【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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原作は分かりませんが、本作の年代は本編(幼少期)=2020年代半ば、それ以降(高校生編)=2030年代半ばを想定しています。


番外編⑥-2

俺の名前は紅林二郎。

 

「今日からウチで警備員として働く紅林さんだ」

「獅子王セキュリティから派遣されてきました。紅林二郎と申します。好きな漫画のキャラクターはダリオ・ブランドーです。皆さん、宜しくお願いします」

 

警備会社『獅子王セキュリティ』から芸能事務所『苺プロダクション』へ派遣された、元ヤンのフリーターだ。

 

今日は初出勤という事で社長室にて自己紹介。社長夫妻や事務員数名、そして事務所の看板役でもあるアイドル『B小町』から拍手を受け取る。

 

「……そのキャラ、息子に暴力振るう最低親父じゃん」

 

因みに自己紹介で好きなキャラを言う度に必ずツッコミが入る俺。今回の職場ではB小町のニノという女の子からだ。

 

「紅林さんには警備以外にも荷物運搬の仕事もやって貰うつもりだ」

「力仕事が必要でしたら、遠慮なく言って下さい! 軽自動車までなら余裕でいけますので!」

 

ドッと笑いに包まれる空間。別に冗談を言ったつもりはないのだが……。

 

挨拶は恙なく終了。解散後はそのニノさんの案内を受けて事務所を見て回る事に。

 

「この廊下の突き当りが会議室。で、こっちが応接室になります。男子トイレは2階にあるので、そちらを利用して下さい」

「お忙しい中、案内本当にありがとうございます。ニノさん」

「いえ、これも仕事ですから」

 

ただの一警備員でしかない自分が人気アイドルに案内して貰えるなど、非常に貴重な体験だろう。

 

「――あ、マリアくん」

 

その時、前方の通路から歩いてくる一人の小さな子供。その子は俺が1週間前にドームで出会った少年だった。

少年も此方に気付くと、タタタと軽い足取りで駆け寄ってくる。

 

「ニノさん、そっちの人は?」

「今日から警備員として働く紅林さんだよ。――紅林さん、この子は社長の息子のマリアくんです」

「おう、マリアくんって言うのか。久しぶりじゃないか、元気にしてたか?」

「うん! おじさんも元気そうで何よりだよ!」

「……お知り合いだったんですか?」

「えぇ、ドームライブで警備員をやってた時に偶然出会ったんです。アイさんの母親に襲われてたところを助けに入って……」

「……はい、社長から話は聞いてます。アイを酷い目に遭わせた人間が、お金目的で彼女の所へ行こうとしてたと。それを止めたのがドームの警備員とは聞かされてましたが、まさか紅林さんだったなんて」

 

ニノさんが周囲をキョロキョロさせながら、俺とマリアくんだけに聞こえるよう釘を指す。

 

「社長から既に言われてるかもしれませんが、アイの前で母親について喋らないようお願いします。彼女が知れば辛い思いをするだけですから」

「はい、勿論です」

 

あの外道女の襲撃を知る人間は俺に社長夫妻、アイさん以外のB小町、そして当時居合わせた子供たち――アクアくん、ルビーちゃん、マリアくんのみ。アイさんの心を守る為、奴の存在はこの面子だけの秘密となっている。

 

「ねぇ、ニノさん。事務所の案内ってもう終わったの?」

「そうね……大体は終わったかな」

「じゃあちょっと紅林さんを借りてって良いかな? 色々とお話ししたい事があるんだ」

「構わないけど、何の話をするつもりなの?」

「えへへ、なーいしょっ!」

「え~? 気になるな~」

 

ニノさんは俺の身柄をマリアくんに譲り、笑顔で手を振って仕事に戻っていく。

彼女は仲間たちと共に今日も沢山の番組に出演する予定だ。大の男もヘトヘトになりそうな仕事量を涼しい顔でこなしていくのだから、本当に凄い人たちだ。尊敬しかない。

 

 

 

 

 

「おじさん、こっちこっちー!」

「おっとっと。分かったからマリアくん、もう少し優しく引っ張ってくれ」

 

俺はマリアくんに手を引かれ、3階の物置部屋へ向かう。其処は人っ子一人おらず、荷物も大して置かれてない静かで殺風景な空間だった。

 

「こんな所へ連れて来てどうすんだ? かくれんぼでもしたいのか?」

 

時間があれば付き合ってあげたいが、生憎今は仕事中だ。あまり長い事一緒にいてはあげられない。出来れば数分で済むような遊びにしようと提案しかけるが……

 

「――本当に久しぶりだね」

 

瞬間、マリアくんの雰囲気が少し変わった。俺は違和感を抱きつつも返答する。

 

「ん? そうだな。約1週間ぶりと言ったところか。まさかB小町が所属する芸プロの警備を任せられるとは思わなかったが……」

「驚いたよ。最後に会った時より遥かに強い闘気を感じる。あの後も相当量の修羅場をくぐり抜けてきたんでしょ?」

 

……違和感が増大する。おかしい、この子とはドームで出会ったのが最初の筈だ。なのにそれとは全く関係のない事を話しているようにしか思えない。

 

「えっとマリアくん……? 一体、何の話だい……?」

「相変わらず、恐ろしいまでに優秀で安心したよ。――ただの肉にするには惜しい人材だ(・・・・・・・・・・・・・・・)

「――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――惜しい…ここで殺すのは惜しい人材だ。ただの肉にするには惜しいぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かで聞いた台詞と似たような言葉。それが耳の穴から入って鼓膜を揺らし、脳に情報を届ける。

直後、まるで全身の血液が沸騰するかのような感覚を抱いた。

 

……有り得ない、そんな馬鹿な話があってたまるか!

 

「――テメエ!! 何者だゴラ゛ァ゛!!!」

 

紅い闘気を纏う。髪が逆立ち電撃が走る。

俺は無意識に身構え、眼前の7歳の幼子に対して声を荒げた。

 

しかし、その強烈な敵意に対して少年が取った行動は――。

 

「なっ!?」

 

見事な土下座だった。

 

「紅林二郎!! 一生のお願いだ……!! おれを鍛えて下さい!!!」

 

そして凄まじく必死な様子で、俺にそう懇願してきたのだ。

 

「え、ちょ、待て、何、え……!!?」

 

当然、こんな状況は想定外だ。俺は完全に動揺し、どうすれば良いか分からないまま床に頭を擦り付けんばかりのマリアくんを見下ろす事しか出来なかった。

 

「何、今の大声……!?」

 

其処へ更に状況をややこしくする事態が俺を襲う。騒ぎを耳にしたミヤコさんが慌てた様子で駆け付けてきたのだ。

彼女の目に映ったのは、大の大人が子供に土下座させてる異様な光景。

 

「……ちょっと、これはどういう事かしら?」

「いや、これは、その……」

 

ミヤコさんの目付きは氷のように冷たい。完全に俺を加害者として見てる目だった。

どう説明しようか悩んでいると、マリアくんがガバッと勢いよく頭を上げて誤魔化し始める。その顔は冷や汗ダラダラで、俺以上に動揺していた。

 

「待って待って待ってミヤコ……! こ、これはヒーロー番組のワンシーンを再現してただけなの……! 単なる遊びだよ、遊び!」

「遊び……?」

「うん、だから本気にしないで! 紅林さんは何も悪い事してないよ……!!」

 

再びミヤコさんが此方を見る。俺がコクコクと頷くと、漸く彼女は警戒を解いてくれた。

 

「……全く人騒がせね。紅林さんは仕事中なんだから、程々のところで解放してあげなさいよ?」

「うん、分かってる。大声出したりしてごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミヤコさんが去った後、俺とマリアくんは深く溜息を吐く。

 

「――取り敢えず、さっきの件について詳しく聞かせてくれないか?」

「うん、信じ難い話かもしれないけど……」

 

一先ず落ち着いた俺はマリアくんの話に耳を傾ける。

 

……一言で表すなら、とんでもなく衝撃的だった。




今日は急に忙しくなったので一旦ここで切ります。

次回で番外編⑥は終わる予定です。
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