【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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番外編を一個挟んで、また本編に戻ります。


番外編②

俺の名前は一条康明。関東最大のヤクザ、『京極組』に属する武闘派の極道だ。

 

現在、京極組は史上最悪とも呼べる巨大半グレ組織『羅威刃』の侵略を受け、奴らと血で血を洗う大抗争を繰り広げている。

 

後に京羅戦争と称された大戦争の終盤。遂に俺は敵の大将である城ヶ崎賢志に一騎討ちを挑み、そして隙を突いて致命傷を与える事に成功した。

 

内臓を激しく切り裂いたのだ。あの男が助かる見込みは皆無に等しい……だが。

 

「……こっちに向かって行ってたな」

 

俺は奴の血の跡を確認しつつ、古びたアパート街の中で傷だらけの体を無理やり引き摺っていた。不気味な程に人の気配がなく、お陰で死の一歩手前の重症姿を誰かに目撃される事もない。一般人に見られて通報でもされたら最悪組ごと豚箱行きだからな。

 

「城ヶ崎……あんな体で動いてまで何をしたかったんだ?」

 

死を迎えるまでの僅かな時間。奴は致死量の出血にも関わらず立ち上がり、俺を背にフラフラと歩き出したのだ。

 

……その後ろ姿は、母ちゃんを探す子供そのもの。何となく、泣いているようにも映った。

 

あまりにも弱々しく寂しい姿に俺はとどめを刺せず、奴の最後の願いを汲んで見送る事にした。すぐに追わなかったのは、その行く末を見てはいけないと思ったから。

 

それから数分。あの出血量なら今頃死んでいてもおかしくない。もう十分だろうと判断した俺はボロボロの身体に鞭を打ち、奴の死体を確認すべく追跡を開始した。

 

そして……

 

「……? なんだ、ありゃ?」

 

角を曲がったところで俺の視界に奇妙な光景が映った。アパート街の奥地の道端で、何かを覆い尽くさんばかりのカラスの大群。ソイツ等は俺に気付くや否や一斉に飛び立ち、群がっていた”それ”の正体を俺に明かす。

 

「…………城ヶ崎」

 

つい先ほどまで命の遣り取りをしていた敵の亡骸。関東裏社会を震撼させ、京極組に多大な被害を齎した悪魔………その最後は誰にも看取られる事のない孤独な死だった。

 

俺は奴の側に近寄り、屈んで死体の状態を確認する。カラスは奴の死肉を貪っていたのかと思ったが、俺との戦いで付いた傷以外は一切見られない。目を開けたまま死んでいる事に気付き、そっと光を失った黄金色の瞳を奴の瞼で覆ってやる。

 

「泣いていたのか、お前」

 

その際、指先に覚えた温かい液体の感触。死体をよく観察すると、涙が流れた跡と思われる一筋の線が目から頬へと走っていた。

 

「……なぁ城ヶ崎」

 

城ヶ崎の死を確認する、ただそれだけのつもりだった。だが俺はその涙を見て不思議と語り掛け始めていた。

 

「お前、本当は望まずしてこっちの世界に来ちまったんじゃねえのか?」

 

愚問過ぎる。そんなものはこの男だけじゃないだろう。辛い境遇が原因で闇の世界へ転がり落ちるしかなかった奴などごまんといる。誰だって好き好んで裏社会へ足を踏み入れたかった訳じゃない。俺だってそうだ。

 

ただ、あの冷酷非道と恐れられた城ヶ崎も例外ではなかった事に少し驚きはしたが。

 

「俺の元から去る時のお前の姿、まるで母ちゃんを探す子供のようだった。――もしかして、親関連で何か辛い目に遭ったんじゃねえのか?」

 

親に恵まれなかった。これは裏に落ちる理由としてはよくある話だ。だから城ヶ崎がそうだったとしても別に不思議ではない。

 

「お前は確かにヤバい奴だったよ。たった一人で関東裏社会にこれだけの災厄を齎したんだからな。……もし親に恵まれてさえいたら、それを可能にした才能や技術を表社会で十全に発揮してよ、多くの人間の役に立てたかもしれねえ」

 

そうでなくても信頼できる家族や仲間に出会えていたならば、こんな酷い死に方は避けられたんじゃないのか。きっとコイツは今まで一度もそういった存在に巡り合うことが出来なかったんだ。俺も京極組に拾われなかったらコイツみたいに、他人を傷付ける行為を厭わない人間になってたかもしれない。

 

……でもな。

 

「当然、お前が過去にどんな地獄を体験してようが、俺たちにやった行為が許される訳じゃねえ」

 

表ですら境遇を理由に殺人犯の罪が軽くなる事はない……同情はされるだろうが。裏なら尚更厳しい。まず絶対に事情を汲んではくれないし、汲んじゃいけないんだ。殺された連中からすれば溜まったもんじゃねえんだから。

 

「お前は俺の”家族”を奪った外道でしかない。もはや死んでケジメを取るしかなかったんだよ」

 

西園寺の兄貴。国生の兄貴。鷹橋。他にも京極組の仲間たちの多くが羅威刃によって理不尽に殺された。

 

もっと一緒に居たかった。もっと笑い合いたかった。その願いが叶う事は……もう永遠にない。

 

残された者たちは誰もが悲しみに暮れ、そして誰もがその身を焦がす程の怒りを覚えた。愛する家族を大勢死に追い遣った半グレ共を、そのトップであるこの男を、絶対に許す事は出来なかった。

 

「だがケジメ取って仏になった今、もうこの話はお終いにしよう。……俺はな、こんな寂しい死に様を見てふと願っちまったんだよ。家族を奪ったにっくき敵である筈のお前に対してな」

 

願わくば、お前が二度と同じ道を進まないように。

 

「仮に、仮にだけどよ、お前に来世なんてものがあったら――――――幸せになれ。今度こそ、人並の幸せを享受して生きていってくれ」

 

何とも馬鹿げた話である。生まれ変わりなんてものがある筈がない。城ヶ崎の言う通り、死ねば人間はただ肉になるだけだ。

 

しかしそれでも、それでも……あの寂しい姿を見ちまった俺は、願わずにはいられなかった。

 

「俺から言いたい事は、それだけだ。――あばよ」

 

用が済んだ俺は立ち上がり、城ヶ崎と戦った場所へ引き返そうとする――。

 

 

 

 

 

その時、俺の背後から太陽のような強い光が発せられた。

 

 

 

 

 

「何だ!!?」

 

振り返った俺の視線の先には、城ヶ崎の亡骸の真上を浮遊する白く小さな光。まるで天上の星々の一つが地上に降臨してきたようにも見えるそれを、何故か俺は城ヶ崎の遺体から出てきた物と認識してしまった。

 

 

 

 

 

――お兄さんの願い、叶うかもしれないね。……最も幸せになれるかどうかは、その子次第だろうけど。

 

 

 

 

 

「!? 誰だ……!?」

 

今度は進行方向から耳元に届いた幼い少女の声。しかし、その先には誰もいなかった。

 

そしてもう一度あの白い光球を見ようと視線を戻したが、それも跡形もなく消え失せていた。

 

……いや訂正だ。星空の端っこで、今しがた目撃した例の光球が流れ星の如く南西へ飛び去っていくのを一瞬だけ捉えた。

 

「……何だったんだ、一体?」

 

後日、俺は虎徹からの質問を受けて城ヶ崎の最後について語り伝えた。

 

 

 

 

 

――ただ、その時に体験した不思議な現象に関しては、胸の内に仕舞っておくことにしたが。




アクアとルビー、遂に前世バレしましたね。良かった……と言うべきでしょうか。

アクアの復讐とかカミキの存在とか問題山積みですし。特に病気の所為とは言え、ルビーがとんでもない認識違いを起こしているし(16歳なったら考えてやるとしかゴローは言ってないのに、さりなは結婚してやると言われたと思い込んでいる)……。

本当にどんな結末を迎えるんでしょうね、推しの子。出来れば兄妹と友人たちで楽しく笑って未来を生きていくエンドになって欲しいです。
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