【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
おれの名前は星野マリア。
「勧誘の件、ありがとう。それにマネージャーも一緒って条件を飲んで貰えるなんて、マリア君には感謝しかないよ」
「此方こそ決心してくれてありがとね? こっちに来るからには2人とも良い待遇を約束するよ」
母さんのキャラ付けを始めた事で人気が急上昇した黒川さんと会話する、ユニセックスモデルの美少年だ。
……自分で美少年とかナルシストかよって? 別に良いじゃないの、事実を述べたまでなんだから。みんな可愛いって褒めてくれてるんだし?
「そういえばお兄ちゃんから聞いたんだけど、黒川さんってプロファイリング能力が凄いんだって? アレってどうやってるの?」
「え? あぁいや、そこまで大層なものじゃ……本などで勉強したってのもあるけど、実はお父さんが警視正でね。色々と教わったからその影響かな?」
あぁ、確か黒川さんのお父さんも保護された娘の元へ駆け付けてきてたっけ。その時は警察の制服を纏っていたけど、まさかお偉いさんだったなんてね。
プロファイリング。犯罪捜査において、主に警察や探偵が犯人の行動パターンや特徴を統計データや心理学的手法を使って分析し、犯人像や犯行予測、動機等を推定する手法……で合ってるかな? 警察の人間が近しい身内に居るのなら、確かに学ぶ機会は多いだろうね。
それでも母さんに関する膨大な情報を分析し、余所行き用の演技とはいえ彼女をほぼ完璧に再現してしまう能力には脱帽した。某有名作品群の刑事や探偵にも負けない名探偵としても活躍出来るんじゃないかな?
(……絶対に有り得ない事だけど、仮に裏社会に居たら非常に優れた情報屋として名を馳せていただろうなぁ)
その場合は数多の組織から引っ張りダコになるか、あるいは脅威と見做され消されるか……うん、黒川さんが裏社会に行くような環境に生まれなくてホント良かった。家族とか周囲の環境がクソだと、最悪その道を行かざるを得なくなるのは、おれが一番分かってるからね。黒川さんの恵まれた境遇を羨ましく思うと同時に、おれみたいに地獄を体験せずに済んだと安堵する。
「大体5歳くらいから始めててね。いっぱい調べて自分なりの解釈を入れる事もあるから、正確にその人を再現出来てるとは言えないかな? アイさんに関しても結構勝手な設定を追加してるし」
「勝手な設定……?」
「うん」
「例えばアイさんには――実は隠し子がいる……とか?」
「―――――」
一瞬表情が凍るも、直ぐに何でもないように取り繕う。
「隠し子……?」
「あはは、変でしょ? 何処にもアイさんが子供を産んだなんてニュースはやってないし、結婚したなんて情報すら全く無いのにね」
嘘……でしょ? プロファイリングだけで辿り着いた……? え……?
「でも、それだと色んな感情のラインに整合性が取れるし、不可解だった数々の行動の理由が分かる。何を考えてどういう人格なのか、数式パズルみたいに分かってくるんだ」
まあ結局は私の妄想に過ぎないと思うけどね? そう笑う黒川さんに対して同じく笑みを返すも、おれは内心全く笑えないでいた。
(黒川あかね……どうやらアンタを野放しにする訳にはいかなくなってしまったよ。このまま泳がせるのは危険過ぎる)
下手すれば、彼女は自力でおれ達家族の秘密に辿り着いてしまうだろう。元より苺プロへ勧誘する予定だったし、実際に彼女は了承してくれたけど……こうなったら何が何でもウチの事務所のメンバーとして取り込まなくてはならない。場合によってはパイセンのように敢えて秘密を明かし、口止めしておく必要もある。
(母さんや社長達にも要相談、だね)
早速帰宅後に本件を持ち掛けようと決心した直後、背後から手を振りつつ近付く桃色の美少女。
「マーくん、あかねちゃん。其処で何の話をしとるんですー?」
みなみがおれの隣で壁に腰掛ける。あ、おっぱい揺れとる……じゃないでしょ、おれの変態!
「マーくん、どないしたん? 顔急に赤くなったで?」
「え、あぁいや何でも! ……丁度黒川さんからアイ姉ちゃんを演じる際の技法についてレクチャーを受けてたんだ。もしかしたらおれの仕事にも役立つかなって思ってさ」
おれは一瞬抱いた邪な思考を悟られないよう誤魔化す為、咄嗟に先の話題を繰り出す。幸いみなみは気付く事なく、あかねの方へ話し掛ける。
「あぁ、確かプロファイリング……やったっよな、あかねちゃん?」
「うん。まだ休憩終了まで時間があるし、折角だからみなみちゃんも聞いてみる? あくまで我流だから警察みたいなプロ並みには程遠いけど……」
「せやけどあかねちゃんのあの演技、ほんま凄かったわ。本当にアイさんが目の前にいるって勘違いしてもうたもん、ウチ。どうやってあそこまで出来るのか気になってもうた」
「あはは……そんな大した事じゃないってば」
「それでも興味はアリアリやね。あかねちゃんで良ければ教えて下さいます?」
「うん、良いよ。まずは情報収集から始めるんだけど――」
おれとみなみは休憩終了間際まで、黒川さんのプロファイリング談義に耳を傾けるのだった。
因みに今日は今ガチの最終回。この後はいよいよ多くの人が待ち望んだ告白タイムだ。その為に今日のみ夜から収録となっている。
そして……き、き……キッスの時間にぇもあにゅ……
夜。おれ達は夜景が映える川縁のデートスポットに来ている。恋愛リアリティショー最大の見所である告白シーン撮影の為だ。
「――好きですMEMちょさん。 付き合って下さい!」
「ごめんなさい、君とは恋人という程仲が良い訳じゃないので……」
森本が得意のギターを弾きながらMEMちょに告白するも、ものの見事に撃沈。
「鷲見ゆきさん! 改めて好きです! 俺と付き合ってくれませんか!?」
「うーん……ごめん。ノブの事は確かに好きだけど、それは友達としてなの。だからこれからも仲の良いお友達でいてください」
続く熊野も鷲見さんに真正面から想いをぶつけたが……此方も撃沈である。……え、マジで? あの事件で一気に良い雰囲気になったじゃん君等? ここに来てカップル不成立という事実にどよめきが広がる。
「……///」
しかしおれは自分の事で頭がいっぱい。顔を茹蛸のように赤く染め、湯気を出しまくっていた。順当に行けば次は黒川さんとお兄ちゃん。そして最後におれとみなみである。
(遂に……遂にこの時が来てしまった///)
もうじき、おれはみなみと告白する。場合によっては……き、キッスする流れになる。うぅ……緊張する、恥ずかしいよぉ……
「マーくん」
「あびゃいッ!?」
そんな中で意中のお相手から声を掛けられるのだから、もう吃驚。変な声を上げちゃったよ。みんな黒川さんとお兄ちゃんの告白シーンに夢中で、こっちの事は大して気にしてない様子だから悪目立ちせずに済んだけど。
「ありがとう」
「みなみ……?」
突然のお礼に戸惑うおれに、みなみは柔らかな笑みを振り撒く。頬は普段以上に紅潮し、彼女も緊張と羞恥の真っ只中にいる事を物語っている。月明かりのに照らされ、夜風に桜色のふんわりヘアを靡かせる姿は、母さんやお姉ちゃん、他の今ガチの女の子には無い魅力を際立たせている。
「マーくんが居なかったら、ウチとあかねちゃんはこの日を迎える事が出来ひんかった」
今のおれは周囲の喧騒も忘れ、彼女の美しさと可憐さに魅入られていた。
「みんなにも感謝しかあらへん。誘拐されたウチ等を助けに来てくれた事……炎上を鎮めてくれた事……でも、マーくんが助けてくれた事が一番嬉しくて、心が躍る気持ちやったなぁ」
淡い桃色の瞳から目を離せないでいる。
「中3の夏、最初は推しの子として気になる程度やったけど。あの巨人さんに襲われた時からかもなぁ……マーくんを男の子として好意を抱き始めたんは」
全身を包み込むような優し気で、穏やかな声を聞き逃さまいとしている。
「今日を迎えるまで考えてみたけど、やっぱりマーくんへの気持ちは全然変わらんかった。寧ろ益々と言ってええ程に強くなってもうたわ。ウチの為にあそこまで一生懸命なところ、みんなの為に頑張れるところ……君のそういう優しくて勇気のあるところが……大好きです」
そして”大好き”という言葉に、鼓動が更に加速する。
「みなみ……」
「……//////」
おれはみなみと正面から向き合い、ほんの僅かに沈黙する。今の告白で恥ずかしさが増したのか、彼女の顔はより真っ赤で、よく見るとプルプルと小刻みに震えていた。
星野マリア。好きな女の子が勇気を振り絞って想いを伝えてきたんだぞ? ここまで言わせといて、自分だけ恥ずかしがったままでどうする。
さあ勇気を出せ。彼女の想いに、盛大に答えるべきだ。意を決して真剣な眼差しを向け、口を開く。
「……去年の仕事でね、最初にみなみの顔を見た瞬間からおれ……ずっと一目惚れだったんだ」
思い出す。合同撮影前に見せられたみなみの写真。思えばあの時からおれは彼女の事を家族とは違う、でも家族に負けない特別な感情を抱いているような気がしていた。
「恋ってどんなものか分からなくて……正直、この気持ちが好きを意味してるって理解するのが遅れてしまってさ」
肉蝮との戦い。今回の少女連続失踪事件。この時のおれはみなみの事が心配で、その事で頭がいっぱいで……無事を確認した際は母さんが目覚めた時のような安心感に満たされていた。
「でも、今ならハッキリと言える。――おれはみなみの事が好きなんだって」
これからも、この子の側に居たい。側に居て欲しい。
「だから……えっと、その……あの……しょの……」
「あ、え、マーくん? 大丈夫……?」
ええと、あと、あと……どうするんだっけ?
おいおい、忘れちまったのかよ”おれ”?
そうだよ! ここまで行ったら”アレ”しかないでしょ!? ”おれ”! もうしょーがないなぁ、僕がやるッ!
おい待て、それで貴様失敗したばかりだろうが。止め――。
「「んッ」」
気が付けばおれはみなみの肩を掴んで抱き寄せ――その柔らかな唇に口付けしていた。彼女の方が背が高いので、おれが見上げる形になってる、け……ど……
「ん……? ん!? んんッ!?」
え、おれ……今何をしてんの……?
「ぷはッ。ま、マーくん……それは不意打ちやわ//////」
口を離したみなみはそう言って、滅茶苦茶湯気を発していた。
「え、いや、その、これは……//////」
自分の仕出かした事を漸く理解したおれも、同じように湯気を立ち昇らせる。
……ん? なんか凄く見られてる気がするね。
「あ」
みなみに合わせておれも右側へ視線を向けると……他のメンバーやスタッフ達が興奮した様子で此方を見ていた。しかもバッチリとカメラまで回ってるし。
「ら、ライト君がまたフライング告白を! 今アッくんと黒川さんの告白シーンなんだけど!?」
「ってか、そこは『おれと付き合って下さい』って言って返事貰うとこじゃないのか?」
「それすっ飛ばして先にキスから行っちゃったー!」
「わひゃー! 今の結構深いとこまで行ってなくなかった!? マリりんとみなみちゃん!」
「なら、これもう実質セッ○スじゃないッ!?」
「ちょ、ゆき、お前滅多な事言うなって……!」
「……なんか向こうに全部持ってかれちゃったね、アクア君」
「みたいだな。まあでも弟が念願だった好きな子と無事付き合えそうで、兄としては一安心かな」
「ふふ、優しいねアクア君は」
やっぱり恋人同士でやる事と言えばキッスだよね、”おれ”! 番組の映えもこれでバッチリッ!
(ちょっと”僕”ぅううううううううううううううううッ!!!?)
君、またやっちゃたねぇええええ!!
「ま、マーくん!」
「は、ひゃいみなみさんッ!」
「――その、宜しくお願いします//////」
あ、嬉しい。でも、恥ずかしい……ヤバい、もう限界かも。
「ふしゅ~~~~~~~………………ぴっ」
「ま、マーくん!?」
「ちょちょちょ、マリりんが塵に返っていってるー!?」
「ヤバいぞ、誰かチリトリー!」
その後、倒れたおれはみなみに付き添われて保健室へ。
気を取り直してお兄ちゃんが黒川さんに告白するも、カップルは不成立。黒川さんにとってお兄ちゃんは助けてくれた仲間の一人であり、特に彼個人に対して恋心を抱くようなエピソードに乏しかったので、仕方のない事だろう。
これで自殺しかけてたところを抱き寄せて止めるという展開でもあれば、話は違ってたかもしれないけどね。まあ、お兄ちゃんもお姉ちゃんという恋人が既に居るし、ここで付き合う事になったらお姉ちゃんが嫉妬しかねないから、これで良かったかな。
「マーくん、大丈夫?」
保健室のベッドで横になるおれに、みなみはずっと側で看病してくれた。
「うん、大丈夫……それよりごめんね? いきなりキスなんかしちゃ、って……///」
あうぅ、思い出したらまた胸のドキドキが……
「えへへ///」
しかし、みなみはこれっぽっちも嫌な様子ではなかった。寧ろ彼女の周囲がキラキラと輝く程に気分良さげで。
「吃驚しちゃったけど……こんなに好かれてるって知れて、ホンマに嬉しかったで? ――もう一度言うけど、よろしゅうな?///」
「……はい///」
こうして数多の苦難に苛まれつつも、今ガチは無事に完結。
知名度を高めたメンバーは各々の分野で更に輝いていく事になるが、それはまた別のお話。
星野マリア、15歳。前世を合わせ、この世に生を受けて約半世紀。
初めて恋人が出来ました。
これにて今ガチ編、終了です。
次回からJIF(ジャパン・アイドル・フェスタ)編となります。次の敵はルビー達B小町と同じ、”新生”の名が付く組織です。風見組と違い、目的の為なら女子供でも容赦なく殺す過激集団を相手にします。