【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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不知火フリルが視力上がったとボケるところ、何となくですがバグ大らしさを感じました。


89話

……私の名前は有馬かな。

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオンッ!!

 

 

仲間達と一緒に人間についての再定義を強いられている、新生B小町のアイドル兼女優だ。

 

「アッ!? すいません伊集院さん! 勢い余って壁に穴を……!」

「構いやしないよ紅林くん。――それよりも俺相手に手を抜いてんじゃねえ。俺を倒せなきゃ仲間が死ぬつもりで本気を出せ、紅林」

「ッ! わ、分かりました! もうどうなっても知りませんぜッ!?」

「良いぞ、来い!!」

 

待て待て待てッ!! あんなクッソ柔いお手玉がどうして壁にめり込むのッ!!? 何でお手玉が飛んでく度に突風が発生すんの!!?

 

伊集院って人と紅林さんによる規格外の攻防を見せ付けられ、私の脳内は激しくシェイクされたかのように混乱状態。布製の非常に柔らかいお手玉を銃弾に見立て、それを紅林さんが投げては伊集院さんが避けるというシンプルなもの。

 

 

ヒュゴッ、バキッ、ドゴッ!!

 

 

……それが何故こんな危険極まりない光景を生み出すの? なんだお手玉かと高を括っていた数分前の自分をぶん殴りたい。

 

「うぉりゃりゃりゃりゃりゃあああああああッ!!」

 

「シュッ、シュッ、シュッ」

 

赤い髪に金色の線が入ったかと思うと、さっき以上のパワーでお手玉を次々と投射する紅林さん。私には追跡どころか視認も不可能なそれらを余裕で全て避けてしまう伊集院さん。どっちも人間辞め過ぎぃ!!

 

あ、お手玉が壁を貫通して外へ。わぁ、広くて綺麗なお庭ぁ。流石お金持ち。

 

「ねえねえ、おにいちゃん。人間って何だろうね?」

「すまんがルビー、俺にも分からん。紅林さんが強いのは分かってたが、ここまでとは聞いてなかった……」

「うぉ~すげぇ……私何時の間にアニメの世界に来たんだっけ?」

 

みんなの言葉に完全同意。こんなもん現実離れし過ぎでしょ。この男性達……人の皮被った化け物だ。

 

「よし、ここまでだ紅林くん」 シュパパパパ

「うす、ありがとうございました!」

 

そうこうしている内に訓練は終了。最後に飛んできた4個のお手玉を伊集院さんは敢えて避けず、目にも止まらぬ速さで全部掴み取ってしまった。どうなってるのよこの人の動体視力とスピードは……というか素手で掴んだりして平気なのかしら? 手ごと持ってかれそうな気もするけど。

 

「どうだい、弾丸代わりにお手玉を使って相手の攻撃を避ける訓練は?」

「これなら安全に能力を鍛えられるからオススメだぞ?」

 

等と当たり前のように宣うオッサンズへ私達は一斉に、

 

「「「「うん、無理です」」」」

 

どの口が安全だって言えるのよ!? 壁に穴開けるお手玉なんて喰らったら普通に死ねるわ! アンタ等私等を殺すつもりか……!?

 

「むぅ、これでも難しい方か……」

「俺はこれのお陰で銃持ってる悪党にも対抗出来るようになったんですけどね……」

 

あからさまにガッカリしないでよ! 罪悪感が芽生えそうじゃないですか!

 

「――それ、おれにやって貰っても良いですか?」

 

しかし、抗議しようとした私の声は別の人物の声に横入りされた。マリアが参加を志願したのだ。

 

「ちょ、マリア待て! 流石に危なくないか?」

「悪いけどお兄ちゃん、おれにそんな悠長な事を言っている暇は無いんだ」

 

その小さな体から滲み出るオーラは濃密で、輝く瞳は信念と覚悟に満ちている。マリアはアクアやルビーの静止を振り切り、私達より数歩前で出て紅林さん達を向き合った。

 

「おれは今の段階ですら力不足だと思っています。そこへ伊集院さん達の動きを見てより確信を抱きました……世界はまだまだ広いという事を」

「ほぅ、良い目をしてるじゃないかマリア君。それに一般人とは到底思えない覇気だ」

 

すると伊集院さんは何を思ったのかマリアに近付き、低身長の彼に合わせて膝を曲げると――

 

「――問おう。君は一体何を望む?」

 

「「「「……ッ!!?」」」」

 

伊集院さんの閉じていた目が開いた瞬間、私達は金縛りに遭ったかのようにその場で身動きが取れなくなった。

 

(な、何なのこの人……? 威圧感……? ダメだ、全然動けない……怖い)

 

まるでアクア達にブチ切れた時のアイさんのような圧倒的な圧力。それを至近で受けながらも当のマリアは逆に睨み返している。

 

「家族・仲間・恋人と幸せに暮らす日常。おれはそれを守りたい」

 

そして力強く宣言する。しかしそれでも伊集院さんの圧力は下がらない。

 

「今更だが銃を向けられるような事態を想定してるのならば、時として覚悟を決めねばならん。自分が殺される覚悟を、そして相手を殺す覚悟を」

 

ちょっと、なんか物騒なワードが出てきてませんか……!? ってかそんな伊集院さんに対して、マリアは天使のようなニッコリ笑顔に。嘘でしょ、信じられない……どうして平気なのよアンタは?

 

「……生憎、おれは何があろうと死ぬつもりはありませんし、殺しはしないと決めてるんで」

「笑止。自分も敵も生き残った上で全てを守り切ると……? 甘い、甘過ぎる。小僧、貴様はこの世界を舐めている。その程度の覚悟で愛する者達を守れると思うのか?」

 

伊集院さんの圧が更に高まる。私達はおろか、紅林さんですら顔を蒼褪める程に。それでもマリアは終始人懐っこい表情のまま、

 

「やりきりますよ。全員で幸せになる道がそれしかないのならね――アンタこそ、この星野マリアを舐めるなよ?」

 

(ちょ、おま……!?)

 

断言してみせた。どころか笑顔で挑発しやがった。だけど伊集院さんは激昂したりせず、スッと威圧を引っ込めて菩薩のような微笑を浮かべる。

 

「ふふ、真っすぐで誰にも折る事の出来ぬ強い信念。初めて紅林くんと出会った頃を思い出す」

 

どうやらマリアは伊集院さんに大層気に入られたらしい。

 

「ならば今度は私が投げよう。来たまえ、マリア君」

「はい、宜しくお願いします!」

 

はぁ、はぁ……やっと終わった。気を失うかと思っちゃった。

 

(にしても”殺し”がどうとか……伊集院さん、貴方は一体何者なんですか……?)

 

明らかに普通の世界の住民とは到底思えない。でも疑問は終ぞ解消する事はなく、私はアクア達と一緒にマリアの特訓を遠巻きで見学するのだった。

 

……此方も人の理から外れまくった光景だったのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――紅林くん、実は少し気になった事が」

「はい、何でしょう伊集院さん?」

 

修行が終わって城ヶ崎達が帰った後、一緒に穴だらけの壁へ応急処置を施していた伊集院さんが問い掛けてきた。

 

「あの星野マリア君という子供。今回を通じて非常に優れた戦闘能力の持ち主だと実感出来たが……どうも彼からは強烈な違和感を覚えるのだ」

「違和感、ですか?」

 

俺は釘をトンカチで叩く腕を止めずに聞き返す。

 

「うむ、私の投擲に対する的確かつ瞬発的な対応力。あの動きは正直見事と言わざるを得ない。裏社会であれば正しくトップクラスの戦闘者だ。天羽組や京極組、獅子王組の幹部陣とも互角に渡り合えるだろう」

 

当然の評価だろう。かつて城ヶ崎は関東マフィアを圧倒的に牛耳り、京極組が全精力を掛けてやっと討ち取れた男だ。奴の魂を宿しているマリア君がその段階へ達した事にも、俺は納得しかなかった。

 

「……だからこそ不思議に思う。いくら君からの修行を長年続けているとはいえ、それだけでは決して出せない癖が幾つも見受けられた。あれはそう、まるで長く本物の鉄火場を渡り歩いてきた戦士のそれだ」

 

実際、城ヶ崎は肉体が完全に変わっても、前世で培った戦闘勘と技術をしっかり引き継いでいた。それらを今の華奢な体や俺から授かった技術を組み合わせ、前世とは異なる戦い方を編み出している。

 

俺のようなパワーに久我みてえな俊敏さ、そしてマフィアらしい狡猾さと卑劣さ。ハッキリ言って奴は前世以上に厄介な戦闘者に成長しちまった。あと数ヶ月も経てば……彼奴は俺に追い付き、そして超えちまうだろう。

 

「だが彼は16歳の子供。それも表社会で生まれ育った極々普通の少年だ。そんな子が幼い頃に殺し合いを経験したとは到底考え難いし、仮にそのような場に放り込まれたのなら死ぬ確率の方が高い。どうも私には、あの異常な戦闘力の根源が全く見えてこないのだよ」

「……確かに。マリア君の成長具合が普通じゃないのは、俺も感じています」

 

流石は伊集院さんだ。転生に関する知識が皆無でも、マリア君の中にいる男の輪郭を把握しかけちまうなんてよ。

 

しかし如何に伊集院さんだろうと、当人の許可も無くマリア君の正体を明かす訳にはいかない。そして彼が強い理由の一つでもある家族の事も口外は禁じられている。申し訳ないが今は誤魔化させて貰うとしよう。

 

「一応マリア君は2度ほど猛者とやり合ってますよ? 中学3年の時に戦った”肉蝮”ってレイプ魔野郎に、この間相手にしたという風見組の突撃隊長と」

 

丁度最もらしい理由が豊富だしな。

 

「あぁ、佐和田裕二か。奴は任侠者としても名を馳せていたが、まさか親の命令に逆らえなかったとはいえ下衆なシノギに加担してしまうとはな……実に残念だ」

 

なんでも伊集院さん、風見組の佐和田とは過去に外道討伐で共闘した事があるとか。だからこそ堕ちた知り合いに対して一層強い失望を抱く。

 

「しかし肉蝮に風見健次郎。罪なき人々を我欲の為に食い物にする外道共が――――依頼さえあれば地獄の責苦を味合わせてやるものを

「? 伊集院さん、今何か仰いました?」

「何、気にするな。只の独り言だ」

「???」

 

そういえば俺、伊集院さんの職業については殆ど知らないんだよな。何度聞いてもはぐらかされるし、一体普段はどんな仕事をしてるのだろうか。

 

やがて壁の修理は完了し、道具を倉庫へ戻しに行こうとした時、

 

「紅林くん」

「? はい、何か?」

「――また強くなったな。あのお手玉、実は少し掠ってしまってたんだ。見事だよ」

 

「……はいッ!!」

 

15年近くこの人の弟子をやっているが、やはり褒められるのは嬉しい。もっと頑張りたいと思えるようになってくる。

 

(褒めて伸びる。俺が強くなった理由の一つだ)

 

きっとそれは城ヶ崎……マリア君も同じかもしれない。




トップスター×天王寺組組長の、ショートコント。


フリル「美男美女にイケオジ×2……視力がプラス3.0も上がったわ」

三國組長「ちなみに今は合計で幾つなん?」

フリル「視力15.0ってところね」

三國組長「嘘やろ、この嬢ちゃんギネス更新してもうたわ。これは記念に30ポイント進呈せな」

フリル「そのポイントは何に使えるのかしら? 気になるからもっと貯めてみるわ」


……おや、あまり違和感がない?
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