【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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今回は少女連続失踪事件の首謀者、風見健次郎のお話です。


番外編⑯

俺の名前は風見健次郎。関東の裏社会ではそれなりに名の知れた、風見組の二代目組長……だった男だ。

 

今の俺がいるのは、警視庁の留置所の独房。冷たいコンクリートの壁が俺を閉じ込め、鉄格子の向こうには、希望も未来もない、ただの闇が広がってる。蛍光灯の青白い光が、俺の顔を無情に照らし出す。手錠の跡が残る手首をさすりながら、俺は独房の隅に崩れ落ちる事しか出来ない。

 

「クソったれが。全部終わった……」

 

俺の声は震えて、喉の奥で潰れる。

 

どうしてこうなった? かつてのような貧乏暮らしとはおさらばし、贅沢三昧な日々が続くと思っていたのに……現実はこのザマだ。

 

……いや、そんなの決まってる。

 

サツの動きが活発になるのを察して、あと2人だけ誘拐したら一旦作戦を中断する事になった。その際に俺が最後のターゲットとして選んだ餓鬼共――鷲見ゆきともう一人――星野マリア。

 

因みにMEMちょとか言うYouTuberの女は候補から外した。佐和田が言うには、体の節々から実年齢は20歳を超えてるって話だからな。”少女”とは呼べねえ。

 

そんな年増女よりも、そう……星野マリア。あの異常なまでに女装の似合う、攫ってきた女共よりずっと弱そうな、金髪のチビ。

 

「あの餓鬼め。俺の人生を滅茶苦茶にしやがってぇ……」

 

胸の奥で燃えるような憎悪がうねり、拳を強く握る。少女連続失踪事件――20歳未満の美少女を拉致し、腎臓を闇医者に抜かせ、ナックル・アイに売り飛ばして大金を手に入れるシノギ。サツは動かず、餓鬼共は薬で眠らされ、証拠も全て闇に消える。何より、未だ古臭い仁義やら任侠に固執する部下共を黙って従わせられる。あの計画は正に俺の傑作であった。

 

だが、それをあの餓鬼が全てをぶち壊しやがった。俺の心臓が、怒りと憎悪で更にドクドクと脈打つ。

 

「佐和田の野郎……何が”癒しキャラ”だ。あんなの、小動物の皮を被った猛獣じゃねえか……」

 

というか、あの小さくてヒョロそうな体格の何処にあんな出鱈目な力が……? 佐和田は”鉄の悪魔”なんて異名を貰う程に裏では有名な戦闘者で、1年前にも武闘派半グレ組織30人を単騎で全滅させた実力の持ち主だ。本気を出せば天羽組や京極組の武闘派に、龍珠組の組長・令嬢直衛部隊と互角にやり合える猛者だぞ? 不殺を貫いていたとはいえ、そんな奴を倒す堅気の子供が存在する事自体、有り得ない。こんなの、誰が想定出来るかってんだ……

 

「おのれ星野マリアぁ……そして城ヶ崎ぃ……何もかも全部コイツ等の所為だ……!」

 

俺はやり場のない怒りが収まらず、ふと脳裏に過ぎった敵対者の男に対しても怨嗟の言葉を吐いた。

 

城ヶ崎賢志。16年前まで関東裏社会で猛威を振るった巨大組織、『羅威刃』の大将だった半グレ。そもそも野郎が風見組に黙って入ってさえいれば、俺はわざわざこんなハイリスクなシノギに手を染めずに済んだ筈なんだ。

 

奴は金稼ぎの天才だった。鉄火場での喧嘩も滅法強いと噂に聞いてたが、俺には前者の方がずっと魅力的に映っていた。コイツがウチの組に入れば、俺は危険を冒さずに贅沢な暮らしを手に入れられると。

 

だから当時幹部だった飯田を、まだ小規模愚連隊の頭でしかなかった奴の元へ送り込み、勧誘した……だが結果は刺殺された飯田のガラが路地裏で発見されただけ。怒り狂った親父が刺客を放ったが、ソイツ等も城ヶ崎に殺された。

 

それからだ。碌に儲けられねえシノギしか出来ず、ウチの組が衰退してったのは。城ヶ崎の才覚がウチで発揮されれば、今頃もっと大金持ちになれた筈なのに……

 

「そうだ、彼奴が全員を不幸にしたんだ! 俺等風見組も、内臓抜かれたあの女共も! 俺達をこうなるまで追い込んだんだ、あの半グレ野郎が! 俺は何も悪くねえ……! 奴の被害者なんだ!」

 

――あぁ、確かどっかの組織に喧嘩を売って返り討ちにされたらしいな、彼奴。最後は人気のない路地裏で、誰にも看取られずに孤独にくたばったんだってよ。巨大組織のトップにしては、随分と無様な最後じゃねえか。

 

「フンッ、ざまあねえな城ヶ崎ッ! 大人しく風見組に入らねえから罰が当たったんだッ! 地獄で永遠に後悔しやがれ……!」

 

俺は狂ったように奴の死を嘲笑う。誰もいない空間で、俺の虚しいだけの笑い声がコンクリの壁でよく反響した。

 

 

 

 

 

「――それに比べてこっちは……まるで救いようがない」

 

私、芹澤千夜は風見健次郎が収容された留置所の入口で壁に背を預け、その無様で醜い態度に心底軽蔑していた。佐和田裕二は己の所業を心底後悔し、罪を償いやり直す決意をしたのに……この男はマリア君を責め、更には死者に責任転嫁した挙句、その死を嗤うばかり。

 

何れにしろ、コイツに反省や悔恨の念が欠落している事だけはよーく分かった。

 

「これは出来る限りの厳罰を与えなきゃだわ。そうじゃなきゃ、傷付いた女の子達があまりにも報われない」

 

それにしても城ヶ崎賢志……やはり死んでいたのね。担当の刑事達が16年も追い続けて情報の一つも得られなかったのだから、薄々そうなんじゃないかとは思ってたけど。

 

現在も奴は殺人や麻薬売買、銃刀法違反などの罪で全国指名手配中だが、16年前を最後に消息を絶っている状態だった。まさか、ここで最凶の半グレと恐れられた人物の行方を知る人間が出てくるとは。

 

「まあ、その辺は今からたっぷりと搾り取ってやりますか」

 

私は佐和田の時以上に厳しい追及を行ってやろうと、強く心に誓った。こんな外道、僅かでも手加減する訳にはいかない。

 

覚悟なさい、風見健次郎。嫌でも己の罪の重さを実感させてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――後の調査で城ヶ崎の死については確証を得られたものの、結局誰と争って死んだかのは不明なまま。最終的に羅威刃関連の事件は、被疑者死亡という形で書類送検となった。

 




公式でセルジオが200人の半グレを単騎で壊滅と知って、天羽組3人で100人の敵を殲滅はまだまだ控えめな戦果だった事に驚きました。公式のインフラが凄まじいですね。
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