【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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バグ大とクロスする以上、やはりヴィラン視点の物語も必要だと思います。


106話

結成・活動開始から約3ヶ月後。新人アイドルKakabelは、パソコンに映る公式サイトと睨めっこしていた。

 

『ふぉ、フォロワー20万人超え……開設から3ヶ月も経ってませんのに』

『1ヶ月前に出した初シングルも10万を超えましたわね……』

『まさかここまでとは……』

 

想定以上……いや私が最初に想像した通りの成果に、ほぼ全員開いた口が塞がらなかった。配信全盛のご時世にCD単体で10万枚の売上を叩き出したと考えれば、今の状況がどれだけ凄い事か分かるでしょう。巷では既に私達を”スーパールーキー”と称賛してる程です。

 

『やりましたね先輩方! こんなにも沢山の人が私達を評価して下さってますよ!』

 

唯一胡桃さんだけは無邪気な笑みを振り撒き、私達に癒しを提供する。場の空気が温かく感じられ、とても心地良い気分だ。

 

『杠葉さんのお陰ですわ。貴女が私達に歌のレクチャーをしてくれたから、貴女ほどではないにせよ歌唱力が相当上達しましたもの』

『私なんかヘタウマだった頃が嘘のように上手になったもんな。歌うだけでなく教えるのまで得意なんて杠葉は本当に凄いなぁ』

『えへへ~、そんな事ないですよー。皆さんの中に隠れた才能があったからだと思います』

 

胡桃さんは謙遜しますが、やはり彼女の絶対的な歌唱力の影響は間違いなく大部分を占めてるでしょう。この子の天使の如き歌声を聞いて魅了されない人の方が少ないでしょうし。

 

そんな胡桃さんは教えるのも優秀で、すっかりアイドルとコーチを兼任する立場になっていました。歌は勿論、振り付けに至るまで。様々なアイドルユニットの動きを調べ、如何にすればお客様から魅力的に映るのか独自に研究なさったそう。それでいて歴代のKakabelの動きも参考にしつつ、お嬢様らしい優雅さも感じさせるパフォーマンスをダンスに取り入れてるのですから、その情熱っぷりには私達も舌を巻く程です。お陰でチーム全体のレベルが劇的に向上しました。

 

しかし……

 

『こういうの……悪くありませんわね』

『宮里先輩?』

『ううん、何でも。当初の目的が予想以上に充実した形で達成したものですから、嬉しくて』

 

思わず笑みが零れる。アイドルにあまり興味は無かった筈なんですけどねぇ……ここ最近は楽しいと感じながら活動している自分がいる事に驚いてます。

 

『……聞いてます。先輩方はアイドル活動にそこまで積極的ではないと』

『す、少なくとも今は違いますわよ? 確かに最初は習い事を減らせるかもと思ってましたけど……』

 

これは本心だ。ちょっとした安息の場所としてKakabel加入を選択したつもりだったが、胡桃さん含めてこの子達と一緒に過ごす時間をもっと味わいたいとすら思ってるのだから。

 

すると胡桃さんが真剣な表情で私達を見据える。

 

『――だから私、決めたんです』

『決めた?』

『はい。先輩方に仲間と一緒にアイドルをする楽しさを、もっと知って頂きたいと。皆さんだって単に気を紛らわすよりも、本気で取り組んで心から楽しいと思いながら活動する方がずっと気持ち良いとは思えませんか?』

『ムゥ、言われてみれば確かに……』

『精々サロンの延長線上くらいにしか考えてませんでしたからね』

 

名家の束縛から逃れる。それが可能であれば何処だろうと何だろうと良かったという考えは、私含む5人が少なからず持っている共通認識だ。

 

『勿体ない』

 

そんな私達の内向きな姿勢を、胡桃さんはバッサリと切り捨てます。

 

『そんな消極的では青春の無駄遣いじゃないですか。前に千代田先輩も仰ってましたよね? 青春らしい青春をしてみたいって』

『ん、まあな。家の事で雁字搦めにされて、このままじゃ貴重な10代が勉強だけで失われるって危機感覚えてたし』

『ならこれも運命です。とことんアイドル活動にのめり込んで、思いっきり青春しちゃいましょう!』

 

何より、と胡桃さんは間を置いて満面の笑みで答えた。

 

『私、アイドルも大好きですからね! さっきも言いましたけど、皆さんにもアイドルの素晴らしさを知って欲しいんです。絶対に損はさせませんから、どうか私と全力でアイドル活動してくれまんか!』

『杠葉さん……』

 

後輩ながら、Kakabelはすっかり彼女を中心に回り出していました。

 

『私も段々アイドル活動が楽しくなってきましたし――分かりました。杠葉さんの言う通り、ここは少々本気で取り組んでみるとしましょう』

『ま、私もどうせ楽しむなら全力でとは思ってたところだ。良いぜ、こうなったら出来るとこまでやってこうじゃないか』

『ありがとうございます、先輩方!』

 

でも不思議です。全然嫌な気分ではありませんでした。寧ろ一生懸命な胡桃さんが微笑ましく、その姿を側でもっと見たいとすら思えてきています。

 

ってあれ、百合花さん?

 

『一応、ユニットリーダーは私なんですけどねぇ……あはは』

 

あぁ、百合花さんが遠い目をしておられます。あくまで形ばかりとして消極的にKakabelのリーダー役を務める事になった彼女ですが、やはり多少の危機感はある御様子。

 

『わぁッ!? す、すみません! リーダーの穂波先輩を差し置いて私ったら……!』

 

胡桃さんが慌てふためくと、顔に掛かってた影が一瞬で消え、得意気な笑みを溢す百合花さん。

 

『……なーんて冗談ですわ。良いんですよ、センターは杠葉さんなのですし。それよりも慌てる杠葉さんって可愛いですわね? これは弄りがいがありますわ』

『か、かわッ!? も、もう! 揶揄わないで下さいよー!』 ムガーッ

『あはは、怒ってる姿も愛らしいですわね』

 

百合花さん、貴女良い性格してますわね。見た目清楚な大和撫子って雰囲気なのに、結構人を揶揄うのが好きな方なのでしょうか。

 

『気を付けろよ杠葉。コイツ見た目に寄らず人をおちょくるのが趣味な女だからよ』

 

雅さんが忠告すると、胡桃さんは何かを思い出したかのように彼女を話題の渦中へ引き摺り込んだ。

 

『そ、それに可愛さなら千代田先輩の方が上だと私は思います! だって部屋のベッドには可愛い人形やぬいぐるみが満載だと伺ってますので!』

『ぶふッ!?』

 

助け舟を出した筈が(本人にとっては)とんでもない事実が暴露され、今度は雅さんが顔を真っ赤にして吹き出した。

 

『お、お前……何故それを』

『あー、ごめんなさい千代田先輩』

『実は私達も御存じなんです。先輩の可愛いもの好きなところ』

『な、榎並に綾瀬……!?』

『……申し訳ありません、千代田さん』

『って宮里もかよ!? おい誰だ、私の趣味を仲間に暴露した奴は……!?』

 

全員で一人の女の子に注目します。視線の集中砲火を受けた彼女――百合花さんは悪びれもせず、

 

『――てへ♪』

 

舌を出して可愛らしく笑ってみせました。当然雅さんは怒ります。

 

『だよなー我がルームメイト貴様ぁああああ!!』

『あはは、ごめんあそばせ~!』

『待てこらぁ!』

 

百合花さんを雅さんが追い掛ける様子を、残った4人で微笑まし気に眺め続けました。そこへ隣にいた胡桃さんが私に笑い掛けます。

 

『ほら、こんな感じで楽しんでいけば良いのですよ。義務感で動くよりずっと良いじゃないですか』

『そうですわね、ふふ』

 

思えば辛い稽古や名家の重圧も、皆さんと過ごす時間の間は忘れていましたわね。今だけは名家の令嬢ではなく、何処にでもいる普通の女の子って感じがします。

 

『自由って……こういう事を言うんでしょうね』

『宮里先輩?』

『ううん、何でも御座いませんわ、杠葉さん』

 

気が付けば私達は互いに意気投合しており、すっかり打ち解けていました。

 

『許して下ひゃいまひ~! 千代田ひゃんの可愛うぃとこにょ、皆ひゃまにも知って頂きらかったんれしゅー!』

『ギルティ! うりうりうり~!』

 

割とすぐに雅さんに捕まった百合花さん。彼女に両方の頬を指でフニフニ押される刑に処されています。

 

 

 

『あ! いけない、忘れてた!』

 

 

 

その時だった。胡桃さんが何かを思い出して、両手を合わせるようにパンと叩いたのは。

 

『どうしたんですの、杠葉さん?』

『宮里先輩。Kakabelには伝統がありましたよね? ほら、年上の人を“お姉様”と呼ぶ伝統が』

『え? ……あぁ、ありましたわね』

 

メンバー間の結束を促す為、擬似的な姉妹として振る舞う。これまでのKakabelもその慣習に従ってきた。とはいえ競争関係でもあった先代以前の皆様の仲間意識は微妙で、言うほど結束力は育めなかったと聞いてますけど。

 

『私、先輩方の事を“お姉様”って呼びたいです! だって如何にもお嬢様って感じがするじゃないですか!』

『まあ大衆がイメージするお嬢様像って、そんなものらしいな?』

『でも、確かに3ヶ月も経ちますし、歴代のKakabelも伝統を遵守してきましたし……そろそろ姉妹のような接し方にしても良いかもしれませんわね』

『ですよねですよね! じゃあ私からいきます!』

 

胡桃さんはもう興奮しっぱなし。最初に彼女から私達の事を改めて呼ぶ事に。

 

『こほん。えっと……』

 

と思えば少し恥ずかしげに躊躇して、両手を背中側に回してモジモジ。そして準備が整ったのか、大きく深呼吸してから私達を見据え、

 

『あ、改めて宜しくお願い致します。そのーー百合花お姉様、雅お姉様、詩織お姉様、夕日お姉様ーーそして葵お姉様』

 

親しみの籠った眼差しで、そう呼んで下さいました。こんな純粋無垢な子から姉として慕われるなんて……嫌な気分になるどころか、寧ろ嬉しくなってきます。

 

『うふふ。なんだかこそばゆいですわね』

『でも何故でしょう? とっても素敵な気持ちですわ。ただ呼び方を変えただけの筈ですのに』

『私等もやってみようか? ……ってか最年長組はどうする? 下の名前で呼んでみるとか?』

『それが良いですわね千代田さん。では、貴女の事をこれからは雅さんとお呼びしましょう』

『お、悪くないな。じゃあ私はお前を百合花って呼ばせて貰おうか』

『えぇ、宜しくお願い致しますね』

 

最終的に同級生や年下相手には下の名前に“さん”付け。年上相手には下の名前に“お姉様”を付けて呼ぶ事に。もっとも雅さんのように慣れない方もいらっしゃるので、強制ではありませんが。

 

『えへへ〜』

『楽しそうですわね杠葉さ……ではなくて、胡桃さん?』

『はい、葵お姉様! こうして皆さんを“お姉様”って呼んでると私、なんだか本当にお姉様達の妹になれたみたいで! もっと仲良くなれた気がして、嬉しいです!』

『……えぇ、私も』

 

本当に胡桃さんのお姉さんになれた気がしますわ。




少しの間オリキャラ達の物語が続くかもしれません。
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