【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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龍珠組は原作でも情報が少ないのでオリジナルを多分に含んでいます。


62話

「――成程、マリアくんの御友人達が……」

「一大事じゃないですか! 一刻も早く助けないと!」

「是非私達にも協力させて。きっと役に立つから」

 

「皆さん、そう言って頂けると助かります」

 

捜索チームは予定を変更し、かぐやさん達と一緒に白銀スタジオへ向かう。その道中で経緯を説明すると即座に協力を申し出て下さった。

 

「マジかよ……あの秀知院の卒業生って事は」

「みんな良い所のお嬢様じゃん。道理で全員気品に溢れてる訳だわ」

「マリりん、凄い人達と知り合いだったんだね……」

 

最後尾を歩くメンバーの一部が憧れにも似た雰囲気を漏らしていたが、まあ相手は日本有数の権力者の卵達。住んでいる世界が違い過ぎると感じても無理はないだろう。

 

とはいえ、前世で関係を持っていた醜い嘘塗れの政治家や、芸能関係者達とは比較にならないくらい善良な人達だ。同じ権力者でもここまで違うのかと。信頼して貰っても大丈夫だ。

 

「実はこの手の問題に強そうな方がスタジオにいらっしゃるので、彼女にも協力を仰いでみましょうか」

「彼女、ですか?」

 

かぐやさん達が持っている荷物は、全てがパーティー用の食材やグッズばかり。今日は久々に集まろうという話になったので、学園のOB達を現在スタジオに招いているとの事。かぐやさんが言う人物も、勿論其処にいる。

 

「龍珠組の御令嬢――『龍珠桃』さんという方でしてね。彼女は私達より1世代前の生徒会役員で、御行さんの友人でもあるの」

「龍珠組? 龍珠組ってあの……」

 

これまたとんでもないビッグネームが出てきちゃったね。それも裏社会の。

 

――超巨大極道組織、『龍珠組』。関東裏社会に強大な影響力を持つ、日本最大の広域指定暴力団だ。

 

この組は所属する多数のインテリヤクザ達が手掛ける真っ当な事業で悉く成功を収めており、多くの極道が暴対法により廃れていく中で唯一拡大傾向にある。20年程前までは中堅規模の老舗ヤクザでしかなかったが、今やかつて日本最大と謳われた京極組はおろか、西の天王寺組すら超える大組織と化している。

 

何せ構成員のみで見ても総勢1万人超えと、全盛期の羅威刃を軽く凌駕しているのだ。その成長速度は極めて驚異的で、おれも天羽・京極・獅子王の次にターゲットとして狙っていた程である。最も、そのおれが死んだ事で羅威刃VS龍珠組の龍刃戦争(仮称)は勃発しなかったが。

 

閑話休題。

 

「あの、すんません……今の話、これから行くところにヤクザがいるって事すか?」

 

かぐやさんにそう尋ねる熊野の声は少し震えていた。……考えてみればこれが堅気として当然の反応だろう。

 

「ヤクザではありませんよ。厳密にはヤクザの親分の娘さんですわ」

 

裏社会に良いイメージを持つ人間などいない。そんな世界の住人の関係者と聞いて、心穏やかでいられる一般人はどれだけいるのか。事実、顔を青ざめる今ガチメンバーも少なくなかった。

 

「えぇ!!? いやちょっと……!?」

「だだだだ大丈夫なんですよねその人……!?」

 

熊野と鷲見が抱き合い怯える。仲良しかよ。仲良しだったわ。

 

「怖がらなくても大丈夫よ。彼女個人はとても良い人ですから」

「わお、仲良いですねー! もしやお二人とも恋人関係なんですか? 思えば今ガチでも結構イチャイチャしてましたもんね!」

 

「あ、いや……!」

「わ、私とノブはまだそんな関係じゃ……!?」

 

「ほうほう、”まだ”ですか……つまり、遠くない内になるつもりではいると」

 

「「揚げ足を取らないで下さい……!」」

 

案の定、恋愛オタクな藤原さんに食い付かれて慌てる二人。結局鷲見が“まだ”なんて言ったせいで、彼等はスタジオに着くまで弄られ続ける羽目に。

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました」

「――おう、お帰りかぐや……ってかなりの大所帯になってるな」

 

スタジオの扉を開けると、出迎えてくれたのは目付きの悪い(というより寝不足でクマが出来ている)金髪の男性。かぐやさんの夫で白銀製薬の社長、『白銀御行』さんだ。

 

「御行さん、ご無沙汰してます」

「星野くんじゃないか、久しぶりだな。後ろの子達は高校生くらいに見えるが、もしかして君の友達かい?」

「はい、友人と兄姉です」

「そうか。外は暑かっただろう? みんなも中でゆっくりしてってくれ」

「ありがとうございます」

 

おれ達は”おじゃましまーす”と言って入室していく。中には御行さん以外にも彼の友人数名がくつろいでおり、その内の一人がおれに気付いて手を振ってくる。御行さんの後輩にして大親友の『石上優』さん。既におれと何度か顔合わせしている相手だ。

 

「やあ星野くん、元気そうだね。今ガチ見させて貰ってるよ」

「石上さん、お久しぶりです」

「あら。この子達、殆ど見た事のある芸能人ばかりじゃない」

「わー、美男美女だらけね~!」

 

彼を皮切りに続々と集まってくる秀知院学園OBの皆さまを、かぐやさんが紹介してくれた。世界的名医の孫にして本人も優秀な医者である『田沼翼』さんと、経団連会長の孫娘で田沼さんの伴侶の『田沼渚』(旧姓:柏木)さん。先の二人へ時折妬ましそうに視線を送る四条財閥の令嬢、『四条眞妃』さん。誰もが日本という国を主導して牽引していく面子ばかりだ。

 

「お帰りミコちゃん」

「うん。ただいま、こばちゃん。頼んでいた物も買って来たよ」

「ありがとう、これ好きなんだー」

 

「嘘!? あの大仏こばちもいるー!!」

 

更には芸能界の有名人も1名混ざっていた。それはお姉ちゃんが目を輝かせながら注目している美女。伊井野さんの親友でタレントの『大仏こばち』だ。元々ジュニアアイドルとして早くから芸能界入りしていたが、諸事情で長期間活動を休止していた。その後は高校卒業を機に復帰し、人気番組のMCを務めるなど幅広い分野で活躍している。

 

「……ミコちゃん、あそこで私を見て震えてる女の子ってさ――」

「知ってるのこばちゃん? 何でも星野君――あそこで白銀会長と話してる男の子がいるでしょ? かぐや先輩が担当してるモデルの子なんだけど、彼のお姉さんらしいよ? 因みにあっちにいる凄いイケメンがお兄さん」

「ふーん、道理でそっくりな訳だ。……しかし三人とも物凄く整ったルックスね。全員近い内に大物になりそうな予感――ちょっと挨拶してきて良いかな?」

「うん、分かった」

 

そんな大仏さんが興味深そうにお姉ちゃんと、そしてパイセンの元へ歩み寄る。

 

「どうも、貴女達の事なら知ってるわ。あのB小町でしょ? この間ぴえヨンチャンネルとコラボしてた。名前は確か……星野ルビーさんと有馬かなさんで合ってる?」

「はい、そうなんです! 先輩先輩、あのこばちさんに名前覚えられちゃってるよー私達!」

「分かったから肩揺らすんじゃないわよルビー!」

「大変だったでしょ、あのブートダンス? 彼から聞いたけど1時間無編集で踊ったんだって? 凄いじゃん」

「ありがとうございます! ……ん? こばちさんってぴえヨンと知り合いなんですか?」

「まあ昔ちょっとね」

 

へー、ぴえヨンってあの大仏さんと昔馴染みの関係だったのか。世間はおれが思っているよりも狭いんだなあ……

 

そして――。

 

「おーい! 龍珠先輩も寝てないでこっち来て下さいよー。あの今ガチに参加してる芸能人の子が何人も来てますよー」

「……あぁ? ったく、しょうがねえな」

 

部屋の奥のソファーで眠っていた美女が起き上がり、気だるそうな足取りでやって来る。黒塗りのスーツで身を包み、短く纏められた銀髪から覗く眼光はとても鋭い。傍から見るとバリバリのキャリアウーマンといった印象である。

 

「ご紹介致します。彼女が道中でお話ししていた龍珠桃さんですわ」

「龍珠桃だ。龍珠組って極道のところで組長の娘をやってる。まあ宜しく」

 

彼女こそ広域指定暴力団『龍珠組』組長の実の娘、『龍珠桃』である。

 

「……それよりかぐや、コイツ等もう私の事知ってるみてえだが、何か私に関する話題でもあったのか?」

「えぇ、実は――」

「待ってかぐやさん。そこから先はおれが話しますね?」

「あ? 何だ坊主、初めて見る顔だな」

 

もしかしたら敵対していたマフィアの生まれ変わりです……なんて言える訳もなく。

 

「初めまして龍珠桃さん。かぐやさんから話は聞いています。芸能人の星野マリアと申します。実は僕達に降り掛かった不幸について、是非龍珠さんにお話を聞いて貰いたいのです」

「……とんでもなく大変な事態なのは察しが付いたよ。まあ良いや、聞かせてくれないか?」

 

かぐやさんの言った通り、この人一見きつそうな性格しててその実お人好しだ。善良な性格の令嬢といい、真っ当なシノギしかしない姿勢といい、龍珠組は根っからの任侠者なんだね。それでいて羅威刃を凌駕する一大勢力を築けている辺り、途轍もない商才に恵まれているようだ。

 

……だから鷲見、MEMちょ、熊野、パイセン。怖がっておれやかぐやさん達の後ろに隠れないでくれる?

 

「ちょっとみんな龍珠さんに失礼だよ? こっちはお願いする立ち場なの分かってる?」

「……別に構やしないさ。ヤクザはヤクザ。どれだけ綺麗に取り繕ってもアウトローに変わりはないんだからな」

 

そう溜息を吐く龍珠さんの声色は、諦めにも近い感情が籠っていた。ヤクザの娘なんて肩書を生まれながらにして背負わされているのだ。今日まで色々と苦労してきたに違いない。

 

 

 

 

 

その後、立ち話もなんだという事で全員ソファーに腰掛け、龍珠さんとおれの会話に傍で耳を傾ける。

 

「事情は把握した。ダチ二人が不審な連中に誘拐されちまったと。……私の勘だが、そのじいさんが見たって言う奴等。どうも裏の人間の匂いがプンプンしてきて仕方ねえ」

「おじいさんの話だと、犯人達は統率の取れた動きをしている印象だったらしいです」

「ふむ。益々素人の可能性が低くなったな」

 

話しを聞き終えた龍珠さんは腕組をして考え込む。巨大極道の中枢に身を置いている人物だ。仮に本当に裏社会の人間が犯人なら、尚更有力な案を持ってる筈だ。おれと高校生組は期待の籠った眼差しで彼女の次の言葉を待つ。

 

「――よし、アイツに聞いてみるか」

「アイツ?」

 

龍珠さんが出した案、それは裏社会に詳しい人物とコンタクトを取る事だった。

 

「うちの組が懇意にしている情報屋だよ。奴なら今回の誘拐事件の情報も掴んでいる可能性が高い。早速呼び出してみるから少し待っとけ」

「分かりました」

 

そう言って龍珠さんは連絡の為に一旦外へ。

 

「折角来て下さったのですし、お菓子でも食べますか皆さん?」

「わー、美味しそー!」

「良いんですか? いただきまーす!」

「スゲエ、どれもこれも俺達じゃ口にする機会の無さそうな高級品ばかりだ……」

「お、お金持ちだわ……」

 

幸い件の情報屋はすぐ近くにいたようで、15分もあれば白銀スタジオに来れるとの事。その間おれ達はお茶と菓子を嗜みながらかぐやさん達と談笑に耽る。

 

みなみと黒川の安否を思うと全員素直に楽しめた訳じゃなかったが、それでも緊張しっぱなしだったのが幾分か落ち着いた。

 

適度な休息、即ち重要。

 

 

 

 

 

「――まさか龍珠組の御令嬢直々の御依頼とはな。光栄な話だ」

 

連絡からぴったり15分。龍珠さんが呼び出した情報屋がスタジオに現れた。長い青髪に、全身を覆うように隠す漆黒のロングコートを纏った怪しい男。おれと龍珠さん以外の全員が、その出で立ち故に訝し気な視線を送る。

 

(あの男、まさか……)

 

おれは彼の素性を一早く見抜いた。京羅戦争で此方の動きを探っている人間の存在に気付き、調べていたからだ。結局直前でガラを躱されてしまったが、その正体はある程度把握出来ている。

 

「悪いな風谷。大まかな事情は電話でも伝えた通りだが、事態は急を要するんだ」

「構いませんぜ。俺としても是非アンタ達には知って貰いたいと思ってたところだ。寧ろこれ程の有力者が集う中でそれを伝える場を設けてくれた事、感謝しますよ」

 

男の名は風谷。あの京極組御用達の情報屋である。




マリアくん、味方が質量ともに凄まじい……。もうこれ無知でもなければ誰も手が出せないんじゃ?

彼or彼の大事な人達に手を出す、即ち死(主に社会的な意味で)。
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