【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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アクルビマリの関係

・最初
アクルビ→マリア:自分たちより大人びてるけど可愛い弟
アクルビ←マリア:ドルヲタの馬鹿共め。俺の第2の人生の邪魔だけはすんなよ?

・最新話
アクルビ→マリア:可愛い弟で大切な家族、守らなきゃ&また会えて良かった
アクルビ←マリア:お兄ちゃん、お姉ちゃん、大好き♥


これがツンデレか……


番外編⑥-3

「――本当に城ヶ崎なのか、お前?」

「うん」

 

星野マリアという少年は、7年前に戦ったあの羅威刃のボス『城ヶ崎賢志』の生まれ変わりだった。

信じ難い話だったが、幹部の名前やら組織の特徴など、奴でなければ知り得ない情報を伝えられて何とか呑み込む。

 

「何と言うか、お前……」

 

しかし、それでも未だに半信半疑だ。

 

「随分変わっちまったな? 雰囲気とか口調とかよ」

 

ほぼ別人にしか見えなかった。身体だけでなく中身まで子供そのものだ。正体を明かした後もコイツは7歳の少年のまま俺と接している。まるで今の自分の姿が素だと言わんばかりに。

 

「これはおれの推測なんだけど、前世の人格と現世の人格が完全に融合したんじゃないかな? ただ肉体的には星野マリアだから、喋り方や振る舞いは自然とそっちに引っ張られるんだと思う。今のおれは、星野マリアとしての自我が城ヶ崎賢志の記憶と知識を持ってるのと同じ状態だよ」

「?????」

「……要するに肉体が若返れば心も若返るって事」

 

感情が昂るとかつての自我に戻るけどねと、自身の顔を指差しながら苦笑する城ヶ崎。将来有望な事間違いなしな容姿の恩恵で、苦笑という動作すら非常に様になっている。

 

だがすぐに申し訳なさそうな表情に変わり、俯いてボソボソと呟く。

 

「……ごめんなさい。あの時はお前に酷い事しちゃった」

 

最初に会った頃、不意打ちで俺の腹を刺した事を城ヶ崎は謝罪する。

 

「今更、虫の良い話なのは分かってる。……それでもおれは、どうしても強くならなくちゃいけないんだ。ほんの少し、気が向いた時でも構わない。どうかおれに稽古を付けてくれないだろうか?」

 

俺と城ヶ崎の関係は、ファーストコンタクトから最後まで最悪の一言だった。俺だけでなく、久我たちや佐竹さんにまで手を出しておきながら何を都合の良い事を……懇願する城ヶ崎に対して、そう思うところは少なからずある。

 

しかし、それ以上に気になったのは。

 

「何故だ? 俺とお前は対立していた筈だ。どうして敵だった俺に教えを請おうとしてまで強くなりたがってるんだ? 何をそこまで必死になっている?」

 

何が何でも強くなりたいという意思を、俺は奴の瞳から感じ取った。奴自身の考えを、目的を、俺は知りたい。

 

すると城ヶ崎は僅かに躊躇った後、俺に至近まで近付いた。

 

「……お前には誠意を示すべきだと思う。これから話す事は、関係者以外には他言無用でお願いできるかな?」

「あぁ、教えてくれ。お前がその考えに至った理由をな」

 

 

 

 

 

城ヶ崎から齎された極秘情報に俺は驚きっぱなしだった。

 

「……お前が、あのアイさんの息子だと? じゃあドームでお前と一緒にいた男の子と女の子は――」

「お兄ちゃんとお姉ちゃんだよ。おれは三つ子の末の弟として生を受けたんだ」

 

アイドル”アイ”には16歳で産んだ隠し子が存在し、その一人が城ヶ崎――星野マリアだという事。3年前にアイさんを襲ったストーカー野郎と1週間前に現れた外道女、コイツ等を嗾けた黒幕が存在する事。そしてその黒幕の正体が……三つ子の父親である可能性が高い事。

 

「今のおれは非力な子供でしかない。戦闘に関する知識や知恵は健在だけど、純粋に強くなる為には鍛え直す必要がある。でも、母さんは超が付く有名人で、自慢じゃないけど凄く美人だ。チンピラ程度なら兎も角、武闘派のアウトローに狙われる可能性も低くない。敵は父親だけとは限らない」

 

確かに、アイさんは俺から見ても絶世の美女という表現に相応しい容姿をしている。女性を狙う下衆を散々殴り飛ばしてきた俺からすれば、彼女も十二分に襲われるリスクがあると考えてしまう。

下衆の中には銃弾を余裕で交わす者、高度な戦闘術を持ち合わせる者もいた。そんな輩が現れたら、多少鍛えた程度の人間では敵わないだろう。

 

「紅林を社長に推薦したのはおれなんだ。お前ほどの猛者なら母さんの守りがより強固になると考えたから」

「……だがプライベートにまで付いていく事は出来ない。だからお前自身も強くなってアイさんを守ろうと考えた、そんなところか?」

「うん、そういう事」

 

成程。数々の強者と渡り合った俺に鍛えられれば、自らも強力なボディガードとしてアイさんの側にいられるからか。

 

「――おれ、今がすっごく楽しいんだ」

 

城ヶ崎の顔が綻ぶ。外見相応に、無垢な子供の笑みを浮かべる。

 

「母さんが、お兄ちゃんが、お姉ちゃんが――家族が出来て、一緒に過ごす日々はとても充実していて、幸せな気持ちでいっぱいになる。明日も同じように続くんだって思うと、楽しみで仕方がないんだよ」

 

裏社会を震撼させた最恐の半グレは何処にも見当たらない。俺の目の前で家族を語る少年は、平凡な幸せを享受する普通の子供だった。

 

「おれはそんな幸せな日常を、明日を……家族を、守りたい」

 

彼の二つの瞳に刻まれた星のような模様。それらが強い信念の光を纏って輝く。

 

「だからお願いします。おれを強くして下さい!」

 

その信念を実現する為に、敵であった筈の俺に躊躇なく頭を下げ、教えを乞う。最早彼の中に残っているであろう前世のプライドなぞ、愛する家族に比べれば無いも同然だった。

 

「……城ヶ崎」

 

お前、本当に改心したんだな。気が付けば俺は、穏やかな笑みを溢していた。

 

確信した。城ヶ崎はもう、誰も傷付けない、誰も苦しめない。これからは大事なものを守る為に、持ちうる力を駆使していくのだろう。悪魔とまで称された男が、ここまで真っ直ぐな目を向けてくるとは思わなかった。

 

でも……奴には取るべき最後のケジメが残っている。俺は今一度表情を引き締め直した。

 

「――佐竹さんを刺した事を、彼の墓前でしっかり謝罪しろ。それが条件だ」

 

京極組との抗争の件は別に良い。筋者同士の殺し合いに理不尽は付きものだ。久我たちもその覚悟の上で裏世界を生きている。表で生きる俺がどうこう言うのはお門違いだ。

だが佐竹さんは完全に堅気の人間だ。犯罪者を通報するという一市民として当然の対応をした彼を逆恨みで刺すなど、許される事ではない。

 

「うん、おれは逆恨みで佐竹博文を殺した。その償いはちゃんとしなくちゃ」

 

それを聞いた城ヶ崎は、心から反省している様子で頷いた。

しかし、彼は勘違いしている。ニュースを見てなかったのだろうか。

 

「いや、佐竹さんはあの後助かったぞ?」

「え? でも今”墓前で”って……」

「暫くして彼は恋人と浮気相手の男を殺してしまってな、それで捕まって死刑になったんだ」

「そう、だったんだ……」

 

あれほど善良な人間だった佐竹さんが殺人をはたらいた事もそうだが、それ以上に殺しても死なないような人があっさり死刑で亡くなった事には驚いた。罪を犯した所為で佐竹さんを死から守っていた何かが離れてしまったのだろうか。

 

「取り敢えず、今度墓参りに行く予定だから。その時は一緒に来て貰うぞ?」

「分かった。周りには上手い事言っておくよ」

 

城ヶ崎に佐竹さんの墓参りの予定を伝えた俺は、もう一つ厳守させるべき約束事を提示する。

 

「――そして俺からの師事を受けるにあたって、これが一番重要なんだが」

「うん、何?」

「俺の力や技術は、扱い次第では容易く相手の命を屠ってしまう。だからこそ力を上手く制御しなくてはならない。そしてお前はもう裏の人間じゃねえし、この先も二度となっちゃいけねえ」

 

俺は伊集院さんを真似て意図的に全身から圧を滲ませ、眼前の幼き少年に鋭い眼光を飛ばす。更に腹へ力を込めながらゆっくりと、しかし力強い声を部屋の中に響かせた。

 

「絶対に人を殺すな――例え相手がどれ程の外道だったとしてもだ。良いな?」

「分かった、約束する」

 

相対する城ヶ崎は一切臆する事なく、真剣そうな表情で即答した。

 

「母さんに叱られたんだ。人を殺すのはダメだって。それでおれが不幸になったら母さんは悲しいと言ってたよ」

「あぁ、真っ当な親は子供の幸せを願うものだ。幸せにしたくて産んだんだからな」

「うん――だからおれは、もう誰も殺さない。母さんには、いつも笑っていて欲しいから」

 

城ヶ崎は笑った。7歳の幼子らしく、無邪気で楽しそうに。しかし目だけは決意が本物である事を示すかの如く俺をしっかりと捉えていて。

 

その時、倉庫のドアがガチャリと開いた。

 

「あ、マリア! 此処にいたんだね、やっと見つけたよー」

「母さ……アイ!」

 

現れたのはB小町のセンターにしてトップアイドルのアイさんだった。城ヶ崎が目を輝かせてアイさんへ思いっきり抱き着くと、彼女もその小さな体を優しく包み込む。

 

「あれ? 紅林さんまで、どうして此処に?」

「紅林さんとヒーローごっこして遊んでたんだ! ○面ライダーの!」

「自分が主人公役で、マリアくんが敵キャラの役っす」

「そうだったんだ。マリア好きだもんね、仮○ライ○ー。でも、紅林さんはお仕事中だから、あまり迷惑を掛けちゃだめだよ?」

「うん、分かってる。――ところで、もうそろそろスタジオに行く時間?」

「そうだよ。アクアとルビーも車で待ってるから、一緒に行こう?」

「やった! 行く行く!」

 

俺がいる前だからか、城ヶ崎はアイさんを名前で呼んで接している。それでも二人の楽し気な遣り取りは、何処にでもいそうな仲慎ましい親子そのものだった。

 

「それじゃあ私たちは行きます。紅林さん、この子と遊んで頂いてありがとうございました。お仕事頑張って下さい」

「えぇ、行ってらっしゃいませ」

「またねー、紅林さん!」

「おう。また後でな、マリアくん」

 

城ヶ崎はアイさんと手を繋ぎ、部屋を後にする。

 

(本当に変わっちまったな。城ヶ崎)

 

アイさんと心底楽しそうに笑い合う姿を見て、俺は奴に対する敵意が完全に薄れていくのを感じた。

 

(――アイさん。城ヶ崎が変われたのは、貴女のお陰です。本当にありがとうございました)

 

俺はアイさんの背中へ向けて、無言で頭を下げるのだった。

 




マリア「あ、お兄ちゃんとお姉ちゃんもついでに鍛えてくれる? 俳優とアイドルも体力が必要だからね」

紅林「あぁ、折角だしチンピラ2~3人は撃退できるくらいに強くしてやるよ」

アクルビ「「!!!?」」












○次回予告

「私は……あの子たちの所へ帰るんだ……!!」

「フン。こんな小娘が、あの男のお気に入りとはな」

「噂に違わぬ絶世の美女!! サイン下さい!!」

「さぁ、急いで女王様。王子がアンタの帰りを待ってる」

「どうして私を助けてくれるの?」

「推しの幸せを願うのは、ファンとして当然の事っしょ?」

「城ヶ崎さん、貴方はどうか僕みたいならないで下さいね」

「女ぁ!! 俺はお前を認めるつもりはねぇ!!」

「あの人の一番は、この俺だぁああああああああ!!!」





『Rising Queen』

Coming Soon――
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