【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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残り2割と言いつつ予定より長くなってます……

一応、ドーム編→番外編(可能なら)→最終章の流れです。


25話

「に、2000万!? そんなに借りてないでしょ……!!?」

 

「言った筈だ。ウチは一回でも返済が遅れれば10日で20%……”トニ”になるってよ」

「男遊びに夢中で返済期日を過ぎた事に気付いてなかったのかな? もう4ヶ月くらい遅れちゃってるんだよ、アンタ?」

 

三門が出した利息の高さにアクアがドン引きする。

 

「うわっ、酷い利息だな。年利で730%じゃないか」

「これでも他の闇金よりはマシな方だぞアクア。最初から10日で40%以上のところも珍しくない」

「年輪? お兄ちゃんもマリアも今ここで木の話題なんか出しても意味ないわよ?」

「「ちげーよ」」

 

日本の法律では年利で上限15~20%と定められている。それを超える金利を掛けたら闇金の扱いだ。

ナツメ金融は返済義務を怠らなければ10日で5%、返済が滞れば10日で20%。法に照らし合わせれば十分違法だが、それでも搾り取るだけ搾り取ろうと躍起になる他の闇金よりはずっと良心的な金利を設定しているようだ。

 

しかし社長を名乗る男の凄まじいオーラよ。多分この5人の中で一番強いまである。取り立てに関してはダントツで厳しそうだな。

 

「初めまして。私、犬亥梨香って言うんだ。貴方たちの名前を教えてくれる?」

「あ、はい。星野ルビーです。こっちの二人はお兄ちゃんのアクアと、弟のマリアです」

「ルビーちゃんにアクアくん、マリアくんか。綺麗で素敵な名前だね。よろしく」

「あの……怪我とか大丈夫ですか?」

「平気平気、すぐ助けて貰ったから何とも無いよ。ーーところで3人もアイちゃんのファンだったりする?」

「はい、そうなんです! 梨香お姉さんもですか?」

「うん、アイちゃんは私の最推しなんだ。『サインはB』のMVで初めて彼女を見て一瞬で惚れちゃったの! ダンスも歌も凄くて滅茶苦茶綺麗で!」

「分かる、分かりますよ! あの姿を見て虜にならない人なんていないですよね!」

 

俺とアクアの後ろでルビーと梨香が母さんの話題で熱く語り合っていた。同じ母さんの大ファンで女子同士というのもあってか意気投合している様子だ。

 

「……なんか盛り上がってるけど、この状況で談笑とかある意味凄い胆力だな、この子たち。片やさっきまであの女に酷い目に遭わされてた筈だけど」

「とはいえエグい取り立て見せるのもどうかと思うし、このまま終わるまで母さん談義に夢中になって貰うとしよう」

 

あ、連絡先交換してら。これって図らずとも獅子王組とのコネ作りになってるんじゃ? まぁ汚れ仕事を依頼する気は欠片も無いけどさ。

 

「ま、待ってよ。今、娘から金を借りてくるつもりだから。それで返させて頂戴……」

「……とコイツは言ってるが、どうなんだ紅林くん?」

「無理ですね。許可証を持ってませんし、さっき子供を人質に金を要求してきました。そんな人間をアイさんに会わせる訳にはいきません」

「……だそうだが?」

「く……う……」

 

母さんを返済のアテにしようとも先の行為の所為で当然の如くダメ。

仮に会えたとしても2000万の現金を用意するなど不可能だ。人気アイドルになったとはいえ、それでも月給は60万程度。俺たち子供への出費も多いので貯金も1000万に届くかどうかである。23歳の若さでこの貯蓄額は凄いが、当然クソ女が求める額には程遠い。子供への投資を考えれば、例え300万でも出す余裕はないのだ。

 

それよりも……一つ気になる事があった。

 

「ねえ闇金のおじさん。ちょっとこのおばさんに聞きたい事があるんだけど、良い?」

「別に構わねえが。あと坊主、俺は闇金じゃねえ。単なる金貸しだ」

 

(法外な利息掛けてる時点で十分闇金だろうが……)

 

俺は倒れてる女に近付いて尋ねる。

 

「ねえ、おばさんはどうしてナイフなんか持ってたの?」

 

“おばさん”発言で殺気立った視線が下から飛んできたが、気にせず俺は続ける。

 

「もしかしてアイに断られたらそれで脅すつもりだった?」

「……確かに護身用とはいえ不自然だね。これ、軍用のナイフだよ」

 

部南が床に落ちているナイフを拾い、ジッと観察する。この男は元特殊部隊らしく、一目でナイフの用途に気付いた。

 

そう。俺はこのナイフに違和感を……いや、既視感を覚えた。ストーカーが母さんを刺すのに使用したアーミーナイフ。それと全く同じ見た目だったから。

 

すると女がポツポツと話し始めた。

 

「……フードを被った変な男から貰ったのよ。顔は隠れて見えなかったけど、ソイツの助言で此処に来たわ。アイが今日此処でライブをするから、金を借りるチャンスだって……アイの住所を知らないから、会うなら此処しかなかったの」

 

……嫌な予感ってのは当たるもんなのかな?

紅林たちが目の色を変える。アクアも同様だが、俺と同じ可能性に行き着いたのか、顔を顰めていた。

 

「脅迫してきた芸能事務所の差し金か? 奴等に雇われた半グレの可能性が高いな」

「その不届き者は何処にいるんだい? もう片方の頬を陥没されたくなければ正直に答えるべきだねえ」

「ひぃ!? し、知らないわよ! 街中のバーで金で悩んでいた時、偶然相談に乗ってくれただけの関係だし……!」

 

伊武が鉄棒を突き付けて脅すが女は必死に知らないと答える。目の色も濁らなかったし、嘘ではないようだ。

 

「あ、闇金のおじさん。もう大丈夫だよ。連れて行くんでしょ?」

「だから闇金じゃねえって。――まぁ、そうだな。此処で遣り取りしてたら他のお客さんの迷惑になる。本社に連れ帰ってからじっくり選ばせてやろう」

「あ、あぁああああ……」

 

三門に凍てつくような視線で見下ろされ、女はこの世の終わりかのように顔を蒼褪めた。借金の額的に数年間カニ漁か、若しくは内臓取られるか、はたまた両方か。

まぁ、何れにしろ、これで奴が母さんの前に現れる事は永遠にないだろう。

 

「それじゃあ失礼するよ。今度会う機会があったら飲みにでも行こうじゃないか」

「良いですね、楽しみにしてますよ!」

「その女にはキッチリとケジメを取らせてくれ、頼んだぞ?」

「了解でーす」

 

「ひ、ひぃいいい……」

 

三門は屑女をヒョイと担ぎ上げると、紅林たちと飲みに行く約束を取り付けてから部南と共に去って行く。

 

あ、そうだそうだ。

 

「ごめんなさい、おじさん! ちょっとだけ待って!」

 

俺は背中を向けるナツメ金融の男たちに声を掛ける。

 

「どうした、坊主?」

「そのおばさんにどうしても言いたい事があるんだ。ほんの一言だけ! 良いかな?」

「……あぁ、手早く済ませてくれよ?」

「うん、ありがと!」

「ホラよ」

 

「ぐげっ!?」

 

俺の頼みを聞いてくれた三門が女を一旦床に落とす。軽い衝撃を受けて潰れた蛙みたいな悲鳴を上げたけど、どうでも良い。

 

「ぐ、ごふ……な、何よ? まだ何かあるの……?」

 

近付いて来る俺にすら怯えて身構える奴に、俺は純真無垢な笑みを浮かべながら耳元で囁く。ソイツだけに聞こえるように、非常に小さい声で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――俺たちはお前を祖母とは微塵も思わねえ。これはテメエが母さんにしてきた事の報いだ」

 

「!!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃の事実に理解が追い付いていない様子だ。しかし俺は気にせずその場から離れ、アクアとルビーに合流する。

そして3人揃って冷たい眼差しを、真っ黒な星の光を奴に浴びせてやった。

 

「……」

「……」

「地獄に――堕ちろ」

 

「え、ちょ、アンタたちまさかグエッ!!?」

 

「話は終わったみたいだな。さぁ行くぞ」

 

「ひ、い、いやああああ~!」

 

三門に引き摺られるようにして、女は俺等の視界から完全に消えた。もう二度と会う事はないだろう。会えたとしてもマジで顔も見たくないが。

 

「あれ? どうしたの3人とも?」

「ん~ん、何でもないですよ」

 

不思議そうに此方を見る梨香にルビーが無邪気な笑顔を返す。そのまま二人で母さん談議に戻っていった。

 

「き、君たち。一体何の話をしてたんだ……?」

「秘密です」

「エヘヘ」

「そ、そうか……」

 

俺たちの恐ろしい顔を目撃した紅林が冷や汗を流しつつ聞いてくるが、当然内容を教えてやるつもりはない。楽しげな様子で隠し事をする子供を演じて追及を躱す。

……とはいえ急激な表情の変化に違和感しか湧かなかったのか、少し引かれてしまった。

 

「あ、いけない! もうライブが始まっちゃうよ!」

 

これ以上不審がられる前に、梨香がこう言ってくれたお陰で離脱できそうだ。

 

「じゃあ僕たちは、これで」

「おじさんたち、助けてくれてありがとう!」

「え、あ、あぁ。怪我もなくて良かったよ」

「パパ! 私の席で一緒に見ようよ!」

「分かったから強く引っ張らないでくれ梨香、痛いから。――伊武、すまないが少しだけ抜けさせてもらうぞ?」

「了解しました犬亥の兄貴。楽しんできて下さい」

「あぁ、ありがとう」

「梨香お姉さん! また会おうね!」

「ルビーちゃんも! またアイちゃんの事でいっぱいお話しよう!」

「うん!」

 

そして俺等は別れた。紅林と伊武は警備の任務へ戻り、犬亥父娘は俺等とは別の席でライブ鑑賞へ向かい、俺等3人もミヤコが待つ席へと歩き出した。

 

 

 

 

 

「も~、お兄ちゃんもマリアも早く早く! ママのライブに遅れちゃうじゃない!」

「そんなに慌てなくても大丈夫だぞルビー?」

「お姉ちゃん、ちゃんと前見ないと怪我するよー!」

「分かってるってー! ほら急いで!」

 

お姉ちゃんに続き、おれとお兄ちゃんも走り出す。

 

「……なぁマリア。あの女、まさかとは思うけど」

「多分ね。半グレが偶々同じ種類のナイフを渡しただけの可能性も捨てきれないけど……おれの勘が違うって言ってきてる」

 

あのクソ女を送り込んできたフード男は、ストーカーを嗾けた黒幕と同一人物……おれたちの父親の可能性が高い。

 

「多額の借金で首が回らなくなった人間に刃物を持たせ、あわよくば刺し殺して貰う。アイを殺す意図があるにしては、随分と確実性の低い手段だな」

「うん。3年前の件だって、途中でストーカーが心変わりしたらその時点で失敗。計画としてはあまりにもお粗末だね」

 

まるで意図が分からない。黒幕は、推定父親は、一体何のつもりで母さんを狙ったんだ? 殺したいのか殺したくないのか。それすらハッキリしていなくて、正直不気味だ。

 

「マリア、これはまだルビーには言わないで欲しい」

「何?」

「そのストーカーなんだが……前世の俺はソイツに殺されたんだ」

「お兄ちゃんを……?」

「あぁ、アイツはどうやらアイの事を嗅ぎまわってたらしい。不審に思った俺はアイツを追跡したんだけど……崖から突き落とされてそのまま、ってやつだ」

「そうだったんだね。……ちょっと待って、それっておれ等が生まれた時にも母さんが狙われてたって事?」

「その可能性がある」

 

つまり、一つだけ確実に言える事がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「黒幕はアイ(母さん)を諦めていない」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――想定外の連続で接触すらできない……か。何だか危なそうな人たちが沢山いるみたいだし、今回は諦めて退散するとしよう」

 

この時、おれは気付かなかった。走り去るおれ等を遠目で観察する一人の人間に。

 

「手頃な人間を選んだつもりだけど、まさかアイの実母だったなんてね。……人間性は彼女とは比べものにならないくらい最悪だったけど」

 

男は恐ろしいまでに美形だった。神の悪戯かと思うくらいに。

なのに存在感を周囲に与えず、誰一人として彼の姿を上手く捉えられない。クソ女の所業も一部始終眺めていたが、あの猛者たち5人ですら全く気配を読めなかった。

 

男は去り際にもう一度振り返り、小さくなっていくおれたちを見詰める。

 

「……それにしても、さっきの演技は中々のものだったな。あんなにヤバそうな人たちを簡単に騙してしまうなんて」

 

男は考えを改めた。母さんを狙う事を諦めた訳じゃない。おれ等を含めてより高みへ辿り着くのを待ってから、その命を奪ってやろうと決めたのだ。

極めて価値の高い命を4つも奪えば、自らの命の重みを更に実感できると思ったから……そんなイカレた思考を持つ、狂人だった。

 

奴の両目に宿る闇夜そのものな綺羅星が怪しく光る。

 

「流石は――君と僕の子供たちだね、アイ」

 

 

 

 

カミキヒカル――おれ等の父親はおれ等の成長後の活躍に思いを馳せつつ、ドームからひっそりと姿を消す。

 

獅子王組も紅林も、奴の退場はおろか入場すら気付けなかった。




黒幕初登場。毒親も彼が嗾けてました。

彼をどうするかは原作の展開次第になりますが、そもそも全く話を作らない可能性もあるので、ご了承下さい。
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