【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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天羽組VSナックル・アイ&風見組増援部隊


69話

『――馬鹿野郎!! どうしてソイツ等だけ残したんだ!!』

 

「す、すいませんッ!!」

 

人気のない曇天下の道端。風見組本部からある程度離れた場所で一旦救急車を待つ事にした有馬達5人。鷲見が怪我をした熊野を塀を背に座らせて介抱する傍ら、MEMちょが連絡相手の龍珠桃に怒鳴られ委縮する。

 

当然だ、年端も行かない子供が仁義外れに手を染めてる極道の本拠地に乗り込み、しかもMEMちょ達は俺に気圧されたとはいえ、それを了承してしまったのだから。いくら誘拐されかけたとは言え、助かったなら普通は逃げて通報するべきである。俺達がやってる事は危険以外の何物でもない。仮にこれで被害が出たら何の為に警察を動かしたのか。

 

『最早一刻の猶予も無い。警察の知り合いには急ぐよう要請しとくから、お前等は絶対に風見組に近付くなよ、分かったな!?』

 

「はいっ、すっごく分かりましたー!!」

 

超巨大極道の娘からの威圧感満載な怒声は凄まじく、まるで暴風のようだ。それを耳元で浴びせられながらペコペコと頭を下げ続けるMEMちょ。他の4名はとんだ貧乏くじを引かされた彼女を心底同情した様子で見詰めていた。

 

「うう、怖いよ~……ヤクザすげえ怖えよぉ……」

「アンタ大丈夫なの? しっかりしなさいよ」

「あ、ありがと~、心配してくれて――」

 

通話を切ったMEMちょを労おうとする有馬だったが、自分に視線を向けた彼女が固まったまま目をパチパチさせる。

 

「――ところで君、誰?」

「「「あ、それ俺(私)も思った」」」

 

「おい今更!?」

 

今まで自分の存在に気付いて貰えなかった事か、それとも天才子役と謳われていた筈の自分がすっかり忘れられてしまっていた事か、有馬は口をあんぐりとさせてショックを受けた。

 

「”10秒で泣ける天才子役”! 今はアイドルやってるけど、これでも元人気子役なの!」

「――ああ! そうだそうだ思い出した! 確かルビーちゃんやマリりんと一緒にぴえヨンとコラボ動画出してた子じゃん!」

「子役の方にも反応して! そっちの方がずっとメインだったんだけど!」

 

MEMちょが真っ先に正体に気付いてくれたが、それはアイドル『B小町』としての有馬かなであり、彼女は天才子役としての有馬かなを全く知らなかった。

 

「”10秒”……? もしかして……『有馬かな』ちゃん?!」

「そ、そう! 有馬かなよ! 良かったー、まだ私の事知っていてくれている人いたんだー」 

 

とはいえ幸いな事に、他の面子は彼女の異名で漸く反応してくれたが。

 

「うん、小さい頃よく踊ったからねー、『ピーマン体操』」

「ぐぼへッ!?」

 

訂正。有馬にとってはあまり望ましくない形で記憶に残されていたようだ。鷲見から思い出しくない記憶を掘り返された有馬が吐血する。

 

「あ、ゆきぽんもやってたんだ! あれ良かったよね~、小さくて可愛くってさー」

「MEMちょもなんだ! 凄い大人気だったもんね!」

「止めて、それマジで黒歴史なの……!」

 

因みに有馬本人は今でもピーマンが大嫌いである。元々好きじゃなかったが大流行したピーマン体操の影響で、学校や撮影現場にピーマンが出てきた時は無理してでも食べなくてはならなくなり、益々嫌いになってしまった。

 

「ん? ライト君から聞いた限りだと、異名は”銃創を舐める天才子役”じゃなかったけ?」

「あぁ、俺もライト君からそう聞いた。結構物騒な異名だなって思ったよ」

「あんのチビ、何間違った事教えてんの!? 今度会ったら覚えときなさいよ……!」

 

しかも俺の所為であらぬ誤解が蔓延していた様子。ってかお前だってチビだろ有馬。身長一緒だし。

 

「……気を悪くするような質問するけどさ」

「はあ、はあ……な、何よ? えーとMEMちょ……だよね?」

「どうして有馬さんはあかね達の捜索に手を貸してくれたの? ちょっと疑問に思っちゃって」

「………」

 

いくら今ガチメンバーの一人の姉の同僚とはいえ、有馬はMEMちょ達にしてみれば部外者でしかない。それがここまで親身になって手伝ってくれているのだ。彼女がそこまでする動機とは如何ほどのものなのか、少し興味があった。

 

「……前に少し、黒川あかねと接点があったからよ」

 

意外な繋がりに驚く一同。そんな彼等に詳細を省きつつ、簡潔に説明する。

 

「ほんの一回限りの出会いだったけど、その後の活躍ぶりは目を見張るものがあったわ。アイツは演技の天才よ。役者視点だと正しくモンスターと呼んでも過言じゃない」

 

かの元天才子役にそこまで評価される黒川。果たしてその演技力はどれ程の領域なのか。メンバーの中には落ち着いたら本人に確認したいと考える者も出始めていた。

 

「そんなに凄いの? あかねの演技って」

「一度彼女の舞台を見てみると良いわ。私が言った意味がよーく分かるわよ? ――兎に角、これでも私はアイツの才能を高く買ってるの。負けたくないって対抗意識を抱くくらいにはね。それがこんな下らない人災で失われるなんて、納得出来る訳ない。だから助ける事にした、それだけよ」

 

有馬にとって黒川は過去に色々あった気に喰わない奴。だが同時に彼女の才能を認めており、何時か自分こそが上だという事を証明するつもりでいる。故に見ず知らずの第三者がその未来を永遠に潰すなど、許せる筈がなかった。

 

「……まだ勝負は付いてないんだから」

 

プライドの高い有馬の中に不戦勝という結末は在り得ない。唯一の意地を張り合う相手の喪失を、彼女は認めたくなかっただけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その頃。

 

東京某所の埠頭にある廃倉庫。その中ではとある極道と海外マフィアが取引していた。両者に挟まれるようにして設置された長テーブルには、少女達の腎臓が収納されたクーラーボックスが置かれている。

 

「マタ腎臓ダケ? 何故、他ノ内臓無イ? 客、心臓ヤ胃ガ欲シイト言ッテル。子宮、飾リタイッテ奴モ居ル」

「何言ってやがる、腎臓だけって契約だろうが! 心臓とかまで取ったら死んじまうだろ!?」

 

しかし、どうやら取引内容で揉めているようだ。極道側は契約に基づいて少女一人に付き腎臓一つ用意したが、対するマフィアは契約には無い心臓や胃、肝臓、果ては子宮まで要求してきた。

 

契約外だと憤慨するヤクザ達だが、利益重視の海外マフィアは残虐な所業にも躊躇なく手を伸ばそうとする。

 

「死ンダカラ、何ダ? 死ンダラ他ノ子供、攫エバ良イダロ? 日本人ノ子供イッパイ、多少消エテモ問題無イ」

「だから、こっちは人を殺さない計画なんだよ! せめて交わしたルールくらいは守りやがれ!」

 

死人は一切出さないつもりのヤクザ――風見組と、莫大な富を得る為なら手段を選ばない残虐なマフィア――ナックル・アイ。同じ闇社会の組織でも本来分かり合えない存在同士が手を組んで約1年。寧ろ良く持った方である。

 

遂には痺れを切らしたマフィア達が拳銃を構える。

 

「オ前等、勘違イシテル。俺達ナックル・アイ、オ前等ヨリ強イ。従ワナイ弱イヤクザ、殺スダケ」

「な、テメエ等裏切る気か!?」

 

ギョッとする風見組の構成員達。

此方は40人に対して相手は60人弱。しかも先に銃口を向かれた形となっている。このまま一触即発となれば風見組側が壊滅するのは目に見えていた。

 

「死ニタクナケレバ、黙ッテ従エ」

「く、うぅ……」

「急いで本部に戻らなければならないのに……」

 

最悪な状況に立たされた風見組の構成員は焦りが増大する。

 

先程本部より三人組の子供の強襲を受けたという緊急連絡が入った。組長の指示で取引を続行しているが、やはり本部や親分の安否が気掛かりな彼等は、早めに用件を済ませて本部へ救援に向かいたかった。

 

だが親の命令には逆らえず、従った結果がこれである。そもそも任侠組織の筈の我々が何故こんな仁義外れな真似を……と組員達の中には組長への不信感と、己の所業への後ろめたさを感じる者も出ていた。

 

兎に角、今は奇襲してきた集団から本部を守らねば。そう判断した組員達は嘘を吐いて現場を離れる事を選ぶ。マフィア側の要求がエスカレートした以上は仕方ない。人殺しを要求されたとなれば、不殺を厳命した組長も方針を変更せざるを得ないだろう。

 

「ま、待て! 分かったから銃を下ろしてくれ! 流石にすぐは無理だから次回の取引までに用意させる!」

「……フンッ、初メカラソウシロ。雑魚ノ癖ニ生意気ナ奴等ダ」

 

(んだとマフィア無勢が……)

(こらえろ、こらえるんだ……今ここでキレたら皆殺しにされる)

 

しかし、マフィアなど比べ物にならない絶望が彼等の目前まで迫っていた。

 

 

 

 

 

次回の取引の日取りを決めて撤退しようとした刹那、倉庫の大扉が盛大に吹き飛んだ。

 

「ぎゃっ!?」

「ぐべえ!?」

 

大質量を誇るそれらが一部の風見組構成員に直撃し、彼等をコンテナと一緒にプレスしてしまった。

 

「二択クイズでええええすッ! お前等全員死んだらフィッシュの餌でしょうか!? それとも道路の一部でしょうかー!?」

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。さあ、一人残らずブツ切りにしてやろう」

「ウチのシマで下衆な商売しやがって! 全員死刑じゃあ!!」

 

大扉を蹴り飛ばしたのはアーミーナイフの小林。刀を抜き鋭い眼光を放つは日本刀の和中。そして死に物狂いの努力を重ねて彼等に負けない程の武闘派へと成長した小峠華太。

 

「何ダ、アイツ等?」

「あ、あれは……小林に和中に、小峠!!」

「天羽組だああああ!!」

 

襲撃してきた三人組の正体に気付いた風見組が恐慌状態に陥る。

日本の裏社会では知らぬ者の方が少ない”殺しの天羽組”。小規模ながらも異次元の戦闘力を持つ猛者が多数所属し、今や巨大極道へ成長した龍珠組ですら『割に合わない』と対立を避ける程の超武闘派組織である。没落しかけていた風見組では勝負にすらならない。

 

「お、風見組もいるっぽいな。もしかして取引中かー?」

「そのようですね、小林の兄貴。お陰で両方の仁義外れを粛清できそうです」

 

警察が風見組本部を襲撃する為、止む終えずナックル・アイのみに狙いを絞っていた天羽組。しかし、取引現場にタイミング良くカチコミをかけれたのは運が良かった。少女を直接攫った風見組にも、誰を舐めたか思い知らせる事が出来るのだから。

 

「ワナカ……?」

 

ヤクザが発した和中の名前に聞き覚えがあったマフィアの一人が思案顔になる。やがて思い出したかのように声を荒げた。

 

「アイツダ、16年前ニ支部ヲ潰シタ奴! 殺セッ!!」

「数ナラコッチが上だ! 奴等ニ勝チ目ハ無イ!」

 

かつて自分達に牙を向いた愚か者を亡き者にしようと、一斉に銃を構えるナックル・アイ。この場から逃亡、ないし消極的に戦闘の意思を見せる風見組も含めれば約100人。それ程の大群をたった三人で相手する事になるも、天羽組は誰も余裕を崩さない。

 

「フン、外道なぞ百万いようが0と変わらん。貴様等に勝ち目など無い」

 

最初に和中が敵陣へ飛び出し、少し遅れて小林と小峠も動き出す。

直後に放たれる弾丸の雨。流れ弾が一部のヤクザに当たるが、ナックル・アイの大部隊は構う事なく発砲を続ける。常人ならとっくにハチの巣であろう激しい攻撃も、真の猛者には掠りもしない。

 

「阿呆が、そんなものが俺達に当たる訳ねえだろう」

 

「がびゃ」

「ぎべッ」

 

小峠の二丁拳銃が火を噴く。徹底的に鍛え上げられたチャカの腕は一級品で、放った弾丸は一発も外す事なくマフィアの脳天を貫いていく。

 

「日本人雑魚、死ネ!!」

 

「じゃあ、それに負けるお前等は石ころ以下だー」

 

小林はチーターも吃驚の超高速で敵陣に狂気的な笑みを携え迫り、一瞬で二人のマフィアの懐に潜り込んでしまう。そして取り出した龍王刀『紫蘭』ともう一本のナイフを敵の腹に突き刺した。

 

「ダブルグリングリーンッ♪ マフィアの内臓で出来たてスムージぃいいいいッ!!」

 

「ぎゃああああッ!!?」

「マズソッ!?」

 

その二人を筆頭に、多くのマフィアとヤクザが小林のグリンの餌食となっていく。奴等は簡単には死ねず、のたうち苦しみながら地獄に落ちていくだろう。

 

「ナックル・アイ、舐メタ奴、死ヌシカナイ!」

「何故ダッ! 当タレ、コノ野郎ッ!!」

 

「再三再四。またしても無垢な子を狙う貴様等に最早明日は来ない」

 

和中は冷静沈着な表情のまま銃弾を次々と回避していく。しかしその内心は溶岩のように激しく煮えたぎっていた。

被害者は中学生や高校生――つまり子供が多い。子供好きの和中にしてみれば、その事実だけで十二分に逆鱗であった。既に腎臓を抜かれて腹に傷を抱えてしまった子もいる。未来ある少女達に暗い影を落とす真似を働いた風見組とナックル・アイ。生かす道理など一切なかった。

 

「全員輪切りになっとけえええええええええ!!!」

 

『ぎゃああああああああああああ!!!?』

 

たった一振り。それだけで10人ものマフィアは胴体と頭部がお別れする末路を迎えた。

 

「テメエ等、逃げてんじゃねえ!!」

「全員グリンでフィッシュの餌だー!」

 

「ひぃいいい、こっちに来るなあああああ!?」

「助けてゴバッ!?」

 

 

 

 

 

その後も血で血を洗うような激しい殺戮劇は続き、僅か15分で倉庫内の声は3つ残るのみとなった。勿論、その内訳は和中、小林、そして小峠であり、風見組もナックル・アイも全滅した。周囲には連中の死体と、血や臓物が大量に散乱した阿鼻叫喚の光景が広がる。

 

「小峠、後片付けを頼むぞ?」

「承知しました、和中の兄貴。――おい工藤、俺だ。一緒にいる茂木を連れて死体処理を手伝え」

「よーし終わりー。疲れたから俺帰って寝るわー」

 

散々場慣れした彼等は全く気にする事なく証拠を隠滅し、廃倉庫から跡形も無く姿を消した。

 

こうして100人を超えるマフィア・ヤクザ集団は、僅か3人の極道により一方的に殲滅。後に情報を得た裏社会の各勢力は、殺しの天羽組の出鱈目な強さに震え上がり、空龍街の治安はより一層改善へと向かう事となる。

 

もし小峠達の動きが遅かった場合、俺達は増援部隊40人を追加で相手する羽目になっていただろう。俺自身は兎も角、アクアやルビー、そして救出されたみなみや黒川の身が危険に晒されたかもしれない。

 

天羽組には感謝である。

 




アクア、死ぬな……それが無理なら何らかの形で戻って来い。ルビーやかなが壊れちまう。
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