【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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今回は早めに仕上がりました。

もうじきアニメ第2期ですね、楽しみです。

……でもニコニコでコメ見ながら視聴するつもりだったので、それが出来なくて残念な気分です。


56話

私の名前は有馬かな。

 

「うわっ、このジュース不味……ツイッターでネタにして元取らなきゃ。えっと、コンビニで買った新商品のジュースが激マズで――」

「アホおおおおおおおおおお!!!」

「きゃううッ!!?」

 

コンビニで買った商品の批判をSNSに垂れ込もうなんて暴挙に走る後輩。そんなおバカさんの頭に1発ハリセンをかましてやった、元子役の女優兼新人アイドルだ。

 

「いつつ……何すんの先輩ッ!?」

「アンタが何してんのよッ!? 他所様の商品を不味いとか書き込もうとして……エゴサされたらどうする!? あともうツイッターじゃないわ、今はエックスよ!」

「後半は別にどうでも良くないッ!?」

 

まったく元一般人の素人め、危なかっしいったらありゃしない。アクアとマリアからこの子の事を任せられてるし、私がしっかりと見てあげなきゃダメね。

 

「ルビー。超絶真面目な話するから、耳の穴かっぽじってよく聞いて? こういうのは必ず関係者に検索されてね、最悪その企業からの仕事は二度と来なくなる可能性があるの」

 

私はルビーが落としたスマホを拾い上げ、今まさにポスト直前の批判コメントを見せ付ける。

 

「あと問題はそれだけじゃない。アンタもあの動画の一件で有名になってきてるんだから、今後は一語一句気を付けて発言なさい。最悪炎上に繋がりかねないから」

「い、何時にも増して先輩の圧が強い……」

「私だって炎上とまではいかなくても、膨大な数のアンチコメを散々撃ち込まれてきたのよ? 有名になってファンが増えれば増える程、当然アンチも連鎖的に増加する」

 

行動一つ、言動一つ、ほんの僅かな仕草ですら叩かれる要素に成り得る。知名度のある人間であれば尚更。そして幾ら注意したところでアンチをゼロにする事は不可能。

 

「そういった悪質なコメント等は絶っ対に鵜呑みにしちゃダメよ? 何の生産性も無いどころか、精神的にズタズタにされるだけなんだから。基本的に無視して、どうしても批判的な意見も聞きたいなら家族や友人、知人の話を聞く事。良いわね?」

「え、えっと……」

「返事はハキハキと!」

「は、はい! 分かりました!」

「宜しい!」

 

とはいえ未だ実感が湧かないと言った様子だ。引き続き見守っていく必要があるわね。私はルビーにスマホを返し、作成中のコメントを破棄させた。

 

「これでよしっと――そういえばルビー、今日もアクアとマリアは今ガチの撮影よね?」

「え、うん。そうだけど、どうしたの先輩?」

「いや、ちょっと心配だなって」

 

ぶっちゃけあの二人は多少の誹謗中傷なんて気にも留め無さそうなキャラしてるけど、出演番組があの恋愛リアリティーショーだ。少なからず不安を覚える。

 

「リアリティーショーってのはね、文字通りリアルを映し出すジャンルなの」

「そりゃそうでしょ? ”リアリティー”ショーだもん」

「つまり演じた何らかのキャラではなく、自分そのものの姿が世に出される。作品どうこうではなく、評価も批判も自分自身に対してされるのよ」

 

評価される分にはまだ良い。だが万が一批判や中傷に繋がるような行為をやらかせば恐ろしい展開が待っている。

 

「想像してみなさいルビー、大勢の人間から自分の人格を全否定される様子を」

 

それは正にこの世の終わりと錯覚しても不思議じゃない状況だ。さっきのルビーのやらかしもそう。リアリティーショーでなくとも、自身の発言や行動が世に出回るような行為の中には其処に至るリスクが付き纏う。これは有名人に比べたら多少はマシというだけで、一般人にも起こり得る事。

 

「さっきのアンタ、下手したら不特定大多数から猛烈に叩かれる可能性があったのよ?」

「っ……そう、だったんだね。気を付けないと……」

 

他人事ではないという私の発言に、漸くルビーも想像が付いたのだろう。みるみると顔色が悪くなっていく。そして遠く離れたスタジオで絶賛撮影中の己の兄弟に想いを馳せる。

 

「おにいちゃん達……大丈夫かな?」

「あの二人は見た目以上にしっかりしているし、大丈夫だとは思うんだけどね……」

 

寧ろ気になるのは……

 

「この女ね。リアリティーショーと相性最悪っぽいし」

 

私はスマホで先週放送分の今ガチ動画を再生し、そこに映る因縁の相手を観察する。今まで大して出番が無かったかと思えば、突然の悪女ムーブ。しかも素人にも分かる位に拙いもので、演劇中の彼女の様子からは想像出来ない程に中途半端だった。

 

「急にゆきぽん達の間に割って入るようになったよね、あかねちゃん?」

「……コイツ、どう見ても焦ってるわ。大方出番が削られてるからスタッフのアドバイスでも鵜呑みにして、その通りに実行してるのでしょうけど」

 

これでしっかりと悪女をやれていればまだ良かったかもしれない。しかし実際にはあまりにもお粗末で、鷲見や熊野、森本達の場を乱しては去って行くだけ。女主人公と悪女の対立というよりは、3人が映るカメラに入って自分を存在を誇示し、同時に3人の姿を隠す妨害を繰り返すウザい奴。無論、黒川あかねにそんな意図はないのでしょうけど、彼女をよく知らない視聴者の大半はそうとしか思えなかった。

 

『また邪魔してきたよコイツ……』

『誰だっけ? 黒川あかね? ――あぁ、確かにいたな、影薄いから忘れてたw』

『あかね居ても居なくても一緒じゃない?』

『確かこの女、みなみちゃんにいっぱい気を使わせてたよ? ホント迷惑、みなみちゃんが可哀想』

『あかねクビにして男新メン増やして~!』

『でも良い石鹸使ってそうな肌と髪質ですね、イヒッ』

『は? 何言ってんのコイツ、空気読めよ』

『気持ち悪、変態がいるぞ』

 

何かキモいコメントが一つ混ざってたけど。尚、その発言主に対する誹謗中傷が増えた事で、幾分か黒川あかねへの暴言が落ち着いたが。

 

「……皆いくら何でも言い過ぎだよ」

「これがネットの恐ろしさよ。一度でも何かミスすれば、際限のない悪口が続く。……でも真面目キャラな黒川あかねの事よ。このコメントすら真に受けて、更に焦燥感に駆られて似たような事を繰り返すでしょうね。悪循環に陥っているわ」

「あかねちゃん、必死なだけなのに……あんまり無理しないで欲しいなぁ」

 

(一部除いて)罵詈雑言なコメント欄に対して、ルビーのなんと優しい事か。黒川あかねを本気で心配し、批判する者達に怒りを抱いていた。ホント良い子ね。

 

(これ以上、何事もなく終われば良いのだけど……)

 

しかし現在やっている撮影中で遂に事件が起こってしまう。そして、それは私含めて誰もが予想しない展開へと繋がっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前は黒川あかね。劇団ララライに所属する現役の舞台女優だ。

 

『目立つ為にはどうすればいいかって? そりゃゆきからノブを奪う悪女ムーブだよ。これが出来たらキャラが立つし、間違いなく目立てる。――もちろんこれは指示とかじゃない。でもこういうの出来る子が売れるんだよねぇ』

 

今ガチスタッフのアドバイスを頼りに、早速翌週以降の撮影からゆきちゃんと対立する悪女として振る舞ってみた。しかし結果は芳しくなく、それどころか事情を察知した彼等から逆に気を使われるだけ。みなみちゃんに依存している時と、何も変わらない。

 

(もっと、もっと頑張らないと……)

 

動画のコメント欄で私に関するものは、ほぼ全てが私を非難するものばかり。正直辛い。普段なら気持ち悪いと感じる筈の、髪や肌について称賛してくるコメントが癒しになるくらい。でもスタッフが悪女ムーブが効果的って言うのだから、続けるべきである。

 

(この番組に……何としても爪痕を)

 

「――あかね、最近焦ってる?」

 

思考の渦に飲まれていた私を引き上げたのは、正面に座って私の爪にネイルを施してくれているゆきちゃんだった。内心を見透かされたようで、心臓が跳ね上がりそうな気分になる。

 

「放送も終盤だしね。気持ちは分かるけど」

「別にそんなんじゃ……」

 

ゆきちゃんは本当に凄い。カメラの位置を把握した的確な振る舞いにトーク力。果てはこんな特技まで持っている。今の私ではどう足掻いても手の届かない位置に彼女は立っている。

 

羨ましく、そして妬ましい。

 

「そっ。……でも、そうはさせないよ? 私は私が一番目立つように戦う。悪く思わないでね?」

「……分かってる」

 

どうして私と彼女ではこんなにも違うのか。まるで勝ち目が見えないが、それでも負ける訳にはいかない。

 

社長やマネージャー、私に期待してくれている全ての人達の為にも――。

 

 

 

 

 

 

「あの、ケンゴ君、それでね――」

「ケン! ラブラドール好きって言ってたよね! あっちにでっかいラブラドールいた!」

「えっマジ!?」

 

頑張らなきゃ。

 

「やめてよ!!」

 

目立たなきゃ。

 

「そうやって男に簡単に引っ付いて、やり口に品がな……!」

 

絶対に爪痕を残――。

 

「あかねちゃん!?」

「え、みなみちゃん?」

 

その時後ろから飛んでくるみなみちゃんの叫び声。何時もほんわかとしている彼女がこんなに焦っているなんて、初めてだ。

 

「ゆき!?」

「鷲見さん!?」

「ゆきちゃん!」

 

同時に周囲のメンバーやスタッフ達が騒ぎ始める。何事かと思ってゆきちゃんに視線を向けてみると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の瞳に映ったのは……白く柔らかな頬が裂け、血を流しながら呆然と傷口に手を当てているゆきちゃんの姿。さっき腕を振った際、彼女に施して貰ったネイルで頬が切れたんだ。

 

「あ……あぁ……」

 

ち、違う。爪痕を残すって、そういう意味じゃ……




「死龍~! ネットの皆が私に冷たいんです~! どうか貴方の温もりで癒して下さ~い!」
「暑い! 引っ付き過ぎだ金鳳!」



「……言動も行動もくねくねしてて気持ち悪い人だなあ」 モキュモキュ
「カアッ(せやな)」 ガツガツ
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