【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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香坂「かつて裏社会の悪魔と呼ばれ恐れられた男が、とても魅力的なお偉いさん達の後ろ盾を得てカチコミを掛けようとしています。さて、敵さんはどうなるでしょう?」

辰巳「(色んな意味で)死にます」

香坂「し・か・も。何も知らない敵さんはそこへ火に油を注ぐつもりです。どうなるでしょう?」

タンタン「もっと(色んな意味で)死んじゃうね」

鳳崎「臭い飯永遠に喰わされるのは間違いなさそうやな」

深瀬「未だに自分等が絶体絶命なの知らないままなのが哀れですね……」

反町「その無能どもはリスクヘッジがなってない。誘拐した餓鬼の関係者を碌に調べもしないから自滅するんだ。足の付かない孤児のみに狙いを絞れば良かったものを」

烏丸「秀智院学園出身の権力者にサツ、紅鬼の弟子にコロシの天羽組。そして悪魔王子。敵が多過ぎて逆に同情しそうです」


64話

昼頃。朝方はあんなに晴れていたのに再び雲行きが怪しくなってきた。おれ達高校生はかぐやさん達に帰宅するよう言われ、スタジオを出て人気の少ない道に差し掛かったところだ。

 

『小島の了解を得た。4時間足らずで風見組と闇医者の所に警察を送り込むとの事だ』

 

龍珠さんが小島さんと連絡を取って既に1時間。長くてもあと3時間で風見組はこの世から消滅する。おれ達はみなみと黒川が無事保護される事を祈るばかりである。

 

「マリア」

 

その途中で話し掛けてくるお兄ちゃん。おれ達2人はみんなから少し離れた最後尾を歩いていた。

 

「お前、ヤクザのところへ特攻するつもりだったろ?」

「おっ、流石お兄ちゃん。全てお見通しだったなんてね」

「……やっぱりか。16年も一緒にいるんだ。お前の性格は十分理解しているつもりだ。あかね達が捕まっているのに、お前が黙って何もしない訳がない」

 

普段からクールで無表情に近いお兄ちゃんの顔に、少なからず疑問の色が宿る。

 

「だから意外だと思ったよ。白銀さん達の言う事を素直に聞くなんてな」

「お兄ちゃん。おれはお兄ちゃん達と同じ、何処にでもいる“普通の人間”なんだよ?」

 

カチコむまでもなく警察の捜査で悪党は全員逮捕され、女の子達は全員保護されるから、だけが理由じゃない。大前提として、堅気というのは率先してヤクザを潰しに掛かるような存在じゃないのだ。

 

「とっくに半グレからは足を洗った身なんだから」

 

何処の世界に反社へ直接殴り込む高校生がいるんだ、って話だよ。

 

「警察がすぐに動いてくれるなら、おれは信じて吉報を待つ。そう判断したまでだよ」

「……そうか、我慢して耐えたんだな」

「……当たり前じゃん。本当は1秒でも早くみなみ達を助けたいよ」

 

救出されるまで、あと3時間と少し。たった3時間、されど3時間。その短時間でみなみが危険な目に遭っていたらと思うと、やはり気が気でない。このまま敵本部へ直行したい気持ちと、一般人らしく待ち続けるべきという気持ちが鬩ぎ合う。

 

分厚い雲で薄暗くなった道を、後ろから接近してくる1台の車がライトで明るく照らしてくれる。

 

 

 

そして、そのままおれ達の横を通過……した直後に急停止する。

 

 

 

(あれ……? あの車、どうして道の真ん中で止まったんだろう?)

 

道の端に寄せるでもなく、まるで往来を妨害するかのような黒塗りのワゴン車………………黒のワゴン車?

 

「全員、反対方向へ走れ!!」

 

嫌な予感しかしない。おれは咄嗟に叫んだ。

 

「え、マリりん?」

「どうしたんだいライトく」

「良いから走るんだ! グズグズしない!!」

「「は、はいぃ!!」」

 

しかし相手は更なる一手を繰り出しきた。

 

「な、もう1台か……!」

 

回れ右して逃げ出そうとするおれ達の前にもう1台、同じ黒塗りのワゴン車が現れる。しかもスピードを落とす事なく此方へ迫ってきている。

 

「ちょっと、嘘でしょ!? 本気で轢くつもり!?」

「マリア!」

「分かってるよお兄ちゃん! みんな避けて……!」

「んな無茶なライトくん!?」

「やらなきゃ大怪我だよ、横に飛ぶんだ!!」

 

おれ達は慌てて突っ込んでくるワゴン車を回避した。突然の事だった為、何人もの仲間が地面に転がり、服が汚れる。しかし何故か車はおれ達を狙わず、綺麗に避けてすぐ側で停車した。

 

轢かれるとおれ達に思わせて回避させ、それによって大きな隙を作らせる。相手の目的は最初からおれ達を殺すつもりではなかった。

 

「むぐっ!?」

 

2台のワゴン車から素早く降り立つフード姿の男達。その数は合計8人。奴等は態勢を立て直す前におれ達に襲い掛かり、まずは鷲見を数人で拘束する。屈強そうな男が何人も相手では力及ばず、鷲見は軽々とワゴン車に乗せられてしまう。

 

「ゆき……!!」

 

当然、想い人が誘拐されるのを目の当たりにした熊野が黙っている訳がない。

 

「うぉおおおおおお!! ゆきを放せぇえええええ!!!」

「ぐあッ!?」

 

全力疾走で一人の男にタックルをかまし、勢いそのままにワゴン車の中へ突っ込んでしまった。

 

「ど、どうする!?」

「時間が無い、構わん出せ! おい、その餓鬼を早く黙らせろ!!」

 

既に乗っていた運転手に指示を出し、最初の1台が急発進する。捕われた鷲見と、助けに入った熊野を乗せて。

 

「ゆき! くまのん!」

 

MEMちょが走り去るワゴン車に乗せられた仲間に手を伸ばして叫ぶが、状況は未だに緊迫している。8人中4人が鷲見達を連れ去ったが、残る4人が引き続きおれ達を狙う。

 

「いきなり何すんだアンタ等はよ!!?」

「ゆきぽん達を返せこの野郎!!」

 

「ぎゃばッ!!?」

「ごべへッ!!?」

 

しかし相手は高校生と舐めていたのが運の尽き。お兄ちゃんの華麗な投げ技とお姉ちゃんの強烈なパンチが敵にお見舞いされる。それを見て尻餅を付いたまま口をあんぐりと開けるパイセン。

 

「ななな何なのアンタ達!? メッチャ強ッ……!!」

 

パイセンからすれば、一介の高校生がヤバそうな大人達を一方的しばくという漫画宛らな光景。驚くのも無理はないだろう。

 

……なんて考え事をしていたら、背後から素早く迫る人影に羽交い絞めにされてしまう。

 

「むぐ」

 

そう、連中の標的は鷲見。そして、おれだったのだ。

 

……

 

………

 

…………

 

ちょっと、おれ男なんですが……

 

「おにいちゃん大変、マリアが!!」

「何、マリア……!」

「マリりん!?」

 

成す術なく攫われていくおれに気付いたお兄ちゃん達の叫び声。それを耳にしながらおれはワゴン車に引き摺り込まれる。

 

「よし、ターゲットは確保した! ずらかるぞ!」

「へ、ヘイッ!」

 

襲ってきた連中全員が電光石火の勢いでワゴン車へ飛び乗る。お兄ちゃん達にブチのめされた2人も気合で動いて車に乗り込み、扉が閉まりきるのを待たずして発進した。

 

残された面子は叫び追い掛けようとするも無意味だ。

 

「マリア! ゆきぽん!」

「何なの、何が起きたってのよ!?」

「まさか、あれが風谷さんの言っていた風見組ってヤクザじゃ!?」

「いいから警察に……いや、さっきの秀智院の人達にも連絡しよう!」

 

森本が通報の為にスマホを操作する傍らで、お兄ちゃんだけは疑問に満ちた表情をしていた。

 

「マリアの奴、こんなあっさりと捕まるような奴だったっけ……?」

 

 

 

 

 

……フンッ、どれだけ俺を舐めたら気が済むんだコイツ等は。

 

「大人しくしてろよ?」

 

”おれ”がそう言うならと、最初はサツに任せるつもりだったが――やっぱ気が変わった。こうなっちまったら仕方ねえ。って言うか、もう完全にキレた。

 

「……する訳ねえだろ?」

 

俺は自分を羽交い絞めにしたまま改造スタンガンで意識を飛ばそうとしてくる男の手首を掴む。

 

「……え? え?? (な、なんだ、この握力は? 全く振り解けねえ)」

 

――風見組、この俺を舐めた事を一生後悔させてやる。とことんズタボロにしてやるよ。

 

「馬鹿なのかお前?」

 

「ごべべべべべべべべべべべべべッ!!!!!?」

 

取り敢えず男の手首をスタンガンごと強引に捻じ曲げ、押し当てた顔面に高圧電流をお見舞いしてやった。奴は不快な声を発しながら意識を飛ばしたよ。

 

「な、何してくれとんじゃ貴さががががががががッ!!?」

「え、何言おうとしたんだ? 聞こえねえぞ」

 

すかさず隣に座っていたヤクザにも改造スタンガンで意識を刈り取る。

 

「このクソ餓鬼が!! 極道舐めんなガッ!?」

「うるせえ、狭い車内で喚くな」

 

同じく後部座席にいたもう一人が騒ぎ出したので、顔面を素早く掴んで黙らせる。

 

「窓から顔出して外で叫んでろ」

「げびゃあ!!?」

 

そしてサイドガラスをかち割るつもりで叩き付けた。ソイツは突き破った窓ガラスから頭部を露出させた状態で気を失った。

 

「なんだ叫ばねえな。大勢に見られるのが恥ずかしいのか? シャイかよテメエ」

「テメエ、ヤクザ敵に回してタダで済むとでもギャアアアア!!?」

 

助手席の奴も五月蠅かったので、スタンガンで黙らせる事に。これでワゴン車に乗っているヤクザのうち、4人が無力化された。残るは運転手ただ一人。

 

「おい、止まれ」

「な、何なんだよテメエは……」

 

俺は運転手に命令を出したが、一向に停車させる様子がない。お前、この俺に2度言わせるのか? 良い度胸してんじゃねえか。

 

「だーれだ♪」

「ぎゃああああ止めろ、目を隠すな……!」

 

でも折角可愛く生まれ変われたんだし、違った形で車を停めてあげよっと♪

 

……おっとコンクリの壁か。このままだと衝突事故だな。

 

「はい、とーまれ♪」

 

俺は奴の目を隠していた手を離す。当然運転中にこんな危険な真似してきた俺に文句を垂れようとするが、そんな余裕は今ねえだろうが。

 

「テメエ何しやがる!!?」

「ついでにシートベルトも外してあげるね?」

「おいゴラッ、ってうぁあああああああ!!?」

 

ほらほらほら。ブレーキ掛けねえと車の正面ガラス突き破って、コンクリの壁に頭からぶつかっちまうぞ?

 

「うぉおおおおお!!?」

「おぉっ、良いドライブテクだ!」

 

すごいじゃねえか、衝突するギリギリで止めるなんて。うん、やっぱ口で言うよりこっちの方が確実に車を停められるな。

 

「よっと失礼。――あ、邪魔」

 

その隙に助手席へ滑り込んだ俺は、気絶しているヤクザを外へ蹴り飛ばした。落ち着きを取り戻し、俺の行動の一部始終を見た運転手がガチギレする。

 

「テメエクソ餓鬼! こんな事してタダで済むと思ってんのか!? 俺達を誰だと思ってやが……」

「知ってるよ、風見組だろ? 極道の癖に堅気の少女に手を上げる仁義外れの」

 

物凄くどの口がな発言を繰り出す化石の言動を遮り、俺はある事を命令する。

 

「ところで俺の仲間達を何処へ連れ去ったんだ? ――案内しろ」

 

そしたら”今日だけは”無事に家へ帰れるかもしれないぞ。もっとも、サツに目を付けられた時点でお前等全員終わりなんだけどな。

 

「あぁ!!? ふざけんじゃねえ、する訳ねえだろ!? 餓鬼が調子に乗るのもいい加減に……」

「調子に乗ってんのはテメエだろうが。俺の仲間攫っといて何だその態度はよ?」

「ッ!?」

 

案の定、此方の命令を拒否してキレ散らかすヤクザ。その無駄に派手な色の前髪を鷲掴みにする。

 

「化石風情が、この俺へ真面に意見してんじゃねえよ!」

「うぎゃああああああああああ!!!?」

 

そして何の躊躇もなく、思いっきり引き抜いてやった。強引に抜いたので頭部の毛穴から血が滲んでいたが、気にしない。

 

「丸坊主にしてやるから出家して自分の悪事を悔い改めろ」

「ぎゃああああ!? 痛ぇ、やめろぉおお!! この餓鬼ぁああああ!!」

 

やれやれ、まだ逆らう元気があんのか。俺は7割程ハゲにしたところでヤクザの頭を掴むと、今度はハンドルに叩き付けてやった。

 

「ほら、ほら、ほら、案内しろ~♪」

「ぐべ、ぐぎ、ごぶッ!!?」

 

何度も繰り返す。勢い余ってハンドルが壊れないように細心の注意を払いながら。人気のない道で鳴り響くクラクションをBGMに、男は圧倒的な力で抑え込まれ、成す術なく己の顔面で起きる激痛の嵐を味わうしかない。

 

(なんなんだ……この餓鬼。佐和田の兄貴の話じゃ癒しキャラだって……)

 

尊敬する兄貴分からの話とはあまりにもかけ離れた、暴力的で圧倒的な姿。男の中で星野マリアという人間は小動物的な存在から一転、徐々に狂人か化け物の一種として認識するようになっていく。

 

ただのターゲットだと思って甘く見ていたら、とんでもなく恐ろしい猛獣を引き込んでしまった訳だ。

 

(まともじゃ、ない……死ぬ、死んじまう……)

 

男は俺に”恐怖”を抱いた。これ以上逆らえば、もっと酷い目に遭うに違いないと。自身は猛獣に食われるしかない哀れな獲物だと、骨の髄まで理解させられる。

 

「わ、分かっだ、案内しま゛ずから゛……! お願いじま゛ず……! も゛う゛止゛め゛で下ざい゛……!!」

「……なら最初から素直に従えってんだよ。化石の分際でこの俺の手を煩わせやがって」

 

よし、嘘は吐いていないな。俺は攻撃を中断し、男に強烈な威圧感と殺気をぶつける。

 

「ちゃーんと案内しろよ? もし騙したら……全部折るからな?」

「(な、何を……!?) は、はいぃ……」

 

よーし、頷いたな? ミスしたり嘘吐いて見当違いな場所へ向かったら、鼻とか指とか色々折ってやる。

 

(狂ってやがる……コイツは絶対、敵に回したらダメな奴だ……)

 

抵抗の意思は完全に砕かれたようだが、万が一の可能性を減らす為に保険を掛けておくべきか。

 

「ところでよぉお前、金に困ってたりしてないか?」

「え、はい……? まだ部屋住みの下っ端で真面に稼げてないんで……」

「そうか」

 

褒められた行為じゃないのは百も承知だが、今は緊急事態。綺麗事を言っている場合じゃない。

 

「さっきは案内しろって言ったけどよ、何もタダでやれって意味じゃねえ」

「え?」

 

呆然とする男の眼前で、服の中に仕舞っていた大金の一部を取り出す。今回のような異常事態を想定して常に持ち歩いていたのだ。

 

「枕金50万だ。きちんと仕事してくれたら、報酬としてもう50万出そう」

 

人間を支配する手段は、たったの2つ。一つは恐怖、そしてもう一つは金である。

 

「合わせて100万がお前の懐に入る――どうだ、悪い話じゃないだろ?」

 

まあ前世みたいに1億も出す余裕は全く無いが。それでも親分からの小遣いくらいしか金を得る手段の無い下っ端ヤクザにとっては、目が眩むような額であった。

 

「あ、悪魔……」

「あ゛?」

「い、いえ! 精一杯やらせて頂きます……!」

 

結局、男は端金の為に自分の組を裏切る選択をした。突き出された札束を両手に卑下た目で笑う姿は、ヤクザの――特に下っ端連中の寒い懐事情を如実に物語っていた。

 

少女の内臓売って相当儲けてる筈なのにな。おそらく組長筆頭に上だけに金が入っているのか。

 

(それとも何か別の事情でもあんのだろうか?)

 

まあ心底どうでも良い。俺を舐めた奴には徹底的な恐怖を与えてやる。

 

そこへ駆け寄ってくる兄姉と仲間達。どうやら追い掛けてきたらしいが、好都合だ。

 

「あったぞ、あの車だ!」

「おーいマリアー! 大丈夫ー!?」

 

さあ、カチコミだ。みんなで一緒にクソ化石どもを地獄へ落とそうか。

 




真田ヤバかった……あのねっとりとした雰囲気とか。コイツがゆくゆくは京極組の敵となるのか。

でも魅了対決したらアイの方が勝ちそう。あの甘いマスクと言葉で口説こうとしてもアイは無邪気そうな笑顔で「ムリ!」ってバッサリ断って、逆に真田をドキッとさせるかもしれない。誰もが目を奪われるなお人だし。
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