛兵はそのまま詰所へと戻っていってしまう。どうやら思ったよりも勇者一行の魔法使いの威光は残っていたらしい。

 

 

「何だか大事になってきたな。やっぱり黙ってた方が良かったんじゃないか?」

「でもちょうど良かったかもしれません。この方がきっとフリージアにも行きやすくなります。グラナトの人々からすれば、フリーレン様が魔族の国であるフリージアに向かっているのは喜ばしいことのはずですから」

 

 

勇者一行の魔法使いの威光を利用すること。それがフェルンの作戦。それは先のヴァールの関所での再現だった。そこでは私が勇者一行の魔法使いであることが分かった途端、関所の通行を許可された。私が北側の現状を憂えてのことだと勘違いされたからだ。ここグラナトでもそれを利用すれば、フリージアへ通行することができる。本当は日記を渡すためだと言っても信じてはもらえないだろうが。

 

 

「悪知恵をつけたね、フェルン。昔はあんなに良い子だったのに」

「私はそんなに大昔から生きてはいません」

「まあいいじゃねえか。ってことはまた大勢に歓迎されるってことか」

「それが嫌なんだよ。私、ああいうのあまり好きじゃないって言ったでしょ」

 

 

思い出すのは大袈裟に送り出されてしまった記憶。ヒンメルたちはそれが好きだったが、私はどうしても馴染めなかった。見世物になっているような気がしてしまう。ヒンメルならイケメンな自分を見てもらうためだと楽しめるのだろうが、あいにく私はそこまでナルシストではない。知らず憂鬱になりかけるも

 

 

「────お前が葬送のフリーレンだな。大人しくしろ。まさか本当に現れるとはな」

 

 

それを消し飛ばして余りある、手荒な歓迎を私は受けることになってしまった。

 

 

気づけば周りを衛兵に囲まれてしまっている。かなりの数だ。それもその所作から見ても手練ればかり。魔法使いも含まれている。その剣や槍の矛先が私に向けられている。

 

 

「どうしてこんな……? フリーレン様、もしかして昔ここで何か悪事を働いたんですか?」

「分かんない。まだ何もしてないよ」

「何かやらかす気だったのかよ。そんな冗談言ってる場合じゃなさそうだぜ」

 

 

慌てたフェルンの言葉に本当に心当たりがない。まだ何もしていないはず。シュタルクもいきなりの事態に身構えている。流石は戦士。ちゃんとフェルンの前に立っているのはアイゼンの教育の賜物だろう。だが

 

 

「フリージアからの要請で、お前に拘束命令が出ている。目的は和睦交渉の妨害だな」

 

 

衛兵の、恐らくは兵長と思われる男がそう私に告げてくる。私がこうして取り囲まれてしまっている理由。しかしそのどれも全く身に覚えがない物ばかり。

 

 

「フリージア……? 和睦交渉……? 一体何のこと?」

「とぼけるな。大方フリージアの使者を狙ってきたのだろうが、正面からやってくるとは。なめられたものだな」

 

 

こちらの疑問にも全く聞く耳を持ってくれない。まるで操られてしまっているかのように。知らず自身が冷徹になっていくのを感じる。葬送としての自分に。その言葉の端々から可能な限り状況を推測する。フリージア。和睦交渉。使者。自分が拘束される理由。それを企む者。それらから導き出せる解答。それらを踏まえた上でこの状況での最善は何か。それを実行するよりも早く

 

 

「待ってください! フリーレン様はそんなこと」

「フェルン! 下がれ!」

 

 

私を助けるためだろう。その杖をフェルンは構えてしまう。その意味を解さぬまま。戦士としての直感か、それとも経験か。シュタルクはそんなフェルンを制止するも間に合わない。衛兵たちがその武器をフェルンにも向けようとした瞬間、

 

 

「────」

 

 

私は咄嗟に魔法を使ってしまった。反射にも近い反応によって。それは解呪の魔法。かつて出会ったばかりのフェルンにも使ったことがある物。それによって衛兵たちを無力化するために。私自身の油断もあった。ヒンメルの日記やこれまで出会った人々たちの話から知らず私は侮ってしまっていたのだ。アウラが魔族であることを。その支配がフリージアに留まっていない可能性を。少し考えれば分かるはずなのに。反省は後だ。今はできるだけ衛兵たちを傷つけずにこの場を脱することを。だがそれは

 

 

「貴様!! 何をやっている!! 今すぐ拘束しろ!」

 

 

すぐさま後ろ手に拘束されて叶わなくなってしまう。訓練された衛兵たちによって一切の無駄も容赦もなく。思わず抵抗しそうになるのを抑え込む。ことここに至ってそれは無意味でしかない。いや、状況をさらに悪化させかねない。

 

 

(これは、手応えがない……? 服従の魔法(アゼリューゼ)で操られてるわけじゃない)

 

 

それは奇しくもフェルンたちに解呪の魔法を使った時と同じだった。全く手応えがない。その証拠に衛兵たちに全く変化が見られない。むしろ私が魔法を使ってしまったせいで警戒させてしまっている。それはつまり、この衛兵たちは服従の魔法(アゼリューゼ)で操られているわけではない、ということ。

 

 

(これは、悪手だったね……)

 

 

こんな失態は一体いつ以来だろうか。限りなく最悪に近い悪手を自分は打ってしまった。衛兵たちに抵抗してしまうという、冒険者がやってはならない初歩の初歩のような間違いを。衛兵殺しは即極刑になるほど、衛兵に逆らうことは罪が重い。咄嗟だったとはいえ、それを犯してしまうなんて。フェルンに危険が迫っていたからだけではない。私の魔族への嫌悪、忌避感がその根源だろう。

 

そもそも勇者一行の威光を使おうとしたのが悪手だったのだ。なまじヴァールでの関所での成功がまずかった。それがここでも通用すると安易に考えてしまったのが間違いだった。この国の情勢を知らぬままに。フェルンではなく、私自身の油断と慢心。

 

 

「二人とも、手を出しちゃダメだよ。拘束するように命令されたのは私だけでしょ? 二人は関係ないよ」

 

 

唯一の救いは、衛兵たちの意識が私に向いてくれたことだろう。あの二人まで巻き込むわけにはいかない。本当なら力づくで逃げることもできるが、それをすれば本当に私はお尋ね者になってしまう。私はそれでも構わないが、二人は別だ。そうなれば二人は人間社会でまともに生きていくことができなくなる。それは絶対に避けなければいけない。師としても、親としても。

 

 

「……いいだろう。だが妙なことをすれば」

 

 

そんな私の意図が伝わったわけではないだろうが、衛兵たちはフェルンたちに向けていた矛を収める。だが人質であることは変わらない。今の私にできる最善は何もしないこと。そのまま拘束されたまま、私は連行される。

 

 

「フリーレン様……」

「……フェルン、ここはフリーレンの言う通りにするしかないぜ」

 

 

フェルンはそれを心配そうに見送ることしかできない。シュタルクもそれは同じ。まさかここまでとは。素直に称賛するしかない。この盤面を全て支配している断頭台の、いや天秤の主に。

 

 

私は勘違いしてしまっていたのだ。今のアウラがまさしく、第二の魔王であるということを。かつての魔王すら超える存在。魔法を使わずとも、人間を服従させ、操ることができるという恐ろしさ。本当の意味で、国の王であるアウラの力を。その前では、かつての勇者一行の威光でさえ霞んでしまう。

 

 

「…………やってくれたね、アウラ」

 

 

それが生まれて初めて。戦わずして、葬送のフリーレンが敗北した瞬間だった────

 

 

 

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