【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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・転生後の城ヶ崎の名前が『マリアライト』な訳

9話冒頭で説明した以外にも、『マリアライト』は別名『パープルスキャポライト』と呼ばれ、アクアマリンやルビーと同じ”スター効果”を持ちます。(アクアたちの目の星が六芒星なのもコレが理由と言われています)

他にも”キャッツアイ効果”というものも持つ為、ここから”マリアは死にゆく運命だったアイを掴む者”という設定を生み出しました。



40話

穏やかな水面(みなも)の揺れる音をBGMに、真夏の日差しからパラソルで肌を守りつつ、おれとみなみは絶品弁当に舌鼓を打つ。

 

うん、美味しい。野菜中心で色とりどりで、栄養バランスもしっかり考えてある。

 

「………」

「………」

 

とはいえこの微妙な空気はどうにかできないものか……黙っていては流石にみなみに悪い。

 

「なぁ?」

 

何か面白い話題がないかと模索しているところへ、先にみなみが沈黙を破ってきた。思考に沈んでいる最中でそれは不意打ちだ。おれはビックリしつつも何とか反応する。

 

「な、何、みなみさん?」

「“みなみ”でええよ、同い年やし。その代わりうちもマリアくんの事、“マーくん”と呼んでええ?」

「ま、マーくん?」

「渾名で呼びたいと思うてなぁ。嫌やった?」

「嫌じゃないけど……その呼び方は初めてだったから」

 

近しい人達からは”マリア“とフルネームを略して呼ばれる事が多いから、渾名呼びされるのは新鮮だった。

 

「構わないよ? みなみの好きなように呼んでくれても」

「ほんま? おおきにな~マーくん! いやー、何だかあのマーくんともっと仲良うなれた気がするなぁ。一緒にこうしてご飯食べれるし、嬉しいのに今更やけど緊張してきたわー」

 

はにかんだ笑顔は日傘で影が差しても暖かく感じ、不思議と安心する。おれは無意識に彼女の顔をジッと見詰め、小さく溢した。

 

「カワイイ……」

「え?」

「あ、いや! 何でもない……!」

「……フフ」

 

咄嗟に誤魔化して視線を下げる。そんなおれの行動が可笑しかったのか、みなみの頬が緩む。まるで母さんのような、お姉ちゃんのような、慈愛に満ちた笑顔。

 

「な、何?」

「あぁ、ごめんな? 悪気があって笑った訳やないで? マーくんの今の仕草が可愛くてなぁ」

「えと、ありがと?」

 

女装する時は何時も言われ、慣れている筈の褒め言葉。しかしみなみに言われると何故か上手く反応を返せず、ぎこちないものになる。

 

「可愛いと言えばさっきの撮影も凄かったで? みーんな君に虜やったし。……勿論、うちもや」

「ひゃっ!?」

 

そう言ってスマホ片手にぐぐぐいっと寄ってくるみなみ。ちょ、近い近い……! 肩と肩がくっついてるって!

 

「ん? ――あ、ごめん。つい女の子の友達と一緒の感覚でスキンシップしてもうた。君が男の子なの忘れとったわ」

「うん……大丈夫」

 

肌が触れ合ってる事に気付いたみなみがおれから少し離れる。……直後におれはそれを残念に思った。何故?

 

「それよかホラ、見て見てコレ!」

「あ、これって!」

 

スマホの画面に写っているどのみなみも、おれが今までの撮影で使った衣装を着て可愛くポーズを決めていた。

 

「もしかして……おれが着た事ある女物を殆ど揃えたの? みんな結構良い値段になる筈だけど」

 

少なくとも一般的な衣料用品店では扱ってない代物ばかりだが、みなみからすれば心配御無用な指摘である。

 

「うちもグラドルとして売れとるさかい、貯金に関しては余裕あるんや」

 

おれの周りの芸能人は所謂成功者ばかり。必然的に金持ちだらけだ。おれ自身もモデル業が上手くいき、並の中学生より遥かに稼げている。無論、羅威刃のボスだった頃とは比べるべくもないが。

 

「オリジナルの人にこれ見せるのはちょい勇気が必要やったけど。あぁ、やっぱ恥ずかしゅうなってきたわぁ……」

「いやいや、全部似合ってるよ? こういう服達は男が着るより女の子が着る方が一番良いね」

「ありがとなぁ。でもマーくんだって本物の女の子よりずっと美少女にしか見えへんから、うちよりもずっと似合っとるで?」

「そう言って貰えると安心するよ。露出が多い服も少なからずあるからね。読者に違和感を持たれないか少し心配してたんだ」

 

それにしても……ちょっと際どいと思った衣装は全て揃えてるのか。みなみは中学生離れな抜群のプロポーションの持ち主なので、どの写真の彼女もとてもエッチに映った。

 

「これ見せたからもうわかってると思うけど。うち、実は君の大ファンなんや。推しの子と言っても過言やないくらい」

「……何だか照れるね。自分にここまで熱狂的になってくれる人がいたなんて」

 

元々勉強目的で中2の秋から始めたモデルだったけど、自分の事を熱く語るみなみを見てるとやってみて良かったと思える。

 

「何て言うかな、癒されたような気分になるんや」

「癒される?」

「写真集に写るマーくんも、さっきの君も、笑顔がすっごく素敵でな? 見てるだけで心が落ち着いて、思わずこっちまで楽しい気持ちになるんや。そんでこんなに素敵でカワイイ笑顔を浮かべる子が着ている服を自分も着てみたい!――そう思えてくるんや」

 

全く濁りの無い桜色の瞳を輝かせ、興奮気味に語るみなみ。その様は昔、お兄ちゃんやお姉ちゃんがアイドルとして歌い踊り舞う母さんを眺める時によく似ていた。サイリウム振る時も母さんについて語る時も、丁度こんな感じだったっけ。

 

「うちもグラドルやから気になってなぁ。――どうやったらあんなに可愛くて癒される笑顔を出せるんや?」

 

同時に瞳の奥から垣間見える探求心と、決して少なくない野心。おれは彼女にとって単なる推しの子ではない。可能ならばおれから使えそうな技術を盗み、自らの発展に利用したいという魂胆も感じられた。

 

「そんなに難しい事じゃないよ。家族と一緒に過ごす光景を想像しているだけだから」

 

だがその向上心、嫌いじゃない。

 

 

 

 

 

家族。それがマーくんが他者を魅了する秘密の正体だった。

 

「家族……?」

「うん。どこから話せば良いかな? これは昔の話なんだけど――」

 

その内容にうちは衝撃を受けた。こんなに無邪気で可愛い子が幼い頃は荒れていたと言うのだから、あまりにもギャップがあり過ぎて最初は信じられへんかった。

 

「当時のおれは誰も……実の家族すらも信用出来なくてね。それでも家族は拒絶ばっかりするおれを心から愛し続けてくれたんだ。今にして思うと、ホントに申し訳ないと思うよ」

 

ただ荒れていた原因は家族とは全く別らしい。詳しい事は結局教えてくれへんかったけど。

 

すると、マーくんの表情に影が掛かる。見るからに悲しそうやった。

 

「……でも、そんな時に例の事件が起きた」

「例の事件?」

「アイさんがストーカーに襲われた事件は知ってる?」

「うん、覚えとるで。当時は凄いニュースになったもんなぁ」

「アイさんが襲われる一部始終を見ていた子供たちがいたって内容も報道されていたでしょ? ――あれ、おれとおれの兄姉がそうなんだよ」

「え!? そういえば、社長夫妻のお子さん等がアイさんに預けられてたって……」

「おれ達兄弟の事だね」

 

背筋が凍る気分やった。まだ4歳前後の幼い子供の目の前で人が刺される。大人でもトラウマになりうる惨劇だ。況してや小さい子供なら精神が崩壊しても可笑しくない。でもマーくんの様子を見る限り、何とか立ち直る事はできたのだろう。

 

「おれはアイさんを慕っててね。尊敬してた人が襲われ、意識不明になったショックでおれは無気力になった。自分の事も周りの事も、何もかもどうでも良いと思うくらいに……」

 

いや訂正や。マーくんは一度心を壊してしまったようだ。辛くて、悲しくて、苦しかったに違いない。うちは彼に心底同情した。

 

「そんな時に支えてくれたのが家族だったんだ。泣いているおれを慰めて、ずっと側に寄り添ってくれて……嬉しかった。どうしてあんなに素敵な人たちを信じてあげられなかったのかって、後悔したよ」

 

成程なぁ。家族に救われ、支えられた事で今のマーくんが存在しているんやな。

 

「それからだよ。家族みんなと過ごす日々がとても楽しくなったんだ! 食事をしたり、ゲームしたり、ヲタ芸やったり! ……ただ一緒にいるだけでも楽しい気分になれた」

 

……なんか今ツッコミたい内容が聞こえた気がするけど、気のせいやろか?

 

「今なら想像するだけで笑顔になれちゃう。そこに気付いたおれは、モデルの仕事で笑顔を求められた時は家族との楽しい日常を意識して考えるようになったんだ」

 

今も家族の事を考えているのだろう。話しているマーくんの顔は穏やかで楽し気で、見ているだけで気分が良くなる。気が付けばうちも微笑まし気に彼の言葉に耳を傾けていた。

 

「――とまあ、参考になるかは分からないけど。楽しい事を考えるって、アイドルやモデルが笑顔を作る時には割と在り来たりな方法だと思うし」

「……気付いてたんか? うちがそういう目的があって君に近付いた事」

「推してくれてるのは本当でしょ? それに自分を磨く為に他者の技術を取り入れるのは、芸能人なら寧ろ当たり前じゃないか。この怪物だらけの芸能界で、それが出来ない奴は高みへは行けないよ? だからみなみは立派な芸能人だ」

「お、おおきに」

 

利用しようと考えたのは嘘じゃない。申し訳ないと言おうとしたが、それはマーくんに遮られてしまった。不敵に笑う姿は可憐さの中に強者のような風格を備えていて、遠慮はいらんとばかりである。逆に芸能人らしいと褒められてしまい、ちょっと嬉しかった。

 

その後も話は続く。殆どマーくんが話して、うちは相槌を打ったり言葉を返したりや。

 

「マネージャーを目指しとるん?」

「うん、モデル兼マネージャー見習い。それが現在のおれの肩書。副社長――ミヤコママに弟子入りして、学業とモデル業をこなしながら勉強中なんだ」

「うわー、忙しそうやな~!」

 

マーくんはうちと同じ中学3年。高校受験も控えてる中でそれらも兼任するのは非常に大変な筈。あとお母さんの事をママって呼ぶんやなマーくん。可愛い。

 

「確かに忙しいね。でも充実した毎日を送れてるから、大したことないかな?」

 

それに、と付け加えるマーくん。

 

「これはおれの夢の為でもあるから」

「夢?」

「家族も芸能関係者でね、役者やアイドルを目指している真っ最中なんだ。マネージャーになって彼等の縁の下の力持ちになる」

 

撮影で浮かべたのと全く同じ、温かな笑顔を添えてうちを見詰める。

 

「苦しい時に助けてくれた家族を、今度はおれが助ける。――それが、おれの夢」

 

一際輝く二つ星が真っ直ぐにうちの瞳を見据える。笑みは妖精や天使を彷彿させ、見る者全てに安心感を与えてくる。

 

家族思いで、その為に一生懸命頑張る努力家で、ずっと見ていたくなりそうな優しい笑顔を浮かべる子。

 

何より――。

 

「みんなが何時も笑って過ごしていけるように、そう願って頑張っているよ。勿論、これからもね?」

 

みんなを笑顔にしたい。そんな思い遣り溢れる男の子に、うちは胸が熱くなるのを感じ始めた。

 

え、もしかしてうち、この子に惹かれ始めとるん? 推しとしてではなく、男子として……? あかん、また緊張してきたわ。お茶飲んで少し落ち着こう……あれ?

 

「お茶空っぽになってもうたわ」

「ん? あ、おれのもだ」

 

丁度お弁当と一緒に受け取った緑茶が空になった。内容量250mLの紙パックやからな。無くなるのはあっという間だ。しかしお陰で席を外す口実ができた。

 

「確か雑木林の向こうに自販機あったわ。ちょっと飲み物買いに行って来るさかい。マーくんは何飲む?」

「いや、奢って貰うのは流石に悪いよ。それに買い出しならおれが――」

「ええからええから。マーくんは此処でゆっくりしといて?」

「……じゃあ、麦茶をお願い」

 

結局”女の子に奢らせるのは悪い”という事でマーくんからお金を受け取った。うちはパラソルから出て、照り付ける日差しから目を守りながら自販機へ向かう。

 

……その間に、このドキドキが収まってくれるだろうか。

 

 

 

 

 

――おれがみなみの後ろ姿を見送っていると、

 

「みなみちゃん、楽しそうだったね~!」

「かあ……アイさん」

 

おっと危ない。何処から聞き耳立てられてるか分からないのに、秘密をポロっと溢すところだった。それについては何も言わず、母さんはニコニコ顔でみなみの背中を見ていた。

 

「あの子、どうやら脈ありって感じだね?」

「もしかして聞いてたの?」

「ごめんね。マリアの恋愛事情だからどうしても気になって……」

 

まあ息子の恋路とか親として興味無い訳無いけどさ、盗み聞きは行儀が悪くない?

 

「聞いてたなら分かるでしょ? 推しの子だって。ファンとして好きなだけで、男子として見られてる訳じゃないから」

「でも結構残念そうに見えるよマリア」

「そんな事は……」

 

ある訳ないよ。多分、きっと。何故かモヤモヤしてるけど決してそんな事はない筈。

 

「じゃあ男の子として好きになって貰えたら、どう思う?」

「どう思うって……それは……」

「今度は顔がにやけてる」

 

母さん、いちいち口に出さないで下さい。

 

「あのねえ……そもそもアイさんが煽ったのが始まりであって、おれ自身は別にみなみにそこまで強く入れ込んでる訳じゃないの。確かに向上心が強くて努力家の印象を受けたし、推しているって言われて凄く嬉しかったし、可愛いし、優しいし、人懐っこくて、スタイル抜群で、おっぱいも大きくて――」

 

って何を言いだそうとしてんだおれ!? 一気に火照った顔を慌てて両手で覆う。その様子を母さんは楽し気に見下ろしていた。

 

「なあんだ、あの子の良いところをいっぱい知ってるじゃない。マリアがみなみちゃんに惚れちゃってる何よりの証拠だよ」

「いや違う、待って、特におっぱいのところの下りは忘れてぇ……」

「男の子だもん、おっぱいが好きなのは普通だよ。……ルビーはちょっと例外だったけど」

「お姉ちゃんのあれはちょっとってレベルじゃないと思う……」

 

もうおっぱいの話題は勘弁して欲しい。全身まで熱くなって顔を覆ったまま首をフルフル振るおれ。指の間から覗くと、母さんはしゃがみ込み、両手を顎に当てて頭を支えつつジッとおれを観察している。そんなちょっとした仕草でも凄く芸術的な絵になっていた。

 

「……あの子も君の笑顔に癒されたんだね」

 

不意に母さんがそう口を開いた。どういう意味? と尋ねると、母さんは周囲に誰もいない事を確認し、話を続ける。

 

「君の名前が何故”マリアライト”なのか話してなかったね。生まれた日に死に掛けた君が助かって集中治療室から出てきた後、君を抱っこした時なんだけど」

 

その時のおれは泣くのを止め、母さんへ笑い掛けたという。

 

「癒されたような気持ちになったよ。あれだけ苦しくて辛かった思いが嘘のように晴れてちゃって、心から笑えるようになった――それで思い出したんだー。癒しの力を持つ宝石の名前を」

「それが……マリアライト?」

「うん。君にピッタリだと思ってね」

 

マリアライト。別名「成功の石」。聖母マリアの名を含む事から強い慈愛やヒーリング効果を持つと言われ、所有者の不安や恐怖を和らげ、希望に満ちた未来へ導くパワーストーン。

 

石言葉は「自立」、「問題解決」、「未来」、「リラックス」、「誠実な愛」。そして「癒し」。第2の人生を振り返ると、その幾つかはおれ達家族に当て嵌まっているのではないだろうか。

 

「君の笑顔には癒しの力があると私は思っている。人を笑顔にする力が。だから私以外の人達にも、そのカワイイ笑顔でみんなを笑顔にする人に育って欲しい――そういう願いを込めて付けた名前。だから君が芸能人になったのは大正解かもね」

 

沢山の人が君の笑っている姿を見る事ができるから。そう言って母さんはおれの頭を優しく撫でてくれた。

 

「……無茶だよ、そんなの」

 

おれは裏社会に圧倒的な恐怖を与えた半グレ。齎したのは笑顔ではなく、恐怖と絶望に歪む人間の量産。そんな悪魔の所業を繰り返した奴が、今更周囲に希望を与えるような事ができるとは思えない。

 

「現に君に癒されたファンが今も増えている。大丈夫だよ、君が悪人だったのはずっと過去の話。今の君は家族思いの良い子」

 

口角を緩く上げ、母さんはおれを見詰める。僅かに首を傾げて、期待ともお願いとも取れる言葉を囁く。

 

「その優しさや愛情を、今度は私達以外の人にも注いであげて」

 

母さんの頼みを拒否する選択肢は無い。それでも血塗られた前世故に自信を持って返答する事は出来ず、おれは沈黙したまま撫でられるだけ。

 

その時だ。

 

 

 

 

 

「た、助けてくれええええええ!!!!」

 

 

 

 

 

駐車場から砂浜へ飛び出してくる一つの影。おれは咄嗟に母さんの盾になる。

 

「半グレ……?」

 

派手な服装に染めた髪。鼻に付くキツめの香水。見るからに裏社会の人間だった。

 

しかし様子がおかしい。血相を変えて現れた男は顔面が腫れ上がり、額や鼻から血を流していた。そして何かに怯えているようだ。

 

「ど、どうしたんですか!? 一体何が……!?」

「酷い怪我だ。おい、誰か救急箱を持ってきてくれ!」

 

騒ぎを聞き付けたスタッフ達が大勢駆け寄り、応急処置を施そうとする。そんな彼等に半グレは血反吐を吐く勢いで叫ぶ。

 

「あ、アンタ等も早く逃げた方が良い! このままだと奴に殺されちまう……!」

 

直後、おれの第六感が警鐘を鳴らした。即座に半グレの周囲に集まったスタッフ陣に警告を発する。

 

「危ない、全員その場から離れろ……!!」

 

しかし、それは遅かった。

 

突如として半グレが逃げてきた方向から黒い塊が飛んでくる。それはなんと……人間だった。

 

「ぎゃあっ!!」

「きゃっ!!」

「ぐえッ……!?」

 

そして、まるで砲弾のように倒れている半グレに着弾する。近場にいた男女のスタッフ2名も巻き添えだ。

 

「え?」

「なにが……?」

 

人間――そいつも半グレだった――が飛んでくるという異常事態に、場は一時静まり返る。

 

……なんだ、この既視感は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――テメエ、俺に断りもなく勝手に逃げてんじゃねえぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅れて現れたのは2m近い巨漢……いや怪物。奴は真夏の砂浜では場違いすぎる真冬のジャケットを羽織り、巨体に比して軽い足取りで此方に接近してくる。

 

感情の籠ってなさそうな、体格に比して小さい目。鮫を連想させる尖った歯。何よりその阿呆な格好。俺は一人だけ知っていた。

 

「――肉蝮」

 

前世で因縁があった強敵の出現に、俺の目付きは鋭くなり黒星を宿す。




肉蝮登場シーンにメフィスト流すと中々良かった。
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