【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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現時点でマリアの正体を知る者

星野家、社長夫妻、紅林、佐竹、久我、一条、ツクヨミ、旧羅威刃幹部(※ただしツクヨミ、久我と一条、旧羅威刃幹部が己の正体を知っている事をマリアは把握してません)



48話

おれの名前は星野マリア。

 

「……鏑木さん、みなみが出演するなんて全然教えてくれなかったよ」

「あはは、ウチもマーくんが参加してるのは今知ったわ。仰天や」

 

今ガチのプロデューサーに上手い事してやられた、苺プロ所属の芸能人だ。

 

「さっきのシーン……絶対撮られたやろなぁ」

「間違いなく。で、100パー全国放送されるだろうね」

 

初回でいきなり片や名前呼び、片や渾名呼び。既に2人は親密な関係であると視聴者達は考えるだろう。そうなると今後のおれ達の動向が気になって仕方ない筈だ。

 

鏑木P、この状況を作る為に態とみなみの存在をおれに教えなかったのか。やってくれる。

 

「どないする……?」

「取り敢えず呼び方は今まで通りでいこう。ここで前触れもなく苗字呼びになったら違和感しか無いし」

「せやな。じゃあ改めてよろしゅーな、マーくん」

「あぁ、宜しくみなみ」

 

こうなった以上、鏑木Pの思惑通りに動くしかない。おれは若干の敗北感を抱きつつも一旦みなみと別れ、他のメンバーのところへ向かった。

 

 

 

 

 

今ガチ、もとい恋愛リアリティーショーには台本が存在しない。NGにならない限りは出演者達が好きに話題を決め、自由に話して良い事になっている。ジャンル通り、リアルさを売りにしているのだ。

 

「でえ、うちの犬ぅ」

「うんうん」

「ほら、かわいくてぇ。みてみてぇ」

「うんうん。かわいいねぇ」

 

なのでこんな風に若干分かりにくいが、如何にも日常でやりそうな会話でも問題無かったりする。

 

(正直初めての経験だけど……要は普段通りの感覚で臨めば良いのかな?)

 

ただし日常生活と明確に違う点もある。それは時折カメラを意識して動く事……そしてここでの遣り取りが全国放送されるという事。つまりヘタな発言や行動は炎上のリスクに繋がりかねない。

 

別におれ自身は炎上しようが痛くも痒くも無い。皮肉にも半グレ時代に培った度胸が、有象無象の誹謗中傷の対して強い耐性を持たせるに至っている為だ。一番の問題はそれが原因で家族共演の夢が潰えたり、何より母さん達まで批判されるような事態に発展するかもしれない事にある。そんなのは絶対イヤ。だから言葉や行為には十分気を付けよう。

 

(ん、確かあの子は……)

 

熊野、森本と簡単に挨拶を交わし終えたところで、お兄ちゃんと会話を済ませて近付いてくる容姿端麗の少女。……歩き方から仕草まで、恐ろしいまでに洗練されている。如何にして自分を可愛く映せるか、よく研究している証拠だ。

 

「どうもー、あの天使王子くんに会えるなんて光栄だよ。同じモデルとして話をしてみたかったんだ。私は鷲見ゆき、君とは同級生だよ。宜しくね?」

「星野マリアです。宜しく鷲見さん。とても凄いモデルだって評判を聞いてるよ」

「あはは、君に比べたら私なんてまだまだだけどね」

 

ファッションモデルの鷲見ゆき。業界でも一目置かれている大物ルーキーだ。若干15歳にして有名なコレクションに幾つも出演し、大勢の注目を浴びている。

 

「君も何時かはショーに参加するつもりなんでしょ?」

「明確な予定は決まってないけど、その内ってところかな? ……でもちょっと悩みがあってね」

「悩み?」

「この男子にしては低過ぎる身長。おれ150cmしかないからなぁ……ちゃんと衣装の魅力を惹き出せるか正直心配で……」

 

……尚、今ガチのメンバーではおれが最も身長が低い。だから鷲見含む全員と会話する時は若干見上げる必要がある。ちくしょう、遅いぞ早よ来い成長期。

 

「そんなに固くならなくても大丈夫だよ。少なくとも日本国内ならモデルの身長に合った衣装が用意されるし。あとは動きとか表情とか、そういう技術的なところを鍛えていけば酷いようにはならないから」

「そっか。ありがとう鷲見さん。もし共演する機会があったら、その時は宜しくね」

「うん、楽しみにしてるよ」

 

そこで鷲見は職業の件を一旦区切り、内緒話をするかのように囁いてきた。彼女の視線は、教室の端っこで黒川と会話中のみなみに向けられている。

 

「――ところでさ、寿さんと星野くんって幼馴染の関係だったりする?」

 

鷲見が次に挙げてきた話題は、おれとみなみの事についてだった。

 

「んーん、中3の夏休みに共演した時が初対面だよ。あとは同じ高校でクラスメイトでもあるけど」

「そうなんだ。結構親しみのある呼び方をしてたから、実はもう恋人同士だったのかなって思ってさ」

「それならこの番組に呼ばれてはないと思うけど。ラストで恋人になるかどうか決める訳だし。それにおれは余程酷くなければ、どう呼ばれても気にはしない方だからね」

「ん? じゃあ私も”マーくん”って呼んで良いって事?」

「っ……えっと、それは」

 

そう聞かれた瞬間、おれはどう返答すべきか分からずまごついてしまう。何故だ、”マーくん”呼びなんてみなみもやってる。別に不快な訳でもない筈なのに……おれは結局答えられず、立ち尽くすだけ。

 

(……ふーん、この渾名は寿さんだけに呼んで欲しいのか)

 

そんなおれの反応を見た鷲見は、ニヨニヨと楽し気な様子で笑った。

 

「な、何、鷲見さん?」

「あはは、ごめんね。まぁいきなり渾名は困るだろうし、私もちょっと恥ずかしくなってきちゃった。普通に下の名前呼びからでも良いかな?」

「う、うん。それなら大丈夫」

「ありがとう、マリアくん。君も私の事は下の名前で呼んでくれたら嬉しいな」

「分かったよ、ゆきさん」

 

”恥ずかしい”のところで鷲見の両目が濁ったのをおれは見逃さない。彼女、お兄ちゃんと遣り取りしていた時は初心で気弱そうに振る舞ってたけど、本性は割と図太い性格をしてるっぽいな。大勢の視線に晒されても堂々としていられるのがモデルだ。当然と言えば当然だろう。

 

「あっ、そういえば知ってる? 前シーズンに結ばれたカップルは最後にキスしたらしいよ?」

「うん、予習はしといたから。普通は告白して終わりみたいだけど……」

 

この次に鷲見が何を言うつもりなのか大体予想が付く。さっきも視界の端でお兄ちゃんを動揺させ、撮れ高のある映像を作っているのを捉えたから。大方『君とならキスできる』とか言っておれの動揺を誘うつもりなのだろうけど、その位で動じる程おれは軟では――。

 

「マリアくんはさ――やっぱり寿さんとキスしたいと思ってたりする?」

「―――――――はへ?」

 

みなみと………きっす? え、キッス、キス、キス、キス、キス――。

 

「きっすっ……!!? いいいやややそそそそれれれは……!」

 

(わ~、絵に描いたような初心っぷり。こんな反応する子現実に存在するんだ……可愛い)

 

予想の斜め上の質問におれは顔を茹で蛸のように赤く染め、湯気を噴き出しながら呂律の回らない声を発する。

 

「マリアくんマリアくん、そこカメラあるから、そっちに目を向けちゃダメだよ?」

「――ふぇ?」

 

そう言われてうっかりおれはカメラに視線を向けてしまう。当然、頬を紅潮させ動揺している表情をバッチリ撮られる事に。

 

「じゃあまた後で!」

 

良いもん見れたと言わんばかりの顔で可愛らしく手を振り、別の演者のところへ去って行く鷲見。

 

(――や、やられた。誘導されてしまうなんて……)

 

ダメだ、この番組関係だとおれは対応が悉く後手に回りがちらしい。しかし、はっきり言っておれは恋愛に関しては完全に素人だ。正解かどうかは手探りで確認していくしかない。

 

その後もおれは出演者と何気ない会話を繰り返した。内容は主に新作のゲームだったり仕事の事だったり。

 

「あ、ちょっと待っててマリア君! スタッフさん、此処はこうした方が良いでしょうか?」

 

黒川は会話中も事あるごとにメモを取って、番組スタッフに幾つも質問したり。超が付くレベルの生真面目っぷりをおれに見せ付けてきた。

 

「私はMEMちょ、YouTuberだよ! 改めて宜しくねアクたん、マリりん!」

「アクたん……?」

「マリりん……?」

 

流石にインフルエンサーのMEMちょから、兄共々ファンがアイドル相手に呼ぶような渾名を付けられた時は驚いたが。

 

とはいえその程度。他には特にトラブルも無く初回放送は終了。撮影後に出演者だけのグループを作り、その日は解散となった。

 

人生初の番組出演。一応は上手くいけた……かな?

 

 

 

 

 

余談だが、初回のサムネはおれとみなみが驚き対面しているシーンが使われた。予想通りおれ達の最初の遣り取りが放送され、X(旧Twitter)には”マリみな”や”みなマリ”がトレンド入りを果たした。




その日の夜――。

ルビー「仮にも私はマリアのお姉ちゃんな訳で、私が嫌いなタイプが弟と付き合うのは嫌なの!」

マリア「どうしたのお姉ちゃん、唐突に?」

ルビー「――という訳で、マリアが付き合う女性をお姉ちゃんが決めまーす」

アクア「勝手過ぎるだろ……」

ルビー「という訳ではいっ、私の一押しのゆきぽん! きっとこの子が一番純粋で良い子じゃないかな? 同じモデルだし、話も合うと思うよ!」

マリア「彼女、狡猾さが半端なかったよ? おれ程じゃないけどね」

ルビー「え、そうなの?」

マリア「人は見掛けに寄らないって意味だよ、お姉ちゃん?」

アクア「取り敢えずルビー、お前は俺以外と恋愛すんなよ? 人を見る目がないみたいだからな」

ルビー「なにおう!? ってか当たり前じゃん、私はおにいちゃん一筋なんだから! ほら、ギュッとして~!」

アクア「やってやるから脚の上に座れ」

ルビー「わーい♪」

マリア「うんうん、2人が仲良しで何よりだよ(微笑)」

アイ (マリアが付き合う女性かぁ……みんな出来た子って感じだけど、やっぱりみなみちゃん一択だよね? 一番関わりがある訳だし)

星野家は今日も平和です。










カミキヒカルって星に例えるならアークトゥルスかなと考えてみたり。アイ=スピカと合わせて日本では「夫婦星」とも呼ばれてるらしいので。原作も上手い事いけばカミキとアイは夫婦になれたのではと思いました。

……もしや元のアクルビ(ここではマリアも含む)が魂のない子というのは、二つの星が近付き過ぎて起こるロッシュ限界になぞらえてる……?

因みにアクルビの場合はスピカの内の主星と伴星だと考えており、マリアはそのスピカに存在する”かもしれないと言われている”他の伴星3つを纏めて指しています。

何れは三つ子たちの星誕物語を書くつもりです。
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