【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
1話
俺の名前は城ヶ崎賢志。関東に拠点を置く日本最大のマフィア、『羅威刃』のボス……だった男だ。
「良い子でちゅね~、
転生……なんて物を題材にした作品は数多存在するが、当然そんなモノはあくまで空想。実在する筈がない。人間、死ねば例外なく肉になるだけだ。
「何でちゅか~、
……だが、この状況はどうなってやがる? 何故俺は赤ん坊の姿で目の前の女、いや餓鬼に背負われてんだ? 京極組の一条との決戦に敗れ、道端で孤独にくたばった筈じゃないのか?
「ん~、
おい待て、それは俺に対する呼び名か? 何故俺にそんなイカレた名前を付けやがった? キラキラネームにも程があるだろ。仮に略したら『マリア』……これ女に付ける名前だろうが。
この無駄に煌めいた星型の瞳を持つ餓鬼は星野アイ……名前くらいならチラッと聞いた事はある。所属グループは知らねぇが、そこそこ有名なアイドルだった筈だ。最近は体調不良か何かで活動を休止しているとニュースでやってたが。
まさか、その理由が”これ”とはな。
「アクア~、ルビー~、マリア~。み~んな可愛いでちゅよ~?」
何とこの餓鬼は16歳で三つ子を身籠り、無事出産を終えて母親になっていたのだ。アイドルって奴は愛を売るのが仕事だ。結婚や子供の存在など世間が黙ってはいないだろう。
しかしそれ自体についてはどうでも良い。一番の問題は、俺が生まれ変わりなどと言う非科学的現象に見舞われ、しかも生まれた先がこの餓鬼が産んだ三つ子の末っ子だという事だ。
「うああああああん!!」
「どうしたの~、アクア~?」
「……そっちはルビーだろ? それでも母親か?」
しかもコイツは少し様子を見ただけでダメな母親だと俺には分かった。自分が名付けた癖に餓鬼の名前を頻繁に間違えやがる。見ろよ、社長とか言う奴も呆れてるじゃねぇか。というか、この男もよく自分の所のアイドルの出産を認めたな。下手すりゃ共倒れしかねないのに、揃いも揃って馬鹿しか居ねぇのか、この事務所は。
「……フンッ」
「ん? オムツ変えて欲しいの~、ルビー?」
違ぇよ、あまりにも先行き不透明で不安で仕方ねぇんだよ。赤ん坊の身体じゃ一人で生きていく事も出来やしない。こんな奴等でも今は頼るしかないからな。……あと俺の名前はマリアだろうが。
「社長~、この子たち、現場に連れてっちゃダメ?」
「ダメに決まってるだろ!」
考えなしにそんな馬鹿な事を宣う女だったが、当然バッサリと切り捨てられる。
「肝に銘じろ! アイドルのお前が、16歳三児の母なんて世に知れたら、アイドル生命即終了。監督責任問われて、俺の事務所も終わり! 全員まとめて……地獄行きだあ゛あ゛あ゛あ゛!」
まぁ、当然だよな。真っ当な奴も過激な思想の奴も、揃ってドン引き。確実にファンは減るだろう。
(何処の世界に、少女の年齢で母親になったアイドルを推す奴が居る?)
「役所の手続きも買い物も、全部子供連れはNG! どうにもならない火急の用事がある際は、俺たちの子供を預かってるという設定で出る事!」
「え~? 面倒くさいね~、ルビ~?」
「……そっちはアクアだっての」
(本当に現状を分かってるのかこの女は……あまりにも暢気が過ぎる)
余裕でいられるのも今の内だ。この手の輩は自らの選択を後になって後悔するんだ。違う、自分はそんなつもりじゃなかったと、こんな筈じゃなかったと。そして後悔の中で生まれたストレスを、餓鬼に暴力と言う形でぶつける。このアイドルだって数年もすれば碌でもない親になるに決まってる。あの父親と言う屑や…………母さんみたいに。
(幸い赤ん坊だが頭は回るし、自力歩行も可能だ。一人で生きていく為に出来るところから始めていくか)
何時までもこんなダメ親の世話になるつもりなど、俺には毛頭ない。さっさと自立する事にしよう。