【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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明日、いよいよ163話ですね。アクアが無事な事を祈るばかりです。



71話

俺の名前は星野マリア。

 

「黒川の方も、怪我とか無さそうで何よりだ」

「う、うん……縛られて監禁されてたみたいだけど、それ以外は何と言うか丁重に扱われたって感じだったから。それにアクアさんとルビーさんが直ぐ助けてくれたし……」

「よくやったアクア、ルビー。そしてサンキューな。俺が見た限りだと、二人とも少し前より結構強くなってるぞ?」

「そう? ありがとうマリア! 紅林師匠の厳しい修行に耐えた甲斐があったよ!」

「お前がそこまで言うなら、俺もちゃんと成長出来てるんだな。それが分かって安心した」

 

救出されたみなみと黒川を無事を再確認し、内心安堵の息を溢す普通の高校生だ。

 

……は? ”普通”とは何ぞや、だって? 反社じゃない、表で真っ当に生きる堅気なんだから、どう見たって普通だろ? 良いな?(威圧) 

 

「と、ところでね……マリア君」

「あ? どうした黒川?」

 

すると黒川が頬を赤らめ俯きながら、もじもじとした様子で上目遣いになる。

 

「そこで寝ている男の人を倒す時さ……みなみちゃんの事を”俺の女”って言ってたよね? も、もうそこまで進展してたり……?」

 

……

 

………

 

……はうあッ!!? きかれてたッ!!?

 

「すすすすんまへん、今思い返して頭どうにかなりそうなんや。指摘しないで欲シイナー……?」

「ま、マリア君? 喋り方が変になってるよ……?」

「わあ、茹蛸みたい」

 

ま、まさか聞かれてたなんて……イヤもうすっごい恥ずかしい、逃げ出したい! でも此処は敵地だからみなみ達を置いてける訳がないし……

結果、俺はルビーのツッコミ通り真っ赤に色付いた頭部から蒸気を立ち昇らせ、プルプルと震えるしかなかった。

 

尚、当のみなみについてはと言うと――。

 

「バッチリ聞かせて貰いました。ウチ、マーくんからそんなに大事に想われてたんやな。嬉しいで?」

「えと……あ、あぁ。当然だろ? お前を助けたくて俺は此処に来たんだから」

「えへへ~///」

 

(かわいい……)

 

俺を見詰めながら、普段のおっとりさとは違う天真爛漫な笑顔をご披露して下さった。見惚れちまうくらい可愛いし、気分を害されてないようで一安心。

だけどお願い。一緒に恥ずかしがって? その方が羞恥が半減しますんで。

 

「みなみちゃん、本当にマリア君とそこまで……?」

「んふふ~、どうやろな~? あかねちゃんのご想像にお任せしますー」

「それ、もう答え言ってるようなもんじゃない! やった、ようこそみなみちゃん星野家へ! もう今から私を”お姉ちゃん”って呼ぶ練習しとこ?」

「はうあッ!? る、ルビーちゃん、気が早過ぎますって。ウチ等まだ高校生やさかい……」

「ふぇ、結婚!? も、もうそこまで考えてるんだ……凄いね」

「あかねちゃんも落ち着き! ちょっと話が飛躍し過ぎとるから!」

 

興奮気味に話すルビーに、恐る恐るながらも興味津々な黒川。そして二人から迫られ次第に余裕を失い、あたふたした様子で応対するみなみ。女は三人寄れば姦しいとは言われているが、確かにとても賑やかで楽しそうな状況である。

……もっとも俺は更なる羞恥から顔を両手で覆っており、温かく見守る余裕なぞ無かったが。

 

「みんな、マリアの奴が恥ずかしさのあまり死にそうだから一旦止めてやれ。それに一応此処はまだ敵地なんだ。注意を怠るのは宜しくない」

 

「はーい、おにいちゃん!」

「わ、分かりました、すいません……」

「ごめんなマーくん、大丈夫……?」

 

「あぁ……でもいい加減慣れてかねえとな……」

 

そんな少女達をアクアが静かにさせた事で、俺の羞恥地獄は終わりを迎えた。サンキューだ、兄さん。

 

 

 

「――何やっちまってんだろうなあ……」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 

安堵していたが故に、自分達以外の声を耳にした俺等は跳ね上がりそうになる。声の主はすぐ側で盛大に倒れている男のものだ。

 

「吃驚させやがって、もう気が付いたのか。思ってた以上にタフだな、お前」

 

少女三人を意識を取り戻したヤクザ――佐和田裕二から距離を取らせ、自らは彼女達の盾となるように前へ出るアクア。それを見て俺は一言。

 

「問題ねえよ、コイツは暫く真面に動けんから」

 

顔面が凹む程の攻撃を喰らった影響で、佐和田は眼を覚ました後も身動きが取れない状態だった。加えて遭遇時に感じた戦意や闘気が完全に霧散している。どうやらこれ以上戦うつもりはないらしい。奴は自身のこれまでの行為を思い返し、後悔していた。

 

「親父の命令に逆らえず、こんな人の道に外れたシノギに手を出してよぉ……貧乏で秩序を失いかけていた組をかつてみたいな任侠集団に戻したかった筈なのに、どうしてこうなちまったんだ……」

 

どんよりとした曇り空を見上げつつ繰り返す譫言のような呟きは、まるで俺に対して問い掛けているような気がしてならない。

 

「……詳しく聞かせろ。どうしてこんな事をしちまったのか」

 

俺の問い掛けに佐和田は素直に答えた。なんともまあ矛盾だらけの目的と手段だったよ。

 

暴対法による締め上げに追い付けず、先代が亡くなる直前には仁義を破り始める構成員が徐々に出ていた風見組。治安が不安定だった10数年前までなら頼りにしてくる堅気も多く、彼等と真摯に向き合う事で一定の収入と秩序を保てていたが、警察が真っ当に機能して以降はそれすらも大幅に減り、一気に没落してしまった。

元々仁義を重んじていた佐和田にとって我慢できるような現状ではなく、誰よりも任侠を貫いていた頃を強く切望していた。そんな中、代替わりした二代目から聞かされた今回のシノギ。当然仁義に外れた内容に不安しかなかったが、栄光ある過去に戻れる可能性を前に判断が鈍ってしまい、『極道は親の命令には逆らえない』という理屈に後押しされる形で始めてしまった。

 

「――任侠とか仁義とか、詳しくは知らねえけどよ……つまりは世の為人の為になる事をするって意味じゃねえのか?」

 

コイツなりに自身の家族の将来を憂いていたのだろうが、道違えている事を自覚して尚止められなかったのは愚かとしか言いようがない。

俺は呆れた様子で奴に近付き、ゆっくりと腰を下ろして自分なりの考えを伝える。

 

「お前にとって極道ってのはさ、親や兄貴分に黙って従う奴を指すのか? 違うだろ? 他人を食い物にする輩に抵抗し、阻止する。そういう奴こそ本当の意味で”極道”と言えんじゃねえのか?」

 

お前は風見組……いや、風見組親分という仁義外れに抵抗すべきだった。そう告げた時の佐和田のハッとした表情が、俺に深い溜息を吐かせる。

ったく、マジでこんな簡単な事にも気付けなかったのかよ、この馬鹿は。

 

「親に逆らえば最悪破門? 極道失格? ――それがどうした? 上等じゃん」

「!」

 

佐和田は驚愕した様子で、俺から目を離せないでいる。

 

「悪事を子にやらせる親なんて、普通に考えれば親失格だろ? そんな下衆に従うなぞ愚の骨頂と呼ばずして何と呼ぶ? 極道が真に守るべきは上下関係でもメンツでもねえ――堅気そのものだろうが」

 

そうじゃないのか? 子が倒れてるのに駆け寄りもせず、コソコソ鼠みたいに隠れてずっと様子を窺ってるだけの親分さん?

 

「!?」

 

俺が屋敷の近くにある茂みに視線を向けてそう言い放つと、ガサッと草と枝が擦り合う音が少し続いた後に、無駄に立派なスーツに身を包んだ初老の男が立ち上がった。冷や汗ダラダラで苦虫を嚙み潰したような顔は、何故分かったと言わんばかりである。

 

「二代目……」

 

倒れ伏したまま頭だけ動かし、驚いた様子で初老の男に声を掛ける佐和田。そう、この男こそ今回の少女達を誘拐・監禁し、内臓を抜くという悪魔のようなシノギの首謀者――風見組先代組長の息子にして現組長、『風見健次郎』である。

 

「嘘だろ、あそこに人がいたのか……」

「全然気付かなかったよ……」

「……お前等、紅林から気配を読む訓練も受けてただろ? 帰ったら猛特訓してやるから、覚悟しとけ」

「……」

「え~、マリアの特訓厳し過ぎてきついんだけど……」

 

「文句あんのか?」

 

「「イエ、何ニモアリマセン」」

 

俺直々の修行と聞いて渋面になるアクアとルビーを軽~く威圧してから、茂みから体を出した風見組長と佐和田の遣り取りを見守る。それはどう好意的に解釈しても、自らの為に傷付いた子を労う姿ではなかった。

 

「佐和田! お前ともあろう男がこんな餓鬼一匹にやられちまうとは、それでよく突撃隊長を名乗れるよな!?」

「……すみません」

「すまんで済ませるくらいなら寝てないで餓鬼共を捕らえろ! コイツ等が逃げてサツに駆け込めば組は破滅だ! 折角莫大な収入が得られたというのに!!」

 

まるで子供の癇癪のように唾を飛ばしながら喚く様子は見苦しいばかりで、アクア達は警戒しつつも呆れている。

 

「……二代目、もう止めましょうや。少女の内臓を奪うなど、人の道に外れている。我々極道のする事じゃない」

 

タイミングを見計らって佐和田が切り出す。こんな仁義外れな所業から手を引こうと。組一番の功労者で最高戦力の男の”反逆”に、風見組長は動揺を隠せない。

 

「な、何を言ってやがるんだ佐和田!? お前が任侠を重んじる性格なのは分かっとる! だが、もはや普通のシノギでは貧乏からは抜け出せん! だから人を殺さない程度で稼げるシノギを用意してやったんだぞ!?」

 

……おい、今のは聞き捨てならねえな。

 

「テメエの中じゃ、人を殺めなければ仁義外れじゃないとでも言いてえのか?」

「黙れ小僧! 今はコイツと話してるんだ、引っ込んでろ……!」

 

横から口を挟まれて声を荒げる風見を無視して、俺は続ける。

 

「いきなり誘拐された挙句、若くして腹に傷を抱えさせられ生きていく……女にとってどれ程辛い事だろうな? 少なくとも被害を受けた少女達からすればお前等は任侠者じゃない――金の為に自分達を傷付け苦しめた、ただの外道だ」

 

俺の断言に賛同するように、みなみと黒川は風見を睨み付けながら頷く。黒く変色した星を宿したアクアとルビーの瞳も、奴をゴミとして見ている。

 

「それにその成金っぷりは何だ? そんな物を買う余裕があるなら、組員に腹いっぱい飯を食わせてやれる筈だろ?」

 

しかもコイツの体を観察してみると、スーツもアクセサリーも海外の超高級ブランドばかりではないか。まさかとは思うがこの男、このシノギの目的が佐和田とは根本から違うのかもしれん。

 

「貴様、純粋に金目的でこのシノギをやったな?」

 

だから真偽を確認してみた。その目をしっかりと捉え続けて。

 

「………そんな事はない。俺も佐和田と同じで任侠を取り戻したくて「嘘を吐け」!!?」

 

そして案の定、風見の目は黒くヘドロのように淀んだ。

 

「俺はな、嘘を吐く人間は目を見れば一発で分かるんだよ。不殺を徹底させたのも、殺しまで認めたら従わない子分も出てくるって分かってたからだろ?――特に、この男みたいに仁義に固執する奴が」

 

そう言って見下ろした先で倒れている佐和田は、ショックを受けた様子で自らの親を見詰めていた。声も震えている。

 

「二代目……そんな、初めから金狙いで……」

「おい佐和田! お前は親の俺よりも、こんな見ず知らずの餓鬼の言う事を信じるのか!?」

「……信じざるを得ません。この少年の目を見れば分かります。彼は全く嘘を吐いていない」

 

やがて有り難くない事実を無理矢理飲み込んだ佐和田は、ギロリと己の親を睨み付け、はっきりと告げた。

 

「二代目なりに組を想っての行動だと信じてましたが、全ては貴方の我欲の為だったのですね。――ならば俺はもう、アンタには従わない! サツに自首して全てを話す!」

 

せめてこれ以上仁義を忘れない為、佐和田裕二は極道界に入って初めて親に逆らう意思を見せた。絶句する風見を余所に、俺は上から目線な言動で純粋に感心する。

 

「ほう、やっと任侠者らしくなったな? もっと早くその決断に至れば良かったものを」

「……全くもってその通りだよ、少年」

 

佐和田の視線が俺から外れ、二人の少女の姿を捉える。自身が誘拐した黒川と、そしてみなみに申し訳なさそうな顔をする。

 

「嬢ちゃん達、謝って済む話じゃねえけど言わせてくれ――――怖い思いをさせて、すまなかった」

 

「……いえ、私としては無事に助かったので、大丈夫です」

「あかねちゃんはこう言うとりますが、友達を襲った事をウチはまだ許せません。ちゃんと罪を償って下さい」

 

「あぁ、そのつもりだ」

 

「……なら、ええでしょう」

 

みなみも黒川も、佐和田からの謝罪を一応は受け入れる事に。被害者である二人が少なくとも奴個人を許すのであれば、俺から言う事は何もない。

 

「……ふざけるな、サツに全部言うだと?」

 

しかし、この状況に唯一納得出来ていない人物がわなわなと震えている。そして懐に手を伸ばす仕草を捉えた俺は、真下に敷き詰められた砂利の一部を素早く掬い上げる。

 

「冗談じゃねえ!! やっと贅沢三昧な暮らしが出来るようになったんだぞ!!」

 

取り出した拳銃を、最も近くにいた俺へと向ける風見。どうやら俺達を殺すつもりらしい。自らが不利になった途端殺人に走ろうとするとは……やはり不殺は方便でしかなかったって事か。

 

だが、そろそろ時間だ。なんかサイレンがいっぱい迫って来てるからな。

 

「止めとけ、もうお前は終わってる」

 

「終わりじゃねえ! テメエ等全員を消せばまだ――」

 

引き金に掛ける指を強めようとした直後――風見の背後から急速に接近する人影が一つ。

 

 

 

「子供に物騒なモン向けてんじゃねえ!! 確保ーー!!!」

 

「ごべばッ!!?」

 

 

 

コートに身を包んだ30代半ばくらいの女。彼女は俺に拳銃を向けていた風見へ怒り心頭な様子で飛び掛かり、後頭部を鷲掴みにして地面に叩き付けた。そして警察手帳を奴の眼前に突き付けつつ、怒鳴り付けるように宣告する。

 

「警察だ! 風見健次郎! 少女誘拐および傷害・監禁、並びに銃刀法違反で逮捕する!!」

「な、何故サツが此処に……!?」

「お前の悪事はとっくにバレてんだよ! 金の為に女の子達を酷い目に遭わせやがって……一生檻から出られると思うな!!」 

「ぐ、くそぅ……」

 

遅れて現場に駆け付けた50人近い警官の群れを視認し、自身の破滅を理解して項垂れる風見。手錠を掛けられた奴の身柄を部下数名に引き渡し、女警官は俺達へ向き直る。

 

「アンタは……」

「昨日以来ね。みんな怪我は無いかしら?」

 

芹澤千夜。昨日黒川の家に訪れていた刑事の片割れである。

 

「取り敢えず何故君達がこんな危険な場所にいるのか、色々聞かせて貰いましょうか」

 

こうして俺達は警察に保護され、周囲では多数の警官により現場検証が始まろうとしていた。

 




○補足:今作の御前が討ち取られた背景

原作における御前の敵対勢力はモーリー、エルぺタス、伊集院の3勢力ですが、今作では更に秀智院学園と、其処の関係者たる財閥や政治家、裁判所、警察といった現代貴族達も加わっています。

当時(かぐや様達が小学生くらいの時)の秀智院勢力は、日本の不安定な情勢の元凶が御前であると突き止めてはいましたが、如何にVIPクラスとて権力的には彼の方が上であり、直接の敵対は非常に危険だったので静観しつつも機会を伺っている最中でした(因みに現代貴族が御前を排除しようとした理由は様々ですが、少なくとも財閥系は治安が悪化したままでは安定した商売が出来ない事が主な動機となっています)。

しかし、そこへ死龍や伊集院が御前と争う情報を得た事で事態が急展開。急遽彼等とコンタクトを取って協力を申し出ます。後にモーリー、エルぺタス、伊集院、秀智院による対御前連合が結成、御堂グループと大抗争を繰り広げます(秀智院側から参戦した戦闘者はかなりの数であり、その中には若き四宮雲鷹や早坂ママも含む。但しかぐや様や早坂等はまだ幼かった為、基本不干渉)。

最終的に双方多大な犠牲を出すも、御前が伊集院に討たれた事により戦争は連合の勝利で終幕。その後は腐敗した上層部が衰退していくのに合わせ、その後釜に秀智院勢力や関係者が座る事で日本の治安が一気に回復していきました。
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