【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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アイ「きゃーきゃー! チューした! ルビー見た!? マリアがみなみちゃんとチューしたよ!」

ルビー「うん! 遂に……遂に私に妹が出来るんだね、ママ!(ほっ、良かったぁ。おにいちゃんが誰ともくっ付くかなくって。せんせーは私だけの物なんだからね♡」

かな「あーもう、騒がしい母娘ねぇ全く……(良いなぁ、こういう仲良し母娘……)」


2つの復活! JIF編
83話


今ガチ完結から1週間後 九州某所 とある市営ドーム

 

「さあ、今年も始まりました! 『第42回北九州アイドル歌合戦』! 今宵、日本各地から多くのアイドルユニットが集い、自分達の持てる全てをもって競い合う年に一度のビッグイベント!」

 

その日、巨大な市営ドームでは九州最大のアイドルフェスティバルの真っ最中だった。広大な空間には煌びやかに着飾った多種多様なアイドル、彼ら彼女らの事務所関係者、ドームスタッフ、そして観客……実に1万2000人を超える人間が集結し、凄まじい熱狂に包まれていた。

 

名称通り合戦方式を採用する珍しいイベント。アイドル達は自慢の曲でパフォーマンスを繰り出し、群衆や審査員からより多くの得点を獲得する事で順位を競い合うのだ。

 

「司会兼進行役はこの私、アイドル『Clover』のリーダー、『エリカ』が担当致します! 途中で私も仲間達と一緒に最新曲を披露しますので、是非楽しんでって下さいね!」

 

この歌合戦に参加するアイドルグループは実に30組以上。その内の上位4組のみが、これを更に上回る超巨大イベントにおいて、最上位のプラチナステージへの登壇権が与えられるのだ。

 

そのイベント名を、人々は『JIF(ジャパン・アイドル・フェスタ)』と称する。

 

「みんな、最初は私達の番だ! 必ずプラチナステージに立つぞ!!」

「「「「「おーーッ!!」」」」」

 

円陣を組み、更なる躍進を目指そうと気合を入れる、人気アイドルの美少女達。

 

「俺達ならやれるさ。新参の連中に抜かれるようなヘマだけはするな?」

「あぁ、ここまで来るのに長い時間を掛けたんだ。負ける訳にはいかねえよ」

 

有名ユニットとして、その地位を守ろうとする男性アイドルコンビ。

 

「それではまず最初のグループから! 鹿児島出身の6人組アイドルユニット『CB's(チェリーブロッサムズ)』です! 宜しくお願いしまーす!」

 

JIFはアイドル達にとって最大にして最高の祭り。その最上位ステージに上がる事は、それだけで知名度アップとキャリア飛躍を意味する。故に、素人目でも彼ら彼女らの覇気は凄まじいものだ。

 

 

 

そして円陣を組んだグループが先陣としてドーム中央のステージに立ち、今まさに歌い始めんとした時……

 

 

 

「俺は天使! 空も飛べる筈なんだー!」

 

意味不明な独り言を大声で宣いながら、ふらついた足取りでステージ前に現れた奇妙な男。出鼻を挫かれたアイドル達はポーズを決めたまま言葉を失って固まり、司会役の少女や観客たちと共に男を注視する。

 

「おい、何だ彼奴は? 警備員は何をしてんだよ?」

「あれ酒の飲み過ぎじゃね? 歩き方が変だぞ?」

「ちょっとッ! 折角CB’sの新曲が聞けるんだから邪魔しないでよ!」

 

徐々に観客達から男へのブーイングが大きくなる。

 

「今こそそれを証明する時ー!」

 

「怖……」

「何なの、この人……?」

 

しかし男は周りの罵詈雑言など何処吹く風。それどころかアイドル達が立っているステージへよじ登ろうとしていた。不審者の行動に驚き、恐れを抱いたアイドル達が反射的に後退る。

 

「おいお前、何やってるんだ!?」

「其処から降りなさい!」

 

漸く警備員達が慌てて駆け付け、男に掴み掛かった。羽交い絞めにされ、それでも男は楽し気に笑う。

 

「あれ? 此処は地上……? 俺は何時の間に飛んだんだっけ?」

 

その肌は病的なまでに白く、目の焦点も合っていない。明らかに何かヤバい物をやっている人間の特徴だ。

 

「はいはい、飛んだ飛んだ。すっごく飛びまくってたから!」

「ったく酔っ払いが……こっちに来なさい!」

 

警備員達は男の支離滅裂な発言を適当に受け流し、ステージから距離を取らせようとした……その時だった。

 

「よっしゃー! もっと飛ぶぞー、飛んでやるー!」

 

男が歓喜の雄叫びと共に両腕を振り上げた直後――。

 

「え?」

「は?」

 

男の右手の付け根から、目が眩む程の強い白光が放たれる。それが警備員達が見た、最後の光景だった。

 

 

 

 

 

瞬間、男を中心に激しい爆炎と凄まじい爆音が出現した。

 

 

 

 

 

「「――ッ!?」」

 

不審な男と、奴を捕まえていた警備員2名が爆発に飲み込まれ、大勢の人間にも爆風と破片が襲い掛かった。

 

「きゃゃあああッ!?」

「うわぁッ、なんだ……!?」

 

特に、最も近くにいた司会役の少女『エリカ』と、CB’sの6名の計7名は甚大な被害を受けた。爆風で盛大に吹き飛ばされた彼女等は、ある者はステージ脇の柱に叩き付けられた上に破片を浴び、またある者は数メートルの高さまで宙に浮かんでから固い地面に足から落ちる。

 

「う、ぎぎ……」

「いたい……たす、けて……」

「あ、足が……うごか、な……」

「う、うう……」

「………」

 

爆発が収まった現場は阿鼻叫喚の光景が広がっていた。全身傷だらけで、呻き声を上げながら痛みに苦しむ子もいれば、意識を失って沈黙する子も居た。

 

「あ、う……いったい、何が、どうなって……」

 

『エリカ』はCB’sよりも男から離れた位置にいた為、頭から血を流しつつも意識はハッキリとしていた。しかし、何とか上半身を起き上がらせた彼女は、自分の太腿に乗っかる物体に気付き、目線を下ろす。

 

「――え」

 

それは所々血塗れで焼け焦げていたが、先の爆発で千切れて彼女のところまで飛んできた――警備員の右腕だった。しかも彼女の方にズタズタの断面が見える形で落ちていて……

 

「い、いやぁぁあああああああああああッ!!?」

 

彼女のところだけではない。至近で爆発に巻き込まれた不審者と警備員達は、バラバラになって観客達のところにも降り注いでいた。当然、それを間近で目撃して正気でいられる一般人はいない。

 

「うぁあああああッ!? あ、足だ、人間の足がッ……!」

「さ、さっきの爆発は何だよオイッ!?」

「爆弾だッ!! あの男、爆弾を自分の体に仕込んでたんだ……!!」

「逃げろ……! 他にも爆弾があるかもしれないぞー!」

 

熱狂に包まれていた会場は、一瞬にして真逆の意味の喧騒に飲まれる。パニック状態に陥った観客達が我先にと会場の外へ出ようとし、出口付近は膨大な量の人間でごった返す。

 

「ひぎっ、いたい、やめ……潰れ、る……」

 

それが被害を更に拡大させる。転倒し、群衆に押し潰される者も数名出てしまったのだ。

 

「エリカ……! おい、絵里! しっかりするんだ!」

「ひ、あ、あぁああ……」

「みんな、大丈夫!?」

「ミラさん、目を覚まして! お願い!」

「救急車だ、救急車を呼ぶんだ!! 早く!!」

 

この惨劇は一大ニュースとして日本中を駆け巡る。

 

不審者の男と警備員2名の計3名が爆発で死亡し、バラバラになった遺体を目撃した『エリカ』含む4名が強い精神的ショックを受けた。避難する群衆に潰された観客10名と、爆風に吹き飛ばされたCB’sの6名にCloverの『エリカ』、実に17名もの人間が重症を負い、北九州大学病院へ搬送された。当然ながら本イベントは中止となる。

 

後にPTSDを発症した『エリカ』と、心身共に大きな後遺症を残したCB’sはアイドルを引退。夢を追い続けていた7名の少女達は、その未来を狂った連中の思想によって理不尽に潰されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もしもし兄様? 葵です。攻撃は大成功。あの薬物中毒者は我々の予想通り、ステージの側で爆発してくれました。アイドルの子達を殺す事は出来ませんでしたが、あの様子なら二度とマイクを握れないかと」

 

『よくやった葵、本当に君は良い子だ。部下達と一緒に東京へ戻ってきなさい』

 

「承知しました。では――」

 

その頃、人気の無いドームの裏手で一人の女性が実の兄と連絡を交わしていた。年は20代前半程度の、紺碧の長髪が月光で輝く美しい女性だ。仮に女優やアイドルを名乗っても全く不自然さがない。

 

事実、彼女は元人気アイドルである。

 

しかしながら、その雰囲気は異様だ。まるで軍人のような服装に身を包み、とてもアイドルに返り咲くどころか、一般人とすら思えない。清楚系な美女である事が更なる違和感を醸し出している。

 

何より異常なのは、彼女を取り囲む環境そのものだ。

 

「……未だヤクザが警備員を騙り、市民の警護を行う。暴対法なんて、あって無いようなものですね」

 

彼女の皮肉に誰も答えない。周囲に散らばる10名以上の警備員――某警備会社の従業員としてドーム警護に当たっていた『大東組』の武闘派極道――は物言わぬ骸と化していた。

 

「でも残念。私の敵ではありませんでしたね」

 

彼等を殺したのは女性だ。現に彼女の持っているナイフには極道達の血が付着し、サイレンサー付きの拳銃からは硝煙が上がっていた。

 

この女性、戦闘者としても相当に優秀な人物であった。薬物中毒者の自爆テロを成功させる為、事前にドーム裏手で警備員(大東組)を襲撃。武闘派であった彼等を上回る卓越した戦闘スキルを用い、ナイフで喉を切り裂き、拳銃で頭部を撃ち抜いてみせた。そして中毒者を裏口から侵入・誘導させたのである。

 

「――あら? 来ましたか」

 

其処へ3台のワゴン車が接近し、停車後に数名の男女が降り立つ。誰もが女性と同じくらいの年齢で、彼女と同様に軍服を纏っている。

 

「分隊長、清掃業者の手配が完了しました。あと5分で此方に来るそうです」

「アスファルト工場への連絡は?」

「そちらも受け入れに問題はないそうです」

「承知しました。では私達は死体を工場まで運ぶとしましょう。犯行声明はJIFが終わってから出しますからね。まだ我々の仕業だと世間に知られる訳には参りません」

「了解です、早速後片付けに入ります」

 

女性は部下達と共に証拠を隠滅し、未だ地獄の渦中にあるドームから静かに消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――諸君、先ほど九州に向かっていた部隊から吉報を受けた。最初の攻撃は無事に成功したと」

 

一方、東京郊外の山林内にある廃工場。其処に集まった150人以上の集団は、仲間の報告を聞いて勝鬨を上げていた。

 

「こうして本格的に活動を始められたのも、ひとえに今日までの諸君等の努力あってこそだ。本当に感謝しかない」

「いえ、団長のご指導の賜物です! 我々は大した事は出来てません!」

「私達は貴方のお陰で此処にいられるのですから! これからも協力を惜しみません!」

 

そう、コイツ等こそがイベントを爆破した犯行グループの本隊である。よく見ると20代から40代程度の若い人間で構成されており、男女の人数比も大して差がない様子。

 

しかし大勢の人間を傷付けておきながら、全員が誇らしげに酒を煽る。コイツ等は徹底的に狂っていた。

 

「我々はあの方の遺志を受け継ぐ者として、今は亡きあの方とその同志達の悲願を達成する。――さぁ、祝杯を終えたら準備に戻ろう。次のJIFはこのレベルではない」

 

15年前に完全消滅した、とある組織の首謀者が遺したブログ。それに感化された者達が、まるでソイツの怨念に乗っ取られたかのように次なる凶行を計画してやがった。

 

「”芸能”という搾取と腐敗と堕落の象徴……まずはこれを潰す事を”革命”の第一歩とする」

 




今回はJIF編のプロローグに当たります。次は今ガチの打ち上げ回です。
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