【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

2 / 160
○星野 真璃愛光(まりあらいと) (イメージCV:花守ゆみり)


【挿絵表示】


本作の主人公。星野アイが産んだ三つ子の末っ子。女の子みたいな名前だが男の子。

母譲りのルックスに兄姉と同じ煌めく金髪(兄より少し髪は長め)、母と同じ紫の瞳を持つ(因みに前世の母とも瞳の色が全く同じ)。前世の段階で闇落ちしているせいか、両眼の綺羅星は黒一色。体格は兄姉より小柄で、現状では二人に力で勝てない。
将来的に兄はイケメン、姉は美少女、そして彼は美少女系美少年(いわゆるリアル男の娘)に成長する予定。

その正体は兄と姉同様に転生者。前世は堅気だった兄姉と異なり、関東裏社会にて悪魔と呼ばれ恐れられていた男、城ヶ崎賢志である。

巨大半グレ集団『羅威刃』のボスであり、圧倒的な戦闘力とカリスマ性で部下や周辺の裏の人間たちを恐怖で支配していた。しかし最後は京極組との戦争で、武闘派極道の一条康明と激突、敗死した。

その過去は悲惨そのものであり、母と共に飲んだくれの父親からの暴力に怯える日々を過ごしていた。母の事は大好きだったが、父親に支配されていた彼女は父の方針に逆らえず、7歳の頃に両親に捨てられた。それを切っ掛けに彼の心は壊れ、悪魔と称される存在へと変貌していく事になった。

そんな経緯故か、16歳で子供を産んだアイを「何れ自分の父親みたいになると」考え、見下している。


2話

俺の名前は城ヶ崎賢志。日本最大のマフィア、『羅威刃』のボス……だった男だ。

 

何の因果だろうか。現在の俺は有名アイドル、星野アイの息子として生を受け、今のところは平穏に暮らしている。

 

「何時までも寝てないで、マリアもこっち来なさいよ」

「おい、引っ張るな。生地が伸びる」

「服なんかどうでも良いでしょ? それよりも推しのアイドルの活躍を見届ける方が最重要じゃない!」

「欠片も興味ない。兄貴と二人で勝手に見てろ」

「……興味ない、ですって? あの超絶プリティで世界一素敵なアイドルな私たちのママの何処に興味が無いって言うのよ!? 言ってご覧なさいよ!!」

「五月蝿い静かにしろルビー。ミヤコが起きるだろ?」

「だってアクア~! この分からず屋の弟がママの事興味無いって~!!」

「……おいマリア、どういう事だ? ちょっと詳しく説明して貰おうか?」

 

……訂正だ。騒がしいアホ共に無理矢理アイドル鑑賞に付き合わされている。

 

俺をテレビの前まで引っ張ってきた奴は星野ルビー。その隣に居る赤子は星野アクア。今世での俺の姉と兄にあたる奴等だが、まぁ一言で表すなら……ただの馬鹿だ。

 

(揃いも揃って呑気にアイドル鑑賞とはな……)

 

コイツ等は自分が何時破滅するかどうかの瀬戸際に立たされてるのが分かってるのだろうか。いや、分からないから能天気にテレビ視聴していられるのかもな。

 

俺は付き合う気などサラサラ無かったが、無理矢理引き摺られてリビングまで連れて来られた。やはり16の餓鬼が真面な三つ子を産むなど無茶だったのだろう。俺だけ上二人より体重も体格も劣った状態で生まれてしまい、女であるルビーにすら大した抵抗も出来なかった。

 

「……それよりも、寝てるとはいえミヤコの前で堂々と視聴してんじゃねえよ。俺らが普通の赤子ではないとバレちまうだろうが」

「大丈夫だろ? あれだけ熟睡してれば、ちょっと騒いだ程度じゃ起きないさ」

「そうよマリア! それにテレビはリビングにしか無いんだから仕方ないでしょ! この程度でママの御姿を拝まないなんて有り得ないんだから!」

「だから静かにしろルビー」

 

赤子にも拘らず流暢に話せてる時点でお分かりだろう。この二人も俺と同じ転生者だ。少し前の夜中にルビーが母親のアンチとレスバを繰り広げているところをアクアが発見。ギャーギャー騒いでいたところに俺も駆け付けて発覚、という訳だ。

 

――赤ん坊が喋った!? きんもーーー!!

 

――お前もだろ?

 

――何だ騒がしい……おい、まさかお前等……

 

――ぎゃあああ増えた!!? 何これホラー過ぎでしょおおおおおおおお!!?

 

取り敢えずルビーの得意技がブーメランなのはよく分かった。

 

あぁ、因みにおそらくだが、前世含めれば俺が一番年上だと思う。アクアは何処となく若者の雰囲気が残っているし、ルビーは言動の幼さから間違いなく餓鬼の年齢で死んだんだろう。つまりアイ含めて一家最年長は俺という事になる。だから何だって話だがな。

 

(それにしても……見てて気分が悪くなりそうだ)

 

丁度アイが属する『B小町』の歌が半分近くまで過ぎ、途中休憩も兼ねたトークタイムに移っていた。

 

『いやー、それにしても皆良いダンスだったよー』

『ありがとうございます!』

 

芸能界ってのは政治や経済の世界同様、嘘と打算が入り混じっている。最もらしい嘘で相手を持ち上げ、最もらしい嘘で自分をアピールする。そのせいで俺は濁りまくった瞳を多数見せられる事になった。

 

俺は幼少期の悲惨な経験から、他人の目を見るだけでソイツが嘘を吐いているかどうか分かるようになっていた。クソ親父に無理矢理連れられ俺を捨てようとした時の母さんと、全く同じ目をしているからだ。画面の中の連中が嘘だと丸分かりな事を平気でベラベラと喋る光景なぞ、誰が好んで見たいだろうか。

 

『やっぱメンバーが7人も居る中であれだけ複雑なパフォーマンスを披露するとなると、連携も大変でしょう?』

『そうですね。でも皆で力を合わせて頑張ってきたからこそ、ここまで来れたんだなって思います』

 

あの女……アイも例外ではない。どれだけ目をキラキラさせていても、その綺羅星の奥に広がる鉛色の濁りを俺は見逃さない。司会者の質問に対する返答の殆どが、嘘ばっかりだった。そんな嘘にわざとらしく興味深そうに反応する司会やB小町のメンバー、そして母親の嘘に気付かず隣で楽しそうに耳を傾けるアイドルオタ共。

 

(馬鹿馬鹿しい……今日はもう寝るか。赤ん坊の体はどうも眠くて仕方ない)

 

俺が寝室へ戻ろうと立ち上がった……その時だった。

 

『ところでアイちゃん、さっき子猫を飼ってるって聞いたけど?』

『はい! うちの子は3人……3匹居るんですけど、男の子が2匹で女の子が1匹なんです。みーんな生まれたばかりで小さくて、とっても可愛くて。この間も一緒に寝てた時の3人の寝顔なんて見てて凄く癒されちゃって……』

『3人?』

『あ、じゃなくて3匹が――』

 

「…………」

 

俺たち三つ子の事を話すアイ。その時だけは目の奥の濁りが完全に消え失せ、普段よりも瞳の星の煌めきが増していた。空気の澄んだ星空を想起させる……いや、それよりもずっと輝いた目だ。まるで見る者全てを吸い込み、その瞳の奥へと誘われていく様な、そんな不思議な感覚。俺はその瞳に囚われ、釘付けになっていた。

 

(アイツ……あんな目にもなれるんだな)

 

俺は呆然と立ち尽くし、その瞳が再び濁るまで目を離せなかった。

 

「マリアー?」

 

直後にルビーが俺を呼んだ。将来有望そうな整った顔立ちをニヤニヤさせながら見上げてきやがった。

 

「……何だ?」

「見てたわよ、ママの事ずうっっと見詰めてたわよね? 何だかんだ言ってアンタも興味ありまくりじゃない」

「そんな訳ない。俺はもう寝る。邪魔したら許さん」

「あ、ちょっと! まだ番組終わってないわよ!」

「おいマリア!」

 

アクアとルビーの呼び掛けを無視して歩き出す。寝室へ戻る途中、俺は先程のアイの瞳を思い出していた。

 

「曲がりなりにも餓鬼への愛情はある……って訳か」

 

だがそれも何時まで持つかな。数年も経てばこう言うに決まってる……”産まなきゃ良かった”ってな。

 

俺は前世同様、望まれない子として生を受けちまったかもしれん。

 

 

 

 

 

俺の名前は雨宮吾郎。前世で医者だった男だ。

 

ストーカーらしき男に殺された俺は何故か転生し、今はアイの息子『星野 愛久愛海(あくあまりん)』として生きている。推しのアイドルにとことん甘やかして貰えるこの現状、折角なので俺は存分に堪能している。

 

「アクアー? お腹減った? おっぱい飲む?」

 

……ただこればっかりは超えてはならない一線だろう。

 

「ブンブン!!」

「あれ? 嫌なの?」

 

仮にも少女に成人男性の授乳をさせるわけにはいかない。俺は首を激しく振って拒否し、受け取った哺乳瓶を吸って腹を満たした。

 

「うああああああ!!!」

「はいはい、またおっぱいだねー、ルビー?」

 

対する妹のルビーは躊躇なくアイの胸にしゃぶり付き、全て吸い取る勢いで母乳を飲み下す。……こっちを向いてドヤ顔してくるのが微妙に腹立たしい。授乳マウントのつもりかよ。

 

「……おいお前、ちょっとは遠慮しろよな?」

「何で? 娘の私がママのおっぱい吸うのは自然の摂理なんですけど? 与えられた当然の権利なんですけど?」

 

一言文句を言ってやると目を怪しく光らせ、真顔でさも当然にこう返された。

 

「一応聞いておくけど……お前、前世でも女?」

「うん」

「……なら、ギリ許せるかな?」

「オタクの嫉妬きもーい!」

 

コイツは俺と違ってアイを母親と呼び、全力で甘えていた。俺は中身が成人男性な事もあって、実質年下の少女をどうやっても母親として見る事ができそうにない。

 

「まぁ良い年した男が授乳とか倫理的にヤバいもんね~! 良かったー、合法的におっぱい味わえる女に生まれて~!」

「俺の倫理観だと、それもアウトなんだけ、ど!?」

 

その時俺はとんでもない光景を目の当たりして硬直した。

 

「ん? どうしたの、よぉ!!?」

 

ルビーも俺の視線を辿って同様の反応になった。

 

「珍しいねー、マリアは何時も哺乳瓶なのに。ママのおっぱい、美味しい?」

 

そう。俺たちの目の前で、アイに抱かれたマリアが彼女のおっぱいを吸っていたのだ。

 

(だあああ! アイツ何やってんのよーー!!?)

(大の男の癖にアイに授乳させやがってーー!!)

 

『星野 真璃愛光(まりあらいと)』。コイツもまた凄い名前を付けられたもんだ。俺たち三つ子の末っ子で、俺とルビーの弟だ。俺たちと同じ金色の髪とアイ譲りの将来有望そうなルックス。生まれの影響か俺たちより少し小柄な体格。そしてアイと同じ紫の瞳に、両目に宿る黒い綺羅星のハイライト。何時も不機嫌そうな表情で、クールな印象を受ける赤子だ。

 

そして、俺たちと同じ転生者だ。前世も成人男性と聞いている。

 

「ちょちょちょちょっと! アンタ!」

「……何だよ、騒がしい。静かにしろ。バレるだろうが」

「何だよじゃないわよ! 何良い年した男がおっぱい吸ってんのよ!? このエッチ! 変態!」

「五月蠅い」

 

ルビーが血相変えて詰め寄るも何処吹く風。全く意にも反さない。

 

「ってか、アンタ何時もは哺乳瓶でしょ!? 何!? 我慢してたけどやっぱりおっぱい欲しくなったとか!? キモイ!」

「何を言っている? 息子の俺が母親の授乳を受けるのは自然の摂理だろ? 与えられた当然の権利だろうが」

 

尚も食い下がって非難轟々のルビーに、マリアは彼女が先に言った論理で返す。

 

「さっきアンタが言った事だろう、姉さん?」

「そ、それはそうだけど……ん、姉さん? 私が?」

「他に誰が居るんだよ、姉さん?」

 

直後、ルビーの顔が緩んだ。

 

「そ、そうよね~。私はマリアのお姉ちゃんだもん。姉として弟にはもう少し寛大でいてあげないと~!」

 

どうやら姉呼びでご機嫌な様子だ。チョロ過ぎるだろこの子。

 

「でも、大の男がおっぱい吸うって絵面的に宜しくないし、出来れば控えて欲しいな~なんて?」

「安心しろ、本当に必要な時しか吸うつもりはない。たまたま哺乳瓶が近くに無い時に、丁度腹が減ってたから仕方なくってやつだ。そうでなければ母乳なんて――不味くて飲めたものじゃねえからな」

 

………あ゛?

 

「おい、推しのおっぱい吸っといて何だそのふざけた感想は……?」

「ママの母乳を侮辱したな? 誰のおっぱいが不味いだってこの野郎……」

「面倒くせぇ……」

 

マリアの奴が言っていたのは本音だろう。終始下心が全く感じられない。授乳は単に理屈に沿っての行動に過ぎない様だ。

 

(あれ? 俺もそれに則ってやれば推しのおっぱいを――)

 

「お兄ちゃん……?」

 

吸えるのでは思ったけど、察しの良い妹がゴミを見る目で睨んできたので、その考えは捨てた。

 

 

 

 

 

私の名前は天童寺さりな。不治の病に冒されて…………最後は死んじゃった病弱な女の子だ。

 

今は私が前世から推しているアイの娘『星野 瑠美衣(るびー)』に転生し、大好きなママにいーっぱい甘える日々を送っている。……前世では死ぬ最期まで親に相手して貰えなかったからね。今世は親子仲良く生活したい。

 

何故生まれ変わりなんて経験したのか全く分からない。でも、健康な身体に生まれたというだけでも私にとっては十分幸せだ。これなら前世から気になっていた吾郎先生とも色んな所へ出掛けられるし、ずっと一緒に居てあげる事も出来る。――もう少しだけ待っててね、せんせ。大きくなったらすぐ宮崎へ会いに行くから。それまでは独身でいてね?

 

そんな今世の私には2人の兄弟が居る。一人はお兄ちゃんの星野アクア。一言で表すなら……ママ関連でやけに嫉妬深いアイドルオタである。さっきも授乳関係で色々苦言を呈してきたし、嫌いじゃないけど……ちょっとキモイかな。

 

――そしてもう一人。弟の星野マリア。女の子みたいな名前だけど、れっきとした男の子だ。私やお兄ちゃんより小さい身体だけど、時々怖いと言うか……近寄り難い雰囲気を出す時がある。何と言うか、只者ではないと言うか……少なくともお兄ちゃんや私みたいにオタクではなさそうだ。

 

「さっきアンタが言った事だろう、姉さん?」

「そ、それはそうだけど……ん、姉さん? 私が?」

「他に誰が居るんだよ、姉さん?」

 

普通じゃない私の兄弟だけど、それでも嬉しい。前世の私は一人っ子だったから、兄弟の存在はとても新鮮なものだった。マリアが私を”姉さん”と呼んでくれた時も、体の奥底から歓喜が湧き上がってくるのを感じた。

 

「そ、そうよね~。私はマリアのお姉ちゃんだもん。姉として弟にはもう少し寛大でいてあげないと~!」

 

我ながらチョロいとは思う。それでも喜ばずにはいられなかった。

 

ママが居て、お兄ちゃんが居て、マリアが居て……そして私が居る。前世では在り得なかった幸せ家族の姿が、其処にはあった。これからもずっと、この人たちと一緒に居たい。心の底からそう思った。

 

「安心しろ、本当に必要な時しか吸うつもりはない。たまたま哺乳瓶が近くに無い時に、丁度腹が減ってたから仕方なくってやつだ。そうでなければ母乳なんて――不味くて飲めたものじゃねえからな」

 

……でもね、マリア。

 

「おい、推しのおっぱい吸っといて何だそのふざけた感想は……?」

「ママの母乳を侮辱したな? 誰のおっぱいが不味いだってこの野郎……」

「面倒くせぇ……」

 

ママを侮辱したり馬鹿にする事は御法度だよ? お姉ちゃんがそこの所、しっかり再教育してあげるからね?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。