【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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126話

――ウチ、寿みなみは、友達のフリルちゃんとあかねちゃん、マーくんに助けられた犬亥さんと祇園さん、案内役のカラスさん、そして警備員の皆さんと一緒に脱出を果たしていた。

 

警備員さん達はウチ等をアリーナから遠く離した後、テロリストのお姉さんの監視兼ウチ等の護衛に2名残し、各方面へ散らばっていく。カラスさんはアリーナへUターンするメンバーを引き続き誘導するつもりのようや。

 

「友達の事は此方に任せて欲しい。君達は絶対に我々の仲間の元から離れないように。建物の周囲にも、観測役のテロリストが複数配置されてるそうだからな」

「分かりました! みんなを宜しくお願いします!」

「どうか皆さんもお気を付けて!」

「あぁ」

 

菖蒲さんを連れていくリーダー格の澤本さんの指示通り、ウチ等はこの場から動かず待機となった。テロリストのお姉さんの話によると、アリーナの外周には複数の敵が散らばって配置されとるらしい。此処から東に進んだ先にある森林公園内にも、テロ組織本隊の移動司令部のバスが停車中だとか。

 

なので澤本さんはグループを4手に分けた。移動司令部を制圧するチーム、アリーナ周囲の観測者を抑えるチーム、ウチ等の護衛担当――そしてアリーナ内部に戻って事態を伝え、かつ残ったテロリストを制圧するチーム。

 

(……今更やけど銃を持ったテロ集団を少数で倒すつもりなんか、この警備員さん達?)

 

でもマーくんのような前例もあるし、菖蒲さんは人間1人投げ飛ばすだけの身体能力を持っとるし……他の警備員さん達も腕に相当自信があるんやろうな。

 

「もどかしいね……」

 

ふとあかねちゃんがポツリと言葉を漏らした。気持ちは分かる。アリーナには今もウチ等の大切な人達が、それも殆どが何も知らないまま残されておるのだから。

 

「でも、私達は所詮一般人。無理に助けに行ったところでプロの人達の足手纏いになりかねないわ。下手すれば更なる被害を招いてしまうかも」

「むぅ……それは、そうだけど」

 

フリルちゃんの正論にぐうの音も出ないあかねちゃん。先月の事情聴取でもお巡りさんから似たような事を指摘されたもんな。

 

「警備員さん達が対処に当たっとるし、かぐやさんを通じて警察も動き出した筈。ウチ等に出来るのはここまでや。あとは大人の人達を信じて待ちましょう?」

「うん、そうだね。みなみちゃん……」

 

とはいえ簡単に納得出来る訳やない。あかねちゃんは勿論、指摘したフリルちゃんも――何よりウチ自身も。

 

(……やっぱり非力なままなのは、何か嫌やな)

 

結局ウチはマーくんに助けられてばかり。巨人さんに襲われた時も、ヤクザさんに内臓を取られそうになった時も。今回だってそう。もし彼が居なかったら、今頃ウチ等は瓦礫の下敷きになるところやった。

 

(何時までも、守られてばかりなのは納得できひん。何より――ウチだってマーくんを守りたい。隣で一緒に支える人間になりたい)

 

怪我したマーくんを巨人さんから逃がす事も出来ず、危うく彼が殺されかけたあの日、ウチはこの目でハッキリと見た――死ぬのが怖くて、怯えているマーくんの顔を。その時ウチの心に発現した願いは、年月と幾つもの危機に襲われる度に少しずつ、確実に大きくなっていった。

 

(何か良い方法はないんやろうか……?)

 

理不尽に対して受け身しか取れないでいる自分自身に、ウチは不満を募らせていくのやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わー!♡♡」

 

私、星野アイは着替えを終えた3人の天使っぷりに目を輝かせる。特に愛娘のルビーの可愛さに、気が付けばスマホのシャッターを何十回も押していた。

 

「ルビーすっごく似合ってるよ、その衣装!」

「えへへ、アイお姉ちゃんとお揃いにしたかったんだ! ありがとう!」

 

本当は私が使ってたお古を着たかったらしいけど、流石に色とか抜けちゃってたから全く同じ設計で新調する事に。それでも愛娘が私と同じ衣装でデビューするのって、とっても感慨深いと思う。

 

因みに かなちゃんはニノちゃんの、MEMちょは めいめい と同じ衣装を着ている。何だが昔のB小町を見ているみたい。

 

(……みんな元気にしてるかな? この間会ったばかりだけど、また集まりたくなっちゃったよ)

 

仲間達との思い出に浸っていると、スタッフさんが垂れ幕を捲って顔を出し、ルビー達へ呼び掛けた。

 

「B小町さん、そろそろ時間です! 宜しくお願いします!」

 

「「「はいッ!」」」

 

元気よく返事をする3人。……一見自身たっぷりそうだけど、表情が強張っているのが丸分かりだ。

 

「みんな」

 

だから私は歩き出そうとするルビー達を呼び止める。そして立ち止まった3人を、大きく広げた両腕で抱き寄せた。

 

「えぉ!?」

「アイ、さん?」

「マ……アイお姉ちゃん? どうしたの?」

 

あはは、突然の事でみんな戸惑ってるみたい。私は1人1人頭を優しく撫でながら、この子達が夢の為に重ねてきた努力を褒め称える。

 

「凄いよねえ3人とも。今日まで私達の地獄のような特訓に耐えきって、此処まで来れたんだから。――きっと大丈夫、今の君達なら間違いなく羽ばたける。何処までも遠くまで。この私――星野アイが保証する」

「アイお姉ちゃん……」

 

3人に残っていた僅かな震えが消えていく。

 

「ほぉおおお、推しからこんなに熱いエールを送られるなんて……テンション爆上がりだよぉ!」

「アイさん、本当にありがとうございます。どうか見守っていて下さい」

「うん、信じてる! じゃあみんな一緒にぃ……頑張るぞー!!」

 

「「「おーーッ!!!」」」

 

円陣を組み、気合いを注入したルビー達が一斉にステージへ向かって駆け出す。

 

「ルビー」

 

そんなルビーの背中に、包み込むような優しい声が掛けられた。前世から自分を支えてくれた、ルビーの初恋の人の声だ。

 

「行ってこい」

 

短く、でも強い期待と親愛に満ちたエールをアクアから送られたルビーは、振り向き様に今までにないくらい輝かしい笑顔で手を振った。

 

「うん、見ててね! おにいちゃん!!」

 

うんうん、やっぱり大好きな男の子が見ててくれるのが一番大きいよね! ルビーの笑顔、一層魅力的なものに仕上がってる! 目の中の白いお星様なんか、はみ出ちゃいそうなほどキラキラしてるもん!

 

(ふふん♪ 身内贔屓じゃないけど……ルビーって本当に眩しい子だなぁ。間違いなく私を超えるスターになるね、絶対に!)

 

「――じゃあ俺も移動するかな」

「あはは! アクアもアクアですっごい気合入ってるね~! フル装備?って感じ?」

「当然だろ? 前世からの最推しとその仲間達のデビューなんだ。盛大に応援してやらなくてどうする」

 

ルビー達が去った直後、お客さんが集まる場所へ向かおうとするアクア。事務所の保管庫から引っ張り出してきた初代B小町のグッズTシャツにタオルを纏い、両手にはルビー達のサイリウムを片手に3本ずつ、合計6本も構えている。私やヒカルに似て美人だからか、如何にもなドルヲタ姿は似合わなさ過ぎて吹き出してしまう。

 

「私もアクアの隣で一緒に応援したいな~? ねえ社長ー、行かせてよー?」

「ダメだ。お前の事だから興奮のあまり悪目立ちするに決まってる。それでお前の正体が周りにバレたら大騒ぎ。ルビー達のライブどころじゃなくなっちまうぞ?」

「む~、佐藤社長の意地悪!」

「意地悪で結構。あと俺の名前は斉藤だっつうの」

 

ちぇ~、ステージの横から見守るしかないかー。私は頬を膨らませながら、アクアの背中を見送る事に。

 

「ていうか、やっぱアクアの奴もマリアみてえに前世持ちだったんだな……彼奴の言動から察するにルビーも」

「でも、結局2人は詳細を語ってはくれなかったわね。別に今更誰だろうと私達は気にしないのに」

 

そういえばマリア、社長とミヤコさんにも前世の事を話したんだっけ? 悪い人だった事を知っても受け入れてくれたって、嬉しそうにしてなぁ。

 

(……もしアクアがせんせーだって知ったら、社長どんな顔するんだろう? 面白そうな変顔はしてくれそうだけど)

 

でも黙ってる。少なくともアクアとルビーが許可してくれるまでは。2人が話したくないのなら、あの子達の意志を無視して私が教える訳にはいかないから。

 

……と、そういえば。

 

「ねえ、マリアはまだ来てないの?」

「ん? 確か彼奴は彼女とデート中じゃなかったか? 多分今頃はアクアみてえにステージ前の群衆に紛れてると思うぜ?」

「あぁ、そういえば! みなみちゃんとデートを約束してるって、マリア言ってたんだった!」

 

じゃあ電話を掛けて邪魔するのも悪いかな? ふふ、あんなにいっぱい人が集まってる所に居るんだもん。きっとマリアとみなみちゃん、ギュウッとくっ付いて、顔を真っ赤にしながらライブを待ち望んでる頃かもね!

 

(どう見ても相性抜群だし、近い将来に絶対結婚すると思うなぁ……アクアとルビーは兄妹カップルになったから、正式な結婚は無理になっちゃったし。う~ん、結婚式のスピーチは何を話そう??)

 

新生B小町のライブが始まるまでの僅かな時間。私は新しい家族をどう迎え入れるかで頭がいっぱいになるのだった。

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