【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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みなみとの共演編、もし神城組の登場が早かったらVS肉蝮の救援として出せたかもしれないのに……(後の祭り)。撮影場所は横浜市でしたし。


52話のシーンを描きましたのでココにも載せておきます。こんな可愛い子にこんな恐ろしい顔をされたら誰だって絶叫したくなりますね。

【挿絵表示】



54話

熊野の提案で始まったメンバーだけの夕食会。

 

「ホンマにええんやろか? ここ、結構高いところやで?」

「MEMちょ大丈夫? 震えてるみたいだけど」

「ダダダダイジョウブだよマリりん、みなみちゃん! タイタニックに乗った気でいなよ!」

「それ沈む船やん」

 

会場に選ばれたのは都内でも有数の超高級焼肉店。それなり以上に売れている芸能人でもなければ、まず学生だけでは行けないようなお店だ。母さん達には外で食べる旨を伝えておき、おれとお兄ちゃんも参加する事に。

 

「おらぁ特上盛り合わせ追加じゃーい!! 思う存分食えや、餓鬼共!!」

 

「「「わぁい!!」」」

 

事務所との取り分5:5という理由で、7人もの育ち盛りに奢る羽目になったMEMちょ。最早自分の持ち金とサヨナラバイバイは避けられないと悟ったのか。半ば自暴自棄により高い肉を注文する姿に少し罪悪感を覚えた。

 

「……流石に申し訳ないな。俺も彼女と割り勘で出そう」

「ならおれにもそうさせてよお兄ちゃん? 2人で割り勘でも結構な値段でしょ?」

「マリアは大丈夫だから遠慮せず食べろ。俺だって十分稼げてるから」

「良いからやらせて。こう見えて奢るのは慣れてるから」

「それって前世の関係か?」

「うん」

 

前世でも幹部や手下を頻繁に食事へ連れて行っており、常におれの奢りで鱈腹食わせてやっていた。無論、純粋な好意ではなく人を従える為の一環だったけど。その頃の名残か最初はおれが奢ると提案したものの、MEMちょに『若い子が遠慮なんてするな』と丁重に断られてしまった。……彼女の言い方が少し年寄り臭いのは気のせいかな?

 

「アクアさん、マリア君、カイノミ焼けましたよ。どーぞ?」

「サンキュ」

「ありがとう、あかねさん」

 

すると正面に座っていた黒川が、焼きたての肉をおれとお兄ちゃんにそれぞれ渡す。何故か先ほどから彼女はずっとトングを手放さず、自分以外の分の肉を焼き続けていた。

 

「結構慣れた手付きだね。もしかしてあかねさん、接待とかでそういう役目をやらされてるの?」

「え、えぇ。よく分かったねマリア君。特に重役さんや有名プロデューサーがウチに来た時なんかは、よく上からお願いされてるんだ」

 

……あぁこの子、体よくキャバ嬢代わりにされてるんだ。芸能界に限らず未だよく聞くんだよね、綺麗な女性にお酌させるとかそういうの。もうそんな考えは時代遅れなのに。

 

「こっちの事は良いから黒川さんも食べなよ。自分の分くらいは自分で焼けるしさ」

「いえアクアさん、自分精進の身なので! こういう場では絶対トングを手放さないって決めてるんです! 最初は良く焦がして怒られましたが、今では上手に焼けるようになったんですよ?」

 

お兄ちゃんに無理するなと言われても決してトングを放そうとしない黒川。これは相当上の都合良く教育されちゃってるみたい。しかし、このままだと折角の美味しい肉が殆ど食べれないじゃないか。そんな不幸があって良い訳がない。

 

だから焼けそうなカルビを彼女の皿に乗せようとしたところ、おれより先に動く子がいた。

 

「あかねちゃんもよう食べへんと体持たんで? ほらカルビ」

「え、みなみちゃん!? そのトングは……?」

「8人もいるんや。一本だけやと不便やろ? あ、この子も大丈夫そうやな」

「あ、あの……」

 

みなみがもう一本支給されたトングを使い、網に乗っていた肉の殆どを黒川の皿に乗せていく。彼女が何か言いたそうだが、それも敢えてスルーし次々と。あっという間に皿は高級肉の山盛りと化した。

 

「あ、ありがとう……」

「お水、いる?」

「えと、うん、お願いします……」

 

みなみのお陰で漸く黒川も真面に食事を楽しめそうである。

 

(ホント良い子だなぁ、みなみ)

 

困っている人を放っておけない世話焼きな性分がみなみの長所の一つである。収録中でも目立てずみんなの影に埋もれがちな黒川の側にいて、よく一緒にお喋りしたりフォローしたりしている。黒川も満更でも無いようで、なんだかんだ良い友人関係になりつつある。

 

「あ、マーくん。牛ハラミ焼けたけん、お皿出してな?」

「ありがとうみなみ」

 

対して開始当初に”マリみな”のトレンドが上がる程の注目を浴びたおれとみなみの関係は、あれから殆ど進歩していない。恋愛的なアプローチが苦手な事と、本当にみなみに恋心を抱いているのか確信を持てないおれは、せいぜい彼女とは良い友達程度の付き合いしかしていない。つまり学校で過ごすのと本当に変わらない。

 

その為視聴者の”マリみな”熱は次第に冷めていき、現在では専ら鷲見と熊野、そして森本の三角関係が話題の中心となっていた。彼等3人を軸に、ムードメーカー及び癒し枠のおれやみなみ、お兄ちゃんにMEMちょ、そして番組映えが悪くて出番の少ない黒川という図式が出来上がっている。

 

まあ、恋愛リアリティーショーだからってこの番組中に恋人になる必要は無い。当初の予定通り普通の高校生らしく振る舞えているし、番組一の癒しキャラという立場も確立している。鏑木Pの要求には十二分に応えられている筈だ。

 

(みなみとの今後については、ゆっくりと考えていけば良いかな)

 

”――ちょっとちょっと!”

 

――ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしてもっとみなみちゃんへ積極的にアプローチしないの!?』

 

気が付けばおれは脳内応接間でふかふかのソファーに腰を下ろしていた。正面にはガラス製のテーブルが置かれ、おれから見て左のソファーには”羅威刃の城ヶ崎()”が、右のソファーには”7歳の城ヶ崎()”が座って此方を見ていた。”僕”は不満そうな顔でプリプリしている。

 

『いやだって、おれ本気で彼女に恋しているのか未だ分かんないし』

『母さん達にはあんなにいっぱい”大好き”って言ってるじゃない! じゃあみなみちゃんにも”大好き”って言える筈でしょ!?』

『母さん達は家族じゃん……』

 

おれが母さん達に抱くのは親子愛や兄弟愛であり、男女としての愛情は無い。お兄ちゃんとお姉ちゃんの間のみ別だけど。

 

しかしながら7歳の”僕”に親子愛と恋愛の区別が付く筈もなく、照れ顔でモジモジしながら聞いてくる。

 

『でも……好きなんでしょ? みなみちゃんの事』

『そりゃ好きだけど、凄く良い子だし。でもそれはあくまで友達としてだよ?』

 

みなみは芸能界の人間にしては結構純粋な方だ。少なからず野心は持つものの、決して他人を傷付けて伸し上がるような子じゃないのは少し付き合っただけで分かる。相手を問わず優しく世話焼きで、人の機微にも敏感なところがある。褒めると素直に喜んで、可愛らしく笑う様は兎に角魅力的で――。

 

『ほらっ、みなみちゃんの良いところ、いっぱい知ってるじゃない! それだけみなみちゃんを見てるって事でしょ!?』

 

そ、そうなのかな? だがそれでもおれは納得がいかなかった。

 

『でも切っ掛けは母さんに揶揄われたからで、そんな理由で人を好きになるって変じゃない……?』

『変じゃないよ! そもそも人を好きになるのに切っ掛けなんてどうでも良いんだから!』

 

それに、と”僕”は一呼吸を置いてから再び口を開く。

 

『みなみちゃんの写真を見た時の”おれ”、可愛いって思ったでしょ? それってどう考えても一目惚れじゃない?』

『一目、惚れ……?』

『そう! 君は一瞬で恋に落ちちゃったんだ、みなみちゃんがあまりにも可愛過ぎて! いい加減それを自覚しなよ! みなみちゃんの方も、君の事が好きっぽいみたいだし』

 

おれが……おれは、本当にみなみに、恋している……? みなみもおれを意識してる……? 

 

『何を悩んでやがる』

 

そこへ”僕”とおれの遣り取りを眺めているだけだった”俺”が沈黙を解いた。

 

『この脳内で無駄に時間を浪費するくらいなら、さっさと寿みなみの意思を確認しちまえば良いだろうが』

『そうそう、”俺”の言う通り! 好きって正面から言っちゃえ!』

 

直後、今の今まで強気な態度だった”僕”が悲しそうな表情を浮かべる。

 

『……あの地獄だった毎日は終わって、僕たちはやっと青春らしい青春が出来るようになったんだよ? これからも家族ともっといたいし、こうして友達と仲良く食事したいし、バイトとか文化祭とかクリスマスとか楽しみたいし――――恋だって、したい』

 

分かってるよ。”僕”のこの言葉は城ヶ崎賢志、そして星野マリアの願望そのものだ。前世で得られなかった幸せを手に入れて、今なら普通の高校生らしく色んな事が出来る。もう喧嘩や殺し合いに明け暮れる必要もない。

 

それでも……確かめてみて仮に違ってたら、おれは――。

 

『じれったい奴だな、何時まで考え込んでやがる……おいお前』

『……君がやってあげないの?』

『………正直自信がねえ、恋愛に関しては俺も専門外だ』

『うふふ、みなみちゃんをお姫様抱っこした時、凄く動揺してたもんね。――君も”おれ”の事言えなくない?』

『黙れ、早くしろ』

『こっちだって素人なのに……しょうがないなぁ、2人に代わって僕がやってあげるよ』

 

え? ちょっと”僕”、何をする気なの……?

 

『僕に任せて』

 

ま、待って――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――マーくん、こっちのお肉も焼けたで? 食べる?」

「うん食べる!」

 

さてさて、どうしよっかな。僕も恋愛についてはよく分かんないけど、取り敢えずみなみちゃんの事を褒めたり好きだって伝えれば良いかな?

 

「はいどーぞ?」

「ありがとうみなみちゃん、大好き!」

「――ふぇ?」

 

あれ、みなみちゃんお肉落としちゃったよ? みんなも急に静かになったし、どうしたんだろう?

 

「あの、実は聞きたい事があってね……みなみちゃんは僕の事、好き?」

「え、あ、え、す、すきって、マーくんの事? そ、そりゃあ……す、好き?やけど……」

 

どんどん顔が赤くなっていくみなみちゃんの目は濁っていなかった。良かったー、みなみちゃんも僕が好きなんだ。

 

なら、もう後は畳み掛けるだけだよね!

 

「お、おいマリア……急にどうした……?」

「なんかライトくん、さっきより幼い感じがしない?」

「一人称、変わってるよね……?」

 

お兄ちゃん達が何故か困惑しているみたいだけど、今は告白に集中しなきゃ。

 

「やった! みなみちゃんとっても優しくて、困っている人の為に力になってあげられる人だから、こんなに可愛くて良い人と両想いなんて凄く嬉しい!」

「ま、待って、マーくん……」

「みなみちゃんで良かったら―――――僕と付き合って下さい!」

「あ、あわわわわわわ……」

 

よし、きちんと気持ちを伝えたぞ。みなみちゃんも僕の事が好きだって言ってたし、答えは絶対にイエスだよね!

 

「ふ、フライング告白……。しかも皆で焼肉を食べている最中に」

「まだ最終回先なんだけど……」

「マリりん、大勢で食事中の告白はムードもデリカシーもないよぉ……」

 

みんなの視線が僕とみなみちゃんに集中する中、僕はちょっと緊張しながらみなみちゃんからの答えを待った。

 

そして――。

 

「ご、ごめん! ちょっと熱あるから先帰るわ……!!」

 

みなみちゃんは僕の告白を強い言葉で断り、素早く荷物を纏めてお店を後にしちゃった。

 

 

 

 

……

 

………

 

………………あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「焼肉とは豪勢ですねー? 可愛い子を眺めながら食う肉はさぞ美味しかったんでしょうねぇ?」

 

……

 

「いや、ただの付き合いだし」

「嘘だ! 顔から堪能感が溢れ出てるもん!」

 

………

 

「……出てねえよ?」

「目を見て話せ! マリア、そっちからおにいちゃんの目が濁ってるか確認し……ってマリア?」

 

…………

 

「マリア、どうしたの? なんかゾンビみたいに見えるけど?」

 

……………あ、かあさん。

 

「おっと――マリア?」

 

えへへ、かあさんの腕の中、あったかいなぁ……

 

……何だろう、泣きたくなってきちゃった。

 

「ねえアクア、マリアに一体何があったの?」

「あぁ、実はな……」

 

 

 

 

 

「みなみに振られちゃったああああああああ!!」

 

「……との事だ」

「「えぇっ!!?」」

 

その日、おれは久々に母さんと一緒のベッドで眠る事になった。

 

 

 

 

 

振られて凄くショックを受けた辺り、やっぱりおれはみなみの事が好きなのかもしれない。

 

でも、こんな形で自覚したくなかったよ……




脳内会議はかぐや様は告らせたいのオマージュのつもりです。
立ち位置は『おれ=通常かぐや、僕=アホかぐや、俺=氷かぐや』です(裁判長ポジは無し)。


しかし恋愛系はやはり難しい……
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