【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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久々に一条VS城ヶ崎の公式動画を見直してきました。

城ヶ崎が致命傷を受けたシーンでは腹のど真ん中にナイフが突き刺さってますね。ここもアイと同じ。多分一条が切り上げなくても出血多量で死んでたと思います。


今回は城ヶ崎が転生する4年前の話です。駄文ですが、どうぞ。


12話

俺の名前は城ヶ崎賢志。武闘派半グレ組織、『羅威刃』に所属する幹部の男だ。

 

少し前にボスである稲村の勧誘で羅威刃に入団した俺は、奴を失脚させる為に裏工作を始めていた。そんな頃に俺は、稲村の馬鹿からウチの舐めた半グレの粛清を命じられた。

 

そいつ等は知名度も低い弱小組織だったが、わざわざ地方から関東へ進出して羅威刃のシマを荒らしやがったのだ。

 

連中の先遣部隊は殲滅されたが、まだ本隊が本拠地に残されている。奴等がまた此方へちょっかいを掛けてくる前に本部に攻め入り、この世から完全に消す。それが俺の今回の任務だ。

 

「東雲、ヤサに付いたら一人残らず皆殺しだ。命乞いにも取引にも耳を貸す必要は無い」

「承知しました。全員斧の錆にします」

 

俺は結成初期から羅威刃に所属しており、俺の案内役兼直属の部下として配属された東雲と共に、連中が潜伏する宮崎へ向かった。

 

 

 

 

 

何度鉄道やバスを乗り継いだ事だろう。漸く俺たちは宮崎県の高千穂町へ到着した。

 

「城ヶ崎さん。奴らのヤサはあの山の中にあるそうです」

「おいおい……何処から入れば良いんだこれは?」

 

しかし、ここで問題が発生。情報屋より連中のアジトが目前の山中にある事は掴んでいたが、麓から天辺まで鬱蒼とした緑に包まれていて目視で確認不可能。道沿いにあるだろうと地図を確認してみたが、道になりそうな所は全く記されていなかった。

 

「おそらく地元の人間にしか知らないルートを利用している可能性があります。この辺りの住民に聞き取りをしてくるので、城ヶ崎さんは此処でお待ち下さい」

「あ、おい」

 

そう言って東雲は俺の元から離れてしまった。

 

(あんな成りで真面に話を聞いてくれる奴がいんのかよ……?)

 

東雲は堅気の人間からしたら威圧感が半端ない見た目をしている。全身に入れ墨を走らせた筋骨隆々の巨漢など、自分はアウトローですと言ってるようなものだ。

 

(アイツだけでは不安だな。俺も動くとするか)

 

地方都市にしてはそれなりに大規模な病院が近かったので、俺は其処で聞き取りを行うべく足を早めた。

 

 

 

 

 

病院に辿り着いた俺は、まずは正面の広場で散らばる入院患者たち一人一人に話し掛ける。殺気を抑え、人当たりの良さそうな優男を演じて。

 

地元住民らしき老人も多いので、あっさり情報が手に入ると思ったが。

 

「あぁ、あの山かい? 済まんが儂は別の場所から来たんでの。この街の事はあまり詳しくないんじゃよ」

「そうですか。ありがとうございます」

 

隣県などからの入院患者ばかりで、地元人に中々遭遇できないでいた。

 

(……そろそろ別の場所へ行くか。民家の並ぶところなら知ってる奴に高確率で遭遇できるかもしれん)

 

諦めて病院を後にしようと背を向けた、その時だった。

 

「っ……!」

 

後ろから頭に何か軽い物が衝突し、視界が一瞬だけ揺れた。

 

「す、すいません!」

 

直後に駆け寄ってくる眼鏡の男。白衣を身に纏った姿、この病院に所属する医師ってところか。

 

「あの、怪我とはありませんか?」

「えぇ、大丈夫です」

 

俺はズレた眼鏡を整えながら医者の男の謝罪を受け入れた。こんな場所で堅気に切れても仕方がないので穏便に済ませる。

 

「せ、せんせ! その人大丈夫なの……!?」

「あぁ、問題ないそうだ。ちょっと待っててくれ、向こうに転がったボールを取って来るから」

「う、うん」

 

さっき俺の頭に当たったのはボールらしい。男が茂みへ飛んでいったボールを回収に向かう中、車椅子に乗った小学生くらい少女が俺の元に近付く。

 

「あの、すいません。私が投げたボールが当たっちゃったみたいで……」

「何、あれくらい大した事じゃない。気にしないでくれ」

「そ、そうですか……よかったぁ」

 

癌か何かで抗がん剤治療でも受けているのだろうか。少女は髪が全て抜け落ちており、それを隠す為に飾りを施したヘッドキャップを被っていた。

 

(ふむ……末期といったところか?)

 

身体は痩せ細り、明るい声とは裏腹に顔色も優れていない。少女に死期が迫っているのは一目瞭然だった。

 

「お嬢ちゃんは今のお医者さんと遊んでいたのか?」

「はい、こうしてボール遊びに付き合って貰ったり、リハビリを手伝って貰ったりしています。すっごく優しい人なんですよ!」

 

俺が何となく質問すると、少女は聞いてもいないのに先の医者について熱く語り出す。その時の彼女の顔は頬が仄かに赤く色付き、生気を感じさせるものになっていた。

 

「随分語るんだな。もしかしてあのお医者さんが好きなのか?」

「え!? えと、その……」

 

顔を真っ赤に染めてしどろもどろになる様子から、少女があの医者に恋愛感情を抱いているのは間違いなさそうだ。

 

「お待たせ……ん? どうしたんだ?」

「え、いやその! せ、せんせには内緒!」

「何なんだ一体……?」

 

ボールを片手に戻って来た医者に少女は必死に誤魔化す。まだ本音を伝えていないとか、そんなところだろうか。

 

おっと、折角だ。

 

「すいません。実は僕、この病院の近くの山に用がありましてね。もし入口とか知ってたら教えて頂けませんか?」

「あの山ですか? でしたら――」

 

この医者は地元民だったようで、山への入り口や道について詳しい情報を持っていた。

 

「ありがとうございます。あの山、いくら地図で調べても道が記されてなかったので困ってたのですよ」

「あぁ、彼処は獣道しかありませんから、地元の人でもあまり訪れない場所なんですよ……観光か何かで?」

「まぁ、ちょっと山登りしたくなりましてね」

 

舐め腐った半グレ共を潰すついでに。

 

「お兄さん、まさかスーツで山登りするつもりなの?」

「いや、ちゃんと必要な道具は持ってきてるから」

 

主にナイフとか銃とか。あぁ、東雲は斧も追加だな。

 

その後は世間話へ話が移り、気が付けば俺は小一時間程度その2人と他愛もない会話を続けてしまった。

 

「……おっと、随分長いこと話し込んでしまったな」

 

俺は腕時計を確認してそう呟くと、2人は少しバツが悪そうな顔をする。

 

「なんだかすいません、結構な時間引き留めてしまったようで……」

「ごめんなさいお兄さん」

「いえいえ、このくらい大した事ありませんよ。色々と話せて僕も楽しかったですし」

 

これは普通に俺の本心だ。不思議とこの2人との会話は有意義なものに感じていた。自分が裏社会の人間である事を忘れ、ただの城ヶ崎賢志として話せたような気がする。

 

「じゃあ名残惜しいですが、僕はココでお暇させて貰いましょう」

「あの山へ行く際は十分気を付けて下さいよ? 彼処ら辺は崖も多いですから」

「ありがとうございます。それでは失礼しますね」

「お兄さん、楽しかったよ! またね!」

「あぁ、またな」

 

まぁ取り敢えず用は済んだ。良い加減、東雲と合流してゴミ共を殲滅しに向かおう。

 

「……う」

 

そんな時だった。少女の容態が悪化したのは。

 

「さりなちゃん!」

「ぐ、あぁ……!」

 

彼女は頭を抱え、苦しそうな様子で前のめりに倒れかける。

 

「おっと」

 

俺は咄嗟に少女の肩を掴んで転倒を防いだ。反対側では男も彼女が地面にキスしないように体を支えている。

 

「あ、うあぁああ……」

「さりなちゃん! さりなちゃん!! まずい、意識が混濁してる! 痙攣も酷い! すいません、ちょっとこの子を支えて頂けませんか!?」

「えぇ、構いませんが。この子、もしかして――」

「発作です! それも今まででかなり強い……! ――もしもし、もしもし! 急いでこっちへ来てくれ!!」

 

俺は男が応援を呼んでいる最中、少女の体を支え続けた。彼女は体の一部を激しく痙攣させ、男の呼びかけにも全く応じれない様子だった。

 

やがて何人もの医師や看護師が担架を押して駆け付け、素早く少女をそれに乗せる。

 

「あ、うあ……」

「さりなちゃん!」

 

直後に少女が少しだけ意識を取り戻し、俺に視線を投げ掛けた。そして苦痛に満ちた顔を無理矢理笑顔に変える。

 

「おにい……さん……ありが……と」

「さりなちゃん、無理して喋っちゃダメだ! じゃあすいません、僕たちはこれで! ありがとうございました!」

「えぇ、お大事に」

 

男は再び意識を失った少女と共に病院の中へと消えていった。

 

「あ、城ヶ崎さん! 此方に居らしたんですね!?」

 

其処へ東雲が息を切らせて現れた。あぁ、確か待っとけって言ってたな。それで探し回っていたのか。

 

「奴らのヤサへ通じるルートを見付けました。本拠地も直接確認済みです」

「そうか。よし行くぞ東雲、ゴミ掃除の時間だ」

「了解です!」

 

俺は優男から羅威刃の城ヶ崎(悪魔)へ戻り、半グレ共が待ち構えるアジトへ歩き出した。

 

 

 

 

 

弱小半グレ組織『卍豪(まんごう)』。予想通り大した事も無かった。

 

「容赦はするな東雲。全員カットマンゴーにしてやれ」

「承知しました! ……という訳でテメエ等、フルーツポンチの具になれえ!!!」

 

「トロッ!!?」

「ピカルッ!!?」

 

俺と東雲は流れるように鉛玉を喰らわせ、文字通り連中の体をバラバラにしていく。あまりも一方的過ぎて欠伸が出そうだ。

 

これ以上語る必要も無い。殲滅戦はすぐに終わり、敵は一人残らず宮崎産のフルーツポンチにされた。それだけだ。

 

 

 

 

 

その後、日も暮れ始めたので近くのホテルに泊まる事になった。

 

「少し外の空気を吸ってくる。東雲、お前は先に飯でも食って休んでろ」

「承知しました。行ってらっしゃいませ」

 

稲村(バカ)に戦果報告を済ませた俺は、煙草をふかしながら日も落ち掛けた田舎町を一人で散歩する。

 

途中、芸能の神が祀られている荒立神社に目が留まった。別に神の存在など欠片も信じてないが、不思議と俺は其処へ吸い込まれるように引き寄せられ、気が付けば鳥居へと足を進めていた。

 

「……おや?」

 

そのすぐ奥の本殿まで続く階段に一人の男が項垂れた様子で座っていた。見覚えのある人物だ。

 

「どうも、先ほどぶりですね」

「! 貴方はあの時の……」

 

そう、この男は患者の少女と共にいた医者である。だが、会った頃と違ってまるで覇気を感じない。

 

「……何かあったんですか?」

 

少し興味が湧いたので聞いてみると、男の背負う空気がより暗く重たくなったように見えた。

 

「昼頃に僕と一緒にいた女の子を覚えてますか?」

「えぇ。彼女がどうかしたのですか?」

「病院に運び込まれた後に危篤状態となり……亡くなりました。今から3時間前の事です」

「……そうですか。元気そうに見えたので信じられません。お悔やみ申し上げます」

 

あの少女が帰らぬ人となり、この男は酷く落ち込んでいたのだ。だが、コイツがココまで悲しむ理由が俺には分からなかった。

 

(人間、死んだらタダの肉になるだけだろうが――ん?)

 

ふと俺の目はコイツが右手で握っている何かを捉えた。

 

「それは……?」

「これですか? あの子から死に際に貰ったストラップですよ。――”アイ”と言う名前のアイドル、ご存知ですか?」

「名前くらいならチラッと」

「さりなちゃんは”アイ”の大ファンでしてね。これは彼女が1度だけライブ会場に赴いた際にガチャで当てた宝物だそうです」

 

そこから始まったのは男と少女の過去話。本来なら微塵も興味が無い筈なのに、何故か俺は奴の隣に腰掛けて耳を傾けていた。

 

「――途轍もない熱意であの子は”アイ”について語ってきました。生まれ変わったら”アイ”みたいな可愛い顔が良いと。そこで僕はこう言ったんです。『今でも十分可愛いから生まれ変わる必要はない』、『アイドルになれば良い、そしたら僕が推してあげる』って」

「なるほど……」

 

どうやら”さりな”という少女だけではなさそうだ。この雨宮と名乗った医者の男(まだ研修医らしいが)もまた、彼女に対して特別な想いを抱いているのを感じ取った。

 

(コイツ、まさかロリコンじゃねえよな……?)

 

だとしたら引くぞ、マジで。

 

まぁ、それより……何時までも肉になった人間の事でズルズルと引き摺る様を眺めるのも鬱陶しくなってきた。

 

「失礼ですが、雨宮さんは”さりな”という子に対して何か後悔している様に僕には見えます」

「……後悔してないと言ったら噓になりますね。僕は医者になったのに、彼女が死に行く様子をただ見てあげる事しか出来なかった訳ですから」

 

日は完全に落ちて星々が天上を支配する時間の中、雨宮は星空を見上げつつ呟いた。

 

医者としての無力感。それがコイツが落ち込んでいる理由の一つだろう。他にも訳がありそうだが、そこまでは俺も分からんし興味も無い。

 

「あの子はもう死んで、この世にいない。それでも、あの子の為に何か出来る事があったら良いのにと……思わずにはいられないんです」

 

何度でも言おう。人間、死ねばタダの肉になるだけだ。

 

だが、世の中俺みたいにそう割り切れる奴が少数派なのも事実。この男のように、大抵の人間は自分を納得させる”何か”を探し求め続けるものだ。それが親しい人間が亡くなったとなれば尚更……

 

死んだ人間に対して自分を納得させる手段、それは――。

 

「でしたら……その子が推していたという”アイ”を、貴方も推すというのはどうでしょうか?」

 

俺からの予想外の提案に雨宮は此方に視線を向けて瞬きする。

 

「僕が”アイ”のファンに、ですか?」

「そうです。その子に代わって貴方がそのアイドルを推すんです。彼女の意思を継ぐ事で、何か違ったものが見えてくるかもしれませんよ?」

 

俺の考えに雨宮は思案顔になり、やがて――。

 

「ありがとうございます。参考にさせて頂きますね」

 

少しだけ胸のつっかえが取れた感じに雨宮は笑い、そしてすくっと立ち上がった。

 

「では自分はそろそろ病院へ戻ります。この街は結構見る場所が多いですし、是非楽しんでいって下さい」

「えぇ、そうさせて頂きます」

 

雨宮は神社を離れ、俺はその後ろ姿が消えるまで見届けた。

 

「……それにしても、一体全体どうしちまったんだ、俺?」

 

見ず知らずの赤の他人の相談に耳を傾けて助言するなど、今までの俺なら一度もそんな事はしなかった筈だ。

 

だが何かに突き動かされたかの如く、俺は雨宮が立ち直る切っ掛けを与えた。それも何故かアイドルオタクになるように――そうなるように仕向けさせられた(・・・・・・・・)気がした。

 

「はぁ、疲れた。もう帰るか」

 

その後、形ばかりの参拝を済ませた俺は、ホテルを目指して歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっっっっっっっっっっっと思い出した。

 

「う、嘘だろ……」

「マリアがあの時のお兄さん……!!?」

 

Mステが終わり就寝の準備に入る最中、俺は高千穂町へカチコミに向かった時の事を(無論半グレ粛清の件は伏せてだが)二人に話した。

 

「俺も驚いてる。あの医者と患者の少女、そういえば雨宮と”さりな”って名乗ってたな」

「あぁ、俺とルビーの前世の名だ。まさか俺等3人とも前世で顔見知りだったなんて……」

「もう運命どころじゃないわよ、これ!」

 

アクアもルビーも面白いくらいに良いリアクションをしてくれた。……少し、吹き出した。

 

あの時、ほんの僅かな間だけ集った人間たちが来世で兄弟となる。しかも全員前世の記憶持ち。一体どれ程の奇跡だろうか。

 

「てか、せんせが”アイ”推しになったのってマリアのお陰だったんだ」

「何時までもルビーの事でグジグジしてたからな。ちょっとした切っ掛けのつもりだったんだが……」

「俺もここまで嵌るとは思わなかったよ。まぁ、それだけアイが魅力的過ぎるって訳だけど」

「でも、せんせがママのファンになってくれて嬉しいよ! ママの事でいっぱい語り合えるし! 一緒にヲタ芸も出来るし!」

「そうだね。でも、切っ掛けはマリアだけじゃない」

「え、せんせー?」

 

アクアはルビーの頭にポンと手を置き、笑い掛ける。それは大人が子供にするような、穏やかで優しいものだった。

 

「さりなちゃんが死んだ後に君から僕宛ての手紙を見つけてね、それに励まされたお陰でもあるんだ」

「あの手紙……読んでくれたの?」

「あぁ。君がいなくなった後はずっと無気力だったけど、こうして元気を取り戻す事が出来た。――本当にありがとう、さりなちゃん」

 

ルビーもまた、安心した様子で笑みを溢す。きっと彼女もその後のアクア――もとい雨宮が相当気掛かりだったのだろう。

 

「良かった……せんせーが元気になってくれて。アイ推しのオタク仲間になれて」

「うん。――あとはマリアがもっと積極的に加われば万々歳だね。さっきもヲタ芸一緒にやってくれるのかと思ったのに……」

「……流石にアレは恥ずかしいんだよ、勘弁してくれ」

 

先のアイが歌う場面でも二人揃って無言の圧力を掛けてきやがった。器用にキレのある動きを維持したまま頭部だけは自分を正面から捉えて。

 

因果応報と表現すべきだろうか。当時雨宮だったアクアにアイドルファン化を後押ししたのを少し後悔している。

 

「えへへ、どうりでダンスの練習した時に懐かしい感じがした訳だよ。あの時もアクアとマリアが私を支えてくれたんだね」

 

そう言ってルビーは乙女チックな様子の笑顔を浮かべた。アンチとリプ合戦したり、アイに対する度の過ぎた信仰ぶりを見せてきたり。いつもドン引きな行動ばかり目立つ姉の年頃の少女らしい仕草は、母譲りの整ったルックスも相まって非常に神秘的に映った。

 

「結局、俺は死んでいく君に何も出来なかったけどね……」

「そんな事ないよ。私に優しくしてくれる人が二人もいたんだから。本当に嬉しかったなぁ……」

 

ちょっと体を支えた程度でこの喜び様……。ルビーの前世は過去に相当な闇を抱えてそうな気がしたが、それはさておき。

 

「……まぁ、これでルビーが一番年下だって事が明白になった訳だが」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよマリア……まさか『”姉さん”呼び、やーめた』とか言うつもりじゃないわよね……?」

「どうすっかな?」

「ダメッ! 絶対ダメ! 今世では私の方が年上なの! マリアには”お姉ちゃん”って呼ばれたいの! てか呼べ!」

「後ろ向きに検討させて頂こう」

「わー、悪い顔してる時のママそっくり〜……って絶対呼ぶ気ないでしょそれー!! せんせーヘルプ!!」

「ここで俺に頼っちゃダメだよ、さりなちゃん? 自分で頑張りなさい」

「む~!」 

 

お握り事件以来、アクアやルビーとも少しずつ良好な関係を築けている気がする。兄弟も対等な友人も居なかった俺にとって、二人の存在もアイに負けないくらい大きくなっていた。

 

まだまだ怖いが、これならきっと彼等を信じれる未来もそう遠くないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この頃の俺は知る由も無かった。

 

数ヶ月後に俺たち星野家を襲う悲劇を。

 




第2章、了。
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