【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
マリア「(わざと額に青筋立て、頬を赤らめつつ)こら。肉になったらどうする」
アイ「マリアの顔、きゃわー♥♥♥」
アクア「”死ぬ”の部分、そうアレンジするのか」
ルビー「やっぱ可愛い男の子だと似合いまくりだねー、この名(?)台詞♪」
重曹 (どうしよう、可愛いのに何故かメッチャ怖い……)
暴風雨を突き抜けるように黒塗りのワゴン車が走る。その車内には明らかにアウトローな男達と、攫われ気絶している黒川とみなみがいた。
「兄貴。この子達はこのまま闇医者へ?」
「いや、まだ先に攫った少女達のオペが済んでいない。拘束したまま一旦本部に軟禁する。移動はもう2名のターゲットを確保してからだ」
「承知しました。そちらへ進路を変えます」
佐和田の指示に従い、運転手の男は車を本拠地へ走らせる。
全ては失われかけている大義を取り戻す為。彼等は己の所業が間違っていると感じつつも、目的の為に盲目的になっていた。
再び訪れた黒川邸には警官――それも刑事さんが2名、黒川母に事情を窺っていた。
「しかし、そのおじいさんの証言だけじゃ……それにナンバーも不明となると特定には時間が掛かるかと」
「そんな……! お願いします! どうか娘を助けて下さい……!」
「も、勿論ですよ黒川さん。全力で探させて頂きますから」
当然、捜索に関わっていたおれ達も事情聴取を受ける事になり、娘が誘拐されたという話を聞いた黒川母は半ばパニック状態。男の刑事さんに詰め寄っている。
その傍らでおれ達5人は女の刑事さんから説明を受けていた。
「最近、中学生から大学生くらいまでの年齢の女性が何人も行方不明になっているので、警視庁では捜査本部が立ち上げられたのです。今回の通報内容も女子高生が行方不明と窺ったので、何らかの情報を得られると思い来ました」
「そうだったんですね」
それで刑事クラスの警察官が来てくれたのか。
「あの……みなみと、黒川は」
「安心して僕、女の子達は必ず私達警察が見付けて助け出してみせるから」
「あ、はい……宜しくお願いしま――」
……あれ、おかしいな? この遣り取りに何処か既視感を覚えるんだけど。
「それにしても久しぶりだね天使王子くん? 娘が貴方の大ファンでね、この前はあの子にサインを書いてくれてありがとう」
すると女刑事さんが自分を知っているような口ぶりで接してきた。サイン……? 確か数ヶ月前にそんな事があったっけ。
「えっ? マリア、この女の刑事さんと知り合いなの?」
「アンタも隅に置けない男ね。まあこのアクアの弟なら納得しかないかもだけど」
「おい有馬、どうしてそこで俺が出てくるんだよ」
「「スケコマシ三太夫」」
「何だよルビーまで……」
「いや、おれもさっぱりなんだけど……何処かでお会いしましたか?」
「う~ん、この状況で言うのもなんだけど……」
おれの質問に女刑事さんは右手を見せてきた。小さな歯型らしき跡が付いている。まるで幼稚園児くらいの子供に噛まれたかのようだ。
「凄く痛かったわ」
……? ダメだ、さっぱり分かんない。おれが該当する記憶を絞り出そうとしていると、お兄ちゃんが気まずい表情で女刑事さんに頭を下げた。
「その節は弟が申し訳ありませんでした」
「あー、別に責めてる訳じゃないから。此方こそ、当時の事を思い出させちゃったみたいで、ごめんなさいね?」
お兄ちゃんは何か知っているらしい。みなみ達を保護して落ち着いたら詳細を聞いてみよう。
「芹澤、本庁に戻るぞ?」
「了解しました。――では我々はこれにて失礼致します。くれぐれも女性の方々は単独行動を控えるようお願いしますね?」
「分かりました、ありがとうございます」
刑事さん達が去った後に憔悴している黒川母と二言三言交わし、おれ達も捜索を中断して一旦帰路に着く。
本音を言えば見付けるまで帰りたくない。況してや攫われたとあっては居ても立っても居られないのだ。しかし流石に遅くなり過ぎた上に風がより強まってきている。これ以上は自分達の身も危な過ぎた。MEMちょ達4人にも明日の朝に仕切り直しを通達し、今日のところは解散となった。
「あかねちゃんのお母さん、すっかり元気をなくしちゃったね……」
「愛娘が誘拐されたんだもの、当然でしょうね」
「……」
「どうしたの、マリア。難しそうな顔してるよ?」
「母さん……ううん、大丈夫。やっぱりおれって母さんには弱いなって思っただけ」
「?」
涙を流す黒川母がどうしても前世の母と重なってしまい、脳にこびり付く。
安全圏から好き勝手に宣うネットの住民共、黒川を悪者に仕立て上げ彼女とみなみを炎上させた番組、そして2人を誘拐した謎の集団。おれはこの事態を引き起こした連中に怒りが湧き上がって仕方がなかった。
(しかも俺の仲間だと承知の上でこんなバカな真似してやがるんだ)
どいつもコイツも……この星野マリアを舐めるのもいい加減しろよ?
――翌日の早朝。あれだけ猛威を振るっていた台風は完全に過ぎ去り、雲の切れ目から初夏の日差しが注がれている。
だが晴れ晴れとした天候とは真逆に、おれ達の心情は暗く、そして少なくない焦りを宿していた。誰もが行方不明になったみなみ達が心配で仕方なく、ほぼ全員がたいして眠れていない。
「昨日聞いたけど、誘拐って本当なのマリりん?」
「直接見た訳じゃないけど、ドヤ街の長老を名乗るおじいさんが車に乗せられる2人を目撃したらしいよ」
「そのじいさん、信用出来るのか? 嘘を吐いている可能性もあるんじゃ……?」
「熊野の懸念も最もだけど、目を見た限りでは少なくとも嘘を吐いている様子はなかったね」
「ほ、ホントかよ……?」
実際、あの老人の目は全く濁ってなかった。しかし、そんな漫画みたいな能力を持っていると知らない熊野達は怪訝な表情を浮かべるのみ。困ったな、特殊能力はあまり大勢に知られたくないんだけど……
「マリア、これでも人を見る目に長けてるんだ。凄いでしょ?」
「俺達もマリアの鋭い勘には度々助けられているんだ。信用して貰って構わない」
「あ、あぁ。アっくん達がそう言うなら……」
そこへ助け船を出してくれたお兄ちゃんとお姉ちゃんには、本当に感謝しかない。
捜索メンバーは今ガチの仲間とお姉ちゃん、そしてパイセンの8名。本当は母さんも参加したがっていたが、朝から絶対に外せない番組の撮影があるとの事で社長に急かされていた。おれ達からも人数は揃っているから大丈夫と、渋る母さんを無理矢理送り出す事にした。
「警察の人の話だと若い女性が複数人行方不明みたい。だから昨日みたいに2グループに分かれて調査と捜索をやっていこうか。女の子は絶対に単独行動しないようにね?」
「分かったよ」
「オッケー」
「おぉ……マリりんがリーダーの器過ぎる」
「あぁ、あっという間に主導的立場になったな」
そりゃあ元とはいえ巨大マフィアのボスですから。
さて、紅林が直接護衛に就いているからには母さんの方の心配は少ないだろう。そして万一此方へ連中が襲ってくる場合も想定して、各チームには武闘派を1名以上配置する。
この中で戦闘者はおれ、お兄ちゃん、お姉ちゃんの3名のみ。戦力を均等にするならお兄ちゃんお姉ちゃんはペアで組ませ、おれは二人とは別のチームに入った方が良い。
「それからこれ、GPSと警報装置を用意したから、一人1セットずつ持っておいて? もし襲われた時に他のメンバーがすぐ異常に気付けるようにしたいからさ」
「うん、ありがとマリアくん?」
「ら、ライトくん、とんでもなく用意周到だな……」
「女の子を誘拐するような人間が真面な訳ないでしょ? 最悪の場合も想定して動かなきゃ」
「まあそりゃそうだけど……」
熊野と森本、鷲見、MEMちょ、そしてパイセンの5人がおれの異様なまでの警戒っぷりに少し引きかけていたが、用心というのは極端くらいが丁度良い。経験上、いきなり銃撃されたり100㎞で車を突っ込ませてくる可能性だって否定できないのだ。
「贅沢言えば武装もさせたいけど、武器なんて手に入らないからなぁ……」
「「「「「いやいやいやいやいやッ!!?」」」」」
おれの物騒発言にお兄ちゃんとお姉ちゃん以外の全員から強烈なツッコミが入った。お兄ちゃんとお姉ちゃんも苦笑いだ。
「アンタって奴は、また怖い事言ってんじゃないわよッ! 私達の目的はあかね達の保護ッ!! 戦争でも始めるつもり……!!?」
「もー、耳元で叫ばないでよパイセン。言われなくても分かってるってばー」
でも戦争、ね……最悪の可能性として有り得るかも。
「兎に角、まずは歩道橋周辺の住宅街に絞って聞き込みをやっていこう。12時に一度此処に集まって情報共有って事で、宜しくねみんな?」
「任せとけ!」
「おう」
「分かったよ!」
「絶対にみなみちゃんとあかねちゃんを見付けてみせるから!」
警察も動いているとはいえ、やはり仲間の危機にみんな動かずにはいられなかった。全員が気合いの入った返事と共に動き出そうとする。
「――あれ、星野くんじゃないですか?」
……ただ、その必要は現れた顔見知りの存在ですぐに無くなってしまったけど。
「かぐやさん! 皆さんも!」
「お久しぶりですね」
「やっほー!」
「久しぶりー、星野くーん!」
「どうしたのですか、こんな所で?」
かぐやさん、圭さん、藤原さん。更には早坂さんと伊井野さんまで。
この秀智院学園OB勢との再会により、事態は大きく動き出す。
次回、とあるバグ大キャラが登場します。