【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
『私たちB小町を結成当初から支えて下さった、苺プロの社長と奥さん。今日はお二人のお子さんの三つ子ちゃんの誕生日なんです!』
『そこで今日はその子たちにお花を贈りたいと思います!』
『どうか皆さんも、3人を祝福してあげて下さーい!』
「「「……」」」
「3人とも、行きましょうか」
呆然と立ち尽くすおれ等にミヤコの穏やかな微笑が降り注ぐ。
彼女の後ろを付いてステージ脇に向かうと、これまたとんでもない連中が待っていた。
「ハッピーバースデー、チルドレン! 今日で7歳か! 学校はエンジョイしてるかい?」
「お誕生日おめでとう。さぁ、こっちだ。みんな君たちを待っている」
獅子王組のエース、井上月麦と来栖三成がノリノリな様子でおれ等を祝福する。特に井上は入学したての大学生みたいにテンションが高い。武闘派極道でも更に上澄みの彼等だが、普段は面白くて気さくな好青年といった感じである。
「俺が案内します! 此方へどうぞ!」
おれ等は阿蒜という中堅極道に導かれ、広大なステージの上に立った。
――Happy Birthday to you~♪ Happy Birthday to you~♪
瞳に映るはB小町と共に祝福の歌を送る観客たち。そして花束を抱えた母さんたちの姿だった。
用意されたのは薔薇やサルビア、ナデシコ……どれも”愛”の花言葉を持った花ばかりである。
――Happy Birthday Dear 三つ子ちゃ~ん♪ Happy Birthday to you~♪
歌い終わった直後、天上に仕掛けられた大量の紙の花が雪のように舞い降り、同時におれ等の前のスクリーンに大きな文字が浮かび上がった。
――アクアくん・ルビーちゃん・マリアくん HAPPY BIRTHDAY‼
その風景に、おれ等は圧倒された。
「……」
「わぁ~!」
「みんな……」
直後、アクアの肩に大人の手が乗る。
「斉藤社長」
「ほら、いくぞお前等?」
表向きおれ等の親と認知されている斉藤やミヤコと共にB小町の前まで来る。母さん以外にも2人のメンバーが花束を携え、お兄ちゃんとお姉ちゃんの前に屈んで差し出す。
「7歳の誕生日、おめでとう!」
「これは私たちからのプレゼント、受け取って頂戴」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう!」
間を置かず、今度は母さんがおれの前に花束を持ってくる。
「マリア。はい、どうぞ?」
「あ、ありがとう……」
おれは戸惑いながらも母さんから花束を受け取った。
「アクア、ルビー、マリア」
その時、母さんがおれ等だけに聞こえるように小声で伝えてきた。
愛情いっぱいの温かい言葉を。慈母の如く優しい笑顔と合わせて。
「――生まれてきてくれて、ありがとう」
目尻に涙が溜まり、頬を川のように伝う。思わず大声で泣きたくなるのを堪える。
望まれない子だったおれにとって、その言葉は何よりも心に響いた。
「マリア」
「えへへ~、良かったね?」
両サイドから温かい感触と良い匂いがする。お兄ちゃんとお姉ちゃんが花束を持ったまま、おれに寄り添って笑いかけてくれた。
「――うん。ありがとう」
おれは花束を抱き締め、涙を流しながら笑った。
ライブは無事終了し、おれたち星野家は社長夫妻と共に車に乗って帰路へ着く。帰宅後は一度解散したB小町も再度集まり、おれ等の誕生パーティーを盛大に開く事になっている。
「Zzzz……」
「むにゃ……」
「みんな~、飴はどうかしら……ってあら?」
「しー、そっとしていてあげてミヤコ? みんな寝ちゃってるから」
「そう。お疲れ様、みんな。――マリアは飴舐める?」
「ありがとう、頂くよ」
後部座席に集まってお喋りしていたおれ等だったが、よっぽど疲れていたのだろう。おれ以外の家族3人は寝息を立ててグッスリだ。母さんとお姉ちゃんなんか涎を垂らて互いに体を預け合ってる。
おれは貰った飴を手の中に入れたまま、3人に笑みを向ける。隣に座る母さんにギュッと抱き着き、その温もりを分けて貰う。
「――母さん、今日は本当にありがとう。最高の誕生日だったよ」
母さんにお兄ちゃん、お姉ちゃん。B小町のメンバーに社長たち。紅林に獅子王組。そしてファンの人たち。
多くの人たちが、おれが生まれてきた事を祝ってくれた。これでもかという程、沢山の愛情をくれた。”貴方は此処にいて良い”、そう言ってくれているようで凄く嬉しかった。
「今日という日を、おれは絶対に忘れないから」
ミヤコから話を聞き、今回の件は元気の無かったおれの為に母さんが用意してくれたサプライズだと知った。愛される事を望んでいたおれにとって、こんなにも素敵なプレゼントがあっただろうか。
「……母さん。実は今日、決めた事があるんだ」
夢の中で過ごしている母さんにこれから言う台詞は聞こえない。でも起こして面と向かって話すのは少し恥ずかしいから、もっと後になってからしっかり伝えようと思う――自分が将来、何をしたいのかを。
「おれ、母さんたちの力になりたい」
抽象的だけど、要はプロデューサーやマネージャー、ボディーガード等を合わせたようなもの。縁の下の力持ちとしての役目を務めたい。
理由は勿論、愛する家族の夢を応援したいからだけど、他にもある。寧ろ此方が重要だったりする。
(今回の件で母さんは三回も狙われた。推定父親の黒幕……コイツをどうにかしないと)
母さんを悲しませるような真似をするつもりはないし、怒りはするが別に復讐したい訳でもない。
しかし何もせずにいれば再び襲撃を受け、今度こそ死人が出てしまう可能性が高かった。
かつて全てを奪われたおれは、明日に何の期待も持てなかった。何時死んでも構わないとさえ考えていた。
でも今は違う。家族との幸せな日々がこれからも続いていくと思うと、明日への期待で胸がいっぱいになる。こんなにも明日を”楽しみ”と思えるようになったんだ。
その未来を……誰であろうと奪わせはしない。
(その為には今の非力なままじゃダメだ。まずはトコトン体を鍛えよう。単純に強くなるだけでも選択肢は山のように増える。……あと黒幕は芸能界にいるってお兄ちゃんは言ってた。もしそうなら敵に近付く為にも芸能面の知識と技術は必須になる)
前世から芸能界と関わりはあったものの、専門的な知識はプロと比べれば無いに等しい。幸いその道のプロは斉藤や五反田を始め近くにいるし、専門学校にも通って必要なものを学んでいくつもりだ。得た知識と技術は、母さんたちが高みへ昇るのをサポートするのにもきっと役立つだろう。
「3人とも。おれ、もう一度強くなるから。絶対にみんなを守ってみせるから」
家族と一緒に
何事にも何者にも、決して折る事は敵わない。
「大好きだよ」
ずっと7歳で止まっていたおれの時間――それが7歳を迎えた今日、再び動き出した。
眠る家族へ決意を伝えた俺は、窓の外を睨み付けるように眺める。母さんに手を出しておきながら、のうのうと生きてる
「待ってるが良い、推定父親の黒幕め。――思い知らせてやる」
お前が怒らせたのは、かつて関東裏社会を震撼させた悪魔。その生まれ変わりだという事を。
「この城ヶ崎を、そして星野マリアを………舐めるなよ?」
第4章『ドームライブ』、了。
可能なら番外編を投稿し、その後に最終章へ入ります。