【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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第3期推しの子アニメ見て今更ながら気付きました。

ルビーとみなみって互いに呼び捨てなんですね……

なのでこの物語でもそのうち呼び捨てし合う仲に変わっていって貰います。


116話

異変を察知したのは、何もおれだけじゃない。

 

「おいおい、他の組員と無線が途絶えたってどういう意味だ……!?」

 

龍珠組の極道が3人。雪河と楠木、そして澤本。

 

「分かりません! 通信中に突然ノイズが発生したんです!」

「周りのお客さんもスマホが通じねえって嘆いてやがる。これ程の大規模な通信障害が、設備の整った場所で起きるのは普通に考えられねえな……」

 

警備員としてJIFを守る彼等も、そのうちの1勢力だ。雪河と楠木が突然の通信途絶に動揺する中、最年長の澤本だけは冷静さを崩さない。

 

「落ち着けお前等。まずは事前に打ち合わせた通り、異常発生時の緊急集合場所へ向かう。その道中で不審者の確認も忘れるなよ?」

「姉御、必要あればその不審者を叩きのめしても?」

「無論だ。最悪死なない程度に痛め付けても構わん」

「承知しました、澤本の姉貴!」

 

駆け出す澤本を、雪河と楠木も追い掛けた。

 

 

 

 

 

またアリーナ屋上でも、堅気最強の男が違和感の一端に触れようとする。

 

「……もうそろそろB小町の出番だな。城ヶ崎の事だからキッチリ時間厳守で来るんだろうけど……念の為連絡入れとくか」

 

苺プロダクション専属警備員にして最高戦力の1人、紅林がおれへ電話を入れようとスマホを取り出しかけるも……

 

「おーい、紅林さーん! 急でわりいがコッチ手伝ってくんねえか!?」

「あ、はい社長ッ!」

 

しかし、その直前に社長から呼び出されてしまう。

 

(しゃーない、彼奴なら絶対間に合うだろうし。まずは湧いてきた仕事を片付けるとするか)

 

紅林はスマホを仕舞い、走る社長の後を付いて行く。残念ながら彼が事態に気付くのはもう少し先になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

そんな武闘派達の様子を上空から、または照明灯の上に留まって、

 

「やれやれ、今回の敵は厄介な事をしてくれる。……みんな、私は別で向かう場所があるから、ここは頼まれてくれる?」

『カア』

「ふふ、良い子達だね――さぁ、迷わないよう気を付けて」

 

カラスの群れが見ていた。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

おれが尾行を続けていた警備員は、途中から明らかに普通じゃない行動を取っていた。

 

(――こんな人気の無い場所まで下りるなんてね……仕事放棄してサボり?)

 

んな訳ないか。

 

守らねばならない群衆なぞ知らぬとばかりに喧騒から離れ、地下の奥深く、奥深くへと沈んでいく男。おれと自分以外消えた薄暗い空間で、奴は突然立ち止まったかと思えば挙動不審に周囲をキョロキョロと見回す。

 

「異常なし……と」

 

安堵してるところ申し訳ないけど、後ろからピッッッタリ付いて来てますよ? 強い警戒心の割には気配に敏感という程でもなさそうだね。もっと訓練しときなよ。

 

(まあいずれ完全に気配も音も発さないようになるから、おれの存在を察せる機会は永遠に来ないだろうけど)

 

そんなこんなで辺りを警戒する男に感付かれないよう上手く立ち回る事10分。おれはアリーナの最下層に設けられた広大な地下空間に辿り着いた。

 

(……コンクリの地面には白線が規則正しく引かれている。地下駐車場か)

 

でも照明は少な目。車も全く停まっていない。アリーナの駐車場はアクセスしやすいよう地上に作り直されてた筈だし、そう考えると此処はまるで使用されてないみたいだ。

 

(だから選んだんだろうな……隠れて何かするには最適だし)

 

柱の陰に隠れたおれは警備員の男の様子を窺う。人っ子一人居ない筈の寂しい場所に何故か立っているスタッフらしき若い女。奴は彼女と合流を果たすと、不穏な空気を漂わせながら背負っていたリュックを差し出す。

 

「こいつで起爆装置は全部だ。後は頼めるか?」

「えぇ、任せて。……それより尾行はされてない?」

「問題ない。此処に来るまでの道中で、全周の確認を繰り返し行ってきた。警備員だからか、誰も俺の行動を怪しむ者はいない感じだった」

「……今の段階で私達の目的がバレれば、警備員に化けた龍珠組が襲ってくるからね。既にジャミングは始まってる以上、連中は不信感を抱いている筈。さっさとこの柱にも爆弾を仕掛けるとしましょう」

 

そう言ってリュックから取り出されたのは――前世でも散々使ってきた物に見た目が近く、間違いなく同種の凶器――時限式・遠隔式兼用の起爆装置にTNTだった。

 

「しかし、これで本当に上手くいくのか?」

「狙った柱に爆弾を仕掛けて破壊すれば、自重でこの巨大な建物は崩壊する。当然中に居る人間は無事じゃ済まないわね。原型すら留めないかもしれない」

「へぇ、そいつは良い。俺達の革命に相応しいインパクトだな」

 

等と正気を疑う内容の会話。しかも、それを世間話でもするかのように楽し気に。

 

(……はいはい♪)

 

ギルティ、ギルティ♬

 

 

 

ポロン

 

 

 

「……?」

 

静寂に満ちた空間で響くスマホのシャッター音。男も女も今はスマホなんて弄っていない。というより通信妨害下では特定の周波数の無線しか使えないので、使おうという意思すら持ってなかった。

 

「お前か? スマホ使ったの」

「え、私じゃないわよ? 爆弾設置で手が塞がってるんだし」

 

じゃあ誰が……そう思った直後。

 

『――こいつで起爆装置は全部だ。後は頼めるか?』

『えぇ、任せて。……それより尾行はされてない?』

 

「「!?」」

 

さっきまでの自分達の会話が聞こえてきた。驚く彼等は音源が真後ろである事に気付き、ゆっくりと振り返る。すると――、

 

「おじさん? おねーさん?」

 

其処にはアイドル衣装に身を包んだ、それはそれは見目麗しい美少女が、これまた愛くるしい笑顔で立っていた。

 

「動かぬ証拠をありがとう♡」

 

菫色の両瞳に闇夜を連想させる黒き綺羅星を宿らせ、右手に構えたスマホから、先程の自分達の会話を動画再生させながら……

 

『しかし、これで本当に上手くいくのか?』

『狙った柱に爆弾を仕掛けて破壊すれば、自重でこの巨大な建物は崩壊する。当然中に居る人間は無事じゃ済まないわね。原型すら留めないかもしれない』

『へぇ、そいつは良い。俺達の革命に相応しいインパクトだな――』

 

「……」

「………」

 

それを見せられながらも、暫く沈黙し固まる2人。現状に対する脳の処理が追い付いていない様子。

 

やがて――、

 

 

 

「「誰だ!!?」」

 

漸く再起動して、それぞれの懐から黒い塊を取り出す――それは拳銃!

 

だが遅い。遅過ぎる。欠伸が出てきそうだ。

 

 

「あしゅら男爵にな~ぁれッ!♪」

 

 

「「ガフンッ!?」」

 

一瞬で間合いを詰めた俺は2人の側頭部を掴むと、もう反対側の側頭部同士を大衝突させた。

 

「く、かか……」

「が、は、ぁ……」

 

衝撃と激痛で意識が半分飛び掛け、その場に白目を剥いて崩れ落ちる不審な男女。

 

「なんだ、全然一つにならないじゃねえか。もっと根性入れろよお前等?」

 

とまあ理不尽な物言いをしつつ、俺はうつ伏せに倒れた警備員にゆっくりと近付く。再びメスガキ染みた、あざとい演技を振る舞いながら。

 

「……何か話したくなったら何時でも言ってね?♪」

「へ、何を……?」

 

俺は男の手を掴んで持ち上げると、その人差し指の先を自分の右親指と人差し指で優しく摘まんだ。

 

「それまでおじさんでいーっぱい遊んどくから――クイッと♪」

 

 

 

ポキン

 

 

 

そんな軽やかな音と共に、男の指の第一関節があっさりと外れた。だがやられた本人は大惨事である。

 

「ぎゃあああああああああああああッ!!!?」

 

「あ、あぁ……」

 

激痛のあまり絶叫する男と、それを間近で見せ付けられ蒼褪める女。

 

もっちろん、この程度では終わらない。右手指の関節を次々と丁寧に外していく。

 

「クイ、クイ、クイッと♪」 ポキ、ポキ、ポキッ

「ぎぃああああああッ! ぐぇえええええ、がぁあああああッ!!」

「そんなに喜ばないでよ~? 今からもーっとサービスしてあげるから、さ♪ ――はい、今度は2個纏めてクイッと♪」 ポキポキンッ

「うげぼぉおおおおおっ!!」

 

う~ん……自分で言うのもアレだが、ここまでスムーズに関節を外せれるというのは何というか、熟練の技を感じるねぇ。やるのは初めてだけど。

 

「ひ、ひぃいいい……(あ、悪魔だ……子供の皮の被った悪魔がいる……)」

 

女は恐怖で震えるも先程の攻撃で真面に動けず、眼前で繰り広げられる拷m……コホン、遊びを眺める事しか出来ない。明らかにひ弱な美少女が、笑顔で大の男の指の関節を軽々と、躊躇なく外していく様は正に異常。狂気すら感じる光景だろう。

 

「お、オデの……ゆびぃ……」

 

見事、あっという間に男は右手だけ軟体動物に退化してみせた。この俺が好意で手伝ってやったんだ、感謝するが良い。

 

「――どうかな? おじさん達が知ってる事を全部吐いてくれるなら、この遊びにも飽きてきちゃうと思うんだけど?」

 

これ以上拷問されたくなかったら何を企んでるのか教えろ。そういう意味を込めて尋ねてみるも、男からの返答は”NO”である。

 

「ば、馬鹿にするな小娘が……俺達の崇高な革命を部外者に教える訳が「えー、折角元に戻してあげようと思ったのに?」……へ?」

 

なんか微塵も興味が湧かない話題で茶を濁そうとしてきたので、俺は再び右手指を摘まむ――既に関節を外されてタコみたいにグニャグニャな右手指を。

 

「ほら、こんな感じに♪」

 

グキッ

 

「だぁああああああああああああああああああッ!!」

 

特別に関節1個分だけ元通りに繋げて貰った男は、それはそれは泣く程に喜ぶのだった。

 

「キャハ♫」

 

 

 

 

 

……あれから1分は経過しただろうか。左手も含めて関節を外しては繋げてを3ターンほど済ませたタイミングで、もう一度警備員の男に呼びかける。

 

「おーい、おじさーん?」

 

「……」

 

「おーいってば。こっちは時間を掛けたくないんだけどー? 呼ばれたからには1回で返事しなよ~?」

 

2度言わされるのはマジで嫌なんだよ俺は。

 

「…………」

 

……ふむ。

 

「返事がない。ただの肉なようだ」

 

いや、単に気絶してるだけなんだがな。両手をグニャグニャにされ、カニみたいに泡吹いて失禁までしてるのは流石に酷い有様だと思った。やったのは俺だけど。

 

「あ、あわわ……」

 

「さて――おい女?」

 

「ひッ!!?」

 

俺に呼ばれた女が跳ねるようにビクッと震える。おそらく俺の事が相当トラウマになったと思われたが、爆破と虐殺を目論んでる奴の心情など心底どうでもいい。

 

気絶した警備員を引き摺りながらマフィアモード全開で女に近寄り、強烈な圧をぶつける。

 

「選択権をやる――お前等がこのJIFで何をするつもりなのか、爆破させて観客を大勢殺すってどういうつもりか――正直に知ってる事を全部吐け」

「え、そ、それは……」

 

あ゛? なに目ぇ逸らして口籠ってんだよ? マフィアを前に拒否権があるとでも思ってんのか?

 

しゃーない。この男の腕を掴んで女の前に突き出してっと。

 

「それとも――コイツみたいに軟体動物と人類の間を行き来してみるかぁ? 今なら足も追加してあげちゃうぞ~?」

「い、いや……! 言います、言いますからっ!!」

 

骨が無くなったみたいにグニャングニャンと揺れる男の手を見た女は、とうとう心が折れて全てを語るのだった。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

…………あぁ、やっぱりそうなのかよ。

 

 

 

 

「――い、以上になります……」

「他に隠してる事はねえよな? 目を見せろ」

「は、はいッ! これで全部です……!」

 

よし、目は一切濁ってない。本当にコイツが知ってる事はこれで全て、か。

 

「ありがとうおねーさん? お礼に可愛い僕から素敵なご褒美、あげちゃうね?♪」

「へ、ご褒美って……?」

 

マリア式忘却術~♪

 

 

「ボゴッ!!!?」

 

 

踵落としを脳天に喰らった女の意識は飛び、目を回して倒れる。気を失った男女には一瞥もくれず、俺は深淵に包まれた前方に視線を凝らす。

 

「向こうだな。爆弾を設置中の集団がいるのは」

 

次の目標は決まった。姉と仲間達の晴れ舞台を邪魔するどころか、俺の大切な人達を殺そうと目論むクソテロリスト共を殲滅する。

 

……しかし、

 

「…………外れて欲しかったなぁ」

 

失望の混ざった深い溜息を吐いてから、俺は全力で闇の中を駆けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……裏切り者が」




今回は珍しくノリノリで書けたと思います。
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