【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
アイ=イザナミ、アクア=ツクヨミ(+スサノオ)、ルビー=アマテラス、マリア=スサノオですね。
アクアは名前に海が含まれるためスサノオでもありますが、右目に星を宿しているところがイザナギの右目から生まれたツクヨミを指しているのかなと。
またマリアは末の弟で乱暴者(悪魔として裏社会で猛威を振るった)、マザコン(抗争中に母へ会いに行くのを優先&受け入れ後はアイにトコトン甘えまくり)と共通点が多いので、アクア以上にスサノオが相応しいと思います。
「B小町さん、差し入れの飲み物です。ライブ、頑張って下さい!」
「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」
護衛兼ドームスタッフとして出向中の極道――獅子王組の中堅、
「…………」
「どうかしましたか、井上の兄貴?」
そんな彼の近くで壁に腰掛ける二人の男が話し合っていた。あの犬亥や伊武以上のオーラを携え、不審な人物がB小町に近付かないよう目を光らせながら。
「いや、ステージの外から妙な気配を感じてな。もうドームの外へ出ていったようだが……」
「……先程撃退された半グレの生き残りでしょうか?」
「分からない。だが距離があるとはいえ気配が読み辛かった。相当な手練れの可能性が高い」
「兄貴がそこまで言うとは……もうじきライブが始まりますし、より警戒を厳重にする必要がありますね」
例え毒親が母さんの元まで辿り着いても目的は果たせなかっただろう。
「あぁ、水際で食い止めたとはいえ、実際に半グレの襲撃を受けたんだ。寧ろここからが正念場となる。気を引き締めていくぞ」
「無論です。何人たりとも、女の子たちのライブを穢させはしませんよ」
「B小町さん、時間となりました! お願いします!」
「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」
一斉にステージへ向かって歩き出すB小町。
(――3人とも、楽しみにしててね? 最高の誕生日にしてあげるから)
おれ等に内緒で用意したライブ終盤のサプライズ。その時が来た時のおれ等の反応を楽しみにしながら、母さんは観客たちの前に立った。
「はぁ、はぁ……間に合った!」
息も絶え絶えなお姉ちゃんに追い付くと、丁度母さんたちがステージの中央でスポットライトを浴びながらファンに手を振っていた。
「あら、貴方たち。随分遅かったわね?」
「ちょ、ちょっとトイレが込んでて……」
戻ってきたおれ等に気付いたミヤコに事情を問われたが、そこはお兄ちゃんが何とか誤魔化す。
流石に母さんの母親の件は彼女や社長に話すべき事案となる。けど、折角のライブを気分を害したまま見ても楽しくないだろう。取り敢えず本当の事を話すのは帰宅後、母さんがいない時にやろうと思う。
「あ、始まる!」
「ほらマリア、お前の分」
「ありがとう、お兄ちゃん」
おれは赤のサイリウムをお兄ちゃんから受け取り、観客席に兄弟並んで腰掛ける。直後に母さんの声が音響機器を通じてドーム全体に響き渡った。
『みんなー!! 今日は来てくれて本当にありがとう! じゃあ早速1曲目、私たちのデビュー曲! その新時代バージョン!!』
『『『『『『『”STAR☆T☆RAIN New Generation”!!!』』』』』』』
B小町がタイトルを叫んだ直後、一色だけだったスポットライトが七色に変わり、7人のダンスと音楽に合わせて光の柱を大きく振り回す。
「「「B小町!!!」」」
「3人とも、もう少し落ち着いて見なさい、怪我するわよ?」
おれ等も席から立ち上がり、両手に持ったサイリウムを思いっきり振り上げ母さんにエールを送る。
……未だに信じ難い。赤ちゃんだった頃、激しくヲタ芸を披露していたお兄ちゃんたちに冷たい目線を向けていた筈なのに、今では少なくとも二人と一緒なら何の躊躇もない。半グレだった頃のおれを知る人からすれば、あまりの変わりように驚愕間違いなしだ。
特別席なので周囲に誰もいないのが幸いか。ミヤコ以外におれ等の行動を知る人も咎める人もいない。
「全く……」
そしてミヤコも本気でおれ等を止めるつもりはないらしく、やれやれと言った様子で母さんの晴れ姿を見下ろす。
残念ながら、こうなっちゃうともう止められない。汗水垂らし、呼吸が荒くなってきても、母さんを応援したい気持ちの強さに陰りは無い。
(……他のメンバーにもちゃんとパートがある。これが新時代バージョンなんだ)
旧バージョンでは歌っていたのはセンターの母さんだけ。他の6人は実質合いの手とバックダンサーとして振る舞うしかなかった。
しかし新バージョンは違う。パート毎に歌う人間が異なり、7人全員で合唱する部分も多かった。母さん単独で歌う箇所もあるにはあるが、サビに入る前段階に少しだけ。
これは他のメンバーも同様であり、母さんと他メンバーの扱いは平等になっていた。それだけ6人の存在感も凄まじいのだろう。
血の滲む努力の賜物か、若しくは元から持っていた才能を覚醒させたのか。
(まるで母さんを中心とした星団みたい……)
どんなに強く輝こうとも、所詮はたった1個の星。夜空を綺麗に彩るには到底足りない。星団の主星としての地位を得た一番星は、仲間の星々の力を借りながら最高の星空を人々に齎してくれた。
『ありがとうございましたー!!』
1曲目が終わり、2曲目、3曲目が続く。どれも新時代をイメージして歌詞以外殆ど作り変えられており、実質新曲を聞くような気分で堪能する観客たち。
「「「ハイッ! ハイッ!! ハイッ!!! B小町!!!」」」
当然、おれ等も魅了され、惹き込まれていく。続々と赤い軌跡を自らの周りに生み出しながら。決してこの輝きからは逃れられないし、逃げるつもりは毛頭ない。母さんの雄姿を真正面から目に焼き付け、脳も体も焼かれまくる。
楽しい時間というのは、あっという間だ。
『では、いよいよ最後の曲となります! B小町の大ヒット曲、”サインはB”!!』
ラストの”サインはB”も、勿論新時代に向けてバージョンアップしている。本ライブの集大成と言わんばかりに、今までで最も強く輝いてみせるB小町。
(母さん、本当にすごいなぁ)
あの人は絶対に此処で終わるような人じゃない。映画の方も大成功を収め、更なる高みへと昇っていくのだろう。芸能界のトップに立って活躍する姿すら頭に浮かんでくる。
そんな人の息子である事を、おれは誇りに思っていた。
(……あの時、母さんは言ったよね? おれの力は、お兄ちゃんやお姉ちゃんの助けになるって)
おれの中でやりたい事が固まっていく。お兄ちゃんとお姉ちゃんだけじゃない。母さんの力にもなりたい、支えたい、高みへ昇るのを後押ししたい。おれの心を救ってくれた大好きな家族に、前世からの才覚を全力で駆使して恩返しを――そう強く望むようになっていた。
――いいじゃない、それ。
気が付けば、前世での幼い自分が隣に立っていた。
『お母さんを守る。とても素敵な夢だと思うよ。……僕は結局できなかったけど、君ならできる。僕が果たせなかった夢を君が代わりに叶えてくれるなら、僕は安心して眠れる』
そして叶えられなかった夢をおれに託そうとした。
『母さんたちの事……お願いね?』
……嘘を吐かないでよ。おれが――おれ等が相手の嘘を見抜く能力持ちなのは知ってるでしょ? 濁った瞳なんか見せないでよ。大体、そんな寂しそうな表情を見せられたら、本心が別にあるのは丸分かりじゃないか。
「――何言ってるの?」
『……え?』
本当は、このまま消えるのは嫌だと思ってる癖に。せめて
「一緒にやるに決ってるでしょ?
『…………』
”僕”は驚いた様子で”おれ”を見詰める。過去の記憶でしかない自分は拒絶されると思っていたからだろう。
「……君もだよ、
すぐ後ろにはもう一つの幻影が立っていた。母さんに捨てられ悪魔となり、裏社会で猛威を振るった半グレの”俺”。彼は腕組した姿で傲岸不遜に鼻を鳴らす。
『フンッ、良いのか? ただの星野マリアとして生きる為には、俺とコイツは邪魔になると思うが?』
「これは邪魔とか以前の問題。”僕”と”俺”がいたから、”おれ”は”おれ”として生まれてこれたんだ。”おれ”にとって二人は欠けてはいけない大事な一部分なんだよ」
前世の記憶がなければ今の”おれ”は誕生せず、全くの別人格になっていただろう。もしかしたら、それが本来の星野マリアだったかもしれない。
でもそれは”たられば”の話。現実における
切り離す事なんて出来ないし、やりたくない。
『???』
『……おい。コイツ、何言ってるのかさっぱりって顔してやがるぞ?』
「ま、まぁ要するに、”おれ”は二人を受け入れるから一緒に生きていこうって話だよ?」
首を傾げる”僕”に分かりやすく説明すると、”僕”から寂しそうな感情が抜けていくのを感じた。
『……良いの?』
「うん。一緒に母さんたちと楽しく過ごそう?」
”僕”の目尻から涙が溢れ、頬を伝う。
『……母さんに捨てられて笑った時、どうして泣いちゃったのか全然分からなかったけど』
そのままにっこりと、”おれ”に笑い掛けた。
『嬉しくても泣く事はあるんだね。やっと分かったよ』
「……そうだね。おれも母さんに”愛してる”って言われた時、同じように泣きながら喜んだから。その気持ち、よく分かる」
”おれ”は嬉し涙を流す”僕”の頭を撫で、ラストパートに入った母さんたちの姿を指差す。
「ほら、もうすぐ終わっちゃうよ! 一緒に母さんを応援しよう! ”俺”も、こっちこっち!」
『うん!』
『――まぁ良いだろう。母さんを狙う輩が未だ健在みたいだしな。お前だけに任せるのはハッキリ言って不安だと思ってたところだ。手を貸してやろうじゃねえか』
「素直じゃないなぁ。母さんともっと一緒にいたいって正直に言えば良いのに。”おいてかないで”って泣いてたのは何処の誰だったかな?」
『黙れ、肉にするぞ?』
「ハイハイ」
おれたちは観客席の縁まで行き、身を乗り上げるようにして眼下の母さんへエールを送る。
「『母さん! 頑張れー!!』」
『……頑張れ』
応援の言葉は湧き立つ観客や興奮状態のお兄ちゃんたちによって虚しくも消えていき、母さんのところまでは届かない。
「あ」
にも関わらず……母さんは此方に笑い掛け、ウィンクと投げキッスを返してくれた。
「……ねぇ、見た?」
『うん、見たよ!』
『フンッ、悪くねえな』
おれたちが笑ったからだ……
お母さん、笑ってくれた!!
母さんから爆レスを貰った
この時、既に”僕”と”俺”は”おれ”と完全に一つになっていた。
「「「うりゃホイッ! うりゃホイッ! うりゃホイッ! うりゃホイッ!!」」」
おれはお兄ちゃんたちと共にピョンピョン飛び跳ねながら、最後の最後までサイリウムを振り続ける。
「「「フッ、フッ、フーーーー!!!」」」
全ての曲を歌いきったB小町を盛大な拍手が包む。
『『『『『『『ありがとうございましたーーー!!!』』』』』』』
母さんたちのお礼の言葉が更なる歓声を生み出す。
ライブは……大成功だった。
「す、すごかったねぇママ……」
「あぁ、今までで最も輝いてたよ」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
お兄ちゃんたちが感想を言い合う中、おれは体を動かし過ぎた反動で疲労困憊。縁に体重を預ける。
「マリア、だ、大丈夫……?」
「へ、平気だよお姉ちゃん。ちょっと疲れただけ……」
「中々のヲタ芸だったぞ? キレっぷりも十分過ぎる」
「ありがと、お兄ちゃん……」
でも気分は最高の一言だった。ほんっっっっっとうに楽しかったー!!
「お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ん?」
「なぁに、マリア?」
「推すって最高だね!!」
おれの満面の笑顔に、微笑ましそうに頷くお兄ちゃん達だった。
『――さて、これにてお終い!……と言うところですが!』
『最後にもう一つだけ、みんなに付き合って貰いたい事がありまーす!』
しかし喜ぶのはまだ早い。おれたち兄弟の元へ、最高のサプライズが訪れたのだ。
ちょっと分かりにくいですが、星野マリアの中で融合しかけていた人格が一度分裂して会話し、今度は完全に融合した、という話になります。