【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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本編最終話です。

最新話にてアイ母の実像が判明しました。経緯は違えど子を守る為に子を捨てたところは本作の城ヶ崎母と似てますね。そして(義理ですけど)父親がクズなところも……。
今後時間があればドーム編の内容を一部変更、追加していく予定です。無理矢理だけど実は自分を探さないよう完全に未練を断ち切らせる為の演技でしたーで纏めるしかない。


プロローグ

折角良い雰囲気だったのにさ……

 

「おい見ろよ、凄え美人ばかりじゃねえか!」

「なぁなぁ嬢ちゃん達ー、俺等と一緒に遊ばねえ? 近くに良い店知ってるんだよ?」

「僕もかなりの美形だねえ? 大丈夫、君も仲間外れにはしないよ? 君みたいな美少年好きのお兄さんも待ってるからさ?」

 

それをぶち壊す人型の何かが薄暗い公園から出ようとする俺たちを捉えた。そういや此処、日本最悪の治安で有名な黒焉街だったわ。最後の最後で面倒事に巻き込まれるとは。

 

「ほらほら! 止まってねえでさっさと来やがれってんだ! 痛い目見たくねえだろ!?」

「俺たち欲求不満なんだよ! 早くしねえと何するか分からねえぞ!?」

 

ぶっちゃけて言おう、邪魔すんな。あとノリがウザいわ頭世紀末モヒカンかよ。

 

「「「キモ」」」

 

呆然としている母さんを守るように立つ俺ら三兄弟、初っ端から半グレ共を罵倒した。これは条件反射みたいなもんだ、仕方がない。だって全員卑下た目で胸とか股とかに視線向けてくるんだぞ?

 

しかもコイツ等俺を女子と本気で勘違いしてるみてえだ。まさかケダモノに視姦される女の気分を体験する機会がくるとは……男なのに。半グレ時代の据わった肝で恐怖は無いが……うん、恐怖を抜いたらこの手の輩はマジでキショいだけだな。

 

「あぁ!?」

「このクソ餓鬼共が! 死にてえのか!?」

「俺たちゃ天下の『朴符大矢(ホープダイヤ)』だぞ!? 舐めてんじゃねーぞゴラ゛ッ゛!!?」

 

当然ながら、見下してた獲物に逆に見下された半グレ共が殺気立つ。数にして8体。対するこっちは戦えるのが3人。母さんは戦闘力ゼロなのでカウントしない。

 

後ろは頑丈なフェンス。前は半グレ。図らずとも退路を断たれた形となる。

 

「はぁ……追い込まれちまったか。迎撃して包囲網を突破するしかなさそうだな。……という訳だアクア、ルビー。お前らは母さんの側で守りに徹しろ。俺は前へ出させて貰う」

「分かった。くれぐれも無理だけはすんなよ、マリア」

「あぁ」

「それよりもマリアー。私の事はお姉ちゃんと呼んでよね?」

「えぇ……今の状態だと恥ずかし「お姉ちゃん」」

「……頼んだぞ、お姉ちゃん」

「オッケー☆」

 

側から見れば状況は絶望的。中学生(卒業済み)3人で倍以上の数の半グレに挑むなど、本来なら正気の沙汰では無い。だが俺達は一人として悲観していなかった。敵に武闘派は居らず、弱い者イジメしかしてこなかったような雑魚チンピラばかり。此方は堅気最強の紅林に鍛えられた面子。勝機は十分にある。

 

「マリア……」

「心配しないで母さん、無茶はしないよ。ちゃんと逃げる事を最優先で動くから」

 

勿論、油断は禁物だ。相手は殺しも躊躇しないアウトロー。武器を隠し持っている可能性が高い。さっさと無力化して、とっとと逃げるとしよう。

 

「……俺達とやり合おうってのかよ?」

「生意気な奴等だ、餓鬼だろうが容赦しねえぞ!?」

 

やはりか。俺が数歩前に出ると、連中の一部が苛立った様子でナイフを抜きやがった。

 

「ひ……」

 

それを見た母さんがトラウマを刺激され、短い悲鳴を…………て。

 

「――おいテメエ等、何出してやがる? 死にてえのか?」

 

人の母親怖がらせてんじゃねえよ。全員肉になりたいみてえだな?

 

「あ、が……」

「ぐ、う……」

(な、何なんだこの女の餓鬼!? 半端ねえ威圧感だ!)

 

全身から湧き出た殺戮オーラが半グレ共を萎縮させ、一時的に金縛り状態にする。

 

「マジふざけんなよ……」

 

今俺は最高にイラついていた。折角の休日に水を差され、母さんが辛い事を思い出させられ……何より――我欲を満たす為に大切な家族へ手を上げるゴミ共に。

 

「その身にたっぷり教えてやる」

 

守るべき者を得た人間は、悪魔より遥かに怖くて強いぞ?

 

「はーい皆さん、ちゅーもーく!」

 

「「「「「「「「?」」」」」」」」

 

すかさず俺がポッケから取り出した物に半グレ達が焦点を合わせた瞬間、

 

「光の世界へようこそ!」

 

俺の手が強烈な閃光に包まれた。

 

「「「「「「「「がっ!!?」」」」」」」」

 

改造された防犯ライトが放つ閃光弾並の光は、薄暗さに慣れていた連中の目にはあまりにも強烈過ぎた。全員一人残らず怯み、顔を腕で覆って狼狽える。これで奴等の視力は一時的にゼロとなった。

 

「ミスは命取りぃ!!」

 

無論、生まれた隙を見逃すような俺じゃない。

 

「いってらっしゃーい!!!」

 

「ごえ゛っ゛……!!?」

 

敵の一人に電光石火の如く肉薄し、全体重を乗せた腹蹴りを喰らわせる。紅林との修行で磨かれたパワーは半グレを“く”の字に曲げたまま飛ばし、

 

「サンドッ!!」

「ウィッチッ……!!」

 

更に1体を挟む形で巨木へ叩き付けた。巨木の幹にヒビが入り、半グレ2体は折り重なるように倒れる。どう見ても戦闘不能だ。

 

「な……!?」

「何だこの餓鬼!?」

「バケモンかよ……!?」

 

失敬な、俺は人間だぞ? 女子供のような弱え奴等を喰おうとするテメエ等の方がよっぽど化け物だよ。

 

「クソが、殺せ!」

「俺等に楯突いた事を後悔させてやらぁ!!」

 

「させる訳ねえだろ!!」

 

回復した連中がナイフを構えて飛び掛かる。俺は冷静に奴等の攻撃の軌道を読み、最小限の動きで全て躱す。

 

「フンッ!!」

 

「ぐぼあっ!!?」

 

ナイフを突き出して動きを一瞬留めた1体に、紅林直伝のワンインチパンチが炸裂。離れた場所で伸びてる2体と同様に意識を飛ばした。

 

「こうなりゃ死体でも構わねえ!」

「殺した後にたっぷり犯してやるよ……!!」

 

しかし6体全てを釘付けにするのは困難だったようで、2体の半グレが俺の攻撃範囲を突破、両サイドから母さんたちに急接近。まずはアクアとルビーにナイフや拳を繰り出そうとした。

 

だが……

 

「そんな物騒な物を向けるなよ?」

 

「え、早!?」

 

「汚い手でママに触るな」

 

「嘘、だろ……」

 

紅林に鍛えられたのは何も俺だけじゃない。並のチンピラよりずっと強くなったアクアとルビーにとって、今回襲撃してきた半グレ共の動きは呆れる程に遅かった。

 

「しゅっ!」

「もっとブスになりやがれッ!!!」

 

「ガハッ!!?」

「せいけいッ!!?」

 

1体はアクアに突き出したナイフを腕ごと掴まれ、大きく投げ飛ばされて地面に叩き付けられる。もう1体は渾身の打撃をルビーに左手であっさり止められ、即座に飛んできた右拳で顔面がひしゃげてしまう。

 

「アイ、無事か?」

「ママ、大丈夫? もう少しの辛抱だからね!」

「えと、うん。ありがとう?」

 

大の大人たちを一方的に無力化していく俺たちに、流石の母さんも終始困惑気味だ。紅林の名声を母さんは知らない。いくら鍛えられているとはいえ、まさか自分の子供たちがここまで強くなっていたとは想像出来なかっただろう。

 

確かに紅林の修行は凄い。裏社会の上澄みとも互角に渡り合えるだけあって、奴の教育プログラムは単純なようで実際は非常に高度なものだ。

だが、それに付いていけるアクアとルビーはもっと凄い。予想以上の戦闘力に俺も少し驚いている。どうやら天は二人に二物も三物も与えたようだ。

 

「やるじゃねえか、アクア、ルビー」

 

「ドベへッ!!?」

 

流石は俺の愛する兄姉たち。俺は二人に称賛を送りつつ追加で1体を地面にキスさせた。

 

これで残りは2体。今や追い込まれているのは半グレ共の方だった。俺はスカートに付いた砂やホコリを叩き落とし、連中に絶対零度の視線を送る。

 

「――さて、数の上でも逆転しちまったが……まだやるか?」

 

さっさと諦めて退散してくれねえかな? この後に俺は自宅で母さんお手製のじゃこお握りを食べる予定があるんだよ。

 

だが、連中の答えはより物騒なものだった。

 

「ふざけんな! 中坊如きにやられて恰好が付くか!!」

「鉛弾をプレゼントしてやる!!」

 

なんと奴等、拳銃(チャカ)を隠し持ってやがった。

 

「アイ、ルビー! 俺の前から出るな、下がれ!」

「ママ、ほらこっち!」

「え、でも、マリアが……!」

「マリアなら大丈夫、俺たちよりずっと強い。信じろ!」

 

これにはアクアとルビーも焦る。二人はまだ銃弾を躱す技術を習得出来ていない。素人の発砲でも避け切れない可能性が高かった。当然母さんは言わずもがな。二人が盾として間に入る。

 

「想定内だ」

 

黒焉街および周辺の街の治安が悪い要因、その一つが密輸された銃火器の流通だ。半グレ共が持っていても不思議ではない。だから取り出してきた場合に備えて戦いながら小石を拾っておいた。

 

連中はまだ安全装置すら外せてない。遅過ぎる。俺が小石を投げて腕の骨を折る方が遥かに早いだろう。そう判断して即座に実行に移そうとして――それは無駄に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメエ等、堅気にチャカを向けてんじゃねえ!!!」

 

「がッ!!?」

 

雷のような超スピードで半グレの背後に現れた男が、勢いを殺さないまま強烈な跳び蹴りをお見舞いしたのだ。意識を失った半グレが倒れた事で、その正体が俺たちに晒される。

 

(久我虎徹……!)

 

京極組のエースとして俺の前に立ちはだかった武闘派極道。当時はまだ青臭かったが年を重ね、無精髭を生やしたその姿は威厳に満ち溢れていた。感じるオーラも、あの一条に引けを取らない。

 

……無駄に凝った変な髪型は健在だったが。というよりこっちの特徴で俺は奴が久我だとすぐに分かった。

 

そしてもう一人――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――”この街で~ 堅気に手ぇ出す~ 地獄行き~”」

 

「ぐぼへえッ!!」

 

少し遅れて現れた中年の男が、死の5・7・5と共に残る1名の顔面を砕き、無力化してしまった。

 

俺にとっては一番の因縁を持つ相手。対峙したあの時よりも更に戦闘力が練り上がっている。

 

(一条……お前まで)

 

京極組最強戦力、一条康明。前世の俺を殺した張本人だ。

 

「早っ! 助かったけどあの二人、滅茶苦茶早くない? 特に変な俳句を詠んだ人!」

「ルビー、季語が入ってないからあれは川柳だ」

 

え、あれって俳句じゃないのか? 知らなかった。 じゃあ”川柳の一条”って改名してあげないと。

 

俺が俳句と川柳の違いを理解している間に、久我たちが俺たち家族の元へ近付いてきた。

 

「アンタ等、怪我はないか?」

「は、はい。助けて頂いてありがとうございます」

 

母さんがペコリとお辞儀をする。

 

「良いって気にすんな。寧ろ遅れちまって申し訳ねえ。――俺たちは京極組、この街を守る任侠集団だ」

 

それを聞いたルビーが顔を蒼褪める。

 

「京極……組? まさか……」

「ヤクザだな」

「や、ヤクザ~!? な、内臓は取らないで下さい!」

「おいルビー、押すな」

 

ルビーお前、半グレ相手に肝据わってたよな? 何で今更怖そうにしてんだよ。コイツ等より今しがた無力化した奴等の方がもっとエグイんだぞ?

 

「……ま、どれだけ任侠を謳おうが俺たちはアウトローだ。そうなるのも仕方ないよな」

 

対する久我と一条は彼女のような反応に慣れているのか、半ば諦めているようにも見える。

 

「それよりも聞きてえんだが……これはお前たちがやったのか?」

 

一条が全滅して周囲に散乱する半グレ集団を一瞥する。彼等が救援に駆け付けた時点で6体が既に倒されていたのだ。他に人がいないとなれば、状況的に俺たちが叩きのめしたとしか考えられないだろう。

 

そして嘘を吐く理由もないので、俺はコクリと頷いた。歴戦の猛者たる二人も、流石にこの事実には唖然とした。

 

「マジかよ……」

「最近の中坊はこんなにも強えんだな。その内俺たちの出番も減ってくんじゃねえだろうか……」

「いや、その……」

「それは私たちだけですから……」

 

何か凄い勘違いをしかけていたので取り敢えず否定しておく。もし世の子供たちが全員武闘派と化したら逆に治安が悪化しそうである。

 

「俺たちはこの半グレ共に用があってな。後は任せてくれないか?」

「はい、構いませんよ?」

 

あぁ、こりゃゴミ共は人生終わったな。京極組に喧嘩を売ったんだろうが、その先に待っているのは死んだ方がマシな地獄のみ。家族を襲ったケダモノなので同情は欠片もしない、寧ろ存分に痛め付けてやってくれ。

 

「じゃあ俺たちは帰るとするか」

「あぁ、そうだな」

「それじゃあ失礼しますね?」

 

「おう、夜道には気を付けてな」

 

半グレ共を久我たちに引き渡し、さあ帰ろうとした時に呼ぶ声が飛んできた。

 

「待て」

 

一条に呼び止められ、俺は奴と正面から視線をぶつけ合う。

 

「――嬢ちゃん。俺と何処かで会ったか……?」

 

……もしや正体がバレた? 多分殺戮オーラが前世の俺に似てたように感じたからだろう。だが転生なんて非科学的現象、実際に体験しなければ想像すら出来ない筈。例え共通点を俺に見出しても、答えには永遠に辿り着けない。

 

「気の所為では? おじさんと私は初対面ですよ?」

「……そうか」

 

あれ? なんか怪しまれてる? 不味いな、向こうは未だに俺を恨んでない訳ないだろうし、家族に波及する前にさっさと離脱しよう。

 

「じゃあさよなら!」

「あ、ちょ」

「マリア、引っ張るなって」

 

俺は母さんたちを無理矢理引く形でその場から去った。

 

 

 

 

 

「――なあマリア、京極組ってお前が前に話してた」

「うん、おれが戦争を仕掛けて逆に返り討ちにされたヤクザ」

「じゃあ、あの人たちがマリアを……」

「良いんだよお姉ちゃん。おれは我欲で彼等の家族を沢山奪った。それに殺されなきゃ彼等を全滅させるまでおれは止まれなかったんだ。仕方ないよ」

「でも……」

「もう過ぎた事さ。おれは気にしてないし、今をこうして幸せに生きている。それで良いじゃないか。だから3人も彼等を恨まないであげて。彼等は完全に被害者だ」

 

前世とは言え家族を殺した連中と聞いて、3人とも思うところが無い訳ではない。だから嫌な事を引き摺るくらいなら、気持ちを切り替えさせた方が良い。

 

「母さん、じゃこは家に無かったよね?」

「――あ、そうだった! じゃあ近所のスーパーに寄ってこうか?」

「なら序にスイーツも買って行こうよ! 今日の広告で凄く美味しそうなケーキが載ってたんだ!」

「いいよー、ルビー。夕飯が終わったらみんなで食べよー」

「糖質は……ふむ、今日の摂取量なら大丈夫だな。良いぞルビー、食べても」

「やったッ! おにいちゃん大好き、結婚して!」

「兄妹だから法律的に無理だって……」

「ルビーはホントにお兄ちゃんが大好きだね~」

「うん! 絶対結婚するんだー!」

「だから無理だって……」

 

ふう、何とか暗い雰囲気から脱却できたみたい。楽し気に談笑する3人を余所に、おれは振り返って半グレ共を運搬しようとしている久我たちを見る。

 

(一条……おれが此処にいるのはお前がおれに止めを刺さなかったからだ。本当に感謝している、ありがとう)

 

最後に戦った敵がお前で良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――信じられねぇが、あの小僧のオーラは間違いなくヤツのそれだ。あの不思議嬢ちゃんの話は本当だったのか……」

 

昨日、俺と一条の兄貴の前にカラスの集団を率いて現れた謎の幼女。彼女から告げられた”ある男”のその後について、最初は耳を疑った。

 

だが実際に会ってみて確信した。あの中学生にしては小柄で、何故か少女の格好をしていた美少年が、京極組に多大な損害を齎した奴の生まれ変わりだと。

 

「転生ってヤツですか……そんな事が現実に起きるなんて……」

 

去り行く少年とその家族を見て、俺は言い表せない程の複雑な気持ちになる。奴は俺たちに戦争を仕掛け、兄貴や舎弟たちを大勢殺した外道だった。ソイツが来世とは言え家族と楽しそうに笑っている姿を見ちまうと、正直心穏やかではいられない。

 

「……変な事は考えるなよ虎徹。奴は死んで仏になった。どれだけ気に入らなくても奴はその命を持ってケジメを付けたんだ。もう戦争は、終わったんだよ」

「っ、勿論です、兄貴」

「それに……あの時の寂しい死に方をしちまった奴の姿に、俺は少し思うところがあったんだ。アイツは、ごく平凡な何かをずっと求め続けてたんじゃねえのかってな」

 

致命傷を負わせた後に見た、子供が泣きながら母親を探して彷徨う様な奴の様子が、兄貴の記憶に強く焼き付けられていた。

 

「フン、幸せそうで何よりじゃねえか」

 

少年を見る兄貴の顔は安堵に満ちていた。まるで長年の悩みが解決したかの如く。

 

「達者に暮らせ。もう裏社会(こっちの世界)へ戻ってくんじゃねぇぞ――城ヶ崎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――かくしてプロローグ(幼年期)は終わり、新たな幕が上がる。

 

「おい、まだかかるのかルビー」

「もーっ、ちょっと待ってってばおにいちゃん! この制服カワイイけどフクザツなんだもん……」

「初日から遅刻は勘弁してくれよ」

「でもほんとかわいいー♡」

「……スカート短くないか?」

「おにいちゃんって昔からおっさんくさいよねー」

「実際おっさんだからな」

「あはは、そうだったね! ――あ、マリアー! 何してるのー、早く早くー!」

「先に行っちまうぞ?」

「大丈夫、今そっち行くからー!」

 

今日は陽東高校の入学式。既にお兄ちゃんとお姉ちゃんは玄関でおれを待っていた。

 

「この珍竹林の身体に合う制服が間に合って良かったー……」

「男子用でそのサイズはまず無かったからな」

「マリアなら女の子の制服も違和感ないと思うけど」

「絶対ヤダ」

 

何が悲しくて高校でも女子の姿でいなきゃいけないんだよ……

 

「アクア、ルビー、マリアー!」

 

其処へ母さんが弁当を3つ抱えてパタパタと走ってきた。

 

「ほら、お弁当。忘れちゃダメだよ?」

「サンキュー、アイ」

「わー、ありがとうママ! お昼が楽しみー!」

「はい、マリアはこれ。じゃこお握りが3個入ってるから」

「やった! ありがとう母さん!」

 

母さんの作るじゃこお握りは、おれの大好物だ。跳び上がりたくなる衝動を抑え、お兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に母さんへ挨拶する。

 

「ママ、いってきます」

「行ってくるよ」

「行ってくるね、母さん!」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

手を振る母さんに見送られ、おれ達は高校生活へと一歩踏み出した。

 

これから先、おれの前にどんな未来が訪れるかは分からない。父親の件も含めて、先行きは不透明だ。

 

でも、おれはもう一人じゃない。支えてくれる人たちがいるから、どんな困難だって乗り越えられる。

 

大丈夫だよ母さん。おれ、みんなと幸せに生きてみせるから。どうか見守っててね?

 

 

 

 

 

――おれの名前は星野マリア、そして城ヶ崎賢志。

 

お兄ちゃんとお姉ちゃんに、二人の母さん。4人の愛する家族を持つ、何処にでもいる普通の”人間”だ。

 

 

 

――END.




長くなりましたが、これにて一応の完結となります。

ここまで読んで頂いた皆さんへ、本当にありがとうございました!

今後も番外編や高校生編という形でちょくちょく続けていこうと思いますので、これからも応援して頂けたら幸いです。


それではまた。

今後はどんな番外編を書いて欲しいですか?

  • 星野マリア、星誕物語
  • 再会、我妻と千尋
  • アクルビマリと紅林師匠
  • 共演! グラビアアイドル『寿みなみ』
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