【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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明けましておめでとうございます。2026年(令和8年)も裏完を宜しくお願い致します。

なんとか新年ジャストに投稿出来て良かったです。


111話

――JIF当日。東京グレートアリーナ。

 

「いよいよ、来ちまったな……」

「あぁ、緊張してきた……」

 

此処は男性アイドル専用の更衣室。女性アイドルと比べれば少ないが、それでも相当な人数が集まっていて足の踏み場も少ない。

 

「ふぅ――」

 

初出場を控えて上がりかけているイケメン2人組の隣では、周りの喧騒など気にせず着替えに勤しむ少年が1人。

 

「え」

「ん?」

 

会話を止めた彼等が少年に視線を送り、目が点になる。中性的な顔の造形に、華奢で雪のような色白肌。恐ろしいまでに整った容貌の彼が取り出したのは、なんと女性用の衣装。

 

「んしょっと」

 

下着のみになってから白ソックスを履き、スカートを履き、白装束を纏い、袖を付ける。男達の表情がみるみる驚愕したものへと変わっていく。

 

『ッ!!?』

 

気が付けば更衣室内は完全に静寂と化す。誰もが少年の極端な変貌に言葉を失い、目を奪われる。

 

「よし、着崩れは――無いね」

 

先程まで存在していた筈の美少年は、今や本物の女性以上に美しいアイドル少女に生まれ変わっていた。彼は周りの目線に気付く事はなく鏡の前に立ち、衣装を整え、両耳辺りの髪を赤い紐で縛る。

 

「うん。やっぱおれってば可愛い♡」

 

そして軽い足取りで部屋を去っていった。

 

「……え、今の、女の、子?」

「なんで女の子が男子更衣室に……?」

「すっげえ可愛い子だったな……何処の事務所の子だろう?」

「あぁクソ、連絡先聞いておきゃ良かった」

 

残された男性陣は全員混乱状態となり、その一部が後に彼の正体を知って性癖を歪ませるのだった。

 

 

 

 

同時刻、男子更衣室に近い廊下を、とあるアイドルユニットの少女達が歩いていた。

 

「遂に来たねー、プラチナステージ!」

「ブロンズステージからマジ長かったー! このまま一気にドームまで駆け上がっていきましょう!」

 

通算4回目のJIF出場となる人気ユニットだ。順調にキャリアを積んでいる彼女達は、この勢いで更に上位のドーム公演を目指そうとする。

 

ガチャ

 

更衣室前を通り過ぎようとした直前、扉が開いて人が出てくる。

 

「へ?」

「!?」

 

彼女達もまた立ち止まり、目を見開いて固まる――容姿に自信がある筈の自分達すら霞む、圧倒的に可憐な美少女の出現に。彼女――いや彼は癖のある柔らかな金糸の髪を靡かせ、少女達の前で扉をゆっくりと閉める。

 

「……ん?」

 

彼は自分に注目する少女達の存在に気付くと、

 

「あ、ごめんなさい。道を塞いじゃいましたね?」 ニコッ

 

『ッ!!』 ドキッ!!!

 

人懐っこく、それでいて愛くるしい笑顔を振り撒き、少女達の心臓を破裂させんばかりに締め上げる。

 

「……やっば、メッチャ綺麗」

「何あれ天使……? いや妖精……?」

「あんなに可愛い子見た事がないよ……負けた」

「てか笑顔が可愛過ぎ。護ってあげたくなっちゃいそう」

 

謎の少女が立ち去った後、アイドル達は彼の美貌に魅了され、完全敗北を喫していた。

 

「……ん? ねえ、ちょっと待って?」

「どうしたんミカ?」

「あの女の子、男子更衣室から出てこなかった……?」

「「「………………へ?」」」

 

後に彼女達もまた彼の正体を知り、当時更衣室にいた男性陣と同様に色々(意味深)と壊れていく。

 

「~~~♪」

 

一方で(主に精神的な面で)破壊の限りを尽くした彼は、自らが起こした被害(?)そのものを認知すらせず、鼻唄混じりに愛する者達の元へ急ぐ。

 

これが、かの有名な”マリア事件”として芸能界に語り継がれるエピソードである。

 

 

 

 

 

「みんなー!」

 

おれの名前は星野マリア。

 

「マリアきゃわわ〜♡」

「わふっ!?」

 

合流先のVIPルームで目を輝かせた母さんに思いっきり抱き付かれる、苺プロ唯一のモデルだ。

 

「さっすが私の息k……弟! 大好きだよ!」

「あ、アイ姉ちゃん! みんな見てるって! 恥ずかしいよ!」

 

ちょちょちょちょッ、今息子って言い掛けなかった!? 事情を知らない子も周りに居るんだから不味いよ母さん! ほら、社長もお兄ちゃんも紅林もギョッとしてるって!

 

カシャカシャカシャ

 

「……良いわね。国民的大女優と、話題沸騰中のユニセックスモデラーのおねショタ展開。2人とも、そのまま続けて?」

「不知火さん?」

 

みなみと一緒にお姉ちゃん達の応援に来てくれた不知火さんは、真顔のまま高速でカメラのシャッターを切りまくる。相変わらずはっちゃけてるなぁこの人……

 

あと、おねショタじゃなくてママショタじゃない? この場合は。

 

「アイさんと仲良いの羨ましいわぁマーくん」

「ぷは……まあおれ末っ子だから、沢山可愛がって貰ってきたからね。それよりもみなみ、不知火さん。来てくれて本当にありがとう。お姉ちゃん達もきっと喜ぶよ」

 

漸く解放されたおれはみなみと不知火さんにお礼を述べる。

 

「友達の晴れ舞台やもん。当然や」

「ルビーちゃんもだけど、私はMEMちょのアイドル姿を拝みたかったから。それにアイさんにも会えて、マリア君のこんなに可愛いアイドル姿も見れた……眼福幸福極まってる」 カシャカシャカシャ

「……まだシャッター切る手が止まらないの?」

 

ま、大人気タレントとして不知火さんも激務続きだろうし、こういうところで息抜きして貰った方が良いだろう。高校生なのに過労で倒れるとか洒落にならない。

 

「でもマーくん、凄く可愛いですよ? スマホ越しでも十分魅力的やったけど、こうして直接見るともっと美人やわ」

「あ、ありがとう/// ……でも、おれ的にはみなみの方がずっと綺麗だと思うな?」

「! えへへ、おおきに///」

 

ほら、赤面可愛い///

 

「良いよ2人とも。そのままもっと惚気て?」カシャカシャ

 

「「不知火さん(フリルちゃん)!!」」

 

おーい、今のシーンまで撮らないでってば! 

 

「寿さん、不知火さん。俺からも言わせてくれ。妹達の応援に来てくれてありがとう」

「いえいえアクアさん、当然やないですか」

「こっちこそ、招待してくれて感謝しかないわ」

「招待したのは社長だ。お礼なら社長に伝えてくれ」

「えぇ、そうしますー」

「ねえお兄ちゃん、ナチュラルにおれを妹としてカウントしないで?」

 

お兄ちゃんも加わり、おれ達は高校生同士の会話に華を咲かせる。因みに大人組は仕事の話題だ。

 

「そういえば不知火さん言ってたもんな。MEMちょの大ファンだって」

「うん、推しの子なんだ。その彼女があの伝説のB小町に入ったなんて、応援しない訳にはいかないわ」

 

どこか無表情っぽかった不知火さんの顔が、MEMちょについて語る時だけ変化する。口角が微妙に上がり、頬も少し赤く色付く。彼女にここまでの表情を浮かばせるだけでも、MEMちょは芸能人として十分な才能があると言えよう。

 

カシャ

 

「ん?」

「え?」

「あ」

 

そこへ響くシャッター音。

 

「ええ顔頂きました、フリルちゃん」

 

なんとみなみがイタズラっぽい笑みを浮かべて不知火さんをスマホで撮影したのだ。それを見た不知火さんは……

 

「……みなみちゃん///」

 

え、マジ? メチャクチャ顔から湯気出てる。

 

「ごめんその写真消して?」

「ダメ。さっきのお返しや」

「ヤダ〜!」

「あはは!」

 

不知火さんがすっごい恥ずかしそうな顔してみなみを追い掛ける。

 

「あの写真、クラスの連中に見せたら更に人気出そうだな。不知火さん」

「だね!」

 

不知火さんの意外な一面を見せてくれたみなみは凄いや!

 

「星野さーん、そろそろ準備をお願いしまーす」

 

そこへ現れたスタッフが、おれの事を呼ぶ。どうやら開会式が近いようだ。

 

「はーい、分かりましたー!」

 

おれは笑顔で応じ、みんなに向き合う。

 

「じゃあ行ってくるね?」

「おう、頑張ってこい」

「行ってらっしゃい」

「マリアー! 頑張れー!」

「ありがとうアイ姉ちゃん!」

 

最後に向き合うは、勿論我が恋人。

 

「マーくん、また後でね?」

「うん、休憩時間になったら呼ぶね? みなみ!」

 

みんなに見送られながら、VIPルームを後にする。

 

……おっといけない、その前に。

 

「紅林」

 

おれは社長の補佐と母さんの護衛役を務める師匠に耳打ちする。

 

「母さん達の護衛、宜しく願いね?」

「任しとけ。どんな悪漢だろうがみんなには指一本触れさせねえからよ」

「ありがとう」

 

紅林には本当に沢山助けられている。おれが他の事に時間を取られている時も、事情を知ったこの男が積極的に母さんの守りを固めてくれている。堅気ながらトップアサシンとも互角以上に戦り合える超武闘派。苺プロ最高戦力の1人として、そしておれ達をここまで無償で鍛えてくれた師匠として、おれは厚い信頼と尊敬の念を抱いていた。

 

(散々駒だの使えるだの見下したり、腹を不意打ちで刺したり……そんな真似した馬鹿の為にここまでしてくれるのだから……)

 

本当に感謝しかなく……そして本当に申し訳なく思う。今度また高くて美味しい飯でも奢ろう。高級肉のフルコースとか紅林喜ぶかも。

 

と、それだけじゃない。

 

「気を付けて紅林? 今回のイベント、おれ少し胸騒ぎがするんだ」

「……何? そいつは奇遇だな、実は俺もなんだよ」

 

おや、紅林も第六感が働いた? 流石は超戦闘者。

 

「なら尚更だよ。十分注意してね?」

「舐めるな城ヶ崎。俺だってお前に負けた後も裏の猛者と山程殺し合いをしてきたんだ。違和感は一つだって見逃さねえ」

「ふふ、安心したよ」

 

おれは短く笑うと、開会式が執り行われるプラチナステージへ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーさあ今年も始まりました! 第60回ジャパン・アイドル・フェスタ! 今宵はこの東京グレートアリーナに総勢140組、1200名以上ものアイドルが大集結!」

 

号令に合わせて観客達が咆哮の如き歓声を上げる。熱狂に包まれる中、おれはプラチナステージの脇で立っていた。

 

ステージが多い為、JIFの司会者も50人近くいる。そのどれもが中堅からトップクラスの女性アイドルばかりで、男はこのおれただ1人。

 

「ではまずは各ステージの司会進行役を紹介致します! 皆さん、自己紹介を!」

 

司会統括者の指示で1人1人名乗っていく。

 

「では次の方ー!」

 

遂に来たか。出番だ。

 

「こんばんわー!」

 

幾万もの視線が手を振るおれに集中した。鍛え上げられた視力で驚く顔、頬を赤らめる様子、慌てて隣の相手と話す人……全てを正確に捉える。

 

良かった。少なくともおれの登場を否定的に見てる者は殆どいない。寧ろ可愛いという声すら結構聞こえてくる。

 

……嬉しい。

 

「苺プロダクション所属、天使王子こと星野マリアです!」

 

「天使王子くんだー!」

「ウッソ!? 今ガチでメッチャ話題になった子じゃん!」

「え、じゃああれって男の子!? どう見ても美少女じゃん!」

「衣装すっごく似合ってる! カワイイ〜♡」

 

みんながおれの事を褒めてくれている。前世は悪名だったけど、今世で轟くおれの名はポジティブに満ちている。

 

「不審な点があれば絶対に見逃すな」

「はい、姉御! 俺等が居るうちは誰も好き勝手出来ません」

「ミスは即ち死! やってやるっす!」

 

水面下では、様々な思惑が交差する。イベントを守る者も居れば、

 

『侵入完了。これより搬入作業を開始します』

「了解です。決して誰にも悟らせないように」

「日野崎さん率いる部隊がジャマーの設置を終えました。妨害工作はいつでも行けます」

「ありがとうございます、夕日さん」

 

イベントを地獄に変える者達も居る。

 

しかし、おれは未だにそれに気付けていない。無事にお姉ちゃん達の夢が叶うように、お兄ちゃんと母さんがそんなお姉ちゃんの夢を問題なく見届けれるように……おれはそう願うばかりだ。

 

「第3ブロンズステージの司会を担当しておりますので、是非見に来て下さいねー! 宜しくお願いしまーす!」

 

さあ、みんなが待ち望んでたステージ! 必ず成功させるぞ!!




次回、再び新生B小町の視点に戻ります。
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