それから彼女は自身の過去について沢山語った。
愛が知りたくて、ある男との間に子供を身籠ったこととか。自身には愛久愛海や瑠美衣って名前の子供がいること。その子供達が自分達と今同じ年齢であること。子供がいることがバレて、ファンに刺されたこと。
『アイ』について彼女は暫く語ったあと、僕の反応が気になるのか、しばらくこっちを無言で見つめてくる。
「……そんなに見つめられると困るんだけど?」
「あっ……ごめん…」
「いや別に怒ってるわけじゃないからいいよ」
「ただ、どうしてそんなに見つめてくるのかなって」
「いきなり、私は前世がありますよ!って言って、僕に引かれないか心配だった?」
「うん……受け入れてくれるって言ってたけど、普通こんなこと信じられないもん」
「僕は信じるよ」
「……ほんと?」
「うん、ほんと」
「うそだよ」
「嘘じゃない」
「……うそだ」
「嘘じゃないってば」
「…………うそだよぉ…」
自分で語ったくせに頑なに信じようとしない。
何度も否定するその声からは、僕が本当に信じているのを願っているようにも聞こえる。だから、何度も確認をするんだろう。その言葉が本当に嘘じゃないように。前世では嘘を吐き続けてきた彼女だから。
「…………」
無言でこちらを見つめる瞳には、少しばかりの涙が溜まっているように見える。やはり不安なのだろう。
だから僕は彼女に近づいて。
「大丈夫、嘘じゃない」
「信じてるよ」
「……ねっ?」
そう言って僕は彼女の頭を撫でる。
まるで幼い子供をあやすように。彼女を落ち着かせる。
「………っ…ぅん」
心なしか彼女の表情に安堵の感情が見て取れる。
僕は彼女をさらに落ち着かせるために言う。
「………僕もね、転生者なんだ」
自分の過去を。
「………えっ」
「と言っても、前世の記憶はほとんど覚えてないんだけどね?」
「ただ何となく前世があったってことと、どんなものがあったかを覚えてるだけ」
この世界についての情報を控えて僕のことを伝える。
と言っても、僕自身何も覚えていないため彼女に伝えられることは殆どないんだけどね。
「……だからレー君って変わってるんだね」
「うるさいなぁ……」
変わってるとは酷い言いようだなぁ。
一言、余計だそ?
「君の方こそ変わってるだろ」
「……レー君の方が変わってるもん」
「いいや、君の方が変わってる」
「レー君の方が!!!」
「愛の方が!!!」
「「そっちの方が変わってる!!!」」
「「………………」」
「「……っぷ」」
「「あははは!!!」」
互いにハモっていることに笑っているのか、頑なに相手が変わってるとは譲らないことに笑っているのかわからない。
けど、この空気が今は少し心地が良い。
「……そっかぁ」
「私と一緒なんだ、レー君」
「………みたいだね」
「……よかった、この秘密を打ち明けたのがレー君で」
「そりゃあ、僕だって僕でよかったなって思うよ」
「ねぇ……一つだけ手伝ってほしいことがあるんだけどいいかな?」
「どうぞ?僕にできることなら」
「私と同じ境遇で、秘密を共有することになる君にはこれからもお世話になると思うんだよねー」
「なんなら幼馴染だしー?」
「う、うん?」
「──だから、手伝って欲しいことがあるの」
「遠慮せず言ってごらんなさいな」
彼女は少し息を吸い、そして言う。
「私ね、本物の愛をまだ一回しか人に伝えたことないんだ」
「それに恋愛だってまだしたことがないし」
「だから私がもう一回愛を見つけたいんだ」
「愛してるを伝えたいんだ」
「ちゃんと本物だって言い切れる愛を見つけたい」
「君にはその手伝ってほしいなぁ……って」
「ダメかな?」
僕の瞳をじっと見つめて彼女は聞いてくる。
「…‥良いよ」
「なんなら僕が愛を教えてあげるよ」
「………えっ!?」
「……何を驚いてるかは知らないけど」
「僕は君のことを大切な友達だと思ってるからね」
「だから僕から君に『親愛』という愛を贈ろう」
「……し、しんあい?」
「そう、親愛」
「愛の形は沢山あるからね」
「僕から君には親愛という形の愛を贈るから、君は僕にその親愛を贈り返せるよう頑張ってみたらどうかな?」
「だから、まず君は僕からの親愛を理解できるようになってみたらどう?」
「これから愛を見つける為に頑張るんでしょ?ならこれは、練習みたいなものだと思ってくれて構わないよ」
「…………」
「……少し気が変わったかも」
「………へぁっ?」
「私、愛を見つけるのをやめようと思う」
「………いやいやいやいやいや!?!?!? さっきと言ってること違くないか!?!?」
「ごめん、言い方が少し悪かったかも」
「言い方?……」
「愛の見つけ方を変えようと思う」
「み、見つけかた?………」
「ただ見つける為に、
「え、いやできるの?」
「君は愛がわからなかったんだよね?」
「………今ね、一つまた新たにわかった愛があるんだ」
「…………はい?」
「だから、あのね?」
彼女は僕に近づき、目の前で止まる。
この距離だとあと数歩で唇同士が触れ合いそうだ。それぐらい近い。
そんなことを思っていると、彼女が僕の頬に触れた。
「………えっ」
彼女は一歩前に進み
そして
彼女の唇が僕の唇と重なった。
「…っ………////」
目の前には頬を赤らめた彼女の顔がある。
「………え????」
何が起きた?え?今、愛の唇が………。え?今のってキスだよね?え?なんで?夢?………いやそんなわけない目の前に愛はいるし、妙に顔が熱く感じる。……………いやいやいやいやいやいやいやいや!?!?!?!?!?!?!?!?何が起きた!?!?!?
頭の中で僕が悶絶してると彼女が言葉を紡ぐ。
「さっきレー君に手伝って貰いながら愛を見つけるって話したけど………あれやっぱなし!変える!」
「私、君のこと好きになっちゃった!」
「ふぇぇ?………」
ものすごい気の抜けた声が出てしまった…‥。
「あのね」
彼女は
「私、レー君と愛を見つけたい」
「君と愛を知りたい」
「本物だって言い切れる愛を見つけたいんだ!」
とんでもないことを口走る。
はぁ……。
彼女に色々問いただしてしまいたかったけどできそうにない。
だってそうだろう?
あんな無邪気でとびっきりの笑顔で言われたらさ。
と言うか、あの『親愛』云々のやり取りで僕のこと好きって思うようになったのか?とんだチョロインじゃないからそれじゃあ。
僕が彼女を全うな人間に戻した方がいいんじゃないか?これ。
「………別にそれだけじゃないしー」
「なんていうかなー?乙女心わかってないよねー?」
「………すんごい心にダメージがきた気がする」
「まぁ、理由は色々だよ」
「これから見つけていこうね?本物の愛を!」
「レー君」
「大好きだよ」
相変わらず彼女の笑顔はお星様のようであった。
過去編はあんまり伸ばすつもりもないのであと一話か二話で終わる予定です。……今んとこは結構コメディ要素多めですが、タグの通りの物語ですので楽しみにしていてください!