【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
今回はちょっと下世話な要素も含みますので、閲覧の際はご注意下さい。
おれの名前は星野マリア。
「んじーーー……」
「……」
仕事中、さっきからパイセンに顔や腕を凝視されている、苺プロ所属のユニセックスモデルだ。
「……ねえパイセン。ずっとこっちをジロジロ見てきてるけど、何なのさ一体?」
「え? あぁ、ごめんごめん。実はちょっと気になる事があってね」
「何?」
「アンタってさ、毛の処理とかどうやってるのかなって」
はい? 毛の処理?
「私達芸能人にとって美容の維持は必須事項。これはアンタだって承知してるでしょ?」
「そりゃあ勿論。自分自身を見て貰う事自体が仕事だし、大抵の人は綺麗なものが見たい心理に駆られるものだからね」
身なりの汚い人間なんて、それだけで印象は悪くなる。芸能人なら尚更だ。見向きもされないどこか、最悪フェードアウトだろう。だから毎日健康的な生活を心掛けたり、エステや美容院に通って自分を美しく磨こうとするのだ。
とはいえ毛の処理ねぇ。それはおれ達に聞いても無駄なんじゃないかなぁ? ぶっちゃけた話。
「ジロジロ見てたのは悪かったわよ。アンタの顔があまりにもツルツル過ぎたからね。男子って高校生になると髭が濃くなってくる頃だし、それをどう処理して跡形もなく綺麗に仕上げているのか、興味が湧いたって訳」
「いや、別におれは毛の処理なんて一度もした事ないけど?」
「そうなのね。もし良いサロンがあるなら紹介…………は? してない? 全く?」
「うん」
「なのに……そんなツルツル顎なの?」
「だっておれ、髭なんて元から全く生えてないんだもん」
柔らかな下顎の肌を指でフニフニ弄りながら告げると、パイセンが面白いくらい大口開けて驚いた。そこまでかな? パイセンは震え声で色々と尋ねてくる。
「ちょ、ちょっと待ちなさい。腕や脚とかも滑々だけど、これもまさか……天然?」
「そうだよ?」
「……胸毛とかお腹の毛は? 脇の方は?」
「全然無いね」
「そ、そうなんだ……」
……ん? パイセン? どうして急に顔を赤らめてモジモジしてるの? ……あぁ、もしかしてお前。
「……じゃ、じゃあさ、その……し、下h「言う訳ねえだろ何聞いてんだ有馬テメエ?」ヒィッ、大変失礼しましたッ!」
流れるようにセクハラかましてきたパイセンには分厚い圧を掛けてっと。
まあ、この際だからカミングアウトしちゃうけど実はおれ、あそこ含めて世間一般で言うムダ毛とやらは欠片も存在しなかったりする。精々生えてるのは髪の毛、眉毛、まつ毛くらい? それ以外は産毛すら一本も無く、これから生えてくる兆候すら感じられない。まるで赤ちゃんのように全身の肌はとても滑らかで、艶やかな状態が続いていた。
「今戻ったぞ?」
「レッスン終わりー! あー、疲れたー!」
「たっだいまー! ――って、あれ? マリアもかなちゃんも何してるとこなの?」
「あ、母さん。お兄ちゃんにお姉ちゃんも。実はちょっとパイセンから相談を受けててね」
そこへ入室してきた最愛の家族3人。おれは彼等に先程までのパイセンとの遣り取りを伝えると、
「成程ねー、事情は分かったよ。――でもごめんね、かなちゃん? 私も子供達もみんな全身ツルッツルだからさ、脱毛自体全然やる必要がないんだよ。悪いけど、サロンとかの紹介は難しいかな?」
母さんは申し訳なさそうにパイセンへ返答した。おれだけでなく、星野家全員がムダ毛一本も生えてない体をしている。当然、男であるお兄ちゃんも顎と口周りは滑々ピチピチお肌だ。脱毛サロンに通うどころか、処理作業そのものを必要としていない。だからこの手の話に関しては、ウチは全くの素人なのだ。
「そういえば確かに、ママも私達も毛の処理ってやった事なかったよね? 先輩に言われるまで全然気付かなかった!」
「思春期以降の発育を考えれば普通に異常なんだけどな。ただ今のところ健康上の問題は一切確認されてねえし、毎朝髭剃りする手間が省けるから、俺としては寧ろ大歓迎だな」
「え~、でも髭を生やしたアクアもダンディで素敵だと思うんだけどな~? 何とかして生やせないの?」
「勘弁してくれルビー……髭剃りって結構大変なんだぞ? 毎日時間を取られるわ、肌は傷付くわで相当厄介なんだからよ。このまま生えてくれない方が非常に有難いくらいだ」
うんうん、お兄ちゃんの気持ちは同じ男としてよく分かるよ。髭の管理ってホンット面倒臭いよね! おれだって前世では毎日処理に追われてストレスを感じた程だし、この身体マジで最高! もう一生生えてくんなって話!
さて、一方のパイセンはというと――。
「何なのよ、この圧倒的完成度……元から超美形な上に、メンテナンスフリーで天然艶々肌のままだなんて……神様が意図的に作ったような体付きしやがって、クソ羨ましい……」
「そんな事言われてもなぁ。だってそういう体質なんだもん」
「くぅ、アンタ等には分からんでしょうねぇ……ムダ毛処理にどれだけの時間とコストを掛けているのかを……」
「……あぁ、うん、なんかごめん」
その黒いオーラ携えながら妬ましそうに睨んでくるの止めてくれませんかね? 気のせいだろうか、目尻から溢れる涙が血の色に見えてきたよ。
……って言うかさ、
「美容に関する話ならミヤコが一番詳しいと思うんだけど?」
40代であの美貌を維持する為に現在も相当な努力を続けているのだから。外見30歳くらいの印象だよ、あの人。美魔女だよ美魔女。
ハッとなるパイセン。オーラは消失し、その瞳は演劇に全力で取り組んでいる時のようにキラキラと輝いていた。
「そ、そうじゃんッ! 何で気付かなかったのかしら私!? ちょっとミヤコさんの所へ行って来るわ、相談ありがとー!」
「お、おう」
「「いってらっしゃーい!」」
そして星野家に見送られながら、何かに急かされるように休憩室を飛び出していった。
(頑張れパイセン、おれは応援してるから)
後にミヤコから美容の秘訣を聞かされたパイセンは早速実行。少し前よりも美しさに磨きが掛かり、ホクホク顔でレッスンに勤しむ姿を頻繁に目撃するようになった。
かな「そういえばアイさん。家族全員が今もツルツルお肌って、どうして分かるんですか?」
アイ「ん? それはね、この間も家族4人で一緒にお風呂に入った時に見たからだよ? あそこまでみーんな毛の一本も生えてなくてね、すっごく可愛かったなぁ」
かな「……へ? 高校生で、お母さんと一緒に……お風呂……? え? マジすか?」
アイ「うん! ルビーとマリアなんか、その時は本当に嬉しそうに! アクアは凄く恥ずかしがってて、私やルビーがお願いしたら渋々って感じだけど。嫌がる割には満更でもなさそうなのにねー」
アクア「お、おいアイ! 言うなよ、それをこの場で!」
かな「……ふーん。満更でもない、ねぇ? こんな綺麗なお母さんと妹の裸を拝めるなら、そりゃあ口では嫌がっても本心では嬉しいでしょうねぇ。思春期男子?」
アクア「いや、どうしても断り切れなくて……別に邪な考えは全くねえよ、家族なんだから」
かな「――変態」
アクア「その冷ややかな目線を向けてくるのは止めてくれ……」