【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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47話

『――ごめんね、君達のお父さんについてはまだ話せないの』

『これ以上は、聞かないでくれるかな……?』

 

事件後におれ達の父親について訊ねてみたものの、母さんはそう返すだけで全く話してくれなかった。父親の容姿や現状、名前さえも。

 

「母さん、貴女はどうしてあんな顔をしたんだ……?」

 

母さんにとって父親は自分を間接的に殺めようとしたかもしれない相手、謂わば敵……の筈だ。しかし当時の母さんの態度に敵意や憎しみは欠片も無く、何処か罪悪感にも近しい辛い表情を浮かべたまま。

 

これにはおれ達も困り果てた。二度も母さんに手を掛けようとした以上、父親を野放しにするのは危険というのがおれ達三つ子の共通見解だ。正体を突き止め、行動を監視し、可能であれば無力化する。その為には母さんから直接話を聞くのが手っ取り早く確実なのだが、何故か当の本人は非協力的。

 

別におれ等へ意地悪してる訳では無い。でも母さんが見せた表情はとても悲し気で、弱々しく何度も“ごめんね”と繰り返す姿を見て、おれ達は追及を断念せざるを得なかった。一番の推しで最愛の母を困らせるなど、出来る筈もないから。

 

「……まるで父親を庇っているみたいだったよ」

 

まさか母さん。もしかして貴女は…………その男を愛してるとでも言うのか。自分を殺そうとし、子供や社長達を悲しませた元凶を……今でも。

 

 

 

 

「模擬戦中にボサッとするな」

「わっ!!?」

 

突如、おれの小柄な体が宙を舞う。

 

「フンッ!!」

「グハッ……!!」

 

そして畳へ盛大に叩き付けられた。

 

「どうしたんだ城ヶ崎、普段のお前らしくもないぞ?」

「いてて……ご、ごめん紅林、ちょっと考え事してた」

「分かってると思うが実際の戦闘中に同じミスはするなよ? どれ程の猛者でも死ぬ時はあっさり死んじまうんだからな?」

「うん、気を付けるよ」

 

本日は土曜日。学校は定休日だがスケジュールは詰まっている。午前中は紅林と彼が借りている道場で修行。

 

「もう少ししたら昼か。確か午後から撮影があるって聞いてるが。何だっけ……? 今なんちゃらってやつ」

「”今ガチ”ね。”今からガチ恋♡始めます”って番組」

 

そして午後からは今ガチの初回収録がある。

 

「しかしお前が恋愛番組に参加するとはな……」

「意外だと思った? 当時と違って今は色々余裕があるからね。年相応の少年らしく恋愛にも一定の興味は抱くさ」

 

恋愛に興味があるのは嘘じゃないけど、一番の目的は情報収集。母さんが頑なに父親について話してくれないので、彼女と昔関係があった鏑木Pから話を伺う事になったおれ達。その交換条件として提示されたのが、おれとお兄ちゃんの今ガチへの参加である。美少年二人を追加し、番組をより綺麗に飾ろうという魂胆だ。

 

「体に心が引っ張られるとか言ってたが、そういうものなのか」

「そういう事。もうおれは中身もピチピチの16歳って訳♪」

 

軽くあざといポーズでウインクをかます。しかしおれの前世を知る紅林の反応は苦笑いのみ。やっぱダメか、大抵の相手なら老若男女問わずドキッとしてくれるんだけど。

 

「ピチピチ、ね……確かにアラサーの半グレらしい雰囲気は全く感じられないな。何処にでもいる普通の少年そのものだ」

「あはは、こっちの性格が既に普通になってるよ。最も、キレたら半グレ時代の態度に戻っちゃうけどね」

「……あんま堅気に半グレモードで接するなよ? 一般人の精神はお前の圧に耐えられる程強くねえんだ。下手すりゃトラウマになりかねないぞ?」

「それは相手次第かな?」

 

愛する家族を傷付けたり侮辱したりする奴が悪い。そんな輩をおれは絶対に許さねえ。マフィアのボスとして容赦なく相手してやる。

 

「じゃあ後もう一回やったら終わりにするぞ。昼飯もこっちで用意してやるから喰ってけ」

「分かったよ、ありがとう師匠」

「……その呼ばれ方、未だにこそばゆいな。まあ良いや再開しよう。気合入れてぶつかって来い!」

「はい、師匠!!」

 

おれはモヤモヤとした気持ちを何とか切り替え、紅林に突撃するのだった。

 

 

 

 

 

「……ところで城ヶ崎、“クマバチ”にはまた女の子の格好で参加すんのか?」

「何だよ“クマバチ”って、蜂じゃないんだから。“今ガチ”だっての。あと今回女装はしないからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前は有馬かな。苺プロ所属のタレントで、かつては天才子役と揶揄された女優兼アイドルだ。

 

「でさー先輩。仲間集めの件だけどね、ミヤコさんが言うにはあと一人くらいは入れた方が良いんだって!」

「成程。まあ2人で出来るパフォーマンスなんて限られてるでしょうし、最低3人はいれば選択肢は一気に増えるでしょうからね」

 

元々の所属事務所に食い物にされかけていた私は、アクアとマリアの助けで苺プロへ移籍。2人への恩返しと己の魅力を鍛える為、彼等の妹(姉)のルビーが立ち上げたアイドルユニットへ加入。現在は3人目の仲間を如何にして勧誘するか、苺プロ事務室でルビーと会議中だ。

 

「やっぱりウチのクラスで候補を探した方が良いかな? みんな美人だし」

「芸能科は全員他所の事務所の子なんだからダメよ。どう転んでも事務所間のトラブルにしかならないんだから。ここは一般科の子達に声を掛けるべきね」

 

幸い陽東高校は芸能人を多く擁する関係で、一般科の中にも芸能人に憧れる生徒は少なくない。途中で一般科から芸能科への移動も可能な為、探せば候補者は何人か出てくるだろう。

 

そんな時、事務室の扉が開いて絶世の美女が入ってきた。我等が苺プロ最大の稼ぎ頭にして超有名な大女優様。

 

「たっだいまー!」

 

私含む日本中の役者達の憧れ、アイさんの御登場だ。うぅ……やっぱり緊張してしまう。

 

「アイさん、おかえりなさーい!」

「お疲れ様です、アイさん」

「先輩、急に動き固くなってない?」

「う、うっさいわねルビー」

 

だって相手はあのアイさんよ? 世の芸能人達の殆どにとって天上の存在……最早神みたいな人なんだから。彼女の異次元の演技を目にする度に、どれだけ圧倒されてきた事か。天才子役などと呼ばれた私だけど、万に一つも勝ち目はない。

 

とはいえ、こうして事務所仲間になれたのは非常に好都合だ。彼女から盗める技術は全て盗み、絶対に自らの成長に繋げてみせる。

 

「やっほールビー、かなちゃん! 今日は“アレ”があるから早めに撮影を終わらせてきたよー!」

 

そんな私の野心にアイさんは気付く事なく、楽しげな表情でルビーの隣に腰を下ろす。何でも楽しみにしている予定があるので、撮影を意図的に短縮してきたとか。途轍もないオーラを発する彼女だからこそ成せる技だ。

 

……ところで”アレ”って何?

 

「取り敢えず態と巻いて4時間くらい掛かる撮影を1時間で終わらせちゃった」

「サラッととんでもない事を……」

「アイさん、“巻く”……って何なの?」

「予定より早く終わったって意味だよ、ルビー。他の人達を意図的に本気にさせて撮影のクオリティーを上げる。こうするとNGがグッと減ってね、結果時間の短縮に繋がるんだよ」

「ん、ん〜……なるほ……ど?」

「アイさん……簡単に言いますけど、普通は真似出来ませんから」

 

もうね……次元が桁違い過ぎて私の体は驚愕すら出力しなかったわ。ルビーもチンプンカンプンでまるで理解出来てないし。改めてアイさんは芸能の神の寵愛を受けてるのではないかと思う。

 

(マリアの言葉を借りるなら、正しく“モンスター”ね)

 

「おっと、そろそろ時間かな?」

 

そう言ってアイさんは事務室にあるパソコンをソファーの前のテーブルに置き、起動させる。その一連の流れを、ルビーは何故か微妙な表情で眺めていた。

 

「……正直複雑だなぁ」

「どうしたのよ、急に不機嫌そうな顔になって」

「いやぁ、おにいちゃんとマリアの事を考えるとね……」

「何? 喧嘩でもしたの?」

「そうじゃなくて……2人が出演する番組が問題なんだよ」

「?」

 

どういう意味だろうか。そこへ視聴準備を済ませたアイさんがルビーに優しく笑い掛け、その柔らかな金髪を宝物を扱うかの如く撫でる。

 

「大丈夫だよルビー。アクアがちゃんと見ている女の子は、ルビーだけなんだから」

「むぅ、でもおにいちゃんって結構スケコマシだからなぁ……割と昔から」

「? 何よその目?」

「別に」

 

それでもルビーのジト目は治らず、私と画面を交互に見てくる。その態度はどう見ても妬いているとしか思えなかったが、不思議とルビーのそれは妹としてではなく、一人の女としての嫉妬に感じられた。

 

……ルビー、アンタまさかアクアの奴を一人の男として見てる……? いや、まさかね。インモラル過ぎでしょ。ただ仮にそうだとしても芸術作品として認識してしまいそうなのが、この美形兄妹の恐ろしいところだけど……。

 

あと、別に私はアクアに対して恋愛感情は殆ど無い。確かに恩人ではあるけど、それはマリアも一緒。同じ役者としてのライバル心こそあれ、あくまで事務所仲間兼友人の域を出ない……今のところは、だけどね。

 

え、マリア? アイツは怖過ぎるから論外。

 

(ってかアクアの奴……幼少期からナチュラルに女の子を堕としまくってたという事? あの容姿だしなぁ……修羅場いっぱい経験してそう)

 

私にやったようなギザな台詞や行動も、アクアのような超イケメンがやれば大抵の女はイチコロだろう。今はまだ無傷っぽいが、何時か後ろから刺されないか心配である。

 

「あ、始まるよ2人とも!」

「大丈夫、おにいちゃんは私だけ見てる私だけ見てる……」

「落ち着きなさい」

 

アイさんの声で私もパソコンの画面に注目する。そしてその内容に唖然とした。

 

「あ、アクアとマリアが恋愛……!?」

 

”アレ”ってこれ!? 恋愛リアリティーショーの事だったの!?

 

 

 

[ 『今からガチ恋♡始めます』 新シーズン、開幕 ]

 

 

 

私が驚き状況を受け入れようとする間も、番組はドンドン進行していく。

 

 

 

[ 新しい恋の季節が始まる ]

 

[ 今回参加する8人のメンバーは… ]

 

 

『『『『『こんにちはー』』』』』

 

 

 

『えと…鷲見ゆきです。高1です』

 

[ 鷲見ゆき ファッションモデル 高校1年 ]

 

 

『熊野ノブユキです。ダンスが得意です』

 

[ 熊野ノブユキ ダンサー 高校2年 ]

 

 

『く、黒川あかね、高校2年生です。役者をやっています……』

 

[ 黒川あかね 女優 高校2年 ]

 

 

 

「げ、黒川あかね……」

 

よりにもよってこの子も参加してんの? 恋リアに出るようなキャラだっけアンタ?

 

「知ってるの先輩? この黒川さんって人の事」

「……ちょっとね」

 

苦虫を嚙み潰したような顔をしてそれ以上の言葉を発さない私に代わり、アイさんが黒川あかねについて説明する。

 

「私が中学生くらいの時にお世話になった劇団があったって前に話したよね?」

「確か……『劇団ララライ』、ってところでしょ?」

「そうそう。彼女は其処に所属してる劇団員なんだ。私も何度かこの子の演技を見た事あるけど、かなり目を見張るものがあったなぁ」

「へー、アイさんがそこまで褒めるなんて、よっぽど凄い人なんだね!」

「………」

 

そう、黒川あかねは私から見ても天才の一言だ。子役としての旬が過ぎて仕事を失っていく私と入れ替わるように、彼女はメキメキと実力と知名度を伸ばしてきた。まるで私の人気を彼女が吸っているような気がして、舞台で圧倒的に輝く姿を見ては疎ましさを感じていた。

 

でも彼女は超が付く程の真面目で、気弱な性格だと聞いている。どういう経緯で出演する事になったのか知らないが、恋リアは演じてるキャラクターではなく自分そのものを撮られる。果たして繊細らしい彼女が耐えられるだろうか。

 

(ま、私には関係ない事だけど)

 

取り敢えず続きを視聴する。

 

 

 

『高3のMEMちょです~! Youtubeで配信してます。よろしくねっ!』

 

[ MEMちょ YouTuber 高校3年 ]

 

 

『森本ケンゴ、バンドやってます。よろしく!』

 

[ 森本ケンゴ バンドマン 高校3年 ]

 

 

 

「あっ、MEMちょだー!」

「超人気YouTuberじゃない。彼女も参加するのね」

 

某エルフが見たら勘違いでゾルトられかねない、頭部に角のアクセサリーを装着した金髪の美少女――MEMちょ。この子、容姿だけならアイドル向けって感じがするわね。もし会う機会があったら勧誘してみましょうか。Youtuberの仕事で忙しそうだし、断られる可能性が高いかもだけど。

 

その時、ガラッという音と共にスタジオに一人の男が現れた。

 

「あ、おにいちゃんだ」

 

漸くアクアの出番らしい。どれどれ、どんな自己紹介を見せてくれるかしら……

 

 

 

『アクアです!なんかめっちゃ緊張するわ~。みんな、よろしくね!』

 

[ 星野アクア 役者 高校1年 ]

 

 

 

「「「いや誰っ!!?」」」

 

私もルビーもアイさんもメッチャ驚いた。何なのアクア、そのキラッて効果音出そうな登場の仕方は……!!? 普段とギャップあり過ぎでしょ!?

 

「ある程度キャラ作りはするだろうなとは思ってたけど、かなりガッツリ変えてきたねー」

「おにいちゃん、陰のオーラ纏ってる闇系じゃない!」

「キャラ作り過ぎ!」

 

困惑しながらも視聴する画面の中では、あのMEMちょがあざとい態度でアクアに近寄っていた。

 

『えー、カッコいい~♥ 役者さんってー、あこがれる~!』

 

「あーあ。おにいちゃん、こういうぶりっ子タイプにはキビシイからなぁ。この子はないなー………まぁ誰が相手でもないんだけど」

「今なんか言ったルビー?」

「なんでもないよー?」

 

まあ確かにMEMちょの振る舞いは少し態とらし過ぎる。アクアのような人間には鬱陶しがられる可能性が高いだろう。

 

『MEMちょも可愛いね、メッチャ照れる』

『えへへ、ありがとー♥』

 

……オイ。

 

 

「「は? 死ね」」

 

 

「る、ルビー、かなちゃん。そういう乱暴な言葉は止めようね?」

 

予想外。いや、ルビーの言う通りだったわ。このスケコマシ三太夫め。

 

「だってアイさん! おにいちゃんあんなにデレデレしちゃってさ、絶対に浮かれてるよアレ! 私という良い女がいながら! 帰ったら説教しなきゃ!」

 

アンタが良い女かどうか、そして何故実の兄に対してそう言うのか気になるところだけど、それは置いとくとして……

 

「私もちょっとイラッとしたから一緒に参加させて貰えないかしら?」

「勿論だよ先輩! たっぷり搾ってあげちゃおう!」

「2人とも、程々にしてあげてね……?」

 

アイさんも思うところがあるのか、私とルビーによる説教大会を止めるところまではしないらしい。フフフ、覚悟しときなさいアクア。

 

『――!!?』

『どうしたのアクアくん?』

『いや、一瞬寒気が……』

 

あっ、そう言えばマリアの出番はまだだったわね。そろそろかな?

 

 

 

『こんにちはー』

 

「あ、来たみたいだ……ね……」

 

あら、違うみたいね。参加者は全部で8人らしいから一番最後って事かしら。

 

「ウッソぉ……」

「あ、この子も参加してたんだー」

 

――ルビー、アイさん? どうして驚いてるの? 何故かアクアも鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるし。

 

そして7人目の登場から間を置かず、最後の一人が教室の扉を開いて姿を現した。

 

 

 

『――初めまして、モデルの星野マリアです。今日は宜しくお願……』

 

普段の格好でも女の子のように見えてしまう美少年もまた、挨拶を途中で止めて彼の兄や姉同様に硬直する。見れば彼が相対する7人目――ピンク髪の巨乳美少女も驚いた顔で彼を見ていた。

 

 

 

 

 

『えっ、みなみ!!?』

『マーくん!!?』

 

 

 

[ 寿みなみ グラビアアイドル 高校1年 ]

[ 星野マリア モデル 高校1年 ]

 

 

 

 

 

この時は誰も知る由も無かった。

 

この恋愛リアリティーショーの最中で、2つもの大事件が起こるなんて……




最新話でアクルビ派に危機が……そしてアクかな復権。

でもコッチでは”アクルビ”を続けていきたいと思います。もしかしたらハーレム(アクア限定)になるかもしれませんが。

もうお分かりでしょうが、マリアのメインヒロインはみなみとなります。”マリみな”です。
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