【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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84話

──BAR・Fellini

 

「『今からガチ恋始めます』、全収録終了です!」

 

『お疲れ様でした~!』

 

おれの名前は星野マリア。

 

「みんな、本当にお疲れ様!」

 

数ヶ月に渡る『今ガチ』の収録が全て終了し、都内のバーで番組関係者との打ち上げを楽しむ、ユニセックスモデルの高校生だ。

 

「マリア君もお疲れ様。いやー、それにしても思い返すと一瞬だったわ~」

「色々あったけど、本当に楽しかったよ」

「あかねがそう言ってくれるなら文句ねぇな!」

 

今ガチメンバー全員で集まり、持っているグラスで乾杯して談笑する。場所はバーだがおれ達は全員高校生。未成年なのでグラスの中身は当然ジュースやお茶だ。

 

因みにおれが選んだのは濃縮ブドウジュース。自分のイメージカラーと同じ色のドリンクだ……うん、渋みと甘酸っぱさの組み合わせが良い塩梅♪

 

「一時は番組そのものが途中で潰れるかもって思ったけど、無事全員最終回を迎えられて何よりだね」

 

僅か数ヶ月の撮影だったのに、このブドウジュースに負けないくらい濃密な日々だった。炎上だけでなく前世の因縁の相手に襲われるなんて、誰が予想出来るのさ。

 

その風見組と闇医者に対する裁判がもうじき始まる。報道によると佐和田は反省と悔恨の態度を示している様子で、多少の減刑が考慮されるらしい。それでも15年前後の懲役刑だろうが、しっかりとケジメを取ってやり直して欲しい。

 

……あと、これが一番大事。一時はみなみとの関係もギスギスになりかけて、このまま距離を取られたままのかなって不安でいっぱいで……でも名実共に恋人関係に至れた。恋愛リアリティショーという初体験のジャンルで苦労は多かったが、まぁ終わり良ければ総て良しな結末になったのが救いかな?

 

……ん?

 

「どうしたの、みんなしてコッチ見てさ?」

 

何故かおれとみなみは他のメンバーからジッと見詰められる状況へ。

 

「どうしたって? 決まってんじゃん?」

「うんうん! 最後のキス、どうなの!?」

「やっぱガチで付き合う感じ!?」

 

やはりリアルな恋愛模様が気になる様子。特にMEMちょと鷲見さんが鼻息鳴らしながら迫ってくるもんだから、おれもみなみもタジタジである。ガチかどうかだって? そりゃあ勿論――

 

「「……ガチ、です///」」

 

「あ、はもった! 仲良し~!」

「2人とも顔真っ赤っか! もう相性ピッタリじゃんコレッ!」

 

鷲見さんとMEMちょが黄色い声を上げ、互いの両手を握り合って喜ぶ。今にも飛び跳ねそうな勢いだ。

 

「でもおれもみなみも忙しいからなぁ……ちゃんと恋愛出来るかちょっと心配かも」

 

今ガチがバズったお陰で全員に入る仕事量が一気に増えた。当然、おれとみなみにも新しい仕事のオファーが入っている。学業も含めると、互いに都合の良い時間を確保できるかが悩ましいところ。

 

「いやいや! 芸能人とはいえ高校生にもなったら恋人の1人は居ても当然っしょッ!!」

「そうだよ~! それに、番組で付き合えばスキャンダルとは無縁だからねー」

 

「そうそう。上手い具合に番組を使ってほしいよ」

 

盛り上がっていたところに、番組スタッフの内の1人が混ざってきた。最初は映像提供を渋ったものの、鏑木さんの鶴の一声で最終的に許可してくれたディレクターである。

 

「ここから番組は一切関与しないから、付き合うも別れるも自由。結婚まで行った人達だって何組もいるし、数ヶ月ほどカップルを名乗るだけの人もいる。この業界、君達の才能を利用するだけ利用して捨てる悪い大人も沢山いるから、ちゃんと自分で考えて決めるんだ」

 

真面目な話をしながらも、お酒を飲む事は決して忘れない。とはいえ、まだ打ち上げは始まったばかりなので、ほろ酔いの段階に入ってるかどうかのところだけど。

 

「――っていう、悪い大人からのアドバイスだ」

 

実際、良い大人か悪い大人かで言えば、間違いなく悪い方に属する方だろう。メンバーも苦笑いするしかなかった。

 

「それにしても……」

 

そのディレクターさんは、おれに視線を向けつつ持っていた酒を煽る。心なしか冷や汗をかいているようにも見えた。

 

「マリア君、君が映像提供を求めてきた際の威圧感には心底驚かされたよ。まるで本物のヤクザかマフィアに迫られてるような気分だった。誰もがビビってたってスタッフ一同、あの後はその話題で持ち切りだったくらいだからね」

「あはは、僕は普通の高校生ですよ? そんな恐ろしい犯罪者と一緒にしないで下さい。僕はあくまで仲間を救いたくて必死だっただけなので」

「……確かにそうだな。君等はそのヤクザに酷い目に遭わされたばかりなんだ。あんな連中と同類というのは流石に失言だったね。済まない」

「いえ、そこまで気にしてませんから」

 

んもう、失礼なオッサンだなぁ。こーんなに小っちゃくて、女の子みたいに可愛い男の子を反社の人間達みたいに扱うなんてさ。……おや? 愛しの仲間達よ、どうして冷や汗ダラダラで目線を泳がせてるのかな? 

 

おいコラ熊野、「普通の高校生って何ダッケ……?」とか呟くんじゃねえ。聞こえてるぞ?

 

「……!」

 

話の途中、お兄ちゃんは向けられる視線に気付く。視線の主は鏑木さんだった。アイコンタクトから察するに、お兄ちゃんと2人っきりで話があるようだ。

 

「悪いマリア、ちょっと行ってくる」

「分かった。お願いね?」

 

おれに一言断ってから、お兄ちゃんは飲み終えて空になったグラスをテーブルに置いた。そして周囲に気付かれないように、そっとこの場を抜け出して鏑木さんと共に店の外へと出ていった。

 

頼むよお兄ちゃん。屑親父について有力な情報を引き出して頂戴。

 

 

 

 

 

俺、星野アクアは鏑木さんと一緒に店を出ると、裏口近くの喫煙可能エリアに移動した。其処でタバコをふかしながら、鏑木さんが話を切り出す。

 

「『今ガチ』、かなり評判が良いよ。やっぱり君達兄弟を使った僕の目は間違ってなかったかな?」

「どうでしょうね。結局炎上と誘拐事件で注目集めたみたいになってますし」

「……まさか黒川くんと寿くんがヤクザに拉致られるとは思わなかったよ。しかも目的が内臓を抜いて海外に売る為だって? 悍ましい事この上ないね。直接被害を受けてない僕ですら鳥肌が立ちそうなのに、彼女達がそれでも続投を表明したのは本当に凄い事だ。お陰で放送中止も免れた」

 

誰だろうと風見組の所業は人間のそれじゃないと断じるに違いない。特に風見組長の醜い本性と足掻きには心底軽蔑した。あんなクズの下らない欲の為に、あかねと寿さん、鷲見さんの未来が潰されかけた。それを思うと、今なお腸が煮え繰り返る勢いだ。

 

「でも凄いのは君達3兄弟だ。ヤクザの集団を倒して黒川くん達を救ってみせたんだからね」

「……どうしてそれを?」

 

俺達が警察に保護された事は報道されているが、風見組の本部に突入して組員と戦った話は一般には出回ってない筈だ。実際、警察が突入した時に倒れていた組員達は、仲違いで共倒れしたとニュースになっている。

 

「警察に僕の知り合いが居てね、あくまで独り言として聞かせてくれたんだよ。――状況的に突撃した芸能人の子供が、数十人のヤクザを一方的に叩き潰した可能性が高いって。ただし、あくまでほんの一部の意見に過ぎない。殆どの警官は常識的に有り得ないと、ソイツみたいな少数意見を突っぱねてるらしいからね」

「まあ、それが一般的な認識でしょうね」

「……その様子だとマジなんだね。僕も彼奴が誇張してるだけかなと思ってたのに」

 

鏑木さんが渇いた笑みを浮かべるが、その反応も無理はない。俺だって紅林さんから特訓を受け、実戦を経験して……漸く人間の可能性について再認識させられた身だ。彼自身も過去に40人以上の暴走族を単騎で潰したと聞くし、本当に強い人間はたった1人で盤上を覆す実力を持っているらしい。

 

マリアに至っては、前世も現世も銃弾くらい容易く躱せると豪語しているが……いや、普通は回避に移る前に死ねるからな? 何だよ、手と目の動き、撃つ瞬間の殺気を見れば弾道は予測出来るってさ? 俺とルビーも訓練を受けている最中だが、未だに半信半疑だ。

 

「本当にそうなら出演作品の幅も広がるというもの。僕の口利きでその手の作品への出演も整えてあげよう。良い感じの絵になりそうだ」

「ありがとうございます」

 

結果的に新しい仕事が得られたので良しとしよう。

 

「そうそう、忘れるところだった。話は変わるけど、炎上問題のカバーは君の手腕だって聞いたよ? ……だけど例の映像、より上の方で少し問題になってね」

「問題、ですか?」

 

やはりその話かと身構える。間違いなくどこかのタイミングで追及を食らうとは思っていたから、想定内だ。

 

「収録時の素材は外に流さないってのは業界の鉄の掟、これは一体どうなんだって事でね。出演者とは言え、そのタブーを犯したんだ。苺プロに賠償請求を出す、という話まで出たんだよ」

「でも、そうはならなかった。でしょう?」

 

付き合いは短いが、この人が取りそうなやり口だと思った。俺達の行動の結果起きる事態を、彼が想定出来ない訳がない。大方この件でまた1つ貸しでも作ろうと画策したのだろうが、そう簡単に思い通りには行かせない。

 

「出演者は番組公式SNSにならオフショットをアップしても良いと契約書にありました。だから動画は公式SNSにアップした。ちゃんと契約から逸脱しない範疇で仕事をしたに過ぎませんよ? 訴えられる要素は何処にもありません」

「抜け目ないねえ」

 

鏑木さんは飄々とした顔でそう宣う。これも想定の範囲内って事か、食えない人だな。

 

これで話は終わりだと思っていたが、鏑木さんはまだ俺に話がある様子だ。

 

「さて、君達は番組に大きく貢献してくれた。報酬はきちんと払わないとね。来週辺りに寿司でも食いに行かないか?」

 

成程、その時にアイの事について話すという意味か。これで自分達の父親に関する情報が少しでも手に入れば良い。

 

無論、殺しはしない。アイを悲しませるような真似は絶対にしないと決めている。だが捕捉さえ出来れば牽制しやすくなるし、殺す以外の手段をもって無力化する事も可能だ。

 

「……空けておきます」

 

もう2度と大切な人達を失わない為。そして、それによって誰かが傷付き悲しまない為に……

 

 

『待ってよ母さん! 嫌だ、行かないで……!!』

 

 

鏑木さんと別れる間際。俺の脳裏に浮かんだのは、ストーカーに襲われて昏睡状態になったアイを見て壊れていく、幼い弟の姿だった。

 




セルジオなんか1人で200人を殲滅ですからね(公式)。紅林の暴走族40人潰しとか、まだまだ可愛い方です(これも公式)。

……一応現代日本が舞台の作品ですよね? 人間って何ダッケ?
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