【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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本編最終章『帰宅』、開幕。

星野マリア(15歳) イメージCV:花守ゆみり


28話

――8年後。

 

 

 

 

 

「ま、マリアライト……さん?」

「はい、僕の名前です」

「……偽名?」

「本名です」

 

おれの名前は星野マリア。

キラキラネームへツッコミを入れてくる面接官たちに淡々と答える、前世の記憶を持つ中学3年生だ。

 

この8年、色濃ゆい日々の連続だった。母さんがアイドルを引退した後も女優として大活躍したり、お兄ちゃんやお姉ちゃんも子役やモデルとして本格的に芸能界と関わり始めたり。紅林が素手で軽自動車を持ち上げて、それを見た苺プロのみんなが宇宙猫と化したり。

 

そうそう。死刑になった筈の佐竹博文が何故か生きていて、街中でバッタリと再会したんだ。何でも愛する女性を守る為に態と死刑囚になったんだとか。助かったカラクリとか気になるところ山積みだが、とんでもない覚悟である。ま、おれも母さんたちが似たような状況になれば彼と同じ事するけどね?

 

あ、刺した件についてはちゃんと謝罪したよ? 勿論、正体も明かした上で。物凄いリアクションをされたけど、あっさり許してくれた。何なら『どうかお幸せに』と応援までしてくれた……加害者のおれが言うのも何だけどさ、そんな簡単に許して良いの? 流石にお人好しが過ぎるぞ?

 

「あ、マリアー!」

「そっちは面接大丈夫だったか?」

 

面接を終えて廊下を歩いていると、同じく面接を済ませたお兄ちゃんとお姉ちゃんに合流する。

お姉ちゃんはお兄ちゃんとくっ付きながら歩き、周囲の女子生徒を牽制していた。お兄ちゃんはイケメン過ぎるし、小中学と滅茶苦茶モテたから心配なんだろう。

対するお兄ちゃんも……ほんのり赤らめた頬を搔いている。二人とも恋人としての仲は変わらず良好そうで何よりだ。家族としてずっと側で見てきたから知ってるけど。

 

「一応、ね。お兄ちゃんとお姉ちゃんは?」

 

おれたちは現在、この陽東高校へ入学するため面接を受けに来ている。入るのは3兄弟揃って芸能科。芸能人やその卵たちが仕事と勉学を両立出来るよう、色々と便宜を図ってくれるところだ。

 

「こっちも問題なし。弾かれるとしたら名前の所為だろうな」

「あー、そっちもなんだ。おれも同じ件で質問攻めされたよ」

「あはは、おにいちゃんもマリアも凄い名前だもんね! 本名『アクアマリン』と『マリアライト』だし、そりゃ吃驚だよ!」

「笑い過ぎだぞルビー……」

「お姉ちゃんは良いなぁ。同じキラキラネームでもダメージ少な目だし……」

 

名前を弄られて若干不機嫌になるおれとお兄ちゃん。母さんから貰ったこの名前には誇りを持っているので、出来れば揶揄うのは止めて欲しい。別にお姉ちゃんも馬鹿にしてる訳じゃないのは分かってるから、そこまで強く言うつもりはないけど。

 

でも、これを誰かに聞かれて弄ってくる人間が増えるのは嫌なんだよなぁ……

 

「――アクアマリン? アクア……?」

 

そうそう彼女みたいに……………ん?

 

「ちょっとアンタ! まさかアクアじゃないでしょうね!?」

「え、誰? ……おにいちゃん知り合い?」

「いや知らんけど……ってかルビー、そんなに怖い目すんなよ」

「だって……」

「何白昼堂々いちゃついてんのよ!!?」

 

半ば二人だけの世界に入りかけてるお兄ちゃんとお姉ちゃんに、擦れ違いざまに立ち止まった人物が声を荒げる。

 

陽東高校の制服を着用し、ベレー帽を被った赤いボブカットの美少女。高校生なのは間違いなさそうだが、童顔で小動物の如く可愛らしく、おれ等よりも年下に見える。

背丈は……良かった、おれと同じかな? 取り敢えずギリ抜かれてない。ふぅ……

 

「……アンタはアンタで何故安堵してんの?」

 

赤い少女が怪訝な顔でおれを見る。

だっておれ、身長150㎝しかないんだよ? これでも一応男なのに、成長期なのに。お兄ちゃんは仕方ないとしても、お姉ちゃんの身長を抜く事は一度も叶わなかった。何なら母さんにすら微妙に届いていない……毎日牛乳飲んでるのに、何故?

 

「ってそうじゃない。星野アクアよね? アンタもこの高校に通うつもりなの?」

「本当に誰だっけ?」

「さぁ?」

 

お兄ちゃんとお姉ちゃんは分からない様子。あれから13年くらい経ってるのだ。忘れるのも無理はない。

 

「久しぶりだね。”銃創を舐める天才子役”、有馬かなさん?」

「あ、そうか思い出した! ”重曹を舐める天才子役”!」

「”9秒で泣ける天才子役”だ張り倒すぞコラ!! そしてアンタ、また物騒な事を考えてるでしょ!?」

「ヤクザの抗争に巻き込まれて負傷する子供の役をやった事は……?」

「ある訳ないでしょーが! 何そのピンポイントな役!?」

 

あれ? 1秒短くなってる? それだけ演技の質が向上したって事か。

 

「マリアは覚えてたの、この子の事?」

「優秀な芸能人を探す為にドラマとか調べてたら、『今日あま』に出てる彼女を見付けたんだ」

 

正式タイトル『今日は甘口で』。同名の名作少女漫画をドラマ化したやつで、有馬はその主演を務めてる女優だ。

 

「げっ、アンタ、あれを見たの……?」

 

有馬は明らかに動揺している。まるで見られたくないものを見られたって感じだ。無理もないか、あんな酷い作りのドラマじゃ。

 

「大丈夫だよ。有馬自身は良い役者だとおれは思ってるから……でもそれ以外の要素がね……」

「何々? あの『今日あま』のドラマに出てるの!? 凄いじゃん!」

「確かウチにも漫画全巻揃ってたな。結構面白かったけど、いつの間にかドラマ化までしてたのか」

 

そう、原作はとても面白いんだよ。原作()

 

「分かる!? はっきり言って酷いとかそんなレベルじゃないのよ! 私が原作者だったら責任者の顔をボコボコにしてやるところだわ!」

「わぉ、ロリ先輩野蛮〜! ダメだよ役者が暴力は?」

「ならアンタも件のドラマを見てみなさいよ! 言葉も失う出来の悪さだから! ……って誰がロリだ!?」

「そこまでヤバいなら何で出ようと決めたんだ? 止めとけば良かったじゃん」

「うぐ……だ、だって、久しぶりの大仕事だし。此処で辞退なんかしたら少ない仕事が余計減っちゃうかもだし……」

 

成程。偉そうな態度を取り続けた結果仕事が無くなっていったと。コミュ力を蔑ろにして現場に嫌われるような振る舞いを改めないから……。とはいえコレばかりは彼女の自業自得だ。自分で責任を取るしかない。

 

するとこの話を続けるのがキツくなったのか、有馬は話題の中心をおれに変えてきた。

 

「あ、そうだそうだ! まさかアンタがあの”天使王子”だったなんてね、星野マリア!」

「え゛? どうしてそれを……?」

「アンタ、そこそこ有名よ? 男女問わずの格好で読者を魅了する珍しいモデルがいるって。ウチの事務所でも話題になってたわ」

「……やめて。結構恥ずかしいんだよアレ」

 

芸能関係の知識を得るにあたって、机上で勉強するだけでは学べない事も多々ある。何事も経験、という訳で子役やファッションモデルの仕事もやってきた。

しかし、そのモデルの仕事でおれは女物の服をよく着せられている。男物の服も着るには着るけど、女物の方が多い。しかも女子姿の写真には男子である事を殊更強調した説明文が記載された上で出版されている。あのカメラマン何のつもりだと思ってたら、最初に出した写真集が大ブレイク。半年で20万部も売れる人気作品となった。後続の作品も結構良い売れ行きである。

 

男女どちらの服装も着こなし、途轍もなく可愛らしいビジュアルを持つ美少年、”天使王子”。前世で”悪魔王子”と呼ばれたおれは、今世では真逆の異名を付けられてしまった。

 

「照れない照れない。良いじゃんマリア、折角人気者になれたんだし。マリアの可愛さを世間がしっかり評価してくれたんだから、寧ろもっと誇るべきよ」

「ま、”男の娘”と聞かれてるのを”男の子”と勘違いしてイエスしまくった結果だな。こうなったらイメージは簡単に覆せないぞ?」

「うぅ、おれは男の娘じゃないのに……」

 

そりゃあ美少女に間違えられそうな容姿してるけどさ。身体はちゃんと男子だし、性自認も男子なんだよ、おれ?

これから暫くは男の娘キャラとして弄られると思うと憂鬱しかない。全ては積極的におれに女子の格好をさせたがるカメラマンやスタッフたち、そして“男の娘”の概念がなかった自分自身の所為である。

 

「ここまで目立つつもりは無かったんだけどなあ……」

 

基本的にマネージャーやプロデューサーと言った、芸能人たちの縁の下の力持ちを目指していた。だが、想定外のブレイクによってモデルの道に進む事も決定してしまった。

だって母さんが喜んでくれたんだよ? 子供みたいにはしゃいでさ。そんな反応されたら嬉しくて続けたくなっちゃうじゃないか。……マザコンと言いたきゃ言え。おれは開き直る。

 

「まぁ、悪評でもない限り有名人になる事は芸能人として喜ぶべきよ。アンタはそれだけのモノを持ってたって意味なんだから」

「そうかな……?」

「そこの女の子の言う通り、もっと誇るべき事だわ。――改めて自己紹介するけど私は女優の『有馬かな』。アンタたちがこの高校に来るなら1つ上の先輩よ? 分からない事があったら何でも聞いて頂戴!」

 

そう言って手を差し伸べてくる有馬は、しかしお兄ちゃんばかり見ながらワクワクしてる様子だ。

元々おれも彼女とは仲良くしようと考えていたので、丁度良かった。苺プロを大きくする上で、異次元の戦力を少しでも集めたいから。

 

「ありがとう。今後とも宜しくね、銃創パイセン?」

「宜しくーロリ先輩?」

 

「蹴り飛ばすぞクソ姉弟!!」

 

「妹と弟がすまん……」

 

おれは兎も角、お姉ちゃんは女の勘ってヤツだろう。有馬がお兄ちゃんを意識してる事に気付いて牽制狙いでキツく当たってるっぽいな。

 

気持ちは分かるけど仲良くしよう? おれの見た手だと彼女はアイドルの素質も感じられるし。お姉ちゃんの仲間に相応しいと思うよ。




カラス少女。今まで不気味な存在だと思ってたのに最新話で一気にギャグキャラになってたw

本作世界でスカウトするならどうしよう……マリアが彼女の前でケースを開いて、瓜生印のメロンパン(+鶴城のお握り)を見せつつ「コレでお前を雇いたい。成果によっては倍以上出す」って言えば二つ返事でOKしてくれそう。
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