【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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○オリキャラ紹介

・芹澤千夜(イメージCV:花澤香菜)

警視庁刑事部捜査第一課所属の女刑事。階級は警部補。

当時まだ巡査だった頃に発生したストーカー襲撃事件にて、アクアの通報を受け星野家に駆け付けた。その際、錯乱していたマリアを保護するも手を強く噛まれ、痕が残る程の怪我を負っている。後に本件でミヤコより謝罪を受けたが慰謝料請求等はせず、マリアの事も特に恨んだりはしてない。寧ろ幼子を錯乱させる程追い込んだストーカーに怒りを抱くなど、強い正義感と優しい心の持ち主。

尚、マリアがアイを母と求め暴れる様を目の当たりにしたものの、ミヤコにアイの隠し子説を否定される。が、他の警官や救急隊員がミヤコの話を信じる中、彼女だけはそれが嘘だと半ば確信している。とはいえ別に親子の破滅を望んでる訳ではない為、己の胸中のみに留めて置く事にした。

現在は夫や二人の子供と四人暮らし。子供の名前はそれぞれ千尋、京也という。異様に仲良しな姉弟であり、将来恋人に発展しそうな気がしないでもないが、仮にそうなっても自分と夫だけは応援してあげようと考えている。

マリアが16歳の時点で少女連続失踪事件の捜査を進めていたが、情報屋風谷から情報を得た秀智院学園OB勢の働きかけにより、事態は一気に急展開を迎える事に。


70話

私の名前は芹澤千夜。

 

『――報告。現時刻にて違法医療業者の拠点を制圧完了。違法医療業者、並びに暴力団組員を誘拐および傷害の現行犯で逮捕した』

 

風見組本部へ同僚や部下と一緒に急行しながら、パトカー内で闇医者の拠点へ向かった味方の無線に耳を傾ける、警視庁刑事部所属の女刑事だ。

 

『拠点には行方不明の少女20名が病室で寝かされた状態で拘束されていたが、此方も保護済みである。少女達は命に別状はないものの、腹部に手術痕が確認されており、情報通り内臓が抜かれている可能性が高い。我々はこれより現場検証と共に、少女達を手配した救急車で搬送予定。以上』

 

「了解。我々もあと10分程で風見組本部に到着します」

 

ここ数ヶ月発生していた少女連続失踪事件。手掛かりすら見付からず苦悩していた日々の中、突如上層部から齎された新情報。なんとこの事件、風見組という暴力団とナックル・アイという海外マフィアの仕業だったのだ。

 

「本当に内臓を抜いて海外へ売り捌いていたんですね……」

「えぇ、信じ難い話だけど……何を考えたらそんな発想が浮かぶのかしら?」

「少なくとも、いかれてるのは確かでしょう」

 

隣で運転中の部下が話し掛けてくる。彼の顔は見るからに犯人達への怒りで染まっていた。

無論、かく謂う私も腸が煮えくり返る気分でいる。

 

少女達の内臓を海外へ販売して金を得る。同僚も部下も犯人達の悍ましい動機に顔を蒼褪め、身の毛がよだった。

こんな恐ろしい商売を思い付き、それを実行するなんて人間の発想じゃない。警察は犯人達の悪魔のような所業に激怒し、大部隊を編成して一網打尽にする事を決定した。

 

女の子達が囚われている場所は風見組本部と、連中のお抱えの闇医者の計2ヶ所。其処へマル暴の刑事を含む総勢100名以上の警官を投入し、女の子達の保護と犯人の逮捕を実行する。

 

「それにしても警部補。今回の件はちょっと妙じゃありませんか? なんでも明確な証拠が揃ってないにも拘らず逮捕状が発行されたらしいですよ?」

「……また何か大きな力が働いたとしか思えないわね。ここ10年くらい殆ど無かった筈なんだけど」

 

今でこそかなり改善されているが、一昔前の警察はそれはもう酷い有様だった。

腐敗や汚職が横行し、有力者が犯人であれば逮捕命令を出さず揉み消し、爆破テロが起きても出動しなかったり……終いには暴対法があるにも拘わらず、暴力団が治安維持部隊として市民に頼られる始末。

正義感を胸に警官になった私だが、心が折れかけた事も一度や二度ではない。

 

だから今回もお偉いさんの都合に振り回されるのか、と訝しんだものである……最初は。

 

しかし刑事の勘というやつだろうか。少なくとも今回警察に圧力を掛けてきた存在は、女の子達を救いたいという純粋な意思が感じられた。

そして蓋を開けてみれば、上が指定してきた連中は正真正銘本物の悪人であった。ならば話は別である。

 

「早く全員助けて、ご家族を安心させたいわね」

「えぇ、急ぎましょう」

 

警察が真面に機能できる時代となった現在、10台以上の警察車両がけたたましいサイレンと響かせ連なる様子は、犯人からすれば正に破滅の行軍。

 

「……良い時代になったわ」

「警部補、何か?」

「ううん、何でもないの。ただの独り言」

 

悪人をきちんと捕まえ、裁けるようになる。そんな時代の到来を信じて、待ち望んだ甲斐があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おにいちゃん! 今向こうからスッゴイ音が聞こえたんだけど!」

「あぁ、きっとマリアに違いない! 行くぞ!」

「みなみちゃん、あかねちゃん、離れちゃダメだからね! しっかり付いて来て!」

「え、うん!」

「待ってや二人とも!」

 

アクアくんとルビーちゃんから説明を受けつつ屋敷の中を進んでいた最中、ウチ等の耳をつんざくような音が飛び込んできた。急いで音の発生源と思われる中庭に駆け付けると、砂利の大地に立つ二つの人影が激しくぶつかり合っていた。

 

一人はウチを殴った男の人で、もう一人は――。

 

「星野マリア、お前ほどの強さの奴は裏でもそういないぞ! だがあまり本職を舐めて貰っちゃあ困る! 所詮お前は堅気で俺は極道! 住んでる世界も経験値も、まるで違うんだ!」

「とっくに外道の癖に、まだ極道のつもりでいんのか? 未練がましいんだよ!」

 

「マーくん、無事やったんやな。良かったあ……」

 

見るからに強そうな男性と真正面から打ち合っているマーくんに安堵する。

……わぁ凄い。腕の動きが速過ぎて全く見えへんし、明らかに拳同士がぶつかるような音やない。まるで鉄に鉄を高速で叩き付けたような重厚な音しとるわ。

 

「嘘、あれがあのマリア君なの……? 漫画みたいな強さなんだけど……」

 

そんな彼の姿を初めて見るあかねちゃんは動揺しっぱなしだ。まあ、普段は喧嘩とは無縁の癒しキャラって感じやもんな。ギャップが凄まじいどころやないもん。

でも、ウチは知っとる。何時も見る天使みたいな可愛いマーくんも、今の戦っている強くてカッコいいマーくんも、どちらもあの子の素……本当の姿なんやと。

 

「大丈夫やで、あかねちゃん。マーくんなら絶対負けへん」

「みなみちゃん……」

 

ウチは自分自身にも言い聞かせるように、心配そうに戦場を眺めるあかねちゃんへ答えた。

 

 

 

 

 

俺と佐和田のタイマンは一進一退の攻防が続く。足を止めた殴り合いは互いに目にも止まらぬスピードで、且つ交通事故のようになりかねない威力を誇る。

 

「……本当に何なんだお前は? ただの堅気の少年が、何故ここまで圧倒的に戦い慣れている?」

「ノーコメントと言いてえが、優秀な師匠の元で鍛えたからな」

「成程、確かにこの俺と正面からやり合えてんだ。良い師匠を持ったな」

「そりゃどーも、帰ったら師匠に伝えとくよ。――もっとも、下衆に褒められても喜ばんだろうが」

「それは残念だ」

 

(嘘は言ってない、か……だが、それでも実戦を積まなければ出せない癖も見受けられる。本当に格闘技を学んだだけなのか……?)

 

俺の戦闘力の根源に興味を抱く佐和田だが、その答えに辿り着く事は永遠に無いだろう。まさか生まれ変わった本物のマフィアと対峙してるなど、夢にも思うまい。

 

(……とはいえ流石に直に受け続けるのは宜しくないな。こと踏ん張る事に関しては眼前のヤクザの方に軍配が上がるし)

 

前世と違って俺の体は小さく非常に身軽であり、機動力・回避力に関しては佐和田を上回っている。逆に言えば攻撃を諸に受ければ軽々と吹っ飛ばされかねない。無論、いくら喰らおうと意識が飛ぶ事はないが、それでも隙が生まれやすくなる。その辺に関しては肉蝮との戦闘でもギリギリの綱渡りを強いられた。

 

遠目には激しく打ち合っているように映るが、こうして佐和田の拳をいなし、受け流しているのが現状だ。相手も此方の攻撃を諸に喰らわないようしているものの、直接掌で受け止めれる分選択肢は向こうが多い。こっちは同じ事したら遠くまでぶっ飛ばされるのは確実である。

 

(まあ戦闘手段なんて殴り合い以外にも幾つかあるけど)

 

俺の高い戦闘力は複数の要素で構成される。紅林に近い出鱈目な打撃力、小柄な体格による身軽さ、どんな打撃でも意識を失わない打たれ強さ。――そして警戒心の高さと狡猾さ。

 

「殴り合いは大好きだが、いい加減飽きたな」

 

佐和田よ。お前は裏社会に生きる人間だ。戦いに卑怯も糞もねえ、そうだろ?

 

「そろそろ趣向を変えてみようじゃないか」

「ッ!!? (なんだ、嫌な予感がする……!)」

 

佐和田の第六感が脳内に警鐘を鳴らすが、実際に行動に移される前にスピードアップした右拳を正面に叩き込む。

 

「ぬおおおおおおおおおッ!!! (さっきより速いッ! まずはコイツを受け止めてから距離を取る!」

 

俺の拳は速い上に規格外の威力。佐和田は両手で受け止める他なかった。つまり、今の奴は両手が完全に塞がった状況。

 

「偶には痺れてみるのも乙だろ?」

「なッ、ちぃッ!!」

 

左手で懐に仕舞っていた武器――車に乗っていた風見組の構成員から奪った改造スタンガンである――を素早く取り出し、勢いそのままに奴の腕に突き付けようとした。

 

「おい小僧! そんな単調な搦め手は俺に通用しねえぞ!」

 

しかし佐和田は敢えて踏ん張るのを止め、俺の拳の威力を利用して後ろに飛んだ。スタンガンによる電撃は虚しく空を切る。

 

……と思うじゃん?

 

「まあまあそう言わず、こんなヤバい代物を少女達にも味合せたんだろ?」

 

そう躱すって踏んでたよ。

 

「どんだけ痛いか、お前もひとつ体験してみなよ」

 

俺はタイミングを見計らってスタンガンから手を放した。するとスタンガンは地面に落ちる事なく、真っ直ぐに超高速で飛んでいく。その射線上には勿論、宙に浮いている最中の佐和田がいる。

 

「なっ!!?」

 

佐和田の顔が驚愕に染まる。奴は自分の動きが読まれている可能性を考慮しておらず、当たればアウトな武器が飛んできた場合の対処法を考えていなかった。故にこの驚きようである。

いくら優秀な戦闘者とはいえ、相手は年端もいかない高校生。そういう思考が奴の奥底にあったのかもしれない。要は俺を舐めていたのである。

 

「ぐおげげげげげゲゲゲゲッ!!!?」

 

奴はなんとか体を捻ろうとするも間に合わず、脇腹に当たったスタンガンから強烈な電流を受ける羽目に。少女達を一発で気絶させる程の威力だ。如何にガタイの良い大男とて一溜りもない。

 

「ぐ、が、げほ……」

 

それでも意識を飛ばさなかっただけ流石だが、真面に動けず膝を付く。そのデカすぎる隙を俺は決して見逃さない。

 

「――言った筈だ、この星野マリアを舐めるなと」

 

急接近し、奴の頬目掛けて下から上へと拳を突き上げる。

 

「俺の拳は金剛石より硬いぞ? 歯を喰いしばれ」

「……ははは、ちくしょう。完敗だ」

 

佐和田は諦めた様子で、乾いた笑みを浮かべたまま顔を差し出した。

 

……佐和田裕二。潔く、そして哀れな男だった。こんなクソみたいな組じゃなくて天羽組や京極組とかだったら、愛してやまない任侠道を貫けただろうに。入る組織を間違えてしまった、それこそが奴にとって最大の不幸だったのだろう。俺は極道は嫌いだが、ほんの少しばかり奴に同情する。

 

だが、それでもみなみ達を酷い目に遭わせた事だけは絶対に許さない。これはそのケジメの一発。しっかり受け止めろ。

 

 

 

 

「二度とみなみに……俺の女に手を出すんじゃねえ!!」

 

「ごぼへえええええええええええええええええええええええッ!!!?」

 

 

 

 

俺の右ストレートが佐和田の頬にめり込む。本戦闘で最も怒りと魂の宿った一撃は、奴を回転させながら天空へと誘っていく。やがて重力に従って砂利の大地に叩き付けられた。

 

「塀の中で反省してろ、クソ野郎」

 

頬を凹ませ、大の字に倒れて気を失っている自称任侠者に、俺はそう吐き捨てて踵を返した。

 

「マーくん、大丈夫なん!?」

 

「え、みなみ……?」

 

「マリアー!」

「やったねマリア!」

「マリア君!!」

 

「みんなも……」

 

そこへ慌てた様子で駆け付けるみなみ。彼女に遅れてアクアとルビー、あかねもやって来た。どうやら無事に救出出来たらしい。良かった。

 

「遅くなってすまねえな。助けに来た」

「うん、おおきに!」

 

そう言ってみなみは惚れ惚れするような笑顔を俺に見せてくれた。

 

 

 

 

 

サツの到着まで、あと5分。




○今作での御前(御堂鋼作)について

一応存在はしていましたが、城ヶ崎の死から僅か数年後にモーリーやエルぺタス、伊集院との戦いに敗れ、アイがストーカーに襲われた時点で既に死亡しています。

彼の影響力が日本の治安悪化の一因となっていた為、彼亡き今は治安が現実日本並みに回復しており、治安維持も龍珠組などの任侠者から警察・裁判所へと自然に移行していきました。それでもアサシンや拷問ソムリエ等の特殊業務に関しては、規模を縮小しつつも未だ健在ですが。
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