【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結) 作:Woudy
今ガチ編、100話目くらいで終えれたら良いなぁ(多分無理な願望)。
私の名前は星野アイ。日本を代表する大女優で、三人もの可愛い子供達を家族に持つお母さんだ。
バラエティ番組の撮影を無事終わらせた私は、佐藤社長やミヤコさん、そして護衛の紅林さんと一緒に帰路に着いていた。
「う~ん……にぇむい~」
「アイさん、まだ苺プロまでは距離がありますし、ゆっくり眠っといて下さい」
「わかっらよぉ、くればやひ(紅林)さ~ん……」
「おっと。もうこの子ったら。ほら、膝枕してあげるから横になりなさい」
「わぁ~い、ミヤコママだいしゅき~……」
事務所へ向かう社有車の中で、撮影の疲れからかウトウトしかけている私をミヤコさんが膝枕してくれた。あ~、太腿やわらかーい。気持ち良過ぎてあっという間に夢の世界へ入れそう……
プルルルルッ
「ったく、運転中に鳴るんじゃねえよコイツ。すまんが紅林さん、電話に出てくれねえか? 俺の上着の左ポケットに入ってるやつだ」
「了解しました社長。失礼します」
そこへ車内に響く携帯電話の着信音。運転の最中に鳴るそれに悪態を吐きながら、佐藤社長は紅林さんへ代わりに出るよう頼んだ。
「はい、此方は苺プロダクションです。――あぁ、林さん! どうかしましたか?」
電話の相手は私達苺プロで働くスタッフさんだった。ええと名前は確か速水……裸足……はや……そうそう、林さん。たしかマルチタレント部門のマネージャーさんだっけ?
朦朧としかける意識の中、何とか瞼を抉じ開けて紅林さんの表情を窺う。暫く観察し続けると、彼の横顔が次第に驚きに満ちたものへと変わっていく。
「何ですって……!!?」
「「わぁっ!!?」」
そして今にも立ち上がりそうな勢いで声を張り上げた。だから社長もミヤコさんも吃驚仰天だよ。それに合わせて車が激しく揺れ、再び落ち着く。
「紅林さん、急に大声を出さんでくれ! 危うく事故りかけるところだったぞ!」
「すいません社長! ですが至急報告したい事が!」
「な、何だよ一体……?」
紅林さんは見るからに焦った様子で社長に詰め寄る。
「アクア君にルビーちゃん、そしてマリア君の三人が、誘拐された友達を助ける為に――ヤクザにカチコミを掛けたそうです!」
「……はへ?」
「え? カチコミ?」
!!!?
「ど、どういう事なの、紅林さん!!?」
私の愛する子供達が危険な立場にいる。その情報は沈みかけていた意識をはっきりさせるのに十分過ぎた。社長もミヤコさんも驚愕している。
「マリア君には担当カメラマンがいたでしょ? たしか名前は白銀――」
「かぐやさん?」
「はい、その白銀かぐやさんから苺プロへ電話があったそうです。マリア君たちが今ガチで知り合った仲間が攫われ、その犯人であるヤクザの本拠地に監禁されてると。だから彼女達を助ける為に……」
何故かぐやさんが知っているのかと言うと、同じ今ガチの仲間であるMEMちょから報告を受けたからだとか。でも、そう話す紅林さんの言葉に耳を傾ける余裕はなかった。
「アクア! ルビー! マリア……! ど、どうしよう! どうすれば良いの……!?」
「アイッ、気をしっかり……! まだ最悪の事態だと決まった訳じゃないから!」
脳裏に子供達の笑顔が浮かぶ。どうしてそんな危ない真似をするの? 友達を助けたい気持ちは分かるけど、もし死んじゃったりしたら意味が無いんだよ? やだ、お願い、三人とも無事でいて……
チャルラ~ララ、チャルララララ~♪
「……」
「……」
「あ、今度は俺の電話が……ってこの子からとは珍しいな」
「何で着信音、屋台のラッパ音なんだ……?」
不安と恐怖で押し潰れそうになる私をミヤコさんが背中をさすって宥めている時、今度は紅林さんのスマホに電話が入った。林さんには改めて掛け直すと告げてから通話を切り、自分のスマホに耳を当てる。
「もしもし、久しぶりだな桃ちゃん。どうした急に? ――なッ、マリア君達の事で何か知ってるのか!?」
紅林さんの顔がまた驚愕に満ちたものになる。
「分かった、警視庁だな? 恩に着るぜ、桃ちゃん!」
紅林さんは何度か頷いた後に相手へお礼を言い、電話を切った。なんか切る直前に相手の人が怒鳴ってたような気がしたけど。そんな事より!
「紅林さん! 今の電話って!」
「はい、マリア君達は警察に保護されたそうです。警視庁で事情聴取を受けると聞きました」
「社長!」
「分かってる、警視庁だな!? 予定変更だ!」
「うん、ありがとう!」
本当なら午後から苺プロでぴえヨンの動画に出演する予定だったけど、当然キャンセル。仕事よりも子供達の方がずっと大事だ。佐藤さんも私の意思を尊重してくれて、マリア達が保護された警察まで車を走らせる。
(アクア、ルビー、マリア……待ってて。そっちにママが行くからね?)
私の名前は白銀かぐや。四大財閥の一つ『四宮グループ』の元お嬢様で、今は愛する白銀御行さんの妻である。
「”桃ちゃん”言うな……!!」
私は自身が経営する白銀スタジオの側で、秀智院学園の元VIPでもある女性――広域指定暴力団組長の娘、『龍珠桃』先輩――が、通話相手に声を荒げる様子を仲間と一緒に見ていた。
因みに翼さん・渚さん夫婦は此処には居ない。女の子達の治療の為、田沼総合病院へ向かっている。
「……あの龍珠先輩相手にあそこまで砕けた呼び方する人間がいたなんて、信じられないっすよ」
「勇者此処にあり、ですね」
「お前等聞こえてんだよ!」
龍珠先輩は顔を真っ赤に染めながら石上君と藤原さんに怒鳴ると、再度通話相手の男性との会話に戻る。
『悪い悪い。それよりも何か用か? 久々だし話したい事も山積みだが今はそれどころじゃねえんだ。俺の勤め先のタレントがヤバい案件に首突っ込んでてよ――』
「星野三兄弟の事だろ? 末っ子が四宮んトコのモデルをやってると。お前が苺プロで働いてるって知り合いに聞いたから、その件で連絡したいと思ってな」
『なッ、マリア君達の事で何か知ってるのか!?』
電話越しでも分かる程の慌てっぷり。まあ無理もないでしょうね。仕事仲間と言って良いマリア君達が、とんでもなく無茶な真似をしていたのだから。
「ついさっき警察の知り合いから一報を受けた。風見組というヤクザの本部で三兄弟と被害者少女を保護したと」
『何!? じゃあマリア君達は全員無事なんだな!?』
「あぁ、これから警視庁に移送して事情聴取を受ける予定だ。迎えに行くなら其処へ向かえば良い」
『分かった、警視庁だな? 恩に着るぜ、桃ちゃん!』
「だからその呼び方止めろ……!!」
通話を終え、私達に振り返る龍珠先輩。その表情は茹蛸のように赤く、よく見ると生まれたての小鹿みたいにプルプルと震えていた。
「……今のは聞かなかった事にしろ、良いな?」
『あ、はい』
可愛らしい呼び方だとは思うけど、恥ずかしさ全開な姿にちょっと申し訳ないと感じた私達は、努めて呼び名の件を忘れる事に。
「さっきの電話の相手は先輩の知り合いなんですの?」
「紅林って奴だ。前に話しただろ? ”御前”の刺客を返り討ちにしてくれた堅気の男だ」
私達――その中でも私や愛、眞妃さんは、かつて日本を裏から牛耳っていた暴君の名前を聞いて険しい表情を浮かべる。
「あの御前の、ですか……」
「まさかここで例のクソジジイの話題に繋がるとは……」
愛に至ってはクソジジイと扱き下ろし、私の父や兄達の時以上に不快感を露わにする程だ。
本来存在に触れる事自体がハイリスクな相手だが、幸いにもその男は10数年前の抗争で伊集院氏に討たれている。なので堂々と口に出しても問題ない。
政界のスーパーフィクサー、御前こと『御堂鋼作』。一昔前の日本の治安がとても悪かったのは、奴が傀儡にしていた権力者達が欲塗れのケダモノ集団だったからである。かく謂う奴自身も、欲望の権化だったそうだ。
『――私は不老不死となり、永遠に天上の地位に君臨し続ける。私以外の者は全て、私の傀儡として生きねばならん』
私達より一世代前の秀智院学園、並びに学園へ子を入学させていた政財界や司法の有力者連合――纏めて秀智院勢力、またの名を『現代貴族』と称された――は、御前率いる保守層の腐りきった支配が気に喰わず、成り代わりを狙う革新派の集まりと化していた。
『――モーリー、エルぺタス、伊集院茂夫。そして秀智院学園と其処で群がる成り上がり共。私に逆らう者は何人たりともこの世には存在させない』
当然、権力に固執する御前がそれを許す筈もなく、現代貴族は当時同じく御前と敵対していたアサシンギルドや旧華族の伊集院家と手を組み、御前側のトップアサシンや配下のマフィアと血で血を洗う大抗争を繰り広げた。
一番下の兄の『四宮雲鷹』や、愛の実母で私の乳母でもある『早坂奈央』、更には四条姉弟の親族など、秀智院側からも多数の猛者が参加。かの最強の殺し屋『死龍』や、名家の御曹司で拷問ソムリエの『伊集院茂夫』氏とも共闘したという話らしい。
無論、龍珠先輩の御実家の『龍珠組』も秀智院側として参戦しており、彼女は御父君ともども御前傘下のマフィアに命を狙われた事がある。
『龍珠ぅうううう!! お前長生きし過ぎなんじゃああああ!!』
『お前等を殺れば御前がこの地の利権を俺達にくれるって言うんだ! 大人しく死んどけえええええッ!』
『桃、下がるんだッ!』
『きゃッ!?』
『来るぞ、親父とお嬢をお守りしろッ!!』
『へいッ、兄貴!!』
数名の武闘派が護衛に就いていたが、刺客の数は膨大で多勢に無勢だった。
『テメエ等、子供に向かって銃なんか向けてんじゃねええええええッ!!!』
『ごべぼおおおおッ!?』
『がびゃッ!!?』
そこへ飛び入りで参戦してマフィアの顔面を潰して回った人物こそ、龍珠先輩が通話していた相手の男性――紅林二郎である。彼の救援で窮地を脱して以降、低頻度ながらも個人単位で交流を続けているそうだ。
閑話休題。
「さて、そろそろ私達も移動しましょうか」
「……そうだな。行くか」
私や龍珠先輩の言葉に全員が頷き、二手に分かれて車に乗り込む。一方は仲間の一人が治療中の病院にいる今ガチの子達を迎えに。もう一方は警視庁で苺プロの面々と合流する為に。前者は遅れて警視庁に向かう流れになる。
「……全くマリア君ったら」
「やっぱり担当している子が一番心配か、かぐや?」
「それもありますけど……私の直感では主導したのは彼な気がしてならないんです」
「あんな無垢で大人しそうな子が? 寧ろ誰かに引っ張られていく側の人間って印象だったが」
運転席でシートベルトを締めながらそう返答する御行さんだが、本当に大人しい子がヤクザに突入するなんて真似、する筈がないだろう。
何より1年前に相手にした例の怪物。私が気絶している間に戦っていたのはそのマリア君である。直接この目で見た訳じゃないけど、彼はあの危険思想の塊みたいな存在の近くにいてほぼ無傷だったのだ。
星野マリア君。華奢な見た目に比して、実はそれなりに強いのかもしれない。
(――とはいえ、あれ程私達に任せてと言っておきながら無茶を働いたんですもの。その辺りはしっかりお説教しときませんとね)
そう決断するのと、私達を乗せた車が発進するのは、殆ど同時だった。
最新話読了。
アクア……本当に大丈夫なんでしょうか。個人的にはゴローの記憶を失った純粋アクアとして生還すると予測してますけど。