【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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50話

私の名前は星野ルビー。

 

「ちょちょちょマリアーー!!?」

「うっさいわねー、見るなら静かに見なさいよ」

 

可愛い弟に全国放送でプレッシャーを掛けられ慌てふためく、苺プロ所属の自称アイドルだ。

 

まだアイドルに成りたての私達は会議――と言う体で駄弁ったり、本を読んだりとのんびり過ごしていた。そんな中でマリアが今ガチで実施した私の宣伝。コレによりコメント欄は私に関する話題で持ちきりとなった。公開された写真に映る姿は容姿端麗で、しかもあの“天使王子”の実の姉。盛り上がらない訳が無い。

 

「ど、どうしよう先輩!? 急いで何か始めないとみんなから色々言われちゃうよー!」

「落ち着きなさい。慌てたって妙案は浮かばないし、仮に浮かんでも失敗したらそれこそ批判の的になりかねないわ」

「で、でも……マリアの事だし、これ絶対分かっててやってるでしょ!?」

 

「酷いなー、おれはお姉ちゃん達を一日でも早く人気アイドルにしたいだけなのにー」

 

「「!!?」」

 

マリア、何時の間に事務室に……。撮影は昨日だったから此処にいても別に不思議じゃないけど、今はその笑顔が兎に角恐ろしかった。明らかに重苦しいオーラを発しているんだもん。

 

ソファーで寝そべって本を読んでいた先輩も、異様な様子で私達を見るマリアにビクッとなり、一瞬で姿勢を正す。

 

「ま、マリア? アンタ何を怒ってるの……?」

「ん? 別に怒ってなんかないよパイセン? ただユニットの立ち上げから2週間くらい経つ筈なのに、何時まで事務室でゴロゴロしてるのかな~って――――暇なの慣れちゃってる?」

「ごふっ!?」

「先輩、大丈夫!? 傷は浅いよ多分……!」

「メッチャ、深く、きちゃったわ……ガフッ」

 

先輩が血を吐いて震えている。子役としての旬が過ぎて以降、長くマトモな仕事にあり付けられなかった彼女に今の一言は相当効いた。

 

「おいルビー」

「ひっ」

 

マリアはそのままゆっくりと歩み寄り、ソファーに腰掛ける私を見下ろす。や、やっぱり怒ってる……。目がまるで笑ってないし、星も真っ黒だし。

 

「一体何してやがる、お前はアイを超えるアイドルを目指すんだろ? まずは出来る事から始めようとか思わねえのかよ?」

 

続けて視線を先輩に変えるマリア。先輩は文字通り蛇に睨まれた蛙の如く動けない。

 

「――お前もだ有馬、長年芸能界にいながら何だその体たらくは? 自分の魅力を磨いて伸し上がるんじゃなかったのか?」

「え、えと……」

 

あわわ、完全に半グレモードじゃん……。相変わらず圧が半端ない。この説教、メッチャ胃に来るんだよね……

 

「で、でもマリア。具体的に何から手をつければ良いのか全然わからなくって……」

「だったら社長やミヤコに相談するとかあるだろうが。何寝ぼけた事ほざいてんだテメェは? ――忘れたのか、此処はアイ達B小町を育てたあの苺プロだぞ?」

「あ」

 

情けない事に指摘されて漸く気付いた。

 

全く持ってその通り。この事務所はアイドルグループを運用した実績とノウハウが豊富にある。そしてそれを主導していたのが社長であり、サポートしていたミヤコさんだ。彼等に聞けばもっと早く動けた筈なのに……。

 

「それとも……本当はやる気ないのか?」

「そ、そんな事ない!」

 

マリアの問いに私は強く反応した。

 

「ずっと夢見ていたアイドルにやっとなれたんだよ! 昔から私を応援してくれている人に、早く輝いている姿を見せたいよ!」

 

脳裏に浮かぶ。病気で家族からも見放されていた私の側にいてくれて、私がアイドルになるのを後押ししてくれたせんせーが。おにいちゃんに生まれ変わった今も、私のライブを楽しみにしてくれている。

 

「でも私はバカで、なったは良いけどそこから先がサッパリで……マリアが言うような当たり前の事すら思い付けなかった……」

 

本来だったら、のんびりしている場合じゃない筈なのに。

 

「ごめんマリア、私どうしたら良いのかな? 一緒に考えて欲しいんだ。――勿論先輩も、ちゃんと真剣に考えよう? 私、活躍するなら絶対に先輩と一緒が良い!」

 

私に気圧された先輩も、申し訳なさそうに頷いた。

 

「私も、ごめんなさい。仕事が無かった日々が続いてて、それに慣れちゃってたみたい……ただ正直アイドルに関しては全くの素人なの。マリア、私からもお願いするわ。――協力して下さい」

 

そう言う先輩と一緒にマリアへ頭を下げると、事務室を支配していた重厚な空気が霧散していく。

 

「……ったく、最初からそうやって人に相談しやがれ。自分達だけで答えが見つからないなら尚更だろ。俺だって伊達にマネージャー見習いやってないんだ。出来る範囲でなら遠慮なく手を貸してやるからよ」

 

怒ると凄く怖いけど……やっぱり優しい子だなぁ、ウチの弟。

 

「――という訳で、早速2人の為に良い人を紹介しまーす♪」

「急にキャラ変わるな! ビックリするでしょうが!?」

 

先輩の鋭いツッコミをスルーし、愛着の湧く声と振る舞いでマリアが事務室の扉を開く。

 

「さーさー、どうぞ入って来て下さーい!」

「え、何? 誰かそこに居るの?」

 

状況的に助っ人を呼んだのかな? 一体どんな人だろう、マリアが連れてきた相手だから凄く気になる。

 

そしてマリアに促されるように、廊下で待機していた人影が姿を見せた。

 

「ピヨ♪」

 

それは潤んだ瞳のヒヨコ覆面で顔を隠した、筋肉隆々の大男。……え、嘘、マジで!?

 

「ぴえヨンだ!」

「ぎゃああああああああああああああああ!!!?」

 

もう先輩ってば騒がしいよ。ちょっと静かにしてくれないかな?

 

「この覆面筋トレ系YouTuberの『ぴえヨン』さんに頼んだら、喜んで協力してれる事になったんだ」

「何それ!? 覆面筋トレ系ってジャンルがまず初耳!」

「ナイスだよマリア。流石は我が自慢の弟!」

「えっへん!」

 

ぴえヨンがマッスルポーズで筋肉を主張させながら、あの超高音ボイスで自己紹介を始める。

 

「こんにちはルビーちゃん。そして有馬くんは初めまして、『ぴえヨン』です。マリアくんから話は聞いてるよ、アイドルを目指してるんだってね!」

「はい! あのぴえヨンが力を貸してくれるなんて、感激です!」

 

ママに次ぐウチの稼ぎ柱、ぴえヨン。そのぶっ飛んだビジュアルとパフォーマンスで小中学生を中心に人気を博している、超売れっ子?YouTuberだ。

 

「ななな何なのよこの変質者は!!?」

「先輩、ぴえヨンに失礼だよ? ウチの稼ぎ柱の1人なんだから」

「こんな成りで!? 嘘でしょ……!?」

「やめてよパイセン。折角力を貸してくれる事になったのに、ぴえヨンさんが気を悪くしたらどうするの? いい加減にしてよね?」

「ハハハッ、まあまあルビーちゃんもマリアくんも。こんな姿なんだ、知らない子なら怖がるのも無理はないさ」

 

流石ピエよん、懐が深い。

 

「今時の小中学生ってこんなのが好きなの? 世の中イビツねー」

 

……なのに先輩ったらまだ言うつもり? そうやって失礼な事を言える立ち場じゃないでしょ?

 

「ぴえヨンさん、ここは先輩にビシッと言ってあげて下さい!」

「予言してあげるよパイセン。10秒後にパイセンは『舐めた口聞いてスンマセンでした!』って言うから、絶対にね?」

「はぁ、何言ってんのよマリア? 私がそんな事言う訳ないでしょ」

 

相変わらず生意気な態度を改めようとしない先輩に、ゆっくりとした足取りで歩み寄るぴえヨン。

 

「所詮、ネットってインパクト勝負って言うか……テレビの企画を流用したキャラビジネスって言うか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ボク年収1億ダヨ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「舐めた口聞いてスンマセンでした!」

 

それはもう見事な土下座だった。

 

「凄いよねーパイセン。()()()でル○ィの懸賞金と同じ額を稼ぐ個人なんて滅多に居ないんだから」

「何か含みのある言い方ね。あと○フィが1億だったのはずっと昔よ」

 

こうして私達はマリアとぴえヨンの協力の下、本格的にアイドル活動を開始する事になった。




ぴえヨン「ルビーちゃん達を説教してる時のマリアくん、まるで人が変わったみたいで怖かったなー。もう全身鳥肌ものだったよ~」

マリア「ヒヨコだけに?」

ぴえヨン「ピヨ(うん)」

重曹「鳴き声で返事するんすか……? ところでマリア、正攻法以外で1億稼げる手段があるの?(ちょっと興味あるかも)」

マリア「えっと――恐喝、特殊詐欺、ヤクの売買、闇金への出資、リフォーム詐欺にホストの護衛、地上げに、あとは……(外道な商売は転生後は一度もやってないけど。母さんを裏切る行為になるし)」

重曹「ほぼ犯罪じゃないの!!!」

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