【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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49話

「いやー私、みなみちゃんが入ってきたところで度肝抜かれちゃったよー!」

「俺も鏑木さんから聞いてなかったからな。まさか俺とマリア以外にも知っている奴が参加してたとは」

「ほんま吃驚させてごめんなぁアクアくん、ルビーちゃん、マーくん」

「なに、寿さんの所為じゃないさ」

 

初回収録後初の月曜日。おれ達三つ子とみなみの4人は一緒に登校していた。

 

「でもどうしてみなみちゃんの事黙ってたんだろう? その歌舞伎プロデューサーって人」

「お姉ちゃん、鏑木さんだよ。顔にメイクとかしてないから」

「大方昨年の夏の共演で起きた事件を把握してたからだろうな。当然、マリアが寿さんを助けた事も。……何て言う奴だっけ、襲撃してきた男は?」

「肉蝮だよ、お兄ちゃん」

「すっげー名前……。いやこの場合は苗字かな? だとしても変だけど」

 

人の名前とは到底思えない名前に軽く引くお姉ちゃん。おれ達の名前もまんま宝石だから十二分に凄いけど、肉蝮よりは遥かにマシだろうね。

 

「………」

「みなみは大丈夫? 気分悪そうだし、もうこの話題は切り上げようか?」

「マーくん……ううん、何とか平気やで」

 

すると隣を歩いているみなみが顔を蒼褪め、冷や汗をかいていた。彼女は肉蝮に襲われる寸前だったのだ、トラウマになるのも仕方がない。咄嗟におれは彼女の顔を覗き込むようにして声を掛けてみるも、大丈夫だと首を振ってくる。

 

「でも、ホンマ怖かったわぁ……。特にあの巨人さんの感情の無い目……冗談抜きに貞操の危機やったもん」

「確かその男、大勢の女性を襲った犯罪者なんだよね……しかもまだ捕まってないって?」

「警察の話だと行方不明らしいよ? おれも直接戦ってみたけれど――アレは最早人間じゃない。死んでいるとは考えない方が良いかもね」

 

軽傷とは言えかぐやさんに怪我させたとあって、夫の御行さんを筆頭に彼女と親しい秀智院のOB達は、それはもう怒髪天を突く勢いだったらしい。各々が己の権力を駆使して肉蝮の捜索・確保に奔走したものの居場所を特定できず、結局逃げられてしまったみたいだが。

 

あの秀智院学園の追跡すら完璧に躱ちまうとは……肉蝮、想像以上に厄介な男である。

 

「そんな怪物みたいなレイプ魔に下手したら何処かで遭遇するって事……? こわー……」

 

みなみに続いてお姉ちゃんまで……ったく、おれの大事な人達を怖がらせやがって蝮野郎め。

 

「なら今後もこうしてみんなで一緒に登下校しよう? なるべく1人にならないように。そうすれば何かあった時にお兄ちゃんとおれで守れるからさ」

 

だから安心させるつもりで2人に提案する。お兄ちゃんも当然と頷いた。するとお姉ちゃんが感極まった様子でおれに抱き付き、頭をガシガシと撫でてきた。

 

「もーマリアったらカッコいい事言ってくれるじゃん! 良い子良い子ー!」

「痛いってばお姉ちゃん……」

「あ、ごめんごめん。つい嬉しくてさ。おにいちゃんもありがとう!」

「家族を守るのは兄として当たり前だ。マリア、お前も必要なら遠慮なく頼ってこいよ?」

「勿論だよ、お兄ちゃん」

 

そんなおれ達三つ子の様子を眺めているみなみが、笑みを溢した。

 

「ホンマに仲ええなぁ、3人とも。それとウチからも礼を言わせてなマーくん。お陰で少し落ち着けたみたいやわ」

 

不安そうな表情は何処にも無い。どうやら大丈夫そうで、自然とおれも頬が緩む。

 

「よかった。やっぱみなみは笑顔でいる方がずっと魅力的だし」

「っ! お、おおきに」

 

みなみがフイッとおれから視線を逸らした。えっ、何か不味い事言っちゃった……?

 

「え、何々々? ねぇおにいちゃん、これマジで”マリみな”来ちゃってる?」

「まだ2人とも自覚しきれてないみたいだけどな……おそらく時間の問題だろうが」

「……こんなエチエチな子が私の妹になるかもしれないんだ……何それ最高じゃん」

「何を笑ってるんだルビー……」

 

お兄ちゃんとお姉ちゃん、なんか交互におれ等を見て内緒話をしていたが。あとお姉ちゃんの笑顔が少しヤバい気がした。

 

 

 

 

 

「――ん、何だアレ?」

「随分楽しそうだね、お兄ちゃん」

 

教室に入ると、教壇を囲って女子達が何やら大いに盛り上がっていた。

 

「おはようみんな、何してるの?」

「あ、おはようマリアくん。アクアくんとルビーちゃんにみなみちゃんも」

 

おれが声を掛けた女子の一人が、嬉々とした様子で詳細を語り出す。

 

「いやさ、マリアくんに着て貰う制服を誰が貸してあげるのかで沢山立候補者が出ちゃってね。こうしてジャンケン大会に発展しちゃったって訳」

「うん、朝から本当に何してんすか……???」

 

ちょっと待て、おれは了承した覚えは無いぞ。当人のいない所で勝手に話を進めないでくれるかな?

 

「マリアに女子の制服を着せる!? 可愛いに決まってんじゃんそれ、私も見たい!」

「お姉ちゃん!?」

 

しかしお姉ちゃんがこの話題に喰い付いてしまった。このままだと本当に女装する流れだ。いくら最近は慣れてきたとは言っても、性自認が男なのは昔から変わらない。流石に学校でも女の恰好というのはちょっとなぁ……。

 

「ねぇねぇ、みなみちゃんも見てみたいと思わない?」

「う~ん、どっちかって言うたら……見てみたいとは思うけど」

「みなみまで……」

 

女性陣が全員賛同に回る中、おれはチラリと隣に立つお兄ちゃんに視線を送る。お兄ちゃんなら止めてくれる筈だと思って。

 

「おにいちゃんも見てみようよ。マリアの女子高生姿とか絶対似合うだろうしさ!」

「……そうだな、ルビーが見たいなら俺も見てみるか。正直、割と興味あるし」

「おいアクアお前もかよ」

「マーくん雰囲気変わってない? 助けて貰った時みたいになっとるで?」

 

失念した。お兄ちゃんはシスコンで、お姉ちゃんの想い人だって事に。此処に味方は居ないのか……? 完全に退路を断たれたおれは此処に居ては不味いと悟り、回れ右をして教室の出口を目指す。三十六計逃げるに如かずだ。

 

「よっしゃ、アタシの勝ちーー!!」

「ちっくしょう……!」

「だー、負けたーー!!」

「あ、ちょっと待ってよマリアくん!」

「逃げちゃダメだってばー!」

 

しかし脱出前に決着が付いてしまい、おれは電光石火の勢いで女子生徒に取り囲まれてしまった。どうしてこの手の話になると動きが速いんですかね……? みんな凄みのある笑顔だったり興奮していたり、明らかに犯罪者の雰囲気出してて少し怖い……

 

「あの、おれの意思は……?」

「次の休み時間に聞いてあげるね? HR(ホームルーム)まで時間無いから先に着替えちゃおう?」

「聞く気ないじゃん!」

 

お兄ちゃんヘルプ! おれはもう一回お兄ちゃんに助けを懇願してみたが……

 

「行ってこいマリア。撮れ高な姿を期待してるぞ?」

「お前覚えてろよ?」

 

「み、みんな……お手柔らかにしてあげてな?」

 

みなみ、君はなんて優しい奴なんだ…………でも止めてはくれないんだね、グスンッ。

 

その後おれは女子更衣室に連行され、容赦なく色々と剥かれてしまった。冗談抜きに貞操の危機を感じたよ。

 

……えっ、女子更衣室に入れるなんて羨ましい? 衣装提供してくれた女子の下着姿を拝めたんだろって?んなもん、自分も下着姿を多数の女子に視姦されてたんだ。気にする余裕なんてねーよ。そこまで言うなら変わってくれマジで。……それは嫌だって? クソったれが。

 

 

 

「「「「「おおっ!!」」」」」

 

 

 

多くの若き男女の驚きと歓喜の声が教室に木霊する。彼等の目線の先には髪を下ろし、陽東高校の女子制服に身を包んだ美少女――にしか見えない美少年が恥ずかし気に立っていた。

 

「写真集見て女装がよく似合う子だなって思ってたけど……」

「私達、とんでもないものを生み出してしまったかも?」

「恰好次第で男の子にも女の子にもなれるなんて反則過ぎる……」

「アタシ女子で良いのかな……? 仮にも男子相手に色々負けた気がする……」

 

女子生徒を中心に次々と感想が飛んでくる。尚、衣装提供者の女子(ジャージ着用)は敗北感から遠い目をしていた。

 

「しっかし、こうして見るとルビーちゃんにクリソツねー」

 

おれの顔立ちは母さんやお姉ちゃんに近く、男子とは思えない可愛らしい見た目をしている。お兄ちゃんも幼少期こそ母さんの面影が見られたが、成長期に入るとそれが徐々に消えていった。多分父親に似てしまったのだろう。不機嫌になるから本人には言わないけど。

 

するとお姉ちゃんがおれの隣に立ち、ポンポンと頭を軽く撫でてきた。傍から見れば最上位クラスの美少女が2人も並ぶ光景。男子生徒を中心に思わず息を呑む者もいた。

 

「そりゃあ私とマリアは姉m――姉弟だからね♪」

「今”姉妹”って言い掛けなかった?」

 

こんな風に長年一緒に暮らしてきた家族ですら、女装時だと認識がバグってしまう事がある。

 

「星野兄、お前が羨ましいぜ。こんな美人姉妹と毎日過ごせるなんてよ」

「そうか? まぁ自慢の妹た――妹と弟だと思ってるよ」

「今”妹達”って言い掛けなかった?」

 

軽口を叩いてくる男子生徒へ余裕そうに返事するお兄ちゃんも、この通りだ。

 

「あ、HRまでもう時間が無い! アクアくん、ちょっとルビーちゃん達と並んで立ってくれる?」

「写真を撮るのか?」

「超美人兄弟とか滅茶苦茶絵になるもん! 私達に癒しを提供して、お願い!」

「あ、おいちょっと……」

 

一人の女子生徒の言葉を皮切りに、おれ等三つ子の短い撮影会が始まった。当然おれは女子の恰好のままだが、半ば投げやりな気持ちで被写体になる。

 

「イエーイッ!」

「お姉ちゃんが楽しそうで何よりだよ……」

「どうせ俺達は散々メディアに露出しているんだ。もう好きにさせてやろう」

 

母さんの血を継いだおれ達の容姿は、美人と呼ばれる人々の中でも上澄みも上澄みだと言って良い。それが3人も集まればどんな芸術作品よりも絵になるだろう。

 

パシャッ

 

そうして暫くジッとしていると、おれ達の姿を収めるスマホの数が一つ増えた。その持ち主の正体に気付いた全員がギョッとする。

 

「し、不知火さん……!?」

「何時の間に……!」

 

歌って踊れて演技も出来る、正に万能と言うべき実力を誇る有名芸能人――不知火フリルは周囲の動揺も何処吹く風。おれ達への撮影を止めようともしない。

 

「――3人とも最高。お陰で視力が1.5もアップしたわ。この写真は目の鍛錬に使わせて貰うね?」

 

(((((言う事おもろっ!!)))))

 

不知火の意外な一面を目の当たりにした生徒達は、彼女に対する親しみが増したとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それがこの時に撮った写真やでメムさん」

「はわぁあああああ!」

 

そしてあっという間に今ガチ第2回。みなみが見せたスマホに映るおれ達の姿に、MEMちょが変な声を発した。結構面白い反応する子だね。

 

因みに写真をメンバーに見せても大丈夫かとみなみから事前相談されたが、二つ返事でOKしてある。おれの女装なんて、世間はとうに百も承知だからね。

 

「この世のモノとは思えない美人兄姉弟(きょうだい)……みなみちゃん、私にもこのデータ送ってくれないかな!?」

「ちょい待ってやメムさん。それはマーくん達から許可を貰わんと」

「ま、マリりん、アクたん! この写真、私も欲しいんだけど良いかな!? 決して悪い事には使わないからさ!」

「あぁ、俺は構わないが」

「別に問題ないよ? お姉ちゃんもMEMちょのファンだから寧ろ喜ぶだろうし」

「へぇー、こんなに綺麗な子が私のファンなんだー。嬉しいなぁ、そーかそーか。何時かこの子にも会って話してみたいね~」

 

MEMちょの自己肯定感が急上昇した気がする。饒舌さに拍車が掛かってるし。本心からお姉ちゃんに会いたそうなので、今度苺プロにでも連れて行こうかな?

 

「……」

「ん、どうしたのマリりん?」

「ん~ん、何でもないよ?」

 

でも妙だな。この子、外見と雰囲気が完全に一致しない。高3という割には大人の色気というか、転生者でもなさそうなのに年長者としての風格を感じる。何故だろう……?

 

其処におれ達の元へ集う森本、熊野、鷲見の3人。

 

「お、凄い美人さん達だな! どんな子?」

「森本、片方は女装したマリアだそ? そう言えばさっき兄弟って聞こえてたけど」

「キレ~、どんな服でも絶対似合いそうな見た目してる!」

 

「………」

 

その3人に少し遅れる形で黒川も遠慮がちに寄って来た。彼女は自分だけ仲間外れが嫌で、でも堂々と混ざりに行く度胸が無い子って印象を受けた。別に邪険にしてる訳じゃないんだけどな……今後はこっちから積極的に輪に入れてあげよう。

 

「星野ルビー。俺の妹でマリアの姉だ」

「実はお姉ちゃん、最近になってアイドルユニットを立ち上げたんだ。ダンスがとっても上手でね、本格的にデビューしたら大人気間違い無しだよ!」

 

おれはここぞとばかりに姉の宣伝、もとい素晴らしさをアピールする。いくら美人でも知名度が無ければ認知して貰えない、不知火が良い例だ。あくまで日常会話の一環として話しているので、番組の趣旨に背く事にはなってない筈だ。

 

「マリりんはお姉ちゃんの事が大好きなんだねー」

 

年上が年下にするような微笑ましい顔のMEMちょがそう言ってきた。普通の高校生でこんな事聞かれたら戸惑うだろう。だがおれは自他共に認めるシスコン、ブラコン、そしてマザコンだ。その辺は周りからどう評価されようと誤魔化す気は無い。だからおれは素直に、そして誇らし気に肯定した。

 

「うん、大好きだよ。勿論、お兄ちゃんの事も。おれにとっては世界一の兄姉だからね」

 

生き地獄だった前世のおれを楽しませてくれた。母さんが意識不明の時に心が壊れかけていたおれに寄り添ってくれた。他人想いの優しい人達で、母さんに負けないくらい愛している。

 

「ありがとなマリア。俺とルビーにとってもお前は可愛い弟だよ」

「えへへ〜」

 

お兄ちゃんに頭を撫でられたおれは思わず顔を綻ばせる。このシーンも撮影されているため恥ずかしい気持ちもあるけど、それ以上に嬉しい気分になる。

 

((((((な、何(や)(なの)(だ)この可愛い生き物……!))))))

 

何故か演者やスタッフみんなが悶えていたけど。

 

余談だが、今回の放送を機に今ガチにおけるおれのキャラが確立された。お兄ちゃん子お姉ちゃん子で、小動物のような愛らしさを感じる本番組の癒し枠として。




因みにマリアは着替え直す時間が無かったので、HRから1限目まで女子高生の姿で過ごしました(つまり衣装提供者もジャージ姿のまま)。

女子高生なマリアは超レアだったので、撮影した写真の一部は高値で取引されたとか。




次回、推しの子で最もキャラの濃い男が登場。
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