【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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Arusuko様に116話でマリアがテロリストの男女を追い詰める様子(「動かぬ証拠をありがとう♡」の場面)を、イラストで表現して頂きました。以下のURLからどうぞ。

https://www.pixiv.net/artworks/142025435

あまりにも場違いで、認知的不協和が半端ない……この後の遊び&戦闘シーンを想像すると、マリアって香月の兄貴の完全上位互換だなぁと感じました。

Arusuko様、ありがとうございました!


121話

――その頃。みなみ達から少し離れた薄暗い通路で。

 

「……だぁああああ!! また迷ったぁああああ!! マリアくんの頼みを早く済ませなきゃいけないってのにぃいいい!!」

「静かに、鼓膜に響く!」

「ア、ハイ」

 

俺に助けられ、お使いを頼まれた梨香と彩綾だったが、ものの見事に再び迷子に。頭を抱えて喧しく叫ぶ梨香だったが、苛立った彩綾から絶対零度の視線を浴びせられ、黙らせられた。

 

「てか彩綾、アンタもう大丈夫なの? ちょっと背中見せなさいよ」

「えー? 別に良いよ今更。すっかり元気になったから」

「普段冷静なアンタがあんなに取り乱すなんて相当でしょ? こっちは心配で仕方ないの」

「むー、というかこんな一目の付きそうな所で捲んな」

「大丈夫、誰も居ないって。それにほんの一瞬だけだし」

 

信頼してるのか、文句を垂れつつも特に抵抗はしない彩綾。彼女の上着を捲った梨香は、飛び込んできた光景に一瞬言葉を失った。

 

「え? これって切り傷?」

 

彩綾の背中には――刃物で切られたであろう大きな十文字の傷跡が残っていた。年頃の女性にとっては多大なコンプレックスに成り得る程の規模である。

 

「あぁと……小学生の時にちょっと誘拐されちゃって」

 

だが彩綾は溜息を吐くだけ。おそらく過去にも同様に背中の件で散々説明してきたのだろう。

 

「で、解放される直前に変なお爺さんから刃物でスパッとやられちゃってさ……」

「……そっか、ごめん」

 

彩綾の父親が元殺し屋だとは梨香も聞いていた。そして彼女もまた同じ反社の親族。彩綾の身に起きた悲劇の理由について大体の察しが付いた。十中八九父親関連だろうと。

 

「まぁパパに保護された時、パパは”悪いおじさんはみんな居なくなる”って言ってくれたから、似たような目に遭う可能性は低くなったと思うけど……」

「……彩綾にこんな傷を入れた屑共、きっと生まれてきた事を死ぬ程後悔したんでしょうね」

 

梨香も彩綾も今や立派な大人。彩綾の父が放った言葉の意味を理解出来ない訳がない。自分達の知らないところで実施された、壮絶な報復を。

 

その時だった。

 

 

 

――静寂に包まれた通路。重苦しい空気が漂う中、不意にバサバサと羽音が響いた。前触れもなく現れた1羽のカラスが、何かを導くように2人の前へ降り立つ。

 

「ん?」

「え?」

 

何故こんな場所にカラスが……? 固まっている彼女達は、その視線の先から姿を見せた女の存在に気付く。

 

「へ?」

 

龍珠組の武闘派女極道、澤本だった。彼女も足を止め、眼前の光景に硬直する。上着を捲り上げられた彩綾と、その背中を覗き込むようにして密着している梨香を。

 

「……」

「……」

 

「……」

 

3人の間に、形容し難い沈黙が流れる。

 

梨香の手は未だ彩綾の服に掛かったままであり、端から見れば、それはあまりにも”濃密な時間”の最中にしか見えなかった。事実澤本の視界には、2人の背景に咲き乱れる百合の花の幻影が映り込む。

 

「……済まない。お取込み中だったか」

 

極道として空気を読み、澤本は静かに踵を返そうとした。その言葉が引き金となって2人が弾ける。

 

「「違う違う違う違うッ!!」」

 

通路に響き渡る絶叫。梨香は慌てて手を離し、彩綾は顔を真っ赤にして服を整える。

 

「誤解です! これは傷の確認をしていただけで、そんな変な空気じゃなくて……!」

「わ、私だってこんな奴に興味ないから! ただの友達なんです、本当に!」

 

必死の形相で否定する2人に、澤本は「分かってる、これ以上言うな」と言わんばかりの半眼で見つめている。その生温かい視線に耐えかねた梨香が、ふと俺からの依頼を思い出した。

 

「――あ、そうだ! それよりも大変な事が起きてるんです!」

「何、どういう事だ……?」

 

余裕が消えた梨香の表情を見て、澤本の眉が鋭く跳ね上がる。現場に漂っていた桃色(?)の空気は一瞬で霧散し、宛ら戦場特有の殺気が通路を支配し始めた。

 

 

 

 

 

「――マーくんが爆弾を仕掛けてたテロリストを倒した!?」

 

案内された先で事の次第を語る梨香と彩綾。思わぬ急展開にみなみ達は驚愕する。

 

「え、えぇ。私達、爆弾を仕掛ける様子を目撃しちゃって奴等に消されそうになったんだけど、マリアくんに間一髪で助けられたの……(ふぉおおおおおお!!! 本物の寿みなみに黒川あかね、そして不知火フリル!! マリアくんの言う通りじゃん! こんな超有名人とお話出来るなんて夢みたい!)」

「(全くコイツは……)で、その後に追加で50人のテロリストを全滅させた彼から頼まれたの。外に出て警察に通報するか、もしくは貴女達に会ったら今回の件を連絡するようにって」

 

歓喜の雄叫びを上げるのを必死に抑えながら説明を続ける梨香と、そんな彼女の内心に気付いて呆れつつも補足する彩綾。彼女達の存在によって、事態はより緊迫したものへと変貌していく。

 

しかし、それとは別件で驚愕する者が複数。

 

(マリアくんが50人を……倒した? え、何それ? 映画の話……? 私でも4、5人が限界なのに……)

(嘘……ではないな。マリアと言えば”天使王子”の異名を持つモデルで、確かJIFの司会者の1人でもある高校生だった筈)

(待て待て待て! 人気モデルがテロリストを単騎で壊滅させただと……!? 天羽組や京極組の主力級の戦闘力を、何故一般人――それもただの子供が持ってやがるんだよ!?)

 

不知火、澤本、そして雪河だ。不知火は純粋な常識(?)の観点から、後者2人は裏社会の猛者と同格の力を堅気が持っている点から、信じ難いと言わんばかりの表情を浮かべる。

 

しかし、今は俺の異次元の戦闘力について考察している場合ではない。5万人もの人間が爆破テロで犠牲になるリスクが消えてないのだから。優先順位を考慮して、3人は内心で驚くに留めた。

 

「ほら、これを見て!」

 

梨香は震える手でスマートフォンを取り出すと、俺から託されていた証拠映像のデータを画面に映し出した。

 

『しかし、これで本当に上手くいくのか?』

『狙った柱に爆弾を仕掛けて破壊すれば、自重でこの巨大な建物は崩壊する。当然中に居る人間は無事じゃ済まないわね。原型すら留めないかもしれない』

『へぇ、そいつは良い。俺達の革命に相応しいインパクトだな――』

 

そこには、テロリスト達が爆弾を嬉々として設置する瞬間や、

 

『か、Kakabelは日滅軍の幹部として、アリーナの外で現在待機しています!! クルミさんが自殺未遂した元凶のスポンサー達がJIFにVIPとして訪れてるので、連中の粛清も兼ねて爆破テロを起こすつもりなんです! 本当です、信じて下さい……!!』

 

その背後関係を示唆する生々しい光景が記録されていた。

 

「……何で震えて泣いてるんだろう? この女の人」

 

((間違いなくマーくん(マリア君)の仕業やな(だね)……))

 

不知火だけは俺の敵への苛烈さを全く知らない為、女テロリストが怯えている意味が分からず首を傾げたが。

 

「マリアくんから預かってきたこのデータ、今から寿さんの携帯に送るね」

「あ、はい! ウチのアドレスは――」

 

データの転送を終えると、梨香は俺の言葉を思い出しながら付け加えた。

 

「……マリアくんが言うには、『白銀かぐや』という人に連絡する際に役立つ筈、との事だけど」

「はい、ウチも実はマーくん……マリア君からその人に連絡するよう頼まれとったんです。これだけの証拠があれば、きっとその人も国家権力を動かせられる筈!」

「こ、国家権力……? な、何それ、話がデカすぎない……? ってか、その白銀かぐやって何者なのよ……?」

 

梨香が引きつった笑顔で問いかけると、みなみは真剣な面持ちで頷き、その名を口にした。

 

「白銀かぐやさん。マリア君の専属カメラマンやけど、彼女の旧姓は『四宮』……あの日本最大の財閥、『四宮グループ』の御令嬢なんです」

 

その言葉が落ちた瞬間、フロアの空気が物理的に重くなったかのような錯覚を梨香は覚えた。

 

「し、四宮……!? あの、教科書とかニュースでしか見ない、お貴族様みたいな一族じゃん!」

「はい。既に結婚して姓を『白銀』に改めとりますけど、今でも多方に影響力を及ぼせる人やとマリア君から伺ってます。彼女が動けば、警視庁のトップや自衛隊すらも『お願い』一つで動かせられる……マリア君は、そのレベルのカードをウチ等に託したんです」

 

梨香はあまりの衝撃に、持っていたスマートフォンを落としそうになった。自分達がやろうとしているのは単なる事件の通報ではない。日本の国家構造そのものを動かす巨大な”引き金”を引こうとしているのだ。

 

「……冗談、でしょ?」

 

冷静だった彩綾も、この時ばかりは目を見開いて絶句していた。父・オリオンが所属していた『エルペタス』ですら、四宮――もとい秀知院という巨大権力と真っ向からぶつかれば無傷では済まない。その頂点に近しい人物を俺が手足のように扱っている事実に、背筋が凍るような感覚を抱いた。梨香の呟きは、もはや恐怖を通り越した畏怖に満ちている。

 

(マリア君。アンタは一体、何者なのよ……?)

 

何って……愛する人を守る為にがむしゃらに頑張ってる、普通の人間ですけど?

 

梨香と彩綾が『四宮』という名の重圧に戦慄する傍らで、澤本だけは別の記憶を手繰り寄せていた。

 

(四宮かぐや。確かお嬢様と同じ秀知院学園の出身だったな。お嬢様の後輩の)

 

龍珠組長の娘であり、現在は数多の極道を束ねる龍珠桃。その彼女がかつて目をかけていた四宮の天才児の名を此処で聞く事になるとは、流石の澤本も想定外だった。

 

(しかし彼女が動くなら話は別だ。日本のありとあらゆる国家勢力が、上からの『鶴の一声』で死に物狂いに働く。星野マリアは……そこまで見越していたというのか?)

 

澤本も俺の底知れぬ繋がりに改めて舌を巻いた。ただの武闘派ではない。国家の頂点までも間接的に動かす手腕は、もはや一介の高校生の領分を遥かに超えている。

 

「兎に角、今から連絡します! ありがとうございます、えと……犬亥さん、祇園さん!」

 

みなみが深々と頭を下げ、直球で名前を呼ぶ。その瞬間、畏怖と恐怖に支配されていた筈の梨香の脳内に、幸福の濁流が押し寄せた。

 

(ふぉおおおおおおお!! あの、あの寿みなみちゃんに名前を呼ばれたぁああああ!! できれば下の名前で呼んでほしかったけど……この際贅沢は言わないわ! 待受画面にしたい今の声ぇええ!!)

(まあ、うん……良かったね、梨香?)

 

梨香が内心で限界オタク特有の悶絶を繰り広げている事など露知らず、みなみは即座にスマホを操作し、かぐやへの緊急連絡を開始する。

 

「あ、もしもし! そちらは白銀かぐやさんの番号で間違いありませんか? 突然のところ申し訳ありません。私、星野マリアさんの友人の寿みなみと申しますが――」

 

アイドルフェスの裏側で始動中のテロ計画は遂に”悪魔”の手を離れ、日本の頂点をも巻き込んだ巨大な反撃へと動き出した。

 

 

 

 

 

「……それにしても。本当にあのKakabelがテロに関わってたなんて」

 

通話するみなみを眺めていた梨香の声は、どこか現実味を欠いたように震えていた。彩綾もまた苦い表情を浮かべている。

 

「えぇ。トップアイドルだった彼女達が、どうしてこんな……」

 

画面の中で笑っていた筈の少女達が、今は冷徹なテロリストとして自分達を含む多くの人を殺めようとしている。そのギャップに、心が追い付かない。

 

「あの人達、物凄い仲良しで有名だったからね。でもクルミの自殺未遂の件が、こんな事態にまで発展するとは思わなかったわ」

 

彼女達の父親も殺戮と暴力の世界に身を置いている。だが、夢を与える存在だった者達が、これ程までの憎悪を抱えて地獄を作ろうとしている事実は、2人の心に冷たい棘を刺した。

 

「それでもです――」

 

通話を終えたみなみが、2人を真っ直ぐに見据えた。その瞳には凛とした覚悟が宿っていた。

 

「……どんなに辛い事があっても、人を殺すなんて絶対に許してはならん事です。結局は仲間を搾取した悪い大人達と同類に成り下がるだけや」

 

みなみはスマートフォンを握りしめる。かぐやへの報告は済んだ。間もなく、このアリーナの周囲には国家という名の巨大な力が押し寄せるだろう。

 

「Kakabelさんたちの絶望は、ウチ等には計り知れんかもしれません……でも、マーくんが一人で戦って、ウチ等にこのデータを託してくれた。悲劇の連鎖を、ここで断ち切る為やと思うんです」

 

みなみの言葉に、梨香と彩綾は息を呑んだ。

 

「そうね。みなみちゃんの言う通りだわ」

「こんな事をしたって胡桃さんがもっと絶望するだけです。止められる力があるなら、私達も全力で彼女達を止めます」

 

黒川、そして不知火も力強く頷いた。

 

「――強いわね、アンタ達」

 

この場に居る中で、唯一の子供である筈の3人の少女達。しかし、梨香を含む大人達は、今の彼女達の方がずっと立派な”大人”に映っていた。

 

「……そろそろ動こう。まずは君達を安全な外へ避難させる」

 

澤本が視線を落とした先では、例のカラスが案内の為にスタンバイしていた。




何時の間にかマリア君が御前みたいな立ち位置になってる……人間性は完全に真逆だけど。





オリオン「(男ならブチ殺してから酒を酌み交わすところだが)……ま、まあ、相手も同じ女の子なら……」
犬亥「許せる、かな……?」

梨香&彩綾『違うっつってんだろクソ親父!!』

父親's「「わァ……あ……」」

マリア「泣いちゃった!!!」
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