【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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117話

「――やっば、迷ったかもコレ」

 

同じ頃、使われなくなった暗がりの地下駐車場に2人の女子大生が迷い込んでいた。

 

「ありゃあ……此処もしかしたら地下っぽいかも。携帯が圏外になってるし」

「地下ー!? 私達屋上を目指してた筈じゃん! なんで逆に下に辿り着いちゃうのー!?」

「私に当たられても……」

 

焦る茶髪美女の隣で、銀色掛かった黒髪の美女が呆れた様子でスマホを弄り回す。が、再起動しようが何しようが圏外のまま。

 

「うぅ~、早くしないと2代目B小町のライブを見逃しちゃうよ~!」

「好きだもんねぇ梨香は、B小町」

「アイさんがいた初代から箱推しだったB小町が新しく復活するって言うんだよ! 見ない選択肢なんて無いに決まってんじゃん!」

「まあ兎に角出口を探そう? 駐車場みたいだから車の出入りする場所は絶対あるだろうからさ?」

 

犬亥梨香と祇園彩綾は、地面に描かれた矢印を頼りに地下の迷宮を彷徨う。

 

「……?」

 

すると曲がり角の先から人の騒めきを耳に拾った。

 

「彩綾彩綾! 良かった、向こうに人がいるみたい!」

「ホント、明かりもあるね。屋上へのルートも知ってるかもしれない」

「だね! 早速行こう!」

「あ、先に行かないでよー!」

 

暗い空間で2人ボッチだったのだ。少なからず寂しさも感じてたのだろう。その証拠に半ば興奮した様子で足早に駆け出す梨香と、慌てて後を追う彩綾。

 

「あのー、すみませーん!」

 

梨香が角から顔を出し、そこにいる人々へ声を発する。

 

しかし……

 

 

 

「へ?」

 

 

 

60人近い若い男女が――警備員だったりスタッフだったり一般客の恰好だったりと様々だが――分散して柱に爆弾らしきものを設置する光景を目の当たりにした。

 

「なっ!?」

「え……?」

 

数名が彼女の存在を捉えるのを皮切りに、殆どの人間が彼女の出現に驚き固まる。

 

「な、何してんのアンタ達!? それってまさか……!」

 

絞り出すように出た梨香の声は震えていた。素人目にも分かる程に、如何にもな見た目をしたタイマー爆弾を柱へ括り付けている集団に、彼女は血の気が引く感覚を抱いた。

 

「もう梨香ったらー! 置いてかないで……ってどうしたの?」

 

僅かに遅れて追い付いた彩綾は現状を理解し切れず、首を傾げていたが。

 

「……お前達、我が軍の同胞ではないな?」

 

その中で現場指揮官と思しきスタッフ姿の男が、梨香の言動から2人が部外者である事を理解する。それに同調した周囲の男女も彼女等に警戒と冷徹に満ちた視線を向け始めた。

 

明らかに異常。本能が叫ぶ。此処に居ては危険だと。

 

「ひ、え、何……?」

「彩綾不味い!! 逃げるわよ……!」

「梨香、わきゃッ!?」

 

死を直感した梨香は咄嗟に彩綾の手を引き、全力で離脱していく。当然、目撃者を見逃す選択肢など連中には存在しない。

 

「逃がすな! 見られた以上生かして帰す訳にはいかん! 計画遂行の障害になり得る!!」

『了解!!』

 

指揮官が即座に号令を放ち、それに応えた戦闘隊所属の男女が10人、ナイフや拳銃を取り出して追跡を開始する。

 

「彼奴等、ナイフに銃まで持ってる……!?」

「え、ナイフ……?」

 

ふと振り返った彩綾は、何故か追い掛けてくる連中のナイフを目の当たりにした途端、

 

「――ひ」

 

目を見開き、瞳孔が揺れ、涙目で震え出す。

 

「ヤダ、嫌……! パパぁああああああああ!!!」

「さ、彩綾!? しっかりしなさい! ここで捕まったら殺されるわよ……!」

 

梨香は友人の異様な反応に困惑するが、それでも立ち止まれは死ぬ可能性が高い以上、このまま逃げ続ける他ない。

 

梨香は知識不足で気付かなかったが、彩綾のそれは典型的なPTSDの症状。果たして過去の彼女に何があったのだろうか……?

 

「くっ、ヤバい! 追い付かれちゃう……!」

「パパぁ、助けて……! お背中痛いよぉ!」

「あとで私が診てあげるから、今は頑張って走って!」

 

しかし集団は相当訓練されているのか、素人の梨香達では振り切る事は叶わず、逆に距離を縮められていく。泣き叫び父を求める彩綾を鼓舞するも、梨香の心中もまた焦りが募っていくばかり。

 

(不味い不味い不味い……! どうしてこんな事に!?)

 

考えてみれば、人っこ一人いない場所に何十人も集まっている事自体おかしな話。こんな事ならむやみやたらに近寄るんじゃなかった。話し掛けるんじゃなかった。そう後悔しても最早手遅れである。

 

「止まれ! 止まらんと撃つぞ!!」

 

遂に追跡部隊の1人が2人へ照準を合わせる。それは死神が彼女達の首に鎌を掛けたも同然の、絶体絶命の状況。

 

(ダメ、死ぬ……! 誰か――)

 

 

 

 

 

「こんにちはー、さいならー」

 

「ぐぼぁッ!!!?」

 

 

 

 

 

そこへ現れた謎の人物が、引き金を引こうとした男に横から飛び蹴りを喰らわせた。

 

「ごぉおおおおおお!!?」

 

男は軽々と蹴り飛ばされ、高速でコンクリの壁に叩き付けられる。クモの巣上にヒビ割れ凹んだ壁を背に、そのまま意識を手放した。

 

「は、え?」

「ひ、ぐ……な、何?」

 

「兎之山さん!?」

「だ、誰だお前は……!?」

 

困惑する梨香と彩綾、そして9人の男女。しかし謎の人物――俺こと星野マリアは敵と対峙しつつ短く一言。

 

「邪魔だ女共。柱に隠れてジッとしてろ?」

 

合わせて強烈な圧も放つ。それは眼前の不審者共を委縮させ、同時に追われていた2人組の女へ有無を言わさず従わせた。

 

「は、はい――彩綾こっち!」

「え、うん……!」

 

ビクッと震えた彼女達が指示通りに動き切った直後、俺はもう戦闘を再開していた。電光石火の勢いで呆然と突っ立っている9人に肉薄する。

 

「ボケッとしてんじゃねえぞ?」

 

「ガバッ!?」

 

「敵が現れたら即座に撃て」

 

「ゴベッ……!」

 

パンチ、パンチ、ビンタ、キック、キック、パンチ。

 

「グバッ!?」「ガッ!?」「ギッ!?」「グッ!?」「ゲッ!?」「ゴッ!!?」

 

年齢・性別問わず、圧倒的な暴力で流れるようにぶちのめす。全身を回転させるようにして繰り出される拳や蹴りの数々。奴等は顔面を変形されられ、ボールの如く飛ばされ、壁や柱に叩き付けられては次々と気を失っていく。

 

「優しさ溢れるマリアパーンチ♪」

 

「ドコガッ!!?」

 

ふむ、約9秒で9人撃破か。中々良いスコアじゃねえか。

 

「さぁて、あと何人いるかなー? 折角楽しみしていたイベントをぶち壊そうとするアホ共は?」

 

俺は倒した奴から警棒を拝借し、多数の気配を察知した場所まで悠然と歩く。

 

「な、なんだ貴様は!? それにさっきの叫び声は……!?」

 

予想通り、曲がり角の先には50人程度の男女が集結していた。誰もが俺の登場という想定外に驚愕または呆然とする。

 

(……ふむ、懐やポッケの変な膨らみ方……形からして銃やナイフだな)

 

それに先程の連中もそうだったが、出で立ちが訓練された軍人のそれに近い。並の半グレよりは骨がありそうである。

 

「どうも、何処にでも居る普通の人間です――あ、さっきのお仲間は今頃みーんな夢の中だぞ?」

 

明るく放たれたその一言に、俺の異常性を察した指揮官らしき男が叫ぶ。

 

「ッ! 総員、戦闘態勢!!」

 

普通に考えれば子供1人に大人50人で襲い掛かろうとか馬鹿丸出しな指示である。だが周囲の部下達も俺が得体の知れない何かに映ったのだろう。一斉に取り出した武器を構える日滅軍(で合ってるんだっけ……? どうでも良いから直ぐ忘れそう)の兵士諸君。

 

「今日は皆様にとって素敵な記念日となるでしょう」

 

対風見組戦と異なり、この場にアクアとルビーはいない。それでいて敵の数は約2倍。何より放たれる殺気は本物で、曲がりなりにも不殺を徹底していた風見組より厄介さでは上回っていた。

 

……だが、こっちの方が前世で経験した鉄火場に限りなく近い。俺は一切の余裕を崩す事なく戦闘開始のドラムを鳴らす。

 

「――娑婆の空気を吸える最後の日なんだからよぉ」

 

さあ落とし前を付ける時間だ。俺に楯突いた事を死ぬほど後悔しろ――冷たい檻の中でな。

 

「全軍、掛かれぇえええええええ!!!」

 

空気を切り裂く音と共に、無数の銃弾が俺を襲う。




次回、1VS50。
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