【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
かぐや様「いやあああああああ、前回私はなんて恥ずかしい事を!! 御行さんとのあ~んな事♥やこ~んな事♥を赤の他人に暴露するなんて……! もう死にたい……」
早坂(毎晩旦那を大満足させている……やっぱこの子、ド淫乱の性欲魔人だったか)
あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。遅くなりましたが、第二戦:マリア(城ヶ崎)VS肉蝮、開幕です。
「いってえ……いきなり後ろから蹴りやがって……」
「みなみ、舌噛むぞ?」
「きゃっ、マーくん……!?」
やはりというべきか、昏倒するレベルの攻撃を受けても肉蝮はすぐに態勢を整えやがった。俺は即座にみなみを抱え、全速力で奴から距離を取る。
「死ねえ小娘!!!」
「シュッ!」
「ひゃあッ!?」
直後、俺達のいた場所に車の扉が叩き付けられる。その衝撃で砕けた扉が破片として辺りに飛び散った為、俺とみなみは建物の陰に隠れてそれをやり過ごす。
「あっぶねえなあ、馬鹿力が」
「あ、あの……マーくん?」
「静かにしろ、集中できねえだろうが」
「は、はい……」
あ、ヤベエ。半グレ時代の感覚で睨んじまった。怖がらせるつもりは無かったんだが。
「――悪い、遅くなっちまって」
「う、ううん、大丈夫や。――あ」
取り敢えず頭を撫でたら幾分か落ち着いてくれた。少し顔が熱くなっているようだが、ずっと水着姿で流石に体調が悪くなったのだろうか。後で誰かスタッフに診て貰うとしよう。
「みなみ、かぐやさんは何処にいる? みんなを逃がす為にあの大男と戦ってた筈だが」
「あの女性のカメラマンさん? それならさっき――」
「おいおい、こんな時に何百合ってんだよテメエ等……」
「「!!?」」
その時、直上から奴の声。見上げると建物の屋根で蟹股で俺達を見下ろす肉蝮が……いや別に百合ってねえよ!?
「アイツ、何時の間に屋根に上ってやがったんだ!?」
音もなく短時間で。パワーやタフネスだけじゃない。スピードや身のこなしも以前戦った時より強化されている。
「馬鹿にしてんじゃねえ!! 纏めて踏み潰してやる!!」
「みなみ、掴まれ!」
「う、うん!」
俺はみなみをお姫様抱っこしたまま、上方より落下してくる肉蝮のボディプレスを回避する。巨漢の地面への衝突は砂埃を発生させ、一時的に周囲の視界を遮ってしまう。
「このまま逃げるぞ。辛いだろうが我慢してくれ」
「辛いだなんて……そんな事あらへんよ。ありがと……」
さっきより頬が赤い。少し息が荒くなってきてるし、やはり熱でも出たのか。
「逃がすと思うかこの野郎……!!」
肉蝮の追跡を躱そうとするも、奴と俺達の距離は徐々に縮まってくる。
「なっ、さっきより速い……!?」
アイツ、かぐやと戦ってる時は手加減してやがったな! どうする、このままだと追い付かれる!
……って。
「みなみ、本当に大丈夫か?」
「え、えとなあ……うん平気」
さっきより真っ赤に染まった顔を両手で覆っているみなみが凄く気になるのだが……何を誤魔化そうとしてんだよ、目が濁ってるぞ?
「何か辛い事があるなら正直に話せ。手遅れになったら大変だろう?」
「ほ、本当に大した事やないで? ただ……」
「ただ?」
「――男の子にお姫様抱っこされるのは初めてやから緊張しちゃって……ごめんなぁ、こんな状況で言う事やないと思うてたから。心配せんといて?」
そうだな、お姫様抱っこに関しては脅威が去ってからでも――。
――ん? お姫様抱っこ?
――誰が? 俺が。 誰を? みなみを。
――そうだ。今の俺は、みなみをお姫様抱っこしてる。
――同い年で今日会ったばかりの女子をお姫様抱っこして………
――………………
「ウ゛ェッ、オヒメサマダッコ……!!?」
「マーくん!? なんか凄い変顔しとるよ!?」
俺は現在の自分の状況を正確に把握。直後に全身が急速に熱を帯びるのを感じた。
(よーく考えたら俺、今メッチャ恥ずかしい事してるじゃねえか……!)
融合しつつも必要に応じて出てくるぐらいには分離していた人格達のうち、唯一攻撃的な性格を保っている
緊急時にも関わらず、異性との接触如きに強い羞恥と動揺を覚えてしまう程に。
「だ、大丈夫なん!?」
「だだだダダダらいじょうぶ! お、おまお前は黙って俺にみみ身をあずけってろ!」
「口震えまくっとるよ……!? 顔から湯気出とるし!」
結果、俺は美少女を抱えたまま茹蛸状態で怪物から逃げ回っていた。側から見たらギャグ漫画のワンシーンみたいだ。
だって仕方ねえだろ!? こちとら恋愛沙汰どころか青春とは無縁の日々だったんだぞ! 年頃の女子との触れ合いすら初めてなんだよ! 耐性ゼロに決まってんじゃん!!
……え、ルビー? 実姉にそんな感情は湧かねえだろ普通。アクアの奴は湧くんだろうけど。
(クソどうしよ今すぐ一人っきりになりたい……! でも肉蝮の野郎が迫っている以上降ろす選択は取れねえし……! あぁもう蝮野郎めぇええええええええ!!!)
こんな羞恥的状況を招いた怪物を恨みながらも打開策を考える。当然だが、両手が塞がった現状では真面に反撃できない。何処か安全な場所へみなみを送る必要があった。
「あ、マーくん! あそこ……!」
「あれは……かぐやさん!」
「待ちやがれ!!」
気が付けば松林の中に逃げ込んでいた俺達。みなみが指差した先には、大木を背にかぐやが目を回していた。
その側にはコンクリートで固められた建物、公衆トイレがある。よし、一旦みなみとかぐやにはあの裏に隠れてもらおう。
「待てって言ってんのが……聞こえねえのかぁ!!!」
逃げ続ける俺達に痺れを切らした肉蝮が、持っていた車の扉をぶん投げてきやがった。それは高速回転しながら乗用車並みの速度で飛翔し、周囲の木々を切り裂いて此方に迫りくる。
「ったく出鱈目な奴め! どんな体してやがんだ、よッ!!」
「え、きゃっ!?」
俺はその場で急停止。発生したGに驚くみなみだったが、すぐに下方向へ体が沈んだ事に短い悲鳴を上げる。扉が俺等の頭上を通過し、巨木に突き刺さる。
「これでも喰らっとけ!」
俺は彼女を落とさないようしっかり片腕でガッチリと抱えながら、被っていた麦わら帽子を投射した。
「わ、ぐっ!?」
肉蝮の頭部をピンポイントで狙った一撃。それは奴の羽織るフードに綺麗に嵌り、一時的に視界を奪う事に成功する。
「クソが……何しやがッ!?」
「そのまま地面とキスしてな」
隙を突いて背後に回り、紅林仕込みの強烈な蹴りを炸裂させる。肉蝮はバランスを崩して大地に巨体を横たえた。奴が回復するまでの10数秒で、俺はやるべき事を済ませていく。
「おい、かぐやさん! しっかりしろ!」
「う……うぅ……」
「……怪我は殆ど無さそうだな。みなみ、かぐやさんを連れて建物の裏に隠れててくれないか?」
「マーくんはどうするつもりなん? まさか、あの男の人と……」
「奴の足の速さを考えると、3人全員で逃げようとしても追い付かれちまう。警察は呼んであるが到着まで時間が掛かるし、誰かが足止めする必要があるんだ。分かってくれ」
あのバケモノによる被害を最小限に抑える為には、最も戦闘慣れした俺が奴を喰い止めるのが最善の選択。無理に倒す必要はない。警察が来るまでの時間稼ぎで十分。
「……無茶は絶対せんといてな?」
「当然だ。ほらっ、早くしろ。奴が起きる!」
「う、うん!」
みなみはかぐやを引き摺るようにして、公衆便所の影に隠れる。それから間を置かずに態勢を立て直した肉蝮と俺は数メートルの距離を挟んで相対する。
「――後ろから何度も狙ってきやがって……そのやり方、覚えがあるぞ?」
「……?」
睨み合いの最中、ふと肉蝮が恨めしそうに呟く。
「お前、実は城ヶ崎の関係者だろ?」
「……は?」
俺は一瞬驚きかけるも、即座にポーカーフェイスで首を傾げる。
「城ヶ崎……? 誰だよソイツ?」
「惚けんじゃねえ! やり口が似過ぎなんだよ、あのインテリぶった半グレ野郎とな!! この俺を何度もコケにしときながら
面倒な事になったと俺は内心舌打ちする。まさか肉蝮に相手の戦闘の癖やセンスを記憶できる能力があったとは。完全に予想外だ。
ただ、流石の奴も転生の事実に行きつく事は不可能だったようだ。星野マリアは城ヶ崎賢志を知っている(正確には直接の面識は無いが、他者を経由して戦闘技術を継承した)者――で思考がストップしている。最も肉蝮としては、それだけで俺に殺意を向けるには十分な理由だったらしい。
「……だがそれも今日で終わる」
堅気なら恐怖で震えてしまう獰猛な笑み。まるで長年探し続けた獲物を遂に捕捉した狩人のようだ。
「この15年間不完全燃焼だったが、奴を知ってそうな人間が見つかってラッキーだぜ。お前を代わりにぶっ殺せば少しは気が晴れるだろうな」
「だから知り合いじゃねえっつうの。関係のない人間への恨みつらみをこっちにぶつけんなよ、迷惑だ」
――とは言えやる事は変わらない。
「うるせえ! 兎に角テメエはブチ殺す! テメエが守ってる女共と遊ぶのはその後だ!」
「させる訳ねえだろ、バカなのお前?」
星野マリアと城ヶ崎賢志の関係性に気付こうか気付かなかろうが、コイツがみなみとかぐやを狙っている以上逃げるつもりはない。
「馬鹿はテメエだ小娘! その無駄に綺麗な顔を潰してやらぁ!」
何より母さん達との楽しい仕事をブチ壊しやがったコイツには、俺も腹が立ってしょうがない。
「お前こそ、檻の中にぶち込んでやるから一生出てくんな」
一遍叩きのめさないと気が済まねえンだよ!
ここで一旦切ります。次回で決着です。