【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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98話

私の名前は星野ルビー。

 

「わー! あっという間に登録者数1万人! 今もどんどん増えてる!」

「流石ねMEMちょ。これが人気インフルエンサーの実力ってヤツかしら?」

「まあ私のメインチャンネルから導線引っ張ってきたからね。これくらいは行って貰わないと」

 

先代の皆様方からの厳しいレッスンを終えて、ヘトヘトになった新進気鋭のアイドルだ。あぁ、疲れたー!

 

「良いよねーこういうの! 正に公式って感じ!」

「いや公式以外の何だってのよ?」

 

もー、先輩ってば分かってないなー? こういうのはフィーリングだよフィーリング。

 

身体作り用に考えられたメニューの夕食(ミヤコさん監修・ママお手製)を頂いた後、私は先輩やMEMちょと3人でB小町公式チャンネルを眺めている。あっという間に5桁目に達した登録者数に、私は興奮を隠せずにはいられない。それこそより大声で叫びたくなる程に。

 

その時、先輩がふとある事に気付いた。

 

「――そういえばアクアとマリアは何処行ったの? トイレ?」

「ん? なんかアクたん、外の空気が吸いたいからって事務所の屋上に向かったみたいだよ? マリりんを連れて」

「ふーん、なんかあの2人が組み合わさると怪しい雰囲気が漂ってくるのよね~」

「………」

 

今頃おにいちゃんは鏑木さんから得た話をマリアへ聞かせているのだろう――私達の父親について。

 

(早く捕捉出来れば良いんだけど。何時またママが狙われるか……)

 

最終的に助かったとはいえ、ママを間接的に殺しかけたクソったれ野郎を私は絶対に許さない。何が何でも見付け出して排除する。それが私達三つ子が定めた今生の父親に対する基本方針。そうしないと、私達家族が本当の意味で安心して暮らせないから。

 

「……ルビーってばどうしたのよ? 急に黙り込んじゃってさ」

「なんか怖い顔してない? 瞳に黒っぽい星が浮かんでるように見えるんだけど」

「え、私そんな風に見えた? 大丈夫だよ先輩もMEMちょも、別に何でもないから」

「そう? なら良いんだけど。何か悩み事があったら遠慮なく言ってねルビーちゃん?」

「うん、ありがとねMEMちょ」

 

私は父親という人種にあまり良い印象が無い。流石にマリアほど激しく憎んではいないけど。

 

 

 

『――お母さん、来てくれたんですね! お久しぶりです! ……あの、お父さんは今回も?』

『……えぇ、大事な仕事があって自分が離れる事は難しいからって。ごめんね、さりな?』

『い、いえいえ! 忙しいなら仕方ありませんよ!』

 

 

 

(また同じ理由……お父さん、私の事なんてどうでも良いんだ)

 

 

 

前世でもそう。入院中の私をお見舞いに来てくれたのはお母さんだけ――そのお母さんも私が死ぬ1、2年前には全く来なくなったけど、お父さんはそれ以上。8年の入院生活で顔を見れたのは両手の指で数えられる程度だろうか。

 

だから私は割と早い段階でお父さんの事を諦めていた。生まれ変わった先でも父親は影も形も無くて、挙句ママを殺そうとしてくる奴だし……ホント最悪。ママもそんな奴庇ったりしないで、私達に協力してくれれば早く解決出来るのに……

 

……そういえば。

 

(お母さん、今頃何をしてるんだろう? 私が死んでからずっと元気が無いままなのかな?)

 

マリアの前世のお母さん――自分の人生を全て犠牲にしてまで息子を守ろうとした彼女の姿を見て、私は期待せずにはいられない。今もお母さんは私を愛しているんじゃないかって。あまり見舞いに来てくれなかったのも、死地へ向かって行く私の姿を見るのが耐えられなかっただけなんじゃないかって。

 

「……」

 

今度一回様子を見に行こうかな? 住所が変わってなければ良いんだけど。

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

おれの名前は星野マリア。

 

「――という訳だ」

 

屋上の手摺に寄り掛かりながら、鏑木さんから得た情報を語るお兄ちゃんの話を聞く、前世マフィアの高校生だ。

 

「成程ねぇ。ララライのワークショップへ通っていく中で、次第に母さんが女の子らしく振る舞うようになったと」

「鏑木さん曰く、アイはそこで恋をした可能性があるんだと。で、その恋の相手が――」

「おれ達の父親、かもしれないって事か」

 

恋は人を変える。そんな言葉があるように、母さんは身だしなみに気を使ったり、良い食事の場所を訊いてくるようになったりと、田舎娘のような雰囲気から一気に大人の顔になったらしい。

 

メッチャ分かる。おれもみなみの前では男らしく格好付けたいし。一方のみなみは女の子なおれの事も好きみたいだけど。

 

「ただ、鏑木さんも流石に相手が誰かまでは分からないってよ」

「だからお兄ちゃんは舞台版東京ブレイドに出演を決めたんだね――ララライの人達と直接会う為に」

「そうだ。そこで出来れば関係者の毛髪や唾液を回収しようと思ってる。DNA鑑定すれば、もしかしたら分かるかもしれない」

 

DNA鑑定か。でもあれの鑑定料って相当高い筈。ならおれに出来る事は。

 

「はい、お兄ちゃん」

「……”はい”じゃない。なんだその大金は?」

「200万円」

「金額の事は聞いてない」

 

鑑定代の足しにしてね? というつもりで懐から取り出した札束を手渡そうとしたら、お兄ちゃんが呆れた様子でツッコみを入れてくる。

 

「大金を当たり前のように持ち歩くな。普通の高校生はそんな事しない。それにそんな大金を持ってるって周りに知られたらどうなる? 強盗が寄ってくるかもしれないだろ?」

「強盗? あはは、大丈夫だよお兄ちゃん。そんな屑は狙った事を一生後悔するだけだから」

 

おれに襲い掛かるなんて死にたいと言ってるも同然。顔面が凹んだ挙句サツに引き渡されるだけだ。

 

「……確かにお前の実力なら返り討ちは容易いだろうけどな、俺はそういう事を問題にしてるんじゃない。所持金は年相応らしくしろって言ってるんだ」

 

そういえば、お兄ちゃんもお姉ちゃんも財布には1万円前後しかお金入れてなかったなぁ。その位が高校生らしい所持金って意味? 前世でも高校時代はこれ位の現ナマで持ち歩いてたけど、違うの?

 

「はぁ……兎に角それは仕舞え。金銭の援助は……まあ出来れば協力して欲しいが、直接現金を手渡す必要はないから大丈夫だ」

「分かったよお兄ちゃん。じゃあ口座に振り込んどくからお願いね?」

 

そしてかぐやさん達の時と同じように注意され、おれは渋々200万を懐に仕舞う。どうも金銭感覚だけは未だ前世のそれに引っ張られてる気がする……確かに普通の人間らしくないし、そこは少し自重した方が良いかも。

 

(でもみなみ達が誘拐された時みたいに、緊急時に外道を服従させようとしたら到底足りないし……)

 

……

 

…………

 

………………よし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

50万円くらいに抑えるか。




アクア (……これは大して分かってなさそうだな。あまり酷いようならアイに相談した方が良いかもしれない)
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