【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
“愛”と言えばこのキャラは外せません。
俺の名前は我妻京也。東北最大の武闘派半グレ組織、『戒炎』のリーダーだ。
『そうそう! ご飯と言えば、この間ウチの子がー』
『ウチの子?』
『じゃ、じゃなくて! ウチの子猫がねー!』
羅威刃敗北と城ヶ崎の死を受けて関東侵攻を決意した俺は、その準備の為に多忙な日々を送っていた。
『やだなぁ私ったらー、いっつも変な事言っちゃってー』
それらが全て完了し、全部隊に侵攻開始の号令を掛ける少し前。俺はずっと前から気に入ってたアイドルが出演する番組をアジトで見ていた。
「おやぁ、我妻ちゃ~ん? Mステ鑑賞とは珍しいねぇ」
「麻生。うん、ちょっとね」
コイツは麻生成凪。戒炎のNo.2で、かつては自分の組織を率いていた男だ。
「お、コイツは“アイ”じゃないの。とうとう復帰したんだ。目出度いねぇ」
「何だ、知ってるの麻生?」
「あぁ、この子は前々から途轍もないバリューを感じていたからね。突然活動を休止した時は心配だったんだ」
「へぇ、お前にそこまで言わせるなんて……この子の大成は約束されたも同然だな」
麻生の人を見る目は超が付くレベルで一流だからね。
「しかし我妻ちゃんもお目が高い。この子は知名度も人気も未だ発展途上だ。その様子だと結構前から目を付けてたみたいだけど、どうなんだい?」
「なあに、簡単さ。この子は愛が
俺はその人間が愛されてるかどうか見るだけで分かる。“アイ”は親や周りから受ける筈の愛情が皆無に等しく感じた。それに……
「何だか似てるんだよね――城ヶ崎に。アイツも愛が不足していたからかな?」
「城ヶ崎? あの羅威刃のトップだった男か」
「確か麻生は前に東京で奴と戦った事があったんだっけ?」
「あぁ、中々のバリューを秘めた男だった。また殺り合ってみたかったけど、京極組に殺されてしまうなんてな。とても残念だよ」
「全くだね」
ただ城ヶ崎と”アイ”には決定的に違うところがあった。
「話を戻すけど、俺が”アイ”に感じた魅力はそれだけじゃないんだ」
「ほぅ、他にどんな魅力があったんだい我妻ちゃん?」
「麻生も見てご覧? この子の歌っているところ」
「どれどれ?」
丁度”アイ”たちB小町が新曲を披露し始めたシーンを麻生と一緒に視聴する。猛烈に輝く一番星は、あっという間に周囲を飲み込んでしまった事だろう。
「……うーん、どこか必死にも見えるな」
「そう。この子はね、愛されたがってるんだ。不足している愛をアイドルを通じて得ようと我武者羅に頑張ってる」
愛を信じられず、拒絶していた城ヶ崎とは違う。もの凄く努力家で、健気で素敵な子。この愛に飢えている様子が俺にはとても愛おしく感じた。
「東京侵攻の暁には、城ヶ崎と共にまとめて俺が愛してやろうと思ったんだけどね……」
「どうしたんだい、我妻ちゃん?」
「この子はさ、復帰する前はあんなに愛が足りなさそうだったのに、今は完全とは言い難いけど愛がそれなりに蓄積しているんだよ」
それはつまり愛を得る手段を持っているという事。俺がわざわざ出張らなくても、この子はもう愛を手に入れていける。
「活動休止中に一体何があったんだろうねぇ?」
女の子が愛を得る手段として考えられるのは、心から許せる男との素敵な出会いか、あるいは……
「……出来ちゃったとか?」
休止期間が数ヶ月にも渡った事を考えると、在り得なくも無いだろう。
「それはアイドルとしてのバリューが下がってしまうだろうね」
「分からないよ? 愛を知る事で凄まじい成長を遂げる人間だっているんだし」
「“アイ”はバリューを上げる側って訳か」
「お前もそっちの方が可能性高いと思ってるだろ? わざわざ目を付ける程だ」
まぁ所詮は推測の域を出ないけど。兎に角“アイ”はこれから愛を自らの力で充実させていく。俺はそれが残念で、欲求不満な状態だ。
「城ヶ崎は殺されてしまうし、“アイ”は自力で愛を補充してしまうし……この二人は是非とも俺が愛を注いでやりたかったのに」
「ならその分、京極組にアイラブユーしてやれば良いじゃないか」
「そうだね、そうしようか」
麻生の言う通りだ。この二人に注ぐ筈だった愛も含めて、全て彼らに注いであげよう。きっと喜んでくれるに違いない。
「……ふむ、そろそろ時間だね。じゃあ麻生、俺が東京へ行ってる間の留守を頼むよ?」
「はぁ、俺も行きたかったなぁ……」
「お前がいないと部乃武を抑えられなくなっちゃうだろ? 吉報を待っててくれ」
俺は親衛隊を引き連れ、アジトを後にする。
「さぁ京極組。今すぐ行ってたっぷり愛してあげる。地獄に落ちた後もみんなで語り合える程に」
だから――
俺を退屈させんじゃねえぞ?
……そう言えば“アイ”が復帰したのって、城ヶ崎が死んですぐ後だったなぁ。偶然か?