『 黒川 あかね 』という名前を僕は知っている。
この『
ただ、彼女もアクアやその他の周りの人間同様に
「………アクアやルビーは見た感じ、原作と大した変わったようにも見えなかった。それに、有馬かなも原作同様であると見られる」
「だか、『黒川あかね』はどうだ?………明らかに存在が異質すぎる。あまりにも、原作からかけ離れている」
たまたまこっちの方に助っ人で来た可能性はないだろうか?………いや、それはないだろう。この劇のチケットには、しっかりと彼女の名前が書いてある。北海道で活動する劇団『 マーガレット 』の一員として。
「…………ダメだ、考えれば考えるほど頭がパンクしてくる」
そもそもの話、この『
だか、おかしなことに僕の前世に当たるかもしれない人物がこの『
僕自身も、生まれたばかりの頃はアニメの世界に転生したものとばかり思っていた。だが、実際に生活していくうちに不可解な点ばかり見つかっていく。
───まるで、僕も元々この『
「ねぇ、レー君」
ゾワっと背中を悪寒が走った。
後ろからアイの声が聞こえた途端に僕の体はまるで蛇に睨まれたかのように固まってしまった。
「ど、どうしたの?」
「その『 黒川 あかね 』って人、知り合いなの?」
「え?」
「………答えてよ」
「…………いや、別に知り合いとかってわけじゃないよ」
「……ふーん、そっか」
アイの様子がおかしい。
目の焦点は合っておらず、それでいて僕の瞳をしっかりと見つめてくる。
まるで、お前を逃さんと言わんばかりに。
「………私さ、君と一緒に本物だって言える愛を見つけたいってずっと言ってきたよね」
「………あぁ、そうだね」
「………私はこの君への想いを本物だって心から言えることをずっと望んでるんだ」
「………でも正直、まだ言えたわけでもないのに君と
「………殆ど無理やりだったし、本当は嫌だったんじゃないのかなって」
「………こんな未完成の愛情なんて渡されても困るだけじゃないのかなって」
「あ、アイ?…………」
「………恋とかわかんないよ。愛してるだって難しいもん。けど、君のことは愛したいってずっと思ってるよ。多分きっと、この想いこそが恋なんだろうなって私にもわかってる。けど、私にはまだ完全にはわからない。だから君と、一緒に愛を育んでいって見つけたかった。私が納得できる本物の愛を」
「でも、君が他の女子と話してるところを見たらするとね? 心が凄いズキズキして涙が溢れてきちゃうんだ。………迷惑だよね、こんなの。私だってどうにかしなくちゃなって思ってても、どうしても抑えきれないんだ」
「自分で愛がわからないとか言いながら君からの愛を求めて、君に愛を捧げてる。そんな矛盾した自分にいっつも嫌気が差すんだ……」
「こんな曖昧な私は嫌かな……?やっぱりちゃんと好きって伝えてくれる女の子がいい?こんな矛盾だらけの私じゃ、君は好きになってくれないんだよきっと………」
な……にを…言ってるん…だ…………?
「なぁ、ちょっと待っ───────
「………素直に言えばいいじゃん!! 私のことなんか本当は好きになんかなれないんでしょ?!」
…………………て…………よ」
何を言ってるんだよ
「……私にとってはね、君と愛を見つけることが生きる目的なんだよ」
「………は?」
「生まれ変わって、過去の自分とどう向き合っていけばいいかわからない時に君は手を差し伸ばしてくれた。それが私にとって凄く救われたんだよ?」
「え、いやあの」
「そんな君を好きになりたいと思ったし、多分きっと今の私は君に恋をしてるんだと思う」
「……君と愛を見つける。それは多分殆ど叶ってたんだよ。現に私は君のことを独り占めしたくてしたくてたまらないほど君のことが好きなんだよ?」
「きっと君に面と向かって『 愛してる 』って伝えれたら、それはもう私は本物の愛を見つけれたんだなって思ってた」
「君に愛を伝えれることをずっと心待ちにしてた」
「……
「……君は私に愛を与えるってよく言ってくれた。愛を教えてくれるって言ってくれた。それが私には生きる活力をくれて、君と一緒に愛を証明するのが生きる目的だったの」
「君に愛を伝えて、君から愛を貰えたら他には何もいらなかったんだよ………」
やめてくれ
「アクアやルビーのことは凄く気になるよ? 会いに行きたいとも何度も思った。けど、もう私は星野愛であって星野アイではないんだよ? たとえ私の死に囚われていたとしても、私は
頼むからやめてくれ
「だから本当はアクアたちに会いに行こうとした時、そこまで乗り気じゃなかったんだ」
「でも、君が凄く会いに行ったあげたほうが良いって言うから行こうかなって思ってた」
「………その時に気づいちゃったんだ。君は私を心配してたわけじゃなくて、アクア達に会いに行くことが目的だったんだって」
「君はいっつもそう。私に愛を教えてくれるって言ってくれたから、何度も私には愛を伝えてくれたよ? けど、その愛はいつも私じゃない誰かに向いてた。私に私じゃない誰かを重ねてるのがわかっちゃったんだよ」
「…………それは」
そんなはずはない
僕はいつだってアイを愛していたはずだ
「………はっすに聞いたよ。私との約束を取り消した理由をね」
「………ぁ」
「あの事件の跡地に行くんだってね?君の記憶の鍵となるかもしれないあの場所に」
「………結局、君は私なんかよりも自分の記憶にしか興味がなかったんでしょ?」
「私なんか最初から見てすらない。結局、記憶について探るために使えそうだったから利用しただけなんでしょ?」
…………違う
「………私はそれでも別に良かった。たとえそれでも、嘘でも私を愛してくれるのならそれで私は満足できた」
「アイドルを推す人の気持ちがわかった気がするよ。嘘でも愛されたいってこんな気持ちなんだね」
「………ずっとそう思ってた」
「ねぇ、レー君」
「その『 黒川 あかね 』ちゃんって子が君の本当の愛を向けてる相手なのかな?」
………は?
「君は気づいてないかもしれないけどね? チケットに書かれたその名前を見つけた時の君の表情は凄く嬉しそうな顔をしてたんだよ? それはもう、愛おしいものを見つめるような視線でね?」
そんなわけが………
「………私、それを見たらなんだか全部が嫌になってきたんだ」
「リョースケ君もこんな気持ちだったのかな? 凄く凄く辛いなぁ………」
「ねぇ、もう終わりにしよっか」
「………は?何を言ってんだよ」
「………私のこと好き?」
「え、いやなんで急に……」
「いいから答えて?」
「……好きだよ、愛してる」
「そっか、なら一緒に死のう?」
「………な、なんでさ……?」
「私のことが好きなら一緒に死んでくれるよね?」
「い、いや、だからなんで……」
「……レー君が私以外の誰かを私越しに見ているのなら、こんな世界生きてても辛いだけだよ」
「だから一緒に死ぬの。それで一緒のお墓に入るんだ」
「好きな人と同じお墓に入れるってすごく幸せなことだと思うんだ」
そんなの
そんなの違うだろ………
「そんなの違うだろ………」
「何が違うの?」
「私の気持ちがレー君に分かるのかな」
「まさか、分かるだなんて言わないよね?」
「………分からないよ。分かることもきっとできないと思う。」
「……なにそれ」
この子はずっと前から壊れていたんだ。それはきっと、今の
彼女はとても愛に飢えていた。その結果があの子供達だ。愛を与えることにも与えられることにも飢え、そのくせして愛が何かを理解することができなかった。………そう、とても哀れな少女だったのだ。
そんな彼女に愛を教えたのは誰だ?
紛れもない、俺だろ?
死ぬ間際にようやく愛を知ることができた少女に俺はいろんな愛を与えてきた。彼女に言う誰かと重ねていたってのは俺にはわからない。少なくとも俺は彼女にしっかりと愛を与えてきたつもりだ。ちゃんと彼女自身に愛を伝えてきた。
────僕は、その責任を取らなくてはならない。
────だからできるだろ、俺。
────嘘じゃないってんなら、しっかりと示してやらなくちゃな。
「……
「けど、それでもこの気持ちは嘘じゃない」
「だから、よく聞け」
「いいか?よく聞けよ?」
「俺は、お前を愛してる」
「………ふぇ?」
「この気持ちは絶対に嘘なんかじゃない」
「で、でも、レー君は私に別の誰かを………」
「知るかよ、そんなの前世の俺が好きだった誰かだろ。今の俺は全くそいつのことなんか知らねぇし好きでもないっての」
「俺は今の俺が好きなのはお前しかいない」
「前世のことなんか全部どうでもいい」
「もうお前のことしか考えない」
「アイに愛を伝えることしかしない」
簡単なことだろ
「アイが信じないって言うんなら、信じてもらうまでひたすら愛を注ぐよ」
俺が彼女を好きな気持ちは決して嘘なんかじゃない
「もう、お前しか見ない」
きっと彼女に誰かを重ねていたのは本当だろう
「俺しか見させたくない」
でも、もうそんなことしない
「……存外、俺は独占欲が強いみたいだ」
あんなにも俺を好きでいてくれた君に
「でも、アイも独占欲が強いみたいだしお似合いじゃんか」
こんな酷いこをしてもなお、俺を好きでいてくれた君に
「けどまぁ、流石に中学生で初○験は不味い気もするから」
俺が惚れた君に
「……次する時は高校生になってからな?」
あんな悲しい顔を
「これからは毎日ずっと一緒にいよう。行きも帰りも放課後も」
二度とさせたくないのだから
「他の奴らになんか言われたって関係ない。今の
だから、もう一度だけ
「だからさもう一度だけ……」
僕を
「俺を」
「
「……もぅ、ほんとぃにばかだよ…」
「な、んで、そんなことぉいうのかなぁ……」
「そんなこといわれた、おこれないじゃん……………」
「すきがとまんなくなっちゃうじゃんばかぁ!!!!」
「ははっ、涙で顔グッチャグチャじゃん」
「
「ごめんごめんって」
「……れーふんのぜんへぇについえみつけふのてつだってあげるぅ」
「いや、すんごい呂律回ってないから一回落ち着いて??」
「…………
「何が?」
「
「あー、前世についてか。別に俺はもうアイだけを見るって決めたから特に気にしてないし、わざわざ見つけなくたって………」
「うぅん、みつける」
「お、おう?」
「それでれーふぅんがわたひぃにかしゃねてたひとみつける」
「それでねぇ、いまはぁわたしのほうがこぉんなにすきなんだぞぉってじまんするのぉ」
「えへへへへ」
「……いや、可愛い顔してえげつないこと言うね君」
「ならまぁ、今度の総合の時間アイも一緒に来るってことでいいのか?」
「うんっ!」
「りょーかい…………あ、一応言っとくけど?俺は本当にアイ一筋だからさ、それを胸に刻み込んでおいてほしい」
「えへへへへへへへへ♡」
「………こんなんでいいのか?本物の愛を見つけるとやらはさ」
「………うん、だからつぎはこのあいをもっとはぐくんでいきたいな」
「いい?………」
「当たり前に決まってんだろ?」
「好きっ」
「はいはい、俺も好きだよ」
「えへっ♡えへっ♡もっとぉいってぇ?♡」
「………かわいすぎる」
「しゅきぃ♡」
少し甘やかしすぎたか?あまりにも変貌し過ぎじゃないか?…………。
別に可愛いからいいんだけどさ。
まぁ、大丈夫だろうきっと。
────『 黒川 あかね 』のことも
きっと、今はだけはきっと許されるだろう
前世がなんだか知らないが、俺はアイと真正面から向き合うって決めたんだ。己の前世がどんなものであろうと、俺は彼女に嘘偽りない愛をこれから先ずっと伝えていきたい。
───この胸に広がる膨大な愛を
───俺は君に
───俺だけの
彼らはまだ中学生です。彼らはまだ中学生です。
………大事なことなので2回言いました。これがまだ物語の始まりの方ってどうなってるんですか?
近々、あかねちゃんを含めたその他の原作組と絡む話は書く予定です!! ただ、この世界はあくまでレー君がいることによってどこか歪になっていますので、本来の『推しの子』の世界と多少違うところが出てきます!! それでも良いよっ!って方は次回の話を見ていってくれると嬉しいです!!